「あたりめ」には焼酎、「するめ」だったら日本酒だな。で、「さきいか」ならビールかなぁ。
あ、焼酎、もう一杯追加ね~~!!
すいません、こっちも生、お願いします!
そして、そんな感じのゆるい使い分け方も、嫌いじゃないです!
でもそれ、全然違いま~~す!
ザ・ベストオブ・おつまみずのこちら3つ。
「あたりめ」と「するめ」、「さきいか」の違いをご存知ですか?
別に知らなくても、問題なくおいしいお酒は飲めます。おやつとして、例えば「さきいか」を「するめ」だと思いながら食べても、誰も怒りません。
でも……
何度も咀嚼されながら「だけどな、オレはホントするめじゃないんだぜ……」などと飲み込まれていく姿を思うと……
「あたりめ・するめ・さきいか」の違い、そして、結構優秀な栄養やカロリー等、解説いたします。
皆さまの「あ、そうだったんだ!」と共に、ひっそりと漂う「あたりめ・するめ・さきいか」たちの悲しみも、解消されれば幸いです。
目次
「あたりめ・するめ・さきいか」は何が違う?
簡単に言いますと「あたりめ・するめ」とは「イカの内臓などを取り除いて干したもの」、「さきいか」は「生のイカやするめをあぶり焼きにして裂いたもの」のことを指します。どれも原料となるのは「イカ」です。「あたりめ・するめ」は干したもの、「さきいか」は、裂いたもの、というところが違いの大きなポイントです。作られ方が違うのですね。
では「あたりめ」と「するめ」の違いは?
この2つは、呼び方だけが違う、全く同じもの。
違いは、ないのです!!
なんでだ? 兄ちゃん。じゃあ、あれか、一緒に飲む酒の種類での呼び分けか?
……いえ、そんな呑兵衛限定の違いではありません。
段々、色々な意味で勢いが増してきましたね。顔も真っ赤ですが、とりあえず胸ぐらから、手を放していただけませんか。
まずは「あたりめ」と「さきいか」。この違いからいってみましょう。
あっ……寝ないでください!
「あたりめ」?「するめ」? 違いはココ!
イカの胴を切り開き、内臓などのいらない部分を取り除いて干した食品が「するめ」。こうしてに文字すると、何とも生々しいですが、おいしいです。
元々は「天日干し」されていましたが、現在では機械を使って乾燥させることも多くなりました。
歴史は古く、なんと平安時代にはすでに生産されていたそうです。貴族の時代にするめ……ちぐはぐ感がもの凄い気もしますが、衝撃は続き、さらには儀式や儀礼では縁起物扱いです。
するめ、どんな手を使ったのでしょう。
あのマストなおつまみが縁起物?!
と思ってしまいますが、現在でも結納の際などにはするめは「寿留女」と文字を当てられ、同じく「子生婦」と名を変えた「昆布」と共に納める品の定番ともなっています。「噛めば噛むほど味が出る」ことから、「味のある仲のいい夫婦になって欲しい」ということで「するめ」、昆布の繁殖力の旺盛さと「よろこ(ん)ぶ」から「昆布」です。
「寿留女」「子生婦」には女性の健康と子だくさんを願う思いが込められているのですね。
また、日持ちのいいことから「末永い幸せ」、お金を「お足」と言っていたことから「イカの足の多さ(10本)」に縁起のよさを感じていたなど、その由来には諸説あるようですが、縁起のいいもの、とされていることは間違いありません。
大相撲の土俵の下にまで埋められているのです。ここまで来ると、もう「するめ = 縁起物」に何の不思議も感じなくなってきます。
さて、こんなにも縁起を担がれている「するめ」ですが、どうしても納得できないことがありました。
「するめ」の「する」、まさかの名称部分です。
「お金をする(使い果してしまう)」「お金を掏(す)られる」などなどの連想から(こちらもいくつかの説を持ちます)、一点の曇りもなく「縁起のいいもの」として生きていきたい「するめ」、そんなことじゃ困る……俗称を作るべし、となったのですね。江戸時代中期のことです。
薄々お気づきかと思いますが、その俗称が「あたりめ」。「する」を「当たり」に変えたのです。
ダジャレ的なものなの? と問い詰めたくもなりますが 、そもそも「縁起物」とされる理由からして、似たようなものです。
試合や試験に勝つ! からその日のごはんにはカツ丼を食べる、や「梨(無しに通じるため)」を「ありの実」に言い換えるなども同じ類。
実際このようにして生まれた言葉は、案外多くあり、「する・あたる」関係で言えば「当たり鉢」、これも本来の名前は、食材を擂(す)るための「すり鉢」です。
床屋などでも、ヒゲはするのではなく、当ててくれます。よく考えると意味がよくわからない言葉になってしまいますが、これらも「する」を嫌って「当たる」に置き換えた言葉。この際、それほどの意味はなくてもOKなのですね。
つまり「あたりめ」とは、「するめ」のいわゆる俗称、忌詞(いみことば / 不吉だとされ、使うのを避けることば、もしくは、その代わりに使うことば)なのですね。ものとしては、同じ食品、「するめ」=「あたりめ」なのです。
「さきいか」とは?
続いての「さきいか」。文字通り「裂いたイカ」です。元々は「するめ」をあぶり焼きした後に、ローラーなどで押しつぶして伸ばし、身を割り、それらをさらに裂いて作られていました。
ただ裂くのではなく、「押しつぶし、伸ばし、割って、裂く」の工程を加えることで、より柔らかな食感となったのですね。
最近では、「するめ」ではなく、そのもとの姿、つまり生イカが使われることも多くなりました。食感の柔らかさも大幅アップです。
生鮮品や冷凍のものを加工する技術が開発されたためです。ありがたいです。
さきいかには種類がいくつもあり、従来の「するめをあぶり焼きしたもの」、「生のイカを使ったもの」はそれぞれに「するめさきいか」「ソフトさきいか」の名称で販売されています。
また「生のイカを皮付きのまま」加工の「皮付きさきいか(「ソフトさきいか」の柔らかさプラス、味が出る「するめ」らしさを兼ね備えたタイプ)や「燻製さきいか(こちらは二種類あり「ソフトさきいかの燻煙バージョン」と「イカの燻製を裂いたバージョン」です)、さらに「するめをあぶり焼きしたさきいか」には、その前に味付けをしているタイプもあるなど、その種類の豊富さも「さきいか」の特徴の一つとなっています。
「あたりめ・するめ・さきいか」の違いアレコレ♪
さて「あたりめ = するめ」と「さきいか」の違いとなったわけですが、「するめ」っていたら「イカの姿」をしたもので、その細く裂かれたのが「あたりめ」だと思ってた……
という方が意外と多いようです。なぜでしょう、八代亜紀さんの影響でしょうか。わかりませんが。
そして「さきいか」。
「ソフトさきいか」が「さきいか」だと思ってた……
これは間違いではないのですが「するめさきいか」の影が薄いのが現状のようです。
だってせっかくだから食べやすい、柔らかいのの方がいいんですもの……ついでに旦那を連れて帰りますね……
!!
そして辞書などでもその扱いに「するめ」はしっかりと製法や使うイカの種類等が記されており、「あたりめ」は「するめ参照」や「するめの忌詞」とあっさりめで記載、そして「さきいか」に関しては「記載自体なし」の辞書も多い、などと結構な区別をつけられています。
「するめ」以外、ちょっとかわいそう……あと、冒頭のおじさんも、きっと今頃奥さんに怒られてるだろうから、かわいそう……
……ではここで、もう一度3つのおさらい、そしてもう少しだけ掘り下げた3つを比較しつつ見ていってみることにしましょう。
どんな食べ物?
-
◎するめ: イカの胴を切り裂き、内臓等を取り除き干した食品。イカの素干し。縁起物としての活躍も。天日干しも機械での乾燥もあり
→ 干すと水分が抜けて旨味が凝縮されます。重みは何と20%ほどに。
◎あたりめ: するめの「する」を嫌い、その代わりの忌詞としてつけられた「するめの俗称」
◎さきいか:「するめ」をあぶり焼きしたものを加工した「するめさきいか」や「生のイカ」を使った「ソフトさきいか」をはじめ、様々な商品がラインナップされている柔らかな食感が売りの「イカを裂いて作る加工品」
使われているイカは?
-
◎するめ(あたりめ): 主に「スルメイカ」「ヤリイカ」「ケンサキイカ」
→ 漁獲時期により使い分けられています。他にも「コウイカ」「シリヤケイカ」「アオリイカ」、珍味のような感じで「ホタルイカ」もワタ(内臓)ごと干され商品化されています。
◎さきいか:「スルメイカ」や「アカイカ」などなど
→ こちらは「イカの種類」というより「製法勝負」といった感じ。味のあるものがほとんどなため、原材料は漁獲量に合わせ使われることが多いようです。
家でも作れる?
♦アオリイカのスルメの作り方(一枚開き・捌き方)
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=tjNfhvIFeHU&w=560&h=315]-
◎するめ(あたりめ): 作れます!
→「イカの胴を裂き~」の工程をそのまま実践すれば、予想以上に簡単に作れます。ただし、干す際には串などに刺す等、丸まり防止を忘れずに! 少し塩味をつけたい場合には3~10%の塩水に10分~20分程度漬けてから干してください(大きさにより、漬け込む時間が若干変わってきます)。
◎さきいか:「するめさきいか」なら、するめをあぶって裂けば出来上がり。ですが、ローラーで伸ばすなどの工程が抜けるため、まさに「手作り」といった感じの、それはそれでおいしいものになるかと思います。味付けは元となるするめの味に左右されます。
カロリーと栄養素のアレコレも気になる!
さて、まず原材料となる「イカ」は「動脈硬化の予防」「眼精疲労の緩和」「肝機能の強化」などに有効な栄養素を多く含む食品。そのイカの加工品である「するめ・さきいか」の栄養素の特徴は「高たんぱくで低カロリー」なこと、「タウリンを豊富に含んでいる」ことです。
また「噛みごたえの良さ」は、歯やアゴを強くすることはもちろん、眠気防止や脳の活性化にも役立ってくれます。
「するめ」には敵いませんが、「さきいか」の噛みごたえも他のおつまみやおやつに比べれば大したものです。
この噛みごたえはダイエットにも繋がります。
これだけでも、もうかなり優秀。
さらに表面の白い粉(ソフトなタイプのさきいかではわかりにくいかもしれませんが)はアミノ酸の一種の「タウリン」。肝機能の向上に役立ち、コレステロール値を下げ、ついでに便秘解消にも一役買ってくれる優れた成分です。よく栄養ドリンクなどの謳い文句にも使われていますね。
そしてたんぱく質も豊富。何と70%近くを占めています。その消化率は90%、牛乳に匹敵するほど、とも言われています。
その上、ミネラルも多く含み、脂質・糖質はごくわずかなのです。
素晴らしい! すごいぞ、イカ!! そしてイカの加工品!!
ただし、コレステロールも豊富なのですね。
……
ですが、さきほどの「タウリン」がイカの最大の弱点である「コレステロール」を下げる働きも持つため、すべてとはなりませんが若干の相殺も兼ねてくれています。ですが、やはりここはネック。
コレステロールが高くなると、動脈硬化、さらには心筋梗塞や脳出血などの危険性を高めてしまうことにもなりますので、食べすぎには注意です。
とはいうものの、食べ過ぎなほどにするめやさきいかを食べる、というのは、なかなかないシチュエーションかと……要は「食べ過ぎちゃダメなもの」の一つとして(大抵の食品は食べ過ぎると、なにかしらダメ部分がでてきます)覚えておくことが大事なのです。
優秀な栄養素をかなり含んでいますので、以下「するめ」での代表的なものをサラッと挙げていきます。
- 先ほど書いた「タウリン」
- ミネラル: 骨粗鬆症や老化の防止などにも役立ち、成長促進や代謝を助ける働きも持ちます。
- ビタミンE: 強い抗酸化作用を持ち「若返りのビタミン」などとも呼ばれ、生活習慣病、老化の予防にも役立ち、さらには血行を良くしてくれたり、美肌作りにも有効な成分。
- ナイアシン: 炭水化物や脂質の代謝には不可欠な栄養素で、血液の循環や脳神経の活動も促進してくれます。
- DHA / EPA: 青魚に多く含まれる成分ですね。生活習慣病予防のプロ的働きで血液をサラサラにしてくれたり、頭をよくする、などと言われ有名となった成分です。悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やしてくれる働きもあります。
表示等を見て、なるべくその量が少ないものを選ぶ必要があります。
また「塩分量」もするめと比べると、かなり多め。
一般的なもので、100g中に含まれる塩分相当量は「するめ / 3g」に対し「さきいか」では7gとなっています。
カロリーは、
- するめ: 334㎉ / 100g
- さきいか: 279㎉ / 100g
ですが、先ほどの「塩分」、食べていると喉も乾きます。食感も、それに拍車をかけていきます。
せっかくの噛みごたえ、高たんぱく・低カロリー、ついでに優秀な栄養素も持っている彼らも「喉が渇いたからコーラがぶ飲み」や、また「ヘルシーなつまみだから、その分アルコールがジャンジャンいける」などの前では無力なものと化します。
ダイエット目的で間食やおつまみに選んだのに、完全に逆効果……とならないために、ここにもご注意を!
終わりに……
おいしくて、高たんぱくで低カロリー、その他、優秀成分もそこそこに含んでいる「するめ(あたりめ)」「さきいか」。食べたから、といって何かがたちどころに改善されるわけではありませんが、間違いなくポテチや唐揚げの代わりに食べれば、もの凄くカラダも喜ぶ食品たちです。
コレステロールや塩分、さきいかでは添加物など、注意すべき点は気にとめておきつつ、これからの出番が増えるかも……な気分になっていただけましたら、きっと彼らも大喜びのはず。ぜひ口に入れる前に「おまえは、さきいかだ。で、おまえ、するめな。次回食べる時はあたりめ、って呼んでやるからな」などと話しかけてやってくださいね(ただし気持ち的に余裕のある時限定、そして絶対心の中で)。
いかがでしたでしょう。
「するめ・あたりめ・さきいか」のモヤモヤは、少しは解消されましたか?
今日もおいしくビールが飲める! のお手伝いにもなっていましたら幸いです!
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