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!! しまった!
昨日家の前で拾った100円が!
…… ポケットの中の犯罪……


仕方ない …… 出頭しよう。潔く、罪を認めてお縄にかかろう ……
あれ? 自首か?
よし…… ここ、ハッキリしてから警察行こう ……



逮捕


それ、どちらかと言えば「自首」ですが、交番に届け出ても、間違いなく捕まりません。というか、届け出た100円はお巡りさんが預かって「お駄賃」として、たぶん違う100円硬貨で100円もらえるパターンです……


少額の金銭(硬貨レベル)を拾ってネコババ、などではない、もっと悪いことをした人が自分から警察署等に名乗り出る、といったイメージの「自首」「出頭」。


    これって同じことじゃないの?

    違いがあるなら、それってどの部分?

    自分から名乗り出れば、ちょっとは罪って軽くなるの?

    いや、自分がするわけじゃないけど……


わかってます……


なかなかこのような局面を迎えることはないかと思いますが(そしてそれが普通で、一番いいのですが)、ドラマや小説内ではしょっちゅうお目にかかる場面ではあります。


犯罪の「自己申告」的なこちらの2つ。

減刑への影響等、含めまして「自首」「出頭」の違いを解説いたします。


うーん、自分には一生関わりないだろうけど「豆知識」としてなら知っておきたいかも…… の欲求を満たしていただければ幸いです!

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「自首」と「出頭」はココが違う!


あまり生々しい例で説明するのはちょっと…… ということで、レベルは低いですが、冒頭の少し大人びた少年の犯した罪でいってみましょう(実際には何の罪にも問われません)


彼がこれから起こそうとしている行動は「自首」に当たります。


なぜなら、彼が100円を拾った事実は「彼しか知り得ないことだから」です。ずっとポケットの中に入れっぱなし、拾ったのは家の前、しかも先ほどまで忘れていたのです。誰も、気づいていません。そしておそらく、落とし主も交番等に「100円落としたから探してほしい」等、届け出てはいないかと思われます。

それでも、処分を求めて自らの罪を敢えて告白しに行く。


この行動が「自首」。


では「出頭」とは「自首」とどこが違うのか?


「100円を落とし、それを誰かが拾ったらしい、ということは知られていて、その人物を探している」または、さらに進んで「その誰かはたぶんアイツ、と目ぼしをつけられている」となった状態で名乗り出るのが「出頭」です。

つまり、

  • 自首: 犯罪の事実も、その犯人も全くわからない状態で名乗り出ること
  • 出頭: 犯罪の事実や、その犯人についてもすでに捜査が進んでいる状態で名乗り出ること


「自首」の場合なら「実はここで昨日、誰かが100円落としたんです。で、それ拾ったの、ボクです」になり、「出頭」では「皆さんの探している、ここに落ちていた100円拾ったヤツって、ボクです」のような違いが出てくるのです。


ポイントは「容疑者や参考人、または犯人」「事件」。これらがどの程度周知されているか、です。


捜査関係者に知られていれば「出頭」、自分のみが知る事実であるなら「自首」となります。


まずは、この大きな括りでの違いを知っておいていただき、では続いて自分のみ知る「自首」について、見ていってみましょう。

「自首」とは?


初めに、なぜ「自首」をするのか、から。つまり(最終的に捕まるにせよ)、なぜまだ発覚してさえいない犯罪について自ら名乗り出るのか、ですね。

やっぱり生々しいのはイヤなので、冒頭少年の場合。

「自分の行為を悔いているから」です。もしくは「いつ発覚するか、の恐怖から」ですが、これも罪の意識があればこそ。


ですので、刑法上では一般に「その刑を減軽することができる」、とされています(刑法42条1項)。


また「内乱・私戦の予備・陰謀」についての自首であれば、刑は免除

確かに内乱を企て、その準備をしてた場合などでは、その本人が名乗り出ない限り、実際に事件等が起きる以外に発覚のしようがありません。事を起こす前に「その罪を自ら申告」なので、罪自体を免除。なるほどです。


さて、この「自首」での減刑は平安時代には、すでにシステム化されていたもの。

当時、刑法を含め様々な規定を定めていた「律令法」によれば、現在のように「自首すること自体が減刑の理由になる」プラス「ある罪で捕まった者が、まだ発覚していないさらに重い罪の申告(自首)した場合、その罪については罰則の対象とされない」、つまり軽い方の罪だけ罰する、とされていました。

先ほどの少年で言えば、100円をネコババしたことにより怒られている時、さらに一昨日の「妹のお気に入りの白いブラウスにケチャップつけたのもボク」と告白し「そこはまぁ、よし」とされるようなことですね(ケチャップの方が重い罪、とした場合)。それなら……としゃべってしまう気にもなります。むしろチャンスです。


自首による減刑については賛否分かれることもありましたが実際に「共犯者」の情報も得られる等の事情からも、こうして現在に至るまで「できる」とされてきたのです。


自首には、本人(犯人)の反省や後悔といった面だけでなく、捜査関係者にとっても、犯罪の早期解決や被害の拡大も防げる、といったメリットももたらしているのですね。


ただし、減刑「することもできる」です。


絶対に減刑が約束されているわけではなく、そこはあくまでも可能性の一つ。

それを決めるのは裁判官の裁量(自分の考えで判断し、処理すること)です。よって「自首」は「絶対的減軽事由」ではなく「任意(裁量)的減軽事由」、となっているのです。


自首しようが何をしようがあまりにも酷い罪を犯した場合では「減軽の余地なし」ですね。それはそうです。自首したからと言って、どんな犯罪でも少しだけ罪が軽くなる、というのはおかしい……


ですが、刑法上、自首をしたから「減軽」ではなく、情状酌量の余地はある、と見做された場合には、そこでの刑の減軽はあり得ます。

ちょっと、ややこしいですね。

「情状酌量」とは、刑事裁判で裁判官が被告人のおかれた立場等、同情すべき裁判上有利となる点をくみ取り、その裁量をもって刑を減軽すること。

つまり、自首をしたことが「刑法上、減刑の理由になる」のではなく、「裁判官の判断により刑が減軽される」といった、こちらでのケースの方が、実際には多いのです。


「自首」とは、

  • 犯罪自体を捜査機関がまったく把握していない状態
  • 犯罪事実こそ発覚しているものの、その犯人についてはまったくわかっていない状態
     → にもかかわらず、犯罪者自身が捜査官等に対し、自分から犯罪の事実を申告し、その処分を求めること

  •  ➡ その反省の面と、その後の捜査への影響等含め、刑法上は「刑の減軽の理由」となる。が、減刑については絶対ではなく、可能性の一つに過ぎない(むしろ情状により、裁判官の裁量で刑を減軽されることの方が多い)

このようなことを指すものとなります。

「出頭」とは?


さて、一方の「出頭」。

こちらも、なぜ自分からその罪を申し出に警察等に行くのか、からいってみましょう。


「出頭」とは「犯罪の事実」または「犯人」はすでに捜査機関の知るところとなっている、もしくはある程度絞り込まれている段階で名乗り出ること。


つまり、名乗り出るのはその「容疑者」や「重要参考人」ということになります。

この時点で、すでに逃亡している状態なのですね。


逃亡は疲れます。精神的にも肉体的にもクタクタになります。捕まるのだって時間の問題…… もはやこれまでか……


といったことから、名乗り出るのが「出頭」。

重い罪ほど、捜査の進行も早く、容疑者が特定されるのも早いのです。

「自首しようかどうしようか」と悩んでいるうちに、容疑者として名前が挙がってしまえば、もう「自首」扱いはされなくなります。


罪を犯して一旦は逃げ、その後犯罪が暴かれ、またその容疑者として絞り込まれ、もう逃げきれない、と観念して(または追い詰められて)自ら名乗り出る、といった流れですね。


「自首」とはずいぶん違います。


もしも、その犯罪の事実が発覚しなかったら? と考えてみると、その違いがわかりやすいかと思います。

捕まりたくなくて逃亡している犯人が、誰も知らない犯罪をわざわざ申告して逮捕されに行く、というのは……あり得なさそう、といった判断ですね。

現在進行中の犯罪ではなく、長い期間「指名手配」されている犯人などの場合でも同じ。「出頭」です。


自ら名乗り出てはいますが、このような理由から「出頭」に関しては、刑の減軽の可能性はゼロ。


ただし、自ら逮捕されるために「出頭」した、という情状が考慮されることはあり得ないことではありません。
「逃亡の末の逮捕」などとは、やはり違うからですね。

ですが、実際に科せられる罪の重さは「逮捕」された場合とそれほどの差はないようです。


そしてまた、この「出頭」という言葉は、「自首」のように刑法上使われる法律用語でもないのです。


本来の意味は「本人自ら、ある場所、特に役所などの公の場に出向く」こと。

それが「捜査機関(警察)に出向く」の意味でも使われているのです。

公の場なので、裁判所からの呼び出しに対しても「出頭」です。

ですので裁判所からの「出頭命令」であれば、呼び出しに応じて指定の場所に出向くのは被告人だけでなく、その訴訟関係者すべてに当てはまることとなります。


が、それはさておき「自首」と呼応する意味での「出頭」とは、

  • 犯罪の事実だけでなく、その容疑者もすでに発覚している状態
     → つまりこの段階ですでに「捜査の対象となっている者が自ら捜査機関に出向くこと

  •  ➡ 刑法上の「刑の減軽」の可能性はなし。ただし、裁判官等の裁量により、情状が考慮される場合もなくはない。が、罪の重さに関しては「逮捕」された場合と、さほどの差もなし。

のようになっています。

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「自首」か?「出頭」か? でこんなに変わる!!


♦【トリビアの泉】指名手配犯が自首をしても 罪は軽くならない




かなり重い話になってきてしまいました……

では、ここでもう一度冒頭の少年に登場いただき「自首」か「出頭」かで変わってくるあれこれを比較を交え、まとめていってみましょう。

彼は自分の犯罪に気付きどうしたか


  • 自首: 誰にも知られていないにも関わらず、その行為を反省、後悔し、そのことが発覚する前に、処分を求め自ら交番へ
  • 出頭: いや、まだ誰も気づいていない、このままいける! と思ったものの、次の日には学校や近所でもその噂が飛び交うように。「アイツが取ったらしいよ」などの声もちらほら。少年はしばらく学校を休むなどでしらばっくれていましたが、こんな生活、もう続けるのムリ……となり、自ら交番に

許してもらえた?


  • 自首: 刑法上「刑の減軽事由」となる、とされてはいますが(刑法42条1項)、絶対的なものではありません。減軽があった場合でも、「自首」したことで減刑される法律上のものではなく、犯情等をくみ取ることで減刑とされる、裁判官の裁量による「酌量減軽」が適用されることの方が多いのです。
     → 実際には予想通り、少年の届け出た(本人は1日経っているので「盗んだ」と思っている)ものとは違う硬貨で、100円がお駄賃として渡されました。少年はホッとしたと同時に、ちょっとだけ申し訳ない気分に……

  • 出頭: 刑法上「刑の減軽事由」となることはありません。ただし、自ら逮捕されるために「出頭」したことが考慮されることはあります。
     → 少年については「自首」の時と変らない結果に。ですが、帰り道の彼は、ホッとするより、逃げ続けていた自分のことがちょっと恥ずかしくなり、ほんの少しだけ嫌いになってしまいました ……「もうこんなこと絶対にしない」だそうです。

少年に2つの意味を教えてあげて!


はい!「豆知識」として教えときますね!

  • 自首: その犯罪が起こったことさえ、全く捜査機関に発覚していない場合、または、犯罪の事実は発覚しているものの、その犯人については全く発覚していない状態の時、自らその犯罪者が検察官または司法警察員(捜査員)に対し自発的に申告。その処分を求め、名乗り出ること。法律用語です。ちなみに自首の「首」は「述べる」の意味で使われています。
     → 「内乱・私戦の予備・陰謀」については「自首」することにより、刑は免除です。また、すでに逮捕・取り調べを受けている時に、まだその段階では発覚していない別の犯罪を告白した場合でも、その件に関しては「自首」扱いとなります。

  • 出頭: 犯罪が行われたこと、またはその容疑者・重要参考人などが、すでに特定されている段階で、その「捜査対象者」が自ら名乗り出ること。
    → 本来の意味は「本人自ら、ある場所、特に役所、警察、裁判所などの公の場に出向くこと」であり、法律用語というわけではありません。

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終わりに…


「出頭」したから「罪が軽くなる」ということはなく、刑法上「刑の減軽事由となる」とされている「自首」でさえ、それが約束されているわけではないのですね。情状酌量での減刑の方がケースとしては多いとは、ちょっとびっくりです。


それでも、誰にも知られていない段階で「自首」するか、犯罪を知られ、その容疑者として浮上した後に「出頭」するか。


犯罪を犯さないのが一番なのですが、過失や、もう不慮の事故としか思えないようなことでの加害者となってしまうことが絶対にないとは言い切れないのです。

私だったら「自首」します(いや、まだ何も罪は犯していません)……


……いかがでしたでしょう。


「犯人自ら名乗り出る」といった行為は同じなのに、そのタイミングで、その呼び名と扱いが変わってくる「自首」「出頭」。


うーん。どちらにしてもネガティブな言葉……


ですが、少しでも皆さまの豆知識的スッキリ! のお役に立てていれば、嬉しいです!


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