今日はしゃぶしゃぶ。本格的に昆布で出汁取って……
あれ? なんで? スゴイ増えてるんだけど! え! 入れすぎた?
……カットワカメですからね。それ、増えるんです。出汁は取れません……
知っている人は間違えないけれど、知らない人にはさっぱり違いのわからない「昆布」と「ワカメ」。その比率、およそ1:1。海藻を比較的よく食べる私たち日本人ですが、それでも約半数の人が「違いがわからない(または違いに興味がないため知らない)」のだそうです。
確かに、実際に料理の食材として使うことがなければ「ワカメの味噌汁よ」や「おせちにはやっぱり昆布。『よろこんぶ』って昔から言われて縁起いいのよ」と出されたもの =「ワカメ」や「昆布」と認識する程度。
同じ海藻ですし、色も似てますし……
ですがこの「昆布」と「ワカメ」。そんな扱いにもかかわらず、私たちの健康を一生懸命に気遣って支えてくれる、健気で優秀な食材なのです。
ちゃんと知ってあげないとかわいそう……健気なだけに不憫……
「昆布」と「ワカメ」の違い、その優秀な栄養素やそれらのもたらす効果・効能等、解説いたします。
出汁を取ったり、サラダに加えたり、とちょくちょく食卓に登場する「昆布」と「ワカメ」。ますます身近な食材として皆さまの食生活が潤されますよう、願っております!
目次
「昆布」と「ワカメ」はココが違う!
どちらも海の中でユラユラ揺れているイメージのある「昆布」と「ワカメ」。海藻ですね。2つとも「褐藻綱・コンブ目」であるところまでは同じ。
海の中では褐色。ですので「褐色の海藻」=「褐藻綱」。
湯通しされると、クロロフィルの働きにより皆さんのイメージにあるような緑色に変化します。
乾燥させれば今度は黒。スーパーなどで市販されているものの多くはこのパターンです。
そして続く科目。「昆布」は「コンブ科」「ワカメ」は「チガイソ科」、ここでようやく違いが出てきました。
それほど変わらないんじゃ……な気もしますが、例えば「ネコ」なら「ネコ目・ネコ科」、「イヌ」は「ネコ目(なのです!)・イヌ科」、こう考えるとけっこうな違いです。
まず初めの大きな違いはココ。学術的に分類する上での「科目の違い」です。
さて科目の違う「昆布」と「ワカメ」。その他にも「見た目」が違います。「旬(収穫)の時期」も変わってきます。「生育地」も「成長スピード」も、そして徐々に身近な違い、「価格」や「栄養・効果面」、と案外たくさんの違いを持っています。
そんなに違うなら、もう間違えないかも……
はい! たぶん!!
では続いて様々な「違い部分」、それぞれの側から見ていってみることにしましょう。
「昆布」はこんな海藻!
♦常備おかずの定番!昆布と椎茸の佃煮の作り方 精進料理 vegan
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=gLMO1q3j5E4&w=560&h=315]先程も書きました「おせちの昆布」。「喜ぶ」に掛けた一家の発展を願う縁起物、として「昆布巻き」などの料理の他、お正月の鏡飾りにも使われています。
「養老昆布 / よ(う)ろ(う)こ(ん)ぶ」で不老不死、「子生 / こぶ」で子孫繁栄などなど、ダジャレ? とつい思ってしまいますが、昆布の栄養素にもなかなか侮れないものがあるのです。
ではそんな「昆布」栄養素の前に、もう少し「昆布そのもの」について見ていってみましょう。
-
◎どこで育つ?
天然ものの「昆布」の90%が北海道で育ちます(現在は養殖物も多く出ています)。
→ 寒いところでしか育ちません。水深20メートルほどの場所で、岩に付着して成長。
◎大きさはどのくらい? 10メートルほどまで大きく育ちます。 →「根」があって「茎」があり、その上に一枚の「葉」、根からずっと葉先まで繋がっている感じですね。「葉」の部分のみ食べられます。
◎収穫期は? 7月中旬から9月までの暑い時期が旬になります。
→ 成長し切るまでに掛かる年数は2年。その後の製品化にも手間と時間が掛かります。
◎お値段は? そんなわけで、結構お高め。卸値で1キロ3000円もする高級昆布もあります。
ですが、高価かつダイナミックに育っただけのことはあり、昆布の栄養素は豊富。しかも低カロリー、本当に優秀食材なのです。
数ある優秀栄養素の中でも特に注目したいのが「ヨウ素」「フコイダン」「アルギン酸」。
これらは海藻類が共通して持っている栄養素なのですが、「昆布」はその含有量が非常に高く、またその他ミネラル、ビタミン類も豊富に含む海藻として頭一つ抜き出ています。
まずは、注目したい3つの栄養素。
私たちの体に、どのような効果・効能をもたらしてくれるのか、です。
-
◎ヨウ素
代謝を促すための重要な「ホルモン分泌器官」でもある「甲状腺」。その「甲状腺ホルモン」のエサ(原料)になるのが必須ミネラルの「ヨウ素」です。これがないと「甲状腺ホルモン」の合成ができません。
- コレステロール・中性脂肪・血糖値を下げる
- 肝障害の改善
- ピロリ菌の抑制
- 抗アレルギー作用
- 生活習慣病のほとんどを改善
不足すると「甲状腺異常」「脱力感」「肥満」を引き起こすこともあり、このようなヨウ素の欠乏は「三大栄養欠乏症」と呼ばれます。 → 甲状腺ホルモンに作用することで、新陳代謝が活発になり、脂質・糖質の代謝を促進、また脂質の燃焼も促します。さらにたんぱく質の合成にも関わる栄養素のため、美肌や毛髪の健康等、皮膚や肌にも効果を発揮してくれます。基礎代謝を高める働きもあるため、成長・発育への促進にも効果大です。優秀です!
◎フコイダン 昆布がヌルヌルしているのはこの「フコイダン」という水溶性食物繊維によるもの。多糖類の一種です。昆布だけでなく、海藻たちはこのネバネバ成分で自分の身を守っているのです。
食物繊維と言えば、便秘改善の強い味方。腸を整え、美肌、毛髪の健康効果にも期待できる成分です。
→ それだけでも十分嬉しい効果なのですが「フコイダン」の効果はそれだけにとどまりません。以下に挙げていきます。
「フコイダン」には「NK細胞」というものの活性を大きく促す作用があります。「NK細胞値」が上がるわけです。この値が上がる、というのは「がんに対する免疫力が高まる」ということ。のみならず「がん細胞」を正常な細胞へ変化させる働きまである、との報告もあるようです。
実際に「日本がん学会」では毎年フコイダンを使っての積極的な実験を繰り返し、その報告がなされてもいます。期待されているのですね。
◎アルギン酸 こちらも「水溶性食物繊維」。大腸の働きを活発化し、便秘解消に役立ちます。
→ そのことにより「コレステロール・腸内有害物質を体外に排出」「大腸がん・動脈硬化の予防」にも効果が期待されています。
よく「頭髪の健康には海藻を!」などと聞きますが、髪はもちろん「昆布」は体の健康・ダイエット・美容にも優れ、その上カロリーの低い食品です。
「ワカメ」の特徴はコレ♪
味噌汁や酢の物、サラダなどにも使われる「ワカメ」。「昆布」よりも毎日の食卓にのぼる率は高いかと思います。使い勝手もいいため、常備されているご家庭も多いかもしれません。
ですが、この「ワカメ」、食用としているのは日本と朝鮮半島のみ。ちょっとびっくりです。
食用の習慣のないヨーロッパや欧米の方などは、ワカメを消化するための酵素を持たない、とも言われます。もったいない……
さて「ワカメ」です。「昆布」に次ぐ重要な海藻。ですが「次ぐ」なのですね。
同じ海藻類として、前述の優良栄養素である「ヨウ素」「フコイダン」「アルギン酸」等を始め、様々なミネラル、ビタミン類を豊富に含んでいます。「ビタミン / ミネラル類」の総量では若干ワカメが優勢。また「アルギン酸」含有量でも勝ちです。
ですが、それ以外の栄養素の含有量では「昆布」にことごとく敵いません。
その代わり、カロリーは「昆布」より少なめ。「糖質」に至っては「昆布」の4分の1程度。低いです。
「昆布」と比べてしまいますと、どうしても「健康的な栄養価」部分を「昆布」に奪われ、「ワカメ」には「ダイエット・美容」向きの食品といった印象が否めませんが、これは決して「ワカメ」が劣っているのではなく「昆布」が優等生過ぎるのが原因。
「ワカメ」も非常に身近で、手軽に摂取できる優秀な食品です。
栄養素以外の「ワカメ」については以下の通り。先程の「昆布」同様、まとめてみます。
-
◎どこで育つ?
日本全国の海岸で生育します。
→ 比較的暖かな地域でも問題なく育ってくれます(養殖が多いです)。付着し成長する岩の水深は浅く、10メートルほど。
◎大きさはどのくらい? 1メートル前後
→「根」があって長い「茎」があり、そこから「葉」が何本も生えます。
岩に付着する根のすぐ上(茎の根元)の、肉厚でひだの多い部分が「メカブ」。この栄養素は非常に優秀。本体の「ワカメ」に比べても格段に高く「海の珍味」とも呼ばれます。
可食部は、この「メカブ」も含むため「葉」と「茎」。
◎収穫期は? 3月から5月にかけて。春になったばかりの寒い時期が旬になります。
→ 約1年で成長を終え、その後の製品化にはそれほど手間暇が掛かりません。
◎お値段は? そんなわけで、低価格で売られています。全国的に生育しているため、安定した品質のものがいつでも出回っていることもメリットの一つですね。
「昆布・ワカメ」の比較あれこれ!
私たちが健康な体を維持するためには、体内を弱アルカリ性に保つことが重要。食品には「酸性食品」と「アルカリ性食品」があります。お肉などは「酸性食品」。食べ過ぎてしまうと、体が酸性に偏ってしまうのですね。
そこで出番となる「アルカリ性食品」。「昆布」「ワカメ」などの海藻類はその代表的なものです。
どちらも優秀。その違いの比較も含め、ここでもう一度「昆布」「ワカメ」の特徴等、見ていってみましょう。
-
◎学術上の分類は?
- 昆布: コンブ目コンブ科の褐藻
- ワカメ: コンブ目チガイソ科の褐藻 → 生物学上は同じ海藻です。
- 「ワカメ」です! → 天然の「昆布」は約9割が北海道産。養殖が多いのも「ワカメ」です。
- 「昆布」の方。 → 価格が高くなる理由の一つでもあります。
- ・昆布: 7月中旬から9月までの暑い時期が旬
→ 2年をかけ、長さ10メートルくらいにまで成長していきます。 - ワカメ: 3月から5月くらいのまだ寒い時期が旬
→ 1年程度で成長し切ります。その大きさは1メートルほど。
◎海の中ではどんな姿?
- ・昆布:「根」「茎」の上に1枚の大きな「葉」
→ 付着して生育していく岩の水深は20メートルくらい。深い場所で育ちます。 - ワカメ:「根」があり「茎」は長く、何枚もの「葉」を生やします
→ 育成は水深10メートル程度と浅めです。
◎どこを食べるの?
- 昆布:「葉」の部分のみ
- ワカメ:「葉」と「茎」
→ 特に「茎の根元」の「メカブ」部分には栄養あり。
◎特徴的な栄養素は?
- 昆布 / ワカメ: 海藻類の共通栄養素に「ヨウ素」「アルギン酸」「フコイダン」などがあります。「食物繊維」「ミネラル」「ビタミン」類も多く含み、バランスよく摂取できます。
「アルギン酸」はワカメ、「ヨウ素」「フコイダン」ではともに昆布の方が含有量が豊富です。 - 昆布: その他色々ありますが、うま味成分の「グルタミン酸」はワカメの倍以上
→「グルタミン酸」には脳機能を活性化させ、老化予防にも繋がる働きがあります。 - ワカメ:「ミネラル」「ビタミン」類の総摂取量は若干「昆布」を上回ります。 ◎特徴的な長所は?
- 昆布:「食物繊維」を効果的に摂るのに優れた食材です。「ヨウ素」の含有量は海藻の中でも飛び抜けています。「フコイダン」の抗がん作用にも注目が集められています。
- ワカメ: 何といっても低カロリー。「アルギン酸」を始め、豊富な栄養素も摂取できるダイエットに適した食品と言えます。糖質の「昆布」の4分の1程度。逆に「昆布」は海藻の中では唯一糖質の多い食品となります。 ◎じゃあ「昆布」は「ダイエット・美容」には向いてない?
◎日本全国で育っているのは?
◎製品化に時間・手間が掛かるのは?
◎一番おいしい時期を教えて!
そんなことはありません!!
「ワカメ」に比べればカロリー、糖質ともに高くなりますが、ビタミン・ミネラルなど、美容にいい成分も多く含む食品です。
でも、ココだけは注意!!
「ヨウ素」です。不足してしまうこと以上に気をつけなければならいないのが「過剰摂取」。
新陳代謝を促したり、糖質・脂質の代謝、燃焼、さらには髪や肌の健康、発育・成長まで促進してくれる大切な栄養素ですが、摂れば摂るだけ体にいい、というわけではありません。
私たち日本人は、昔からヨウ素を多く摂取する食習慣を持っているため「過剰摂取」に対しての免疫がある程度できています。もともとが慢性的に過剰摂取しているような状態なのですね。
それでも「ヨウ素の過剰摂取による健康障害」の報告は少なくはないのです。
「ヨウ素過剰症」では、一過性ではあるものの「甲状腺機能亢進症」となり、心臓機能異常、頻脈、体重減少、月経異常、精神不安定などが引き起こされます。
また、甲状腺ホルモンの生成と活性化が抑えられることにより「甲状腺機能低下」、さらに進めば「甲状腺腫(甲状腺の一部、または全体が腫れる)」が起こることもあります。
摂取推奨値より多少多めに摂っても、排泄で調節できるものなのですが、長期に渡り過剰に摂取した場合などでは健康障害を引き起こすことも十分あり得ますので、ヨウ素を含む海藻、中でも「昆布」は含有量の多い食品ですので、摂りすぎにはお気をつけください。
終わりに……
味噌汁の具、面倒くさいからワカメでいいや、と「困った時のワカメ頼み」的な使い方をしていましたが、余分なナトリウムを排出し、むくみを改善してくれる「カリウム」も豊富に含むワカメは、塩分量の多い味噌汁に入れる具材としては、なかなか理に適っていたのですね。ですが「ワカメ」もヨウ素を含む食品。「昆布」ではなく「カツオ」や「いりこ」の出汁でどうぞ!健康面から昆布を積極的に摂取したい気もしますが、金額面や使いやすさを考えると、やっぱりワカメの方が気楽にムリなくメニューにも取り入れられるかもしれません。
体にいい、とされるものだけを食べるのではなく、体にいいものを毎日の食事にプラスするのが大事。
「昆布」も「ワカメ」も、特別な食品ではありません。
他の食材と組み合わせたりしながら、色々な料理に活用してみてくださいね!
皆さまの今後の「美味しい海藻ライフ」のお役に立てていましたら幸いです!
関連記事はこちらになります。
コメント