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文章の流れとか雰囲気で使い分ける、じゃダメなの?

疑問


あ……いきなり正解を言い当てられてしまいました……

文章の流れ、つまり何に対して「じゅうぶん」なのか、で使い分けている方も多いかと思います。


どちらの「じゅうぶん」も「満ちたりて不足のない状態」を表す言葉として使われます。すばらしい!


けれど「絶対に『十分』派」「こんな時にはもれなく『充分』派」「いやいや、自分が分けるのはこんな時」の方などなどにも分かれ……さて、ではこの違いはどこから来るのか?

「充分」「十分」の分かれ道が気になります。


どんな時にどちらを使うのが正解なのか、はたまたそれ以前に「正解」はあるのか、等含めまして「充分」「十分」の違い、その意味を解説いたします。

気持ち良く2つの「じゅうぶん」を使い分けていただけますよう、お役に立てれば幸いです!


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「充分」と「十分」は何が違う?


「充」と「十」、単純に見た目で判断すれば、この違いが2つの言葉の意味や使い方を分けているように見えます。

もちろんそれは正解。でも続く「分」部分の意味にも違いがあるのです。

そうなってくると、もう別の言葉です……


ですが、それはかつての本来の意味であり、現在では「充分」と「十分」はほとんど同じ意味で使われています。


その現在の使われ方、その微妙な使い分けの基準となるのはやはり見た目通りの部分です。「充」と「十」ですね。

そして、元々使われていたのは「十分」の方。「充分」の文字が使われるようになったのは明治以降となります。


では、その分かれ目「十」と「充」、それぞれの意味をまずは見てみましょう。

    ◎十
  • 数の名
  • 十番目
  • とたび(十度のこと / ひとたび = 一度)
  • 全部揃っている
    → 最後の意味以外、まさに数字の10です。

  • ◎充
  • 中身がいっぱいに詰まる、みちる、みたす
  • 足りないところに詰め込む、あてる
    → 充実や充足、充電、充填などの言葉が思い浮かびます。

  • また元々使われていた「十分」の方は、1から順に数えていって10になることから、

  • 「一分(いちぶ)」が全体の十分の一(10%)なら「十分(じゅうぶ)」では100%
    → つまり、数で測定、または表現できるような満足、個人的な感情などに左右されない、客観的にも判断できるような種類の満足

のことを表す言葉となります。


後ほど詳しく書きますが、もう一方の「充分」は「充実 / 充足」などの意味から、

  • 「十分」のように数値で表せるような、客観的に見てもそう判断できる「満足」ではなく、本人が感じる感覚的な、主観的な「満足」

に使われることが多いのです。

大まかな違い(というか使い分けの一つの基準)ですが、まずはこちらを押さえておいていただき、続いてそれぞれの「じゅうぶん」について見ていってみましょう!

「十分」とは?


客観的にも「満足」していることが判断できる「十分」。


例えば車にガソリンを入れる場合、タンクいっぱいに入れたのであれば、それは「ガソリンを十分に入れた」となります。


「レギュラー満タンで!」ですね。


ガソリンスタンドのお兄さんにもわかりやすいです。

別に目的地の高尾山までそのガソリンで足りようが余ろうが、そこは関係ないのです。


「ガソリンタンクいっぱいに」入れた、つまり「タンクに100%」入っていることが「十分」なのですね。


このように「十分」は、数で表せる、測れるものに使われることが多く、お皿が出席者全員分に行き渡る、など、誰が見ても「足りている」「不足していない」といった数量が満たされている場合に使われます。


また慣用表現では「10(十)」は「多く」「全部」を例える言葉としても使われています。


十徳ナイフ、というものは、何もぴったり10個の便利なツールがついていなくてもいいのですね。「便利そうなものがたくさんついてますよ、全部これ一つでまかなえちゃいますよ」といったアピールのようなものです。

「一を聞いて十を知る」、これもそうそうできることではありません。でも、いいんです。「ちょっと言うだけで何でもわかってくれるんだね」のような言葉だからです。


一分(いちぶ)でも二分(にぶ)でもなく全部という意味の「十分(じゅうぶ)」、さらに数値化できるものに多く使われる言葉となれば、誰の目からも(つまり客観的に)「満ち足りていて不足のない」状態となりますね。


ですので「十分勉強した」では、自分で決めた20冊なら20冊の参考書全部をやり切った、ということになります。


さて、先ほどチラリと書きました「十分」の「分」の部分。かつては「分割」や「部分」の意味として「十」と組み合わされていました。


そして「十(10)」は「全部」を例えた言葉でもあるため、「十」と「分」を合わせた「十分」は「分割した、もしくは部分の全部」といった言葉となるわけです。いきなり全部があるわけではなく1,2,3……と増えていき、ついには10になる、といった感じですね。


また「10」という数字からも連想される通り「あそこからここまで」といった曖昧なものではなく「15.7cm」のように、数値として測れ、表すことのできるものに使われます。


つまり「十分」とは、数量の不足がなく満たされているもの、また数量的な満足ですので、個人的な感情抜きにしてもその「満たされ度合い」が判る場合に多く使われます。


また、文科省が「好ましい」としているのもこちら。公文書では「十分」が採用されていました。

しかし「充分」表記も一般化されてきたため、最近ではひらがなの「じゅうぶん」が推されているようです。


また、義務教育や新聞社では基本的に「十分」ですが、あまりにも紛らわしくなる文章(そんなのは十五分もあれば十分だよ、など)には「充分」を使うことも、稀ですがあります。


ですが「十分」を「充分」と書くことはあっても、「充分」を「十分」と書いて間違い、ということはありません。

「じゅうぶん」=すべて「十分」でも構わないのです。というより、元はこちら。

「充分」の方はその意味合いから類推して後に当てられた漢字なのです。


では、なぜ統一させないのか?
「充分」は間違いなのか?



続いて、そちらの「なぜ充分?」について見ていくことにしましょう!

「充分」とは? どうして「十分」にしないの?


「十分」でいいのに、ついつい使いたくなる「充分」。



これはこれで、間違ったことではありません。厳密な区別のあるものでもないのです。文脈などから「ここは『充』の方がしっくりくる」といった使い分けは全く問題ありません。


さて、問題はその「『ここは』と思う」部分です。


「充分」の「充」は、先ほども書きましたように「満ちる」や「足りる」といった意味を持つ言葉です。
「十分」と同じく「満足」な状態の中でも、心理的に「満ち足りている状態」を示すものとして「充足」や「充実」など既存の言葉からの類推で、音も同じ、意味的にも変わりのない「充」の文字を当て「充分」としたのが始まり。また「十分」は「じゅっぷん(じっぷん)」とも読めるため、時間を表す「10分間」との混同も避けるため活躍し始めた言葉でもあります。


よって「数値で表すことはできなくても、個人の感覚的に満足している状態」には「充分」の方がいいかも、また、紛らわしい場合には敢えて違う表記で、と、使い分ける方が多いわけです。


例えば前述のガソリンスタンドで言うなら、ガソリンタンクを満タンに満たすのではなく「目的の場所まで行くのにはこれ以上は必要ではない」くらいの量、となります。

このまま伝えるのはあまりにもスタンドのお兄さん泣かせ……

ですが、目的地まで行くことはできます。


タンク100%の量である必要はなく、目的を遂行するに足りる量でいいのですね。


どちらも「満ちている」の度合いは同じ。


ですが「十分」がガソリンタンクに入る量を満たしているのに対し「充分」では、自分の目的を満たす量となるのです。つまり「数量的なものを満たした満足度」ではなく「主観的に満足」している状態に使われるのが「充分」となります。

数は関係ないのですね。


四人でお寿司を食べるのに2つしかお醤油の受け皿がなくても、二人で1つの受け皿を使うのがいつものことである家族にとっては、それで満足に行き渡ったことになります。


こういった場合にニュアンス重視で多く使われるのが「充分」です。


試験前でも参考書の数を決めるのではなく「理解した!」と思って勉強を終わりにするのであれば、それは「充分にやり切った」となるのです。


さてさて「充分」の「分」です。

「十分」では「分割」「部分」などの意味を持っていましたが「充分」では「分(ぶ)をわきまえる」などと使われる「分」でした。


つまり「あなたはあなたとしての仕事を「じゅうぶん」に、ちゃんとしなさいよ」といった意味で本来は使われていた言葉だったのですね。


「するべきこと(分)を充足させる」、というのは「何もかも100%しなさい」というわけではありません。

「あなたのやるべきことは充実度100%にしなさい」ということ。


よって「充実」とは、数値で測れるものではなく「個人的な感覚重視で主観的な満足」を表現するための言葉となります。


「ありがとう」や「自分的には満足」などのニュアンスを持つ「じゅうぶん」には「充分」を使う、という方が多いのにはこのような理由があるのですね。

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「十分」?「充分」? 使い分けのポイントはココ♪


2つの「じゅうぶん」、何となくでも「こんな時はこっちが合うかも」という違いが掴めてきましたでしょうか?

ではここで、色々な具体例なども上げつつ「充分」と「十分」の違い、使い分けのポイント等、もう一度おさらいです!!

主に使われるのはどんな時?


  • 十分: 数として測れる、または表すことのできるような「満足」。100%に達した状態のもの。
    →「数値」的なので誰もがそう判断できる種類の「不足のない」状態の「満足」。客観的で数量的な満足に多く使われます。

  • 充分: 数値では測ることのできない「満足」。100%ではなく、必要な分の目一杯、といった感じ。
    → 見た目などで判断できる「満足」ではなく、心やお腹具合など、その本人にしかわからないような感覚的なものが満足している状態。充実感や充足感を伴う、主観的な満足に使われることが多いです。

本来の意味は?


  • 十分:「分割されたもの、または部分的なもの =(分)」が「10割分(つまり全部)ある(十)」こと
    「十割(じゅうわり)」の意味

  • 充分:「自分のすべきこと (分)」を「しっかりと満たす / 果たす(充)」こと
    「職責を果たす」の意味

元々使われていたのは?


  • 「十分」の方です
    →「10分」などとの混同を避けるため、明治以降に使われるようになったのが「充分」。「充実」「充足」など「十分」と似た意味も持つ「充」の文字が当てられました。

    ★そのため、基本的に「じゅうぶん」は「十分」で表されます。ですが「充分」もかなり一般的になり、場面ごとの雰囲気や文脈の流れ等で使い分けても構いません。むしろ情緒ある文章になることも。公文書や義務教育、新聞社などでは現在でもほとんどが「十分」。もしくはひらがな表記となります。

「たくさん食べたね~!」は?


  • 十分: 目の前の空き皿は30枚。一人で30枚……連れてきたのが回転寿司でよかったです……
    → 彼は「十分」お寿司を堪能したようです。まだ食べたい様子だったら「もう十分食べたでしょ!」と言ってあげてください。これ以上食べるのは体にも悪そうです。

  • 充分: え! もういいの? 遠慮してない?
    → 彼女は小食なのです。8枚だって彼女にとっては限界値なのです。「もう充分食べたから、早く帰って寝っ転がりたい!」ときっと思っているはずです!

  • ➡「30枚」は目で見ても判るたくさんすぎる量なので「十分」。一方「8枚」は少ないように感じますが、本人にとっては目一杯なので「充分」です。

お誕生日会の参加者25人。ええ!! クラス全員来てくれたの!?


  • 十分: 人気者ですねぇ。全員参加です!
    → 参加率100%!!「十分」に集まってくれました。楽しんでくださいね!

  • 充分: あ、好きな男子ってあの子のことですか。ヒューヒュー!
    → たくさん集まってくれたのももちろん嬉しいのですが、さっきから主役の女の子は一人の男の子ばかり見ています……あの男の子さえ参加してくれたなら、きっと二、三人しか他に来てくれなかったとしても、彼女は「充分」幸せだったかもですね!

  • ➡ みんな来てくれたんだ! という数量的な満足には「十分」、その中に好きな男子が混じっていた、という心理的な満足には「充分」ですね。

た、宝くじ、当たった!!! そうだ、京都行こう……


  • 十分: いいですねぇ! それだけあれば京都でゆっくりできますね!
    → 京都で多少派手に遊んでも「十分」な当選金です! うらやましい!

  • 充分: どうして奥様はご立腹なのですか?
    → 京都旅行、20回目、それ以外の旅行は行ったことがない? ……それは、奥様も怒ります。「京都旅行はもう充分! たまには海外に連れてって!!」ですね。

  • ➡ 京都旅行に不足のない宝くじの当選金には「十分」、そういう問題ではなくて、奥様の気持ち的には「充分」です。行き過ぎです。というより、他、行かな過ぎです!

★つまり同じ「満足」でも、より個人的、感覚的な「満足感」、充実や充足を伴った「満足」の状態には「充分」がピタリとくるのですね。


2リットルのペットボトルに飲み物が満タンに入っている状態は「十分に満たされ」ていると言えますが、1回に飲む分、と考えるとそれでは多すぎ。ちょうどいいくらいの分量で「充分」なのです。そしてその分量は、その人により違ってきます。


「十分」は共有できますが「充分」は押し付けることのできない感情を伴っています。


……とはいうものの、本来の文字は「十分」。

「充分」は、紛らわしい「10分」などとの混同を避け、また、自分の気持ちなどをより伝えやすくするために後から作られた言葉、とも言えます。

どうしてもどちらかを正解にしなくてはいけないのであれば、それは「十分」の方となります。


ですが、時代と共に一般化してきた「充分」も、今やほぼ同じ位置まで上り詰めてきた、といった感じなのですね。

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終わりに……


最後になりますが、かの有名な「日本国憲法」。ここでは「充分」の表記が使われています。キングオブ公文書……


「十分」「充分」は、文脈や伝えたいことに合わせて使い分けていい、というのが正解のような気がします。


「絶対の正解」がないものには、使う側が「これが俺のルール」のような一貫性を持つことが許されているのです(きっと)!!


数値的なものか、感情も伴ったものか、のポイントはしっかり押さえ、皆さまの「満ち足りて不足のないさま」を納得のいく方でお伝えください。

漢字ぐらい違っていても、伝えたい気持ちはしっかり伝わるものです。

日本語は本当に複雑ですね(憲法までが一役買っています……)。

でも、日本語って面白いです!!


いかがでしたでしょう。

「十分」「充分」、とりあえずどっかで使ってみたいかも、などと思っていただけたら嬉しいです!


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