で「嘱託社員」っていうのは、つまり、アレだ。
正社員でも派遣でも契約社員でもない「社員」……のことだ。
さては……全然知りませんね?
- 頼み、任せること
- 正式な雇用や任命ではなく、ある業務に携わることをお願いすること。または、頼まれた人
の意味を持つ「嘱託」の社員。
確かに「正社員」でも派遣でも契約社員でもないのですが、
「企業によっては、その呼び名が『嘱託社員』ですらないことも」
非常に立ち位置も曖昧なのです。
「嘱託社員」とはどのような「社員」なのか?
その身分やボーナス、給料、そして有給休暇等、待遇面等含めまして、「正社員(ついでに契約社員も)」との違いについて解説いたします。
転職をお考えの方、定年退職後のあれこれについてご検討中の方、単に知的な好奇心を満たしたい方、どの皆さまにも、
「ちょっとスッキリしたかも」
と少しでも思っていただけましたら幸いです。
目次
「正社員」と「嘱託社員」の一番の違いはココ!
前述の「嘱託」の辞書的な意味「正式な雇用や任命ではなく」。これです。
ここが一番の違いポイント。
「正式な雇用や任命でなく」というのが少しわかりにくいのですが、簡単に言いますと、
「正式には社員・職員として雇わない」
のような感じ。
そして「正式な社員・職員」であるための条件というのが、
- 無期雇用
- フルタイム勤務
- 直接雇用
これが「正社員」。
「正規」の社員です。
一方「正式な雇用や任命」をされていない「嘱託社員」の方々の場合では、
- 有期雇用
- 労働時間はフルタイムの場合もあるが、そうでない場合もある
- 直接雇用(ここは一緒)
入社したらよほどのことがない限り解雇の心配のない(最近ではそうとも言い切れませんが)正社員の方とは違い、あらかじめ働ける期間や、勤務時間が決められています。
上記のクリアすべき3つの条件(のうち2つ)を満たしていないため、「正規の社員」ではなく「非正規の社員」となるのです。
「正規社員」か「非正規社員」か。
ここが「正社員」「嘱託社員」を分ける上で、最も大きな違いになります。
(※「~の方」や「方々」、を以下省略させていただきますが、単にムダな字数を減らすためですので、ご了承ください)
「嘱託社員」とは?
ズバッと言ってしまいますと、「嘱託社員とは契約社員の一種である」
です。
さらに言えば、
「嘱託社員と呼ぶか契約社員と呼ぶかは、その企業の自由」
ついでにもう一つ言わせていただければ、
「契約社員という法的な区分もなし」
順番を逆にしてまとめてみるとわかりやすいかと思うのですが、つまりは、
「『契約社員』とはこういうもの、という法律上の決まりや定義がないため」
「企業によって呼称は様々だが」
「要するに企業と有期の雇用契約を結んでいるという点で『嘱託社員』も『契約社員』の一種であるといえる」
です。
何となく、身も蓋もなくなってきました……
ですが、実際には、
「勤めていた企業で定年を迎え、その後再雇用の形で上記契約を結んだ、元正社員」
定年退職後に再雇用された方たちを指して使われることがほとんど。
今まで働いていた企業とは別の会社等の求人募集で採用される方も、定年退職に関係なく、初めから嘱託社員として入社される方もいますが、一般的に「嘱託社員」といえば、こちらのケースです。
また、少し特殊な例では「医師」や「弁護士」などでも「嘱託」はあります。
企業等に雇用され常勤している産業医ではなく、一か月に1回出勤などの非常勤の嘱託医、または「学校医」などですね。
弁護士事務所で働くのではなく、企業に「嘱託弁護士」として非常勤の形で勤務する方などもいます。
「嘱託医」も「嘱託弁護士」も「嘱託」なのですが、これは「定年退職後の再雇用」などとはかなり話が変わってきます。
企業側と結ぶのも「労働契約」ではなく「請負契約」。
労働法も適用外。
依頼された仕事の完成に対し報酬が支払われる契約ですので「嘱託社員」といえど、企業の指揮監督下に置かれているわけでないからです。
話がややこしくなってしまいますので、これらに関しては、一旦おいておきましょう。
「正社員」と呼応する形の「嘱託社員」に話を戻します。
さて、定年退職後、再就職する形で雇用された「嘱託社員」ですが、一旦会社を退職しています。
その時点で、これまでの役職からも離れることになるのですね。
正規の社員でもなくなるため、あくまで一般的には、ですが、正社員時代よりは収入は低くなることがほとんど。
しかも「フルタイム勤務でない場合もある」です。
常勤ではなくなるため、仕事の内容的にも今まで通りというのは難しい。
給与体系もこれまでの月給制(固定給)ではなく時給制になることが多いようです。
月給制であった場合でも、多くて正社員の「7割」、一般的には5割程度と言われています。
その分、正社員時代のような責任はフルにかぶらなくてもいい。かなり軽くなります。
そして、勤務日数を基準に算出される有給休暇の日数も、どうしても減ってしまうことになります(フルタイム出勤ではない場合)。
同様に社会保険も勤務日数の関係で、入ることができないことも。
賞与(ボーナス)の有無は企業ごとに変わってきますが、支給される場合でも大体正社員の6~7割程度にダウンです。
これらには、
「一度退職し、役職を離れる」
「勤務時間自体が短くなることが多い」
などの理由の他、
「公的年金等への配慮」
がなされている場合も。
稀なケースかもしれませんが、嘱託社員としての収入が多すぎたため年金がストップされた、などということも実際に起こっているそうです。
また、退職金ですが、これは「定年退職時」にすでに支給されている場合には出ないことが多いです。
ですが退職金をすでに貰い、金銭的にもある程度の余裕がある上で、さらにまた働けるということは、気持ち的にも、かなり楽(なはず)。
このように、企業により労働条件や待遇等に違いはあるのですが、
- 各企業の就業規則
- 個別の嘱託契約として交わされる労働契約書
これらの内容により、一人ひとり別個に契約内容が決められていきます。
雇用の期間や労働時間、給与・賞与、福利厚生についてなどなどについてですね。
賞与や退職金等、正社員と扱いの違うものに対しては、その旨が記載されています。
記載のない場合は同じ扱いに。
ですので、ここは要チェックです。
また、先ほどの「嘱託医」「嘱託弁護士」に関しましてはこの限りではなく、むしろ収入は正社員よりも多い、ということも十分にあり得ます。
ですが、そもそも契約の形態が違うので、就職先の企業の正社員との比較ではなく「弁護士事務所(や病院など)にお勤めの同期の方」などと比べるのが順当なのかもしれません。
この場合ですと、やはりフルタイム勤務でないことがネックになってきそうですね。
「定年退職後の再雇用での嘱託社員」とは違い、専門職であるため、給与面・待遇面ともに好条件となることも多いのですが、企業の業績などに諸々左右されてしまうことは事実。
また、非正規社員であることも同じ。
契約の更新は定期的にやってきます。
雇用形態が不安定であることは変わらないのです。
「正規社員か非正規社員か」が「正社員」「嘱託社員」の最も大きな違いではありますが、そのことにより、異なる部分はたくさん出てきます。
「契約社員」の一種でもある「嘱託社員」。
ですが「契約社員」にすら法的な定義がないため、「嘱託社員」の募集であっても、
- 「準社員的位置づけ」の嘱託社員
- 「契約社員」としての嘱託社員
- 嘱託社員として募集される「専門職(医師や弁護士)」
「定年退職後の~」ではないケースもあるのですね。
逆に言えば「契約社員」として「定年退職後の再雇用 = 一般的に嘱託社員とされているもの」の募集が行われていることも(定年後、継続して同じ企業に再雇用されるのではない場合)あることになります。
契約時の就業規則のチェックも大事ですが、ここで躓いてしまっては、そこにたどり着くことすらできなくなってしまいます。
募集要項等のチェックもキッチリ。
ここ、本当に大事です。
「契約社員」との違いは?
さて、再三書いてきました通り「嘱託社員は契約社員の一種」。広い意味では「契約社員」の括りに入るのですが、やはり「定年退職後の~」のケースが多い「嘱託社員」と、そうでない場合に使われることの多い「契約社員」ではなにかと違いが出てきます。
もともと「契約社員」とは、
「専門的な知識や技術を持っている人を期間を定め、特定の条件の下雇い入れる」
といった場合に使われていた言葉。
ですが、現在ではその名残もほとんどなく、単に、
「労働時間、休日、賃金、仕事の内容などの決められた労働条件のもと、定められた契約期間 働く雇用形態」
を指すようになっています。
この部分だけ見ますとどちらも同じように思えますが、嘱託社員は、
「フルタイム勤務ではない場合もある」
です。
一方の契約社員では正社員と同じくフルタイムでの勤務が基本。
つまり、ともに非正規社員である「嘱託社員」「契約社員」ですが、
-
★契約社員
- 正社員との一番の違いは「契約期間に定めがあるか否か」 ★嘱託社員
- 正社員と違い「契約期間に定めがある」
- 勤務時間 / 勤務日数に関しても「短時間勤務の場合もあれば、週に数日の出勤の場合もある」
嘱託社員の方が、より非常勤、臨時で働いてもらっている感が強いのです。
「契約社員」も、個別で契約を結びますが、業務内容自体は正社員とほとんど変わりません。
こうした違いから、同じ会社に「嘱託社員」と「契約社員」がいる場合には、定年退職後の再雇用で働く方を「嘱託社員」、正社員同様の業務、フルタイムでの勤務を行うものの、契約期間に定めのある方を「契約社員」と呼び分けているのが一般的。
が、なんという呼称で呼ぶかは、各企業の自由。
ですので「契約社員」の募集であっても「週3日勤務」「1日〇時間勤務」などフルタイムでない場合は、勤務条件等、実際には「嘱託社員」としてのものとなります。
ご自分の条件に合ったものか、求人情報等に記載されている要項も、しっかりチェックです。
5年以上の勤務で「無期雇用」になるルールは「嘱託社員」にも適用される?
2013年に改正された労働契約法により、「契約社員でも契約の更新を重ね、5年以上継続して働いた場合、本人が希望すれば有期雇用ではなく、無期限の労働契約に切り替えることができる」
というルールが、新たに誕生しました。
契約社員から正社員になれるわけではないのですが、これまでのいわば期間限定での働き方から、もう「いつ雇止めに合うかわからない……」という不安のない無期雇用と、なるのですね。
これは、うれしい。
さて、嘱託社員も契約社員の一種。
「定年退職後の再雇用」で働く皆さまが多くを占めている嘱託社員ですが、そうでないケースの方たちの場合は、通常の契約社員同様、当然このルールが適用されることになります。
問題は「定年退職後の再雇用」での皆さま。
「労働局長の認定を受けると無期化のルールが適用されない」
となっているのです。
企業側が認定手続きを取るわけですが……なんとも世知辛いような気もします。
ですが企業によっては「定年退職後」ということを考慮し、年齢・体力などに合わせた就業規則を作ってくれているところもあるとか。
── なんか、そういう企業って、いいかも……
ですです。本当に。
仕事を続けるのも大事ですが、皆さまには、とにかくできるだけお元気でいてほしいと思います。
「正社員」と「嘱託社員」の違いをまとめる!
一番の違いはここ、- 無期雇用
- フルタイム勤務
であるか、ないか、です。
つまり「正規社員」か「非正規社員」かの違いですね。
嘱託社員は契約社員同様、働くことのできる期間があらかじめ定められています。
また、契約期間こそ有期であるものの、基本的にはフルタイム勤務の契約社員とも異なり、その勤務時間も人により違ってきます。
もちろんフルタイムで働く方もいますが、短時間勤務や週に数日の出勤、という方も。
これらを含め、再雇用の契約時に、仕事内容や休日、給与・賞与について、退職金の有無、福利厚生について等が一人ひとり個別に決められていきます。
「定年退職後の再雇用」で働くケースが多いですが、定年に関係なく、初めから嘱託職員として入社される方もいます。
こちらのケースに関しましても、基本的には同じですが「嘱託社員」というのはあくまでその会社での呼称となるため(法的な定義がない)、企業により、仕事内容・待遇等は様々。
ですので、ご自分の求める条件に合った内容かどうかのチェックはしっかりと行ってください。
(※ 労働契約ではないのですが「医師」「弁護士」が企業と業務委託を取る形で嘱託社員となる場合もあります)
── ではでは、最後にもう一度おさらいです。
「正社員」「嘱託社員」では、何が違ってくるかについて、最後にもう一度まとめていってみましょう。
給与の違いは?
定年退職後の再雇用で嘱託社員になる場合には、一般的には正社員として働いていた時に比べ、収入は減ることが多くなります。多くても7割、通常5割程度にまで下がることが多いようです。
→
- 勤務時間が短くなる
- 勤務日数が減る
- 給与体系が月給制から時給制になることが多い
- 正社員時代に就いていた役職から、定年退職時に外れることになる
- 常勤でないことがほとんどのため、仕事への権限等も正社員の時ほどではなくなる
- 公的年金等への配慮 などのため
賞与(ボーナス)の有無の違いは?
支給されない場合の方が多いようですが、企業により様々。(※ 再雇用の契約時に「嘱託社員の就業規則」として特別な記載がない場合には正社員と同じ扱いとなります。
が、正社員に対しても賞与なしの企業もありますので、その場合には出ません……)
支給があっても、正社員の6割から7割程度に留まることがほとんどです。
→
再雇用の契約時に「嘱託社員の就業規則」として特別な記載がない場合には正社員と同じ扱いとなるため支給されます。
支給されない場合には、年収事態もダウン。
正社員時代の半分以下になってしまうこともあり。
有給休暇はもらえる?
「労働時間が週30時間以上」で「6か月以上継続勤務している」の場合、さらに、「その企業で働くべき日数の8割以上出勤した時には、10日間の有給休暇を与えなければならない」
このような決まりがあります。
この条件をクリアしていればもらえます。
→
ただしフルタイムで勤務していない場合には、上記の都合上有給休暇の日数は減ることになってしまいます。
ですが、定年退職後、同じ企業に間を置かずに再雇用となった場合には、正社員時にこなしきれなかった未消化分の有給休暇も使えることがほとんど。
また、一旦退職してから嘱託社員となるわけですが、ここは「引き続き勤務」とされるため、その後6か月以上継続勤務しなければ有給休暇がもらえない、ということはありません。
社会保険の加入は?
こちらも同様。そもそも社会保険は強制加入なのですが、
「正社員のおおよそ4分の3以上」
の勤務時間であることが条件となっています。
これ以下の場合には社会保険に加入することができない場合もあります。
退職金は支給される?
大抵は「定年退職時」に支払われ、嘱託社員として契約が終了する際には出ないことが多いようです。→
こちらも「賞与」と同様、契約時の就業規則に特別な記載がなければ支給あり。
試用期間や転勤の有無は?
上記の事柄からも、通常ないはずなのですが、場合によってはあることも。ただし、かなりまれなケースかと思います。
「定年退職後の再雇用」以外でも「嘱託社員」と呼ばれるケースはある?
- 嘱託社員の肩書で呼ばれる「実は準社員」としての扱いの社員
- 同じく「実は契約社員」としての扱いの社員
- 嘱託社員という名の「実は医師や弁護士」で、労働契約でなく請負契約で働く専門職
「嘱託社員」の身分って何?
「企業と有期の労働契約を結んで働く非正規社員」契約社員の一種ですが、いわゆる契約社員よりも「臨時・非常勤」感が大きくなる「定年退職後の再雇用」の方々のことを「嘱託社員」と読んでいるのが一般的なケースです。
ただし、その「契約社員」についても法的な定義がないため、労働条件や待遇、福利厚生などについては各企業ごとの就業規則、個別に結ぶ労働契約書により、決められることになります。
どうして企業は定年退職後の元正社員を「嘱託社員」として再雇用するの?
完全な年功序列というわけではありませんが、やはり年齢的にもそれなりに責任のある役職に就いていた方が定年を迎え、一度退職することで、今度は非正規社員として新たに迎え入れることになります。これまでの賃金体系もフラットにすることができるのですね。
再就職の扱いで、自由に雇用関係を結び直すことができます。
加えて嘱託社員となるのは、まったくの新人ではなく、経験を相当に積んできている人材です。
同じ企業等に再雇用される場合にはなおさら。
そうでなくても、やはりこれまでの実績がある程度以上にある方々。
年齢的なこともあり、今まで同様にというわけにはいかないかもしれませんが、臨時に経験のない方を雇い入れるよりは、はるかに即戦力として力強い存在なのです。
嘱託社員となる方々も、定年の年齢には達した後も、今までの経験をまだまだ企業で活かしてもらえる。
待遇面や金銭面では正社員には劣るかもしれませんが、まだまだ働けるぞ!という思いが、若々しく元気い続けるための原動力になっていたりするのかも……と、勝手にですが思っております。
終わりに……
── 74歳まで働き続けた祖母を軽く思い出してしまいました……一般的にはご高齢の方の多い「嘱託社員」。
法的な決まりごとはないにせよ、できるだけ負担とならないよう、転勤や試用期間など、ナシってことに統一できないものか? などとも思ってしまいます。
再就職を検討している方でないと、なかなか真剣に「どんな社員なんだ?」と考えることもない(かもしれない)「嘱託社員」ですが、実はこのような様々な制約付きの社員であることが多いのですね。
現在「嘱託社員」として働いている方も、募集要項にある「嘱託」について「?」な方も、「そういうのとは関係ないけど知りたかっただけ」の方にも、ちょっとでも「モヤモヤが薄れた……ような気がする」と思っていただけていましたらうれしいです。
長文に最後までおつき合いいただき、本当にありがとうございました!
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