「会長代理の私が承ります」
「次期会長が決まるまで、私が会長代行を務めさせていただきます」
……という違いなのですが「会長代理」「会長代行」、どこがどう違うのか、イマイチわからず……
「会長」の「代理・代行」はさておき、皆さまの会社や取引先にも「課長代理」や「課長代行」などの肩書を持つ方もおられるかともいます。
「課長」ではなく「代理」。
同じく「課長」ではない「代行」。
どっちが偉いの?
似たような言葉なだけに、余計に気になります。
が、実はこれには決まりはないのです。
会社により、その呼称に対する定義がそれぞれに決められているため、共通した「こちらの方が格上」や「代理(もしくは代行)の肩書を持つ人の仕事はこんなこと」というものさえ異なってくるのですね。
ですので「A社」では「代理」の方が権限があり「B社」でより権限を持っているのは「代行」という場合もあり。
どちらもいる場合も、どちらかしかいないことも、どちらもいない会社もあり、なのです。
ただし「代理」「代行」それぞれの役割の違いは一応、はっきりとしています。
また、どのような状況で「代理」「代行」の役職を与えられたのか、でも、その立場などは変わってきます。
皆さまの会社、または取引先などでの使われ方とは若干異なることもあるかと思いますが、
一般的な「代理」「代行」についての違い、さらにはどのような状況でその肩書を持つことになったのか、による権限の違い(偉いのはどっち?)等について解説いたします。
ご自身の会社での呼称のルールに関しましては規定などで一度確認いただくのが確実。
ですが「代理」「代行」とは、どのような役割として存在しているのか、などに関しまして、少しでもその位置づけに納得していただければ幸いです。
目次
「代理」と「代行」の違いはココ!
「代理」「代行」、まずはその辞書的な意味から見ていきましょう。- 代理: 本人に代わって事を処理すること。またはその人。
- 代行: 本人に代わって物事を行うこと。またはその人。
活字の無駄遣いかと思うほど、同じような内容……
ですが、法律上では、これらは明確に分けられているのです。
- 代理(人): 与えられた「代理権」の範囲の中で意思決定は『自らのものに基づいて』代理行為を行い、その効果を本人に帰属させること(本人がその効果に従うこと)。
- 代行(者): 自ら意思決定することはできず『本人(代行者ではなく)の決定した意思を伝達・表示』するのみ
だいぶ違います。
さて「役職名」としての「代理」「代行」でも、この違いは通用するのか?
こちらの「法律上の違い」を頭の片隅にでも置いておいていただき、続いて「役職」での「代理」「代行」の一般的な違いにいってみましょう。
「代理」とは?
法律上ではある程度の決定権をもつ「代理」。裁判などでも当事者の間に立ち、本人の意思を伝えるのが「代理人」の役目。
また、「あいつ、お前のこと好きなんだって。お前はどうなの? 代わりに聞きに来たんだけど」なども「代理」。
おそらく頼んだ本人も「聞いてきてほしい」といった条件は出したでしょうが、そのセリフまでは指示していないはず。
何と言って切り出すかなどを決めるのは「頼まれた友だち(代理人)」の権限ですね。
そして、結果つき合うことになっても、つき合うのは頼んだ本人と彼女。それは、そうです。
つまり「代理人」の行為の結果は頼んだ本人のもの。
これは法律上でも同じです。
有罪判決が出ても「代理人」がそれを受けるわけではありません。
なるほど。
上記の「代理人」の通りですね。
さて、ここで「課長代理」です(「部長代理」などでも一緒)。
一般的には文字通り「課長の代理」をする役職を指します。
つまり、課長はそのとき不在なわけです。
ですがその「不在」の理由は出張や外出など、本来はいる課長がその時にはいない、といった場合になります。
課長がいない時期の代役のようなもの。
ですので、課長の持つ権限もその間は代わりに執行することになります。
あくまで「課長」がいて、不在時に代わりを務める役職。
課長のピンチヒッター的な役割ですね。
これが一般的な「課長代理」。
ですが、この限りではない「課長代理」も多く存在しているのです。
会社での等級とは、その人の能力に合わせ与えられるもの。
「職能資格制度」または「職務等級制度」「役割等級制度」などと呼ばれるものがあるのですね。
これにより、それぞれのポジションが上がったり下がったりするわけです。
さて、めでたくポジションが上がっていき、ついに次はあこがれの「課長」!
の場合、うまい具合に「課長」のポストが空いていればめでたく課長就任。
ですが、これはそれほどスムーズにいかないのが現実なのです。
「課長」が、まだそこにいるのですね。
これは、困った……課長渋滞……
ということで設けられる「課長代理」が、もう一つの立ち位置です。
こちらの場合は先ほどの「課長代理」とは立場も違いますね。
「課長」の出張や外出で不在などは関係なく、昇進した先のポジションがが空いていなかったバージョンです。
ですので、来たるべき日が来るまで、その「課長代理」という肩書で課長経験を積むのです。
「課長」が普通に存在しているので、代わりに執行する権限もなし。
要するに「肩書」はあるものの、立場的には「課長の見習い期間」のようなものですね。
前者の「課長代理」に比べそれほどの権限も与えられていません。
さらにもう一つ。こちらのパターンも結構多い。
「課長」自体はいるのですが、その部署に常駐していない場合です。
課長相当の権限を持つ人がここにも必要、ということで設けられる役職としての「課長代理」です。
「課長の見習い期間的『課長代理』」に比べれば格段に権限はアップ。
ですが「課長が不在時にその代りとなる『課長代理』」の方が上。
こちらの「課長代理」には「代決権」といって代理で決裁をする権利があります。
「課長代理」の連呼となってしまってちょっと混乱するので、まとめてみましょう。
- パターン①: 課長の不在時に「代決権」のある、立場上では課長と同等の役職である「課長代理」
- パターン②: 昇進はしたものの「課長」のポストが空いていなかったため「課長」の経験をその間積んでいる、見習い期間的「課長代理」
- パターン③:「課長」はいるがその部署に常駐はしていないため、課長相当の権限を与えられた人の必要性から設けられた役職である「課長代理」
「代行」とは?
法律上ではメッセンジャー的「代行」。電車が何かの理由で止まってしまった、などの時には「代行バス」が代わりに目的地まで運んでくれます。
電車の代わりのバス。
また「運転代行」なども有名。
お酒を飲んで運転ができなくなった人の代わりに「代行業者」がその車を運転して、家まで送り届けるシステムです。
車の持ち主の代わりに運転、の運転代行。
何となく、これは「代理」と言い換えても問題ないような気もします。
「代理バス」「運転代理」……ちょっとしっくりこないのは聞き慣れないからかも。
ですが確かに、本来の役割をそのまま引き継いだ感じはしますね。
自分勝手に行き先を変えたり、車の持ち主が帰ろうと思っていた場所以外を目的地にしたりはしていません。
では役職の「代行」も、同じように代行すべき「本人」の意思にそっくり従う職務なのか?
法律上の定義とは、これがだいぶ違うのです。
役職の「代行」は、期間限定ではあるものの「全権限」を持ちます。
「本人」の意思そっくりに、というより、その「役職」をそのまま、といった感じですね。
冒頭の「会長代理」。
会長が退任した場合など、次期会長が決まるまで「会長不在」。これは困ります。
ですので、正式な会長が決まるまでは、誰かがその代わりを務めなければなりません。
そして、その人が会長と同じ権限を持っていなければ、代わりとはならないわけです。
会長が退任、というのは結構な一大事ですが「課長・部長」などのポストが、何かの理由で空席、というのは案外ありうることです。
「代理」は本人(代理を頼む本人)ありきのパターンがほとんどですが、「代行」ではいないのですね。
次に課長なり部長なりになる人がそのポストに就けば、単に「課長」「部長」でいいのですが、「代行」はあくまで、そのポストが正式に埋まるまでの代役。
ですが、権限的にはその役職の全権を持つ、といった位置づけです。
この場合には「代理」よりも格上、ということになります。
「課長代理」の上には「課長」という上司が存在しますが「課長代行」の上司に「課長」はいないのです。
役職名には「代行」がつきますが、権限は「課長」のものと同じ。
「課長代理」は「パターン①」の場合でもあくまで「課長」の代理なので、そのミスは「課長」の責任となりますが、「課長代行」ではその責任も一身に背負うことになります。
「課長」、いないのです。
といったわけで
「代行 > 代理」。
ただし、こちらにもいくつかパターンあり、です。
先ほどの会社でのポジションを決めるための「職能資格制度」(または「職務等級制度」「役割等級制度」)。
昇進はしても、こちらの「等級」ではまだ「課長(など)」レベルに満たない場合もあるのですね。
だから「課長」にはなれない。
でも昇進はした……
そこで「課長代行」のポストが与えられるわけです。
この場合、「課長」は「代行」とは別にいることになります。
ですので、課長不在の「課長代行」とはかなり立場は変わってきます。
ほとんど「肩書」のみ、権限も大幅ダウンです。
なぜなら本来の「課長」がその権限を執行するから。
こちらの「代行」は、一般的なものではそれほど多くのバージョンがありませんが、一応まとめてみましょう(「代行」する役職も「課長」という設定で)。
- パターン①: 前課長が退職する等、そのポストに空きができてしまった場合、後任の「課長」が決まるまでの間「課長としての全権限」を持つ「課長代行」
- パターン②:「職能資格制度」などでは「課長」としての等級に満たないものの昇進は果たしたため与えられたポストである「課長代行」
パターン①では課長は不在(出張などではなく存在自体が不在)、②では課長は「課長代行」と同時に存在です。
そして、これ以外のルールで「○○代行」の役職を設けている場合もあり。
一般的に多いとされているもののみの紹介となってしまいますが、「代行」とは、このような立ち位置となっています。
「代理」と「代行」を比較!!
「代理」「代行」、それぞれにいろいろなパターンがあるのですね。法律上の定義とはまた違った会社ごとの呼称ルール。
ですが、一度「こういうわけだから代理(または代行)と呼ばれる」という理由を知ってしまえば、案外その違いも分かりやすくなりそうです。
ではここでもう一度、その理由、この場合はどちらが格上? 等含め、それぞれの位置づけをおさらいです。
違いをまとめていってみましょう。
一般用語としての「代理」「代行」ってどういう意味?
- 代理: 本人に代わって事を処理すること。また、その人。
- 代行: 本人に支障がある時などに代わりに物事を行うこと。また、その人。
役職としての「代理」「代行」はどうして必要?
- 代理: 出張や外出などで不在の本人に代わってその職務を執行するため
- 代行: 本来その役職に就いているべき人が退職等で不在の場合、正式に次の人が決まるまでの期間、代役としてその職務を果たすため ➡ このほかにも「次に就けるはずのポジションが空いていなかった場合」や「昇進はしたが、まだそのポストに就くには早い」などで「代理」「代行」の肩書を与えられることもあります。
持っている「権限」は?
- 代理: 不在時には本人と同じ権限を持つ。また本人の補佐的に定められた範囲内で職務を執行する
→ ただし、その責任は「代理」ではなく「本人」にあり - 代行: その役職の代役として全権限を持つ
→ 責任も「代行」が持つ
どっちが偉い?
- 上記のパターンでは「代行」の方が大きな権限を持つ
→ ですが、ここはそれぞれの会社により様々(一概には言えません)。
法律上での違いは?
- 代理: 与えられた「代理権」の範囲内で、自らのものに基づき「意思決定」の権利あり
- 代行:「本人」の決定した意思の伝達・表示のみ
➡「意思を決定」する権利があるかないかの違い。できるのは「代理」だけです。
終わりに……
「代理」「代行」以外にも、会社によりいろいろな呼称が存在します。役職名は同じでも、役割や立場が違う場合もあるのですね。
頂いた名刺の肩書だけで判断するのは危険……
また「○○代理(代行)」と呼んでいいのか? というのもよくある疑問。
例えば「課長」がいて「課長代理」もいるのであれば、そう呼ぶのが普通のような気もしますが、「○○代理(代行)」と呼ばれることを嫌う方が結構いるのも事実です。
つけずに「課長」などで止めておく、もしくは名前で「△△さん」などと呼ぶのがいいとも言われています。
いずれにせよ、こちらも会社の先輩などに聞いて、それに倣った呼称で呼ぶのが無難です。
さてさて、いかがでしたでしょう。
何のための「代理」「代行」なのか、という部分は一般的にはこのような理由からだったのですね。
皆さまの会社での位置づけとは違った場合もあるかと思いますが、
「その役割とかについてはまぁまぁ納得できたかも」
などと思っていただけていましたらうれしいです。
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