お子さんを「ほめる」。上司に「ほめられる」。お父さんの画集にジュースこぼしちゃった! でもシミでおもしろい絵が描けたよ! もしかしたら「ほめられちゃう」かも(たぶん怒られます)!
……あれ? 何となく「ほめる」って上から目線っぽい?!
そうかもしれません。目上の人を「ほめる」というのはちょっと失礼な感じがしますね。
でも、ほめられるの大好き!!
誰かをほめるのも結構嬉しいかも!
そうなのです。「ほめる」または「ほめられる」というのは何かの功績に対しての評価を得たり、称えたりすること。「ほめたたえる」などという言葉もあります。
でもでも……「ほめる」多すぎじゃない?
何だか「ほめる」だらけの文章で、頭がこんがらがってきてしまいますが「褒める・誉める・賞める」の意味や違い等、解説いたします。
そこさえわかれば「ほめる」の使い分けもきっと簡単にできる……はずです!
たくさんほめて、たくさんほめられる毎日を皆さまが過ごせますよう、何かのお役に立てていただければ幸いです!!
目次
3つの【ほめる】は何が違う?
先ほども書きました通り「ほめる」とは、誰かのしたこと、行いに対し「よかったよ!」と評価することです。これは「褒める・誉める・賞める」のどれもに共通するもの。
どの「ほめる」を使っても大幅な間違いにはなりません。
それでも、あえて色々な「ほめる」を使い分けるのは、微妙なニュアンスの違いや、細かな気持ちを伝えたい、という性(さが)を持つ私たち日本人ならではのこだわりなのです。
さて、ではまず目で見て違いのわかる漢字部分「褒・誉・賞」について、意味を比べてみましょう。
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◎褒: 良い行いをほめたたえる
◎誉: ほめる・ほめたたえる ・良い評判・ほまれ (ほまれ = 誇りに値する事柄、または良いと評価すること)
◎賞: ほめる・功績をあげた者に与える褒美、またはその印としての金品 / めでる・楽し見味わう
みんな、ほめています……
が、少しずつ、本当に微妙にそれぞれ独自の意味もあり、そこをピックアップして細かいニュアンス違いの「褒める・誉める・賞める」という3つの言葉ができあがったわけです。
ですので「ここが全然違う」といった大きな差はありません。
ですが、それぞれの「微妙に違う意味」の部分こそが、3つを分けるポイントとなっているのです。
では、続いて、それぞれの「ほめる」、一番伝わってほしい繊細なニュアンス部分から3つの違いを見ていってみましょう。
「褒める」とは? 「誉める」「賞める」との違いはココ!
実はこの「褒める」、「常用漢字の読み方」として「ほめる」と読めるのはこれだけ。いきなりビックリの違いです。
先ほどの「褒」の意味を見てみましても、確かにシンプル。「良い行いをほめたたえる」のみ。「ほめる」ことに対するもの凄い気合を感じてしまいます。全般をカバーする「ほめる」界のオールラウンダー、といった感じ。
常用漢字表(文科省の選定する、漢字を使う上での目安)では「ほめる = 褒める」となっているため、公文書や学校教育、新聞・ニュースなどではこちらの「褒める」以外は使えません。それ以外も全部「褒める」表記で全く問題なしです。基本「ほめる」といえば「褒める」なのです。
ではなぜ「誉める・賞める」なのか?
次の「誉める」に行ってみましょう!
「誉める」とは? 使うのはどんな時?
実際にパソコンや携帯電話などで「ほめる」と入力するとわかりやすいかと思いますが、こちらの「誉める」も、「褒める」同様、普通に表示される文字となっています。常用漢字としては読めないのに?
はい! 読めないのに、です。
それほど一般的な文字扱いなのです。
公文書等では使用できませんが、個人が使う分にはこれもまたアリなのですね。
「誉」の訓読みは「ほまれ」。有名な元なでしこ選手のお名前とは漢字が違いますが、澤選手も、誇りを持つに相応しい活躍を見せてくれました。かっこよかったですね!
「誉」を使った言葉には「名誉」「栄誉」などがあり、その文字で表わされる「誉める」にも、「勝利」や「受賞」などの際に使われることの多い言葉、また、ピッタリとくる言葉となります。
100点を取ったお子さんを「ほめる(褒める)」ような1対1での個人的なものではなく、みんなでその人の栄誉をほめたたえる、といった場合ですね。こちらの「誉める」が多く使われます。
「国民栄誉賞」や「ノーベル賞」などは、誰か一人が誰かの功績を「君ってすごいよ!」とほめているわけではなく、国民や世界中の人が「長嶋茂雄さん」や「ボブ・ディランさん」をほめたたえて(誉めたたえて)いるのです(「なでしこジャパン」に至っては初の団体での「国民栄誉賞」受賞です)。
このように「誉める」とは、単にほめる、というよりは「みんなでほめたたえる」といったニュアンスを濃く伝えたい場合に使われる言葉となります。
もちろん、ここを「褒める」としてもいいのです。政府が推しているのは「褒める」表記の方。間違ってないです、全然です。
しかし「栄誉」「名誉」などなどに使われる「誉」、またズバリ「ほまれ」という読みを持つ文字を使っての「誉める」はしっかりとその繊細な差異を伝えられる言葉となっています。
使い分けなくても問題ありませんが、もし使い分けるのであれば、このポイントを押さえておいてくださいね。
「賞める」とは? 他の【ほめる】との違いはココ♪
さて「賞める」です。先ほど「ほめる」での変換を試してみた方は薄々お気づきかと思いますが、出ません(変換ソフトによっては出るものもあるかも。私のパソコンでは出ません!!)。常用漢字としての訓読みを一つも持たない漢字でもあるのです。
「ほめる」で変換されるのは「褒める / 誉める 」とひらがなの「ほめる」、カタカナでの「ホメル / ホメる」くらい。ほとんどのの辞書にも「賞める」では載っていません。 『▽』など「常用漢字の音訓以外の読み」を表す記号付きで、稀に見ることもあるかもしれません(ネットの辞書ではこれらの記号付きで「賞」の文字での「賞める」が出ているものが多いようです)。
では、なぜ「賞める」表記があるのか?
「賞」の意味には「 功績をあげた者に与える褒美、またはその印としての金品」という意味があります。ダイレクトです。「褒美・金品」です!
先ほどの「国民栄誉賞」には「誉」「賞」どちらも入ってしまっています。
また「賞」といえば思い浮かぶのは「賞状」や「賞金」などの言葉。「称賛」は「賞賛」と書くこともできます。そして「賞」はやはり「賞」なのです。何かの功績に授けられる栄誉や、そのものズバリの賞状や賞金。
その上「賞」の文字は「ほめる」という意味も持ちます。
……そういったわけで、若干イレギュラーな感は否めませんが、意味合いから当てた文字、として「賞める」もまたアリなのです。
「賞金」や「賞状」に関さないことに使ってしまうと違和感だらけになってしまいますが、前述の「誉める」のような勝利や栄誉、つまり、それに伴う何らかの「褒美・金品」的のものが絡んでいる場合には、こちらの「賞める」を使ってもいいのです。
その他「称める」でも「ほめる」と読ますことができます。「ほめたたえる」の「たたえる(称える)」部分ですね。
さてさて、ここまで来ると、もう実際の「常用漢字の音訓としての読み方」はどこかに行ってしまっています。が、漢字を見れば、何となく、言いたいことはわかるのです。
では「褒める」以外の「誉める」「賞める」を使い分ける上で、何がポイントとなるのか?
「ほめる」に使われる漢字の持つ意味が、使い分けポイントのほとんど。読みの音ではなく、意味合いから3つの「ほめる」は使い分けられています。「褒・誉・賞」の部分ですね。
押さえるべきポイントはそこ。そして、その意味で使うには不自然な流れとなる「ほめる」は「絶対に間違い」ではありませんが「せっかく書き分けてるのにもったいない『ほめる』」になってしまうのです。
【褒める・誉める・賞める】はこんなに違う! 色々なほめ方🎶
♦ほめ達(ほめる達人)になる最初の一歩!
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=nnoZly1ITeI&w=560&h=315]「褒める」が一般的、次に「誉める」、「賞める」は若干格落ちする感じですね。
どんな場合にも「褒める」表記、また公文書や学校教育、ニュースや新聞ではこちらを使うのが安全ですが、文脈に合わせて使うと、何となく情緒あふれるきれいな文章になりそうなこの3つ。
使う場面の違いが「大体こんな感じ?」と掴めてきましたでしょうか。
ではここで、3つの違いや使い分けも含めまして、その「いろいろな場面」ごとに、一番しっくりくる「ほめる」を見ていくことにしましょう!
何をほめてる?
- 褒める: 相手のよい行いや功績を「褒めて」います →「褒美」や「褒章」などの言葉もありますね。また「衣」という文字が含まれている「褒」は、かつて衣などの金品を(褒美として)与えていたことに由来する言葉です。
- 誉める: 栄誉や勝利などを「誉めたたえて」います →「名誉」「過誉(ほめすぎること)」「栄誉」といった言葉が思い浮かびます。「誉」に含まれているのは「言」の文字。「誉」の由来は「言葉でほめること」となります。
- 賞める:「誉める」同様、栄誉や勝利を「賞めたたえています」 →「賞」と言ったら「賞金」や「○○賞」などなど。「賞」の意味にもあります通り、功績をあげた人に「褒美や金品(なんとなく生々しいですが「トロフィー」なども金品の一種、と言えます)」を渡す」等のある場面では「賞める」を使うのもアリです。
誰がほめるの?
- 褒める: 優れた行いをして「褒められる相手」がいて、その行いを評価して「褒める相手」がいます。
→ 目上の人が目下の人に対して「褒め」ます。逆はあり得ません。失礼に当たってしまいますね(「社長、偉いですねー」などと面と向かって言ったら……ちょっと想像したくない展開が予想されます)。 - 誉める: 栄誉ある行為や勝利をもたらした「誉められる相手」がいて、そのことを「誉める人たち」がたくさんいます。
→ ごく個人的なことではなく、みんなで個人または複数名の「功績をあげ、栄誉や勝利を手にした人(たち)」を「誉め」たたえます。自分より上の立場の人にも下の立場の人にも使える言葉ですが、やはり目上の人を直接誉める場合には、言い回しに注意です。「ほめる」という行為は、どうしても「上から目線」的になってしまうのですね。 - 賞める:「誉める」と一緒です。手渡す人は一人かもしれませんが、その人が個人的に優勝旗などを渡しているわけではありません。
3歳の娘がヌイグルミが寒いから、ってお布団かけてやってた!
親って……でも「褒めて」あげてください。きっと優しいお子さんなのでしょうね。
「誉める」は個人的なことにはあまり使われません。
さらに「偉かったから、何でも好きなもの買ってあげるよ(でも一つだけね)!」となった場合でも「賞める」のはちょっと……「褒美・金品」部分を前面に出してしまうのは、あんまりな気がします。この際にはぜひ「褒めてあげる」部分全開でお願いします!
ついにあの作家が文学賞受賞! 長かった……今日はみんなで祝賀会!!
あの作家って、もしかしたらあの作家ですか?! 私も祝賀会、参加したいです!みなさんで鍋でも囲みながらワイワイと受賞作品を「誉め」まくって盛り上がってください! 多くの人に評価され得た賞です。皆さんも存分に盛り上がってその作家さんの栄誉を称えましょう!
「褒める」でもOKです。が「使い分ける」が前提ならここはやはり「誉める」でいきましょう!
「賞」をもらった栄誉を「誉めたたえる」という意味で「賞める」もOKです。ただ「賞める」表記自体があまりメジャーとは言えないため、稀に「? 漢字間違ってるよ」と言われてしまうこともあります。説明が面倒臭くなりますので、ほんの少し覚悟が必要です。
え?! 毎日町内の掃除してたら「金一封」出たの? なんか、お前ってすごいな!
何県、何市ですか!? そこに引っ越したいです!これは「誉める」か「賞める」かちょっと悩むところですね。
町内の掃除を毎日続けた彼の行動をほめるのであれば「誉める」が相応しい気がしますし、その彼に「金一封」を渡すことにした町内会の太っ腹さ加減を「ほめる」のなら「賞める」のような気もします。
でも実際には「誉める」か「褒める」が主流。ほめているのは「町内会全体」なので「誉める」が一番しっくりくる表記となります。
王様が「よくやった!」って言ってくれた! なんか、大工道具も一式もらった!
……真剣に王様を想定してものを考えたことがないので、あまりうまく情景が目に浮かびませんが「ほめてつかわす」のことですね?王様は偉いので、たぶん「褒美を与える」権限が個人的にあるかと思われます。「褒める」ですね。
「褒美・金品」として「大工道具一式」ももらったようですが、ほめてくれたのは王様個人。
その後「王様に褒められたことを称える会」などが開かれた場合には、きっと村人たちは「誉め」てくれます。
★以上「どうしても使い分けて書きたい時の表記」の一例でした。
「褒める」「誉める / 賞める」を分けるのは「ほめているのは個人か否か」がポイント。また「賞める」はあまりメジャーではない表記、そして「賞」を連想させる場合にのみ違和感なく使える文字、となっています。
また「常用漢字の音訓読み」として公式に認められているのは「褒める」だけです。ですが「誉める」もかなり一般化している表記法。こちらの2つは、文脈、その場面ごとの微妙な雰囲気により使い分けることが不自然ではない同義語とも言えます。
「ほめる」の表記には「絶対にこうじゃなきゃダメ」といった規則・規定があるわけではないため、ある程度自由に使い分けていい言葉です。 使われている漢字から類推される意味で使い分けてみてくださいね!
終わりに……
「ただ『偉いね、すごいね』って伝えたいだけなのに……」全くその通りです……ですが、そんな気持ちの微細な部分にまでいちいちこだわってしまう日本語もいろんな意味で「偉いね、すごいね」かも……
「こうなったら、自分でもっと雰囲気に合った言葉でも創るか!」
おぉ! そう来ますか! すごい! 偉いです!! 何かの賞をとったら、今度こそ祝賀会に呼んでください!
いかがでしたでしょう。
「ほめる」は気持ちを伝える大事な行為でもあります(私は「ほめられて育つ」タイプです)。
錯綜する「ほめる」のあれこれ、少しでもスッキリしていただけましたでしょうか。
多少なりともお役に立てていれば嬉しいです!
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