こんな『違い』があったんだ!

「遵守」と「順守」の違いとは? 意味や使い分けは?

疑問
「そんしゅ」と「じゅんしゅ」?


いいえ、どちらも「じゅんしゅ」。同じ読み、同じ意味の言葉です。

……はっ! いきなり答えを言ってしまいました……!!

疑問

じゃあ、違いなんてないじゃん!

使い分けようがないじゃん!!

っていうより、違う漢字で、2つ、同じ意味の言葉があること自体が、もうおかしいじゃん!!!


ですね。ですが、私に怒らないでください……


さて、こちらの「遵守」と「順守」。
確かに、二通りの表記があるのは紛らわしいだけでなく、その存在の意味からして、何とも不思議……


ですが、物事には大抵意味があります。

きっと「なるほど」と思っていただけるか、少なくとも「ふーん」と納得していただけるような意味があるはず……なのです!


2つの「じゅんしゅ」の意味や、その違い、使い分け等、解説いたします。
皆さまのモヤモヤの解消にも、お役立ていただけましたら幸いです!
目次

「遵守」と「順守」はどこが違う?

初めに書いてしまいましたが、この2つは、全く同じ意味で使われています。

「遵守 / 順守」とは「きまり・法律・道理などに従い、それを守ること」を意味する言葉です。


問題は「なぜ同じ意味のものに二通りの表記があるのか」「どうして統一されていないのか」などなどですね。


この2つは、元々使われていた「遵守」と、その代わりの表記として登場した「順守」、といった関係。

古い文字と、新しい文字? ひらがなの「ゑ」と「え」みたいなもの? あれ? でも「ゑ」って、今は使わないけど「遵守」って、今でも案外いろんなところでまだ使われてない?

そうなのです。現在どちらも混在していることが、問題なのですね。改められた表記なら、もう登場いただかなくても結構なはずなのに、色々な文書などに登場してくる「遵守」表記。なぜ、潔く引退しない?!


それは「引退しなくていいから」、なのです。

……??

ではまず、その「遵守」。現役の謎からいってみましょう!

「遵守」とは?

実は、二つの「じゅんしゅ」、どちらを使っても誤り、とはなりません。

先ほども書きました通り「きまりや法律などに従い、守る」といった意味を持ちます。


さて、元々使われていた表記の「遵守」。「遵」には「筋道を外れない」や「したがう」の意味があり、特に規則などにしたがう、といった場合に使われる文字です。


この「遵」の文字が引退の危機を迎えたのは昭和29(1954)年、3月のこと。

新たに28文字を加え、同数の文字を削除し入れ替える、といった内容の「当用漢字審議報告」が国語審議会によってまとめられます。

「遵」も「将来当用漢字表から削られる文字」の候補に挙げられていました。


それを受けて日本新聞協会などは、翌月の4月1日には、その代わりとして「順」の文字に置き換えることとしたのです。

他にも「濫」「箇」「脹」「又」「唐」など、また当用漢字表に新たに加える文字として「亭」や「汁」「泥」「尚」「洪」などが挙げられていました。


加えられた文字を見てみますと、現在ではすっかりおなじみの文字ばかり。それまで当用漢字とされていなかったことの方が不思議なくらいですが、削る候補の文字には、今でも普通に使っている文字も含まれているのですね。


なぜなら「当用漢字審議報告」とは「将来当用漢字表の補正を決定する際の基本的な資料となるもの」のこと。つまり、決定事項ではなく「今後、当用漢字として使える漢字を増やしたり減らしたりする場合に参考にしてくださいね」的な資料だったからです。

あくまで候補、あくまで一つの案だったのです。文芸界や法曹界、教育界からの反対意見もありました。

そして、国語審議会がその時のために、としていた「将来当用漢字表の補正を決定する際」の「将来」をまだ迎えないまま、昭和56年10月、「当用漢字表」は廃止。「常用漢字表」をその代わりとすることが決定されます。


では、候補だった文字たちは、その昭和56年をどのような気持ちで迎えていたのか?

昭和35年、「加える候補に挙がったものは加えてよし。削る候補のものに関しては、据え置き、削除しなくてよし」といった結果になったのです。安心して迎えられていたのですね。


よって「遵」の文字は「常用漢字表」にも加えられることとなりましたが、「案」を言葉通り「案」として考えるなら、何も変わっていない、ということなのです。


国や公共団体が出すような公式な文書には「常用漢字外」の文字はNG。「常用漢字」に書き換えるように、とされていますが、そういったわけで「遵」の文字は常用漢字表に含まれる文字。ですので法令や公用文、学校教育業界などでは(もちろん「順」も常用漢字ですが)従来通りの「遵守」表記が使われています。

「遵」に「順」の文字を置き換えることにした新聞業界では、同じく削除候補に挙がった文字のうち11文字に関しては「濫用」を「乱用」に、「箇所」を「個所」での表記にするなどのよう変更し、現在でも一貫して使われることはありません。

「当用漢字審議報告」が出されてから、その結果がはっきりするまで、試用期間的に代替の文字を使用していたつもりが、その期間、なんと30年近く。確かに今さら……な感じです。


つまり、どちらかを使っては間違い、ということはないのです。

ただし、元々使われていたのは「遵」の方。つまり「じゅんしゅ」は「遵守」だったのですね。
現役、問題なし、です!

「順守」とは?

さて「当用漢字審議報告」により、若干先走った感もある、「順」を当てた「順守」の文字。
ですが、現在では「遵守」よりよく使われている表記文字となっています。

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