生のクリームと、ホイップのクリームの違いじゃないの?
……ホイップのクリームって何ですか?!
でも、ほんのちょっとだけ、当たってます……
お菓子作りや料理のレシピ本によく登場する「生クリーム」と「ホイップクリーム」。
お財布を握りしめてスーパーに行き、陳列された「生クリーム」と「ホイップクリーム」の2種類を前に、一瞬お菓子作りをやめようか、と思った、もしくは目をつぶって手に触れた方を買おうとしたご経験などありませんでしょうか。
だって「生クリームをホイップする」って書いてあったのに……
もの凄く、ごっちゃになってしまいます。
「生クリーム」と「ホイップクリーム」はそもそも別物なのか、メーカーさんの商品名としての違いなのか、違うのならそこはどの部分なのか。もう、はっきりしなさいよ! ついでだからカロリーとか見分け方も教えなさいよ!
……は、はい。
「生クリーム」と「ホイップクリーム」の違いや見分け方等、解説いたします。
スッキリしたら、甘~いケーキなどを作って、どうか今のプンプンした気持ちを鎮めていただければ幸いです……
目次
「生クリーム」と「ホイップクリーム」はココが違う!
綺麗にデコレーションされたケーキなどに使われる泡立てられたクリームを、一般的には「ホイップクリーム」と呼んでいます。これがこの2つをちょっとややこしくしている原因の一つでもあるのですが、単純に訳せば「ホイップクリーム」=「泡立てたクリーム」。
ですので冒頭の「生のクリーム」と「ホイップのクリーム(ではなく「ホイップされた」クリーム)」は一応、正しいのです。
でも市販されているものは泡立てられる前の状態。
では、みんな生クリームなのか、と思われるかもしれませんが、実は前言がひっくり返るほどのちゃんとした区別が存在しています。
- 生クリーム: 牛乳が原料の乳脂肪を使用し、植物性油脂、添加物等、一切含まない動物性のクリーム
- ホイップクリーム: 主な原料に植物性油脂を使用し、乳化剤や安定剤などの添加物を加え動物性クリームに似せて作られたもの<
つまり、
-
◎「生クリーム」:「乳脂肪のみ」の動物性
- 「植物性油脂のみに添加物を加えたもの」
- 「乳脂肪のみに添加物等を加えたもの」
- 「乳脂肪と植物性油脂を組み合わせたものに添加物を加えたもの」 となります(ですので必ずしも「植物性」というわけではありません)。
◎「ホイップクリーム」:
では続いて、この違いが「生クリーム」「ホイップクリーム」にどのような差を生んでいるか等、まずはそれぞれの特徴などから見ていってみましょう!
「生クリーム」とは?
大好き! ずっと食べてたい!!カラダ、おかしくなりますよ……
でも甘くておいしいですね。たっぷり塗られたケーキを見るとテンションが上がります。
さてこの「生クリーム」。名乗るにはなかなか厳しい条件があるのです。
「『クリーム』と表記できるのは乳脂肪を18%以上含み、添加物、植物性油脂を一切含まないもの」by法律(厚生労働省の乳等省令)
よって「生クリーム」と表記されているものはこの条件をクリアした動物性のもののみ。
さらに乳脂肪分が「20~30%」ならコーヒー用(フレッシュなど)に、「35~38%」なら製菓用(プリン・ムースなど)、そして「40%以上」のものがホイップ(泡立てて使う)用に主に使用されています。
結構濃度が高いのですね。料理のコクを出すために泡立てずに使われることもありますが、この濃さがあのクリーム感を生んでいるのです。
脂肪分の多いものですと、クリーム状になるのにもそれほど時間はかかりません。
ハンドミキサー等を使って泡立てたことのある方ならご存知かと思いますが、思った以上にすぐに泡立ってくれます。
ですが少しでもやりすぎてしまうと、分離します。ぼそぼそになってしまうのです。
ですので、なるべくなら泡だて器で地道に泡立てるのが無難。
そして、なんとかきれいにできあがったホイップ状の「生クリーム」。けれど今度は温度変化による形の崩れ、という困った性質が問題となってきます。ダレてきてしまうのですね。
「生クリーム」は、泡立ての見極めやその後の扱いに結構な神経を使います。
泡立てには「六分立て」や「八分立て」等があり、ケーキなどのデコレーションに使う場合には「六~七分立て」がベスト。
やっと掬えるくらいの柔らかさを目安にしてみてください。
生クリームの泡立ちはスポンジに塗っている間にも進んでいきます。
デコレーション以外でも(塗る、ではなく絞って使ったり生地の間に挟んで使うこともあります。ムースなどではもっと緩くなります)この進んでいく分を考慮して、その手前で止めるのがコツです。
♦【スイーツレシピ】クリームの泡立て具合
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=lPoNM-hd4GQ&w=560&h=315]慣れるまではちょっと使いにくく感じるかもしれません。
ですが「生クリーム」の味やコク、風味といった「スウィーツのスウィーツたる要素」については文句なし。
濃厚なコク、混じりっけのない風味、口どけの良さ、もういっそ「美しい」と言いたくなるほど、すべてが豊かです。もちろんカロリーもコレステロールも豊かです。
牛乳から作られていますので「乳臭い」と言われてしまえば、まぁその通りなのですが、牛乳嫌いの方でなければ、そこは「すごくおいしい」になります。
ただし、牛乳好きの方でも「ちょっと生クリームは……」になる部分は「値段が高い」「クリームが若干黄色っぽい」「消費期限が短い」、それに先ほどの「ちょうどいい泡立てになるのが結構難しく、分離しやすい」「時間が経つと形が崩れやすい」「カロリー・コレステロールが多い」などなど。
お子さんのお誕生日などに作り、その場ですぐに切り分けて食べる分には問題ないのですが、お友だちのところに持っていく、まだ昼前なのに夕方のパーティー用のケーキ、もうできちゃった、などでは形のダレが心配になります。
「美味しいけど扱いなどに多少難あり」の生クリーム。
この「難」部分に注目して作られたのが「ホイップクリーム」です。
では次にその「ホイップクリーム」に行ってみましょう!
「ホイップクリーム」とは?「生クリーム」との見分け方は?
牛乳の乳脂肪だけからできているわけではないけれど、植物性油脂や添加物を混ぜたりしながら「動物性生クリーム」に似せて作られた「ホイップクリーム」。生クリームの出来上がりが若干の黄色味を帯びているのに比べ、ホイップクリームはきれいな白。青みがかったような白い色のクリームができます。
スプーンなどで掬ってみても、掬ったままの形をしっかり保ってなめらか。ただし、ところどころ気泡が入ります。
生クリームでは、もう少しベタっとした粘りのある感じ。その分、気泡はなしです。
値段もビックリ。ホイップクリームは生クリームの約2分の1~3分の1程度で市販されています。
大体一般的な生クリームは350円前後、対するホイップクリームは150円前後で買えるのです。おぉ、エクセレントです!
泡立てには、生クリームより少し時間が掛かりますが「泡立てすぎると分離」、またその後の「ダレ問題」などはありません。
原料として使われている「安定剤」などの添加物により、泡立てた後の安定感は生クリームよりもずっと優秀です。デコレーション後、ある程度時間が経っても、ダレずにしっかり形もキープしてくれます。
ただ、生クリームの場合ですと、一度固まり始めれば、後は泡だて器を軽く左右に動かす程度、それほど力を必要とせずクリームは出来上がっていくのですが、ホイップクリームではスタートからゴールまで全力での泡立てが必要。
先程の泡立てのコツを思い出していただければわかりますように、生クリームは、ある一定の状態を超えると、自身で進行していくのです。楽ですが、気をつけなければ泡立ちすぎ分離を引き起こす原因ともなります。
ホイップクリームでは、この自動進行的なものが望めないため、最後まで力いっぱいかき混ぜ続けなくてはダメなのですね。
消費期限もこの2つは大きく違っています。
「生クリーム」は天然のものだけあって10日程度。なるべくなら、1回の料理で使い切ってしまうことが理想です。
一方の「ホイップクリーム」は1か月以上保存がききます。
これは、どちらがいい、とは一概には言えません。賞味期限が長い、というのは確かにメリットではありますが、それは添加物が加えられているから。そこを考えるとデメリットともなります。
さてさて、問題はそのお味です。
生クリーム特有のコクや風味、といったものは残念ながら「ホイップクリーム」には欠けています。原料が違うので当然と言えば当然ですが……
あっさり、サッパリ感が強く、生クリームのように口に入れた瞬間とろける、といったことはなく、シュワっ、と潰れる感じ。気泡の存在感が食感に出ています。
牛乳由来のうま味を「乳臭い」と感じてしまう方には、むしろホイップクリームのさっぱりした味わいこそ、美味しいと感じるかもしれません。
要は好みの問題なのですが、コクや風味といった濃い、こってりした味わいでは大差を持って「生クリーム」の勝利。
牛乳の苦手な方でも楽しめる、しつこさのないあっさり感でしたら「ホイップクリーム」が断然突き抜けています。
ホイップクリームは基本「ホイップするためのクリーム」とされていますが、生クリーム同様、料理のコク出しに使われる方も少なくはないと思います。
こってりとしたコクをプラスしたいのか、牛乳や豆乳でのコク付けよりはやや濃い目程度のコクでいいのか、などで使い分けてみてください。
一緒に使う食材の味を前面に出したい時は、あえてのコク薄。グラタンやシチューなど、具材よりクリーム勝負、といった場合には濃厚なコクになる「生クリーム」使用、など、出来上がったお料理の表情が微妙ではありますが、きっと変わって感じられるかと思います。
さてさて先ほども書きましたが「ホイップクリーム」にはいくつか種類があります。
- 「植物性油脂のみに添加物を加えたもの」→(純)植物性クリーム
- 「乳脂肪のみに添加物等を加えたもの」→(純)乳脂肪クリーム
- 「乳脂肪と植物性油脂に添加物を加えたもの」→ コンパウンドクリーム
味、コク、風味とも、想像するだけで「動物性生クリーム」との違いが何となく分かるような気がしてしまいます……
現在では「植物性油脂と添加物のみ」以外の「ホイップクリーム」も出てきています(もちろん「(純)植物性クリーム」のクオリティーも上がってきています)。
「生クリーム」の味わいや口どけと「ホイップクリーム」の扱いやすさがミックスされ、プロの間でもかなり使われているようです。
食品が進化していくのって、 美味しい! 素晴らしい!
食べただけ、泡立てただけではそれほどの差が感じられなくなってきているかもしれませんが「クリーム」については法律の定めもあるため、パッケージの表示などではしっかりと区別された表記となっています。
-
◎生クリーム
- 原材料: 生乳100%で作られているため、原材料は書かれていません。「クリーム(乳製品)」とのみ表記されているのがほとんど
- パッケージ: 乳脂肪分○○% などと書かれています(大抵35~48%の間) ◎ホイップクリーム
- 原材料:(一例ですが)植物性油脂・乳製品・乳化剤・安定剤・香料・着色料 など(これはコンパウンドクリームですね! 乳脂肪と植物性油脂が組み合わされて作られています)
- パッケージ: 植物性油脂 など
カロリーの少ないのはどっち?
コクや風味重視で「生クリーム」を使うか、扱いやすさメインで「ホイップクリーム」を使うか。!!
もう一つ、忘れてはマズい比較対象があります!!!
カロリーです。
- 生クリーム(動物性生クリーム): 433㎉ / 100g
- ホイップクリーム(ここでは植物性ホイップ): 402㎉ / 100g
ですが、
- 生クリーム: 120㎎ / 100g
- ホイップクリーム: 4㎎ / 100g
……でも、そんなにいつもケーキとか食べないし……自分へのご褒美だし……
そうです! たまにはいいんです!……たまになら、いいんです!!
「生クリーム」と「ホイップクリーム」はこんなに違う!
うーん。悩みます。誰かにプレゼントするお菓子やケーキには味重視で「生クリーム」使用、自分用には値段重視で「ホイップクリーム」、あ、ダレ問題をその前にクリアしなければ……うーん。悩む……甘いもの食べてリラックスしたい……
……とりあえずここで、2つの違い、特徴などをもう一度まとめてみましょう。
何でできてる?
- 生クリーム: 牛乳が原料の乳脂肪で作る「動物性生クリーム」
- ホイップクリーム: 「添加物 」+「 植物性油脂のみ / 乳脂肪のみ / 植物性油脂と乳脂肪を組み合わせたもの」
いいところは?
- 生クリーム: 何といっても濃厚なコクや風味などの味わい部分 / とろける口どけ
- ホイップクリーム: それを言うならあっさりとした口当たり / 値段の安さ / 出来上がりが真っ白でなめらか / 出来上がり後の安定感(ダレない) / 消費期限の長さ / コレステロールの低さ / 乳製品にアレルギーがあっても食べられること /(牛乳が苦手な方にとっては)乳臭くないこと
デメリットは?
- 生クリーム: 値段・コレステロールが高い / 泡立てすぎると分離 / 温度変化等でダレが生じる / クリームが若干黄色がかっている / 消費期限の短さ
- ホイップクリーム: コク・うま味にはあまり自信なし / 生クリームに比べ泡立ちにくい / 添加物が入っている
もう一度「カロリー・コレステロール」の比較
-
◎カロリー / 100gあたり
- 生クリーム: 433㎉
- (植物性)ホイップクリーム: 402㎉ ◎コレステロール / 100g中
- 生クリーム: 120㎎
- (植物性)ホイップクリーム: 4㎎
もう一度「クリーム」についての法律
クリームと表記できるのは「乳脂肪のみを原料とした乳脂肪分18%以上のもの」とされています。添加物や植物性油脂を含む「ホイップクリーム」の表記は「ホイップクリーム」や「ホイップ」。「生クリーム」は「クリーム」です。種類としては「生クリーム = クリーム」「ホイップクリーム = 乳等を主原料とする食品」に分かれます。
お互いを代用することはできる?
できます。ただし、それぞれのメリット・デメリット部分、特に泡立て後の扱いや風味やコクの違いが出てきますので「今日はいつものが売り切れだったから」といった感じで初めて代用する場合には「いつも通り作ったのに、何? 失敗した?」とびっくりしてしまうかも。でも、逆にいつもとは違う扱いやすさやリッチな味わいにハマり、次回からはこっちで、などとなるかもしれません。
終わりに……
どちらもただ「白くて甘くて美味しいクリーム」だけではなかったのですね。侮れません両方とも一度お使いになってみて扱いに慣れたら、ご自分でミックスして「美味しくて使いやすい配合はこれ」といったものを作ってしまうのも楽しそうです。
たま~に食べるお菓子やケーキ。
今後の「美味しい!!」のお役に少しでも立てていましたら嬉しいです!
関連記事はこちらになります。
コメント