薄々事情はわかります……
もしかしたらおばあ様は「かみゆいさん」とおっしゃっているのではないでしょうか?「髪結い」さん、ですね。年配の方の中には「床屋」のことを「髪結いさん」と呼ぶ方もおられます。
さて「美容院・美容室・床屋」です。
「床屋」と「美容院・美容室」が違うのはわかる。でも「美容院」と「美容室」って、何が違うんだ?
床屋さんって、美容院でも働ける?
男が美容院でカット? ふん、軟弱者め。日本男児なら床屋に行かんか! 全く最近の若者は!
すみませ~ん、床屋さ~ん。オレ頼んだの、パンチパーマじゃなくて、もっとオシャレなパーマだったんスけど……
値段は? 今のご時世、そこが一番肝心よ! 安いなら私、床屋でもどこでも行くわ!
っていうか、何でいくつも呼び名があるの? 3つとも、髪切るとこでしょ?
などなどなど……
イメージ的には「男性 = 床屋」「女性 = 美容院 / 美容室」のような気もしますが、最近では男性でも美容院に行きますし、「ここは床屋ですか?」と聞きたくなるようなスタイリッシュすぎるオシャレな床屋さんも見かけます。
うーん。なんで統一しちゃわないんだろう。謎です……
……「美容院・美容室・床屋」値段も含め、違いを解説いたします。
思ってた以上に「床屋」のクオリティー高し!! などと新しい発見にも繋がったり……するかもしれません!
目次
「美容院・美容室・床屋」の違いはココ!
まずは「美容院」と「美容室」の違い。この2つは、実は同じものを指しています。
要するに呼び方の違い、オーナーさんの命名センスの問題です。「○○美容院」でも「××美容室」でも、どちらをお店の名前につけてもいいのですね。
そして「床屋」。こちらは「理髪店」などとも呼ばれます。
「理髪店」の呼び名の一つが「床屋」です。その他「散髪屋」「理容店」などとも呼ばれますが、そのどれで呼んでもよし、です。
ただし「美容院・美容室」と「床屋(もしくは「理髪店」など)」は決定的に違う部分があり、「美容院・美容室」で働くのは「美容師さん」、一方の「床屋」では「理容師さん」となるのです。
ここ、違うのですね。どちらも免許が必要ですが、「美容師免許」では「理容師」として働けず、同じく「理容師免許」では「美容師」の仕事をすることはできません。
なんで? どっちも髪の毛切ってるのに?
ダメなのです。
「美容院・美容室チーム」と「床屋」、2つに分けて少し詳しく違いを比較してみましょう。
「美容院 / 美容室」と「床屋」はココが違う!
「美容院・美容室」で働く「美容師さん」は「美容師法」という法律で定められている業種。一方「床屋(理髪店)」で働くのは「理容師さん」。こちらは「理容師法」で規定です。
ここが一番大きな違いですね。
さらに法律用語では「美容院(室)」は「美容所(びようしょ)」、「床屋」など理髪店は「理容所(りようしょ)」とされています。
そしてその法律により、
- 美容: パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により『容姿を美しくする』こと
- 理容: 頭髪の刈込、顔そり等の方法により『容姿を整える』こと
「理容」つまり床屋さんの「頭髪の刈込・顔そり」はイメージ通りですが「美容」には「カット」的な意味合いのものが特に記されていないのですね。
美容院でのカットとは「パーマなどの一環として」とされています。
ただしこれらの法律が施行されたのは「理容師法」は昭和22年、「美容師法」でも昭和32年、かなり古いのです。
上記の定義の通りであれば「床屋でのパーマ」「美容院での顔そり」はNG。
ですが、実際には昭和40,50年代あたりからは「床屋」でもパンチパーマなどの男性向けパーマがなされるようになり、顔そりのできないはずの美容院などでも「化粧をするために必要」な軽い顔そりであればOKのところも増えてきています。
床屋さんに行く女性はまだまだ少数ですが、美容院(美容室)でカットをする男性も今では珍しくありません。
こうなってくると「定義」はあってないようなもの。いや、ありますし、その通りの部分も多いのですが、拡大解釈の幅が大きくなってきているのですね。
外観からは美容院のようにも見える床屋なども増えてきています。
もはや見分けは不可能か?
大丈夫です!
床屋には不滅のシンボル「サインポール」が設置されていることがほとんどなのです。
赤・白・青のラインがクルクル回っているアレのことですね。
絶対に置かなくてはいけないわけではないのですが、サインポールは日本だけではなく、全世界の理髪店(ヘアサロン)に共通して設置されている物。
何となく、スケールが凄いです。美容院には全世界共通の何か、というものはないのです。
と、いうより「美容院」と「床屋」を分けているのは実は日本だけなのです。
アメリカなどでしたら「ヘアサロン」ですね。床屋も美容院もなく「ヘアサロン」で2つをまかなっています。
ではなぜ日本には2通りの「髪を切る場所」があるのか?
日本人って几帳面だから、とか?
いえ、昔の男性の髪型に起源あり、なのです。
頭頂部を剃って(月代【さかやき】)束ねた毛髪をのせる(いわゆる丁髷【ちょんまげ】)をのせるスタイルって、近代国家を目指す上でどうなの? ということで1871年に明治政府から発令されたのが「絶対に切りなさい」ではなく「もうその髪型に拘る必要なし、自由にどうぞ」といった内容の「断髪令」です。
その後明治天皇が近代風の髪型に変えたことで髪を切る男性続出。かの有名な「散切り(ざんぎり)頭を叩いてみれば文明開化の音がする」の時代です。
ここで活躍したのが今でいう「理容師」さんです。
さらに遡れば男性の髪を結ったり月代を剃ったりしていたのは「髪結い」と呼ばれる職業の方たちでした。冒頭のおばあ様がおっしゃっていたのはこれですね。
簡易な「床」を設けた店舗で営業していたことから「床店(とこみせ)」、そこで働いているのが「髪結い」さんなので「髪結い床」、それがのちに職業を表わす語の「屋」をつけ「床屋」となったのですが、そこはちょっと措いておき、とりあえず上記の「文明開化」の頃に戻ります。
つまり、この頃理容師のお世話になっていたのは男性。
女性は髪を「切る」のではなく「結う」のが一般的だったのです。
そこで男性の理容(床屋)に対し、女性は「美容」となったわけです。
さきほどの定義に少し近い、そもそも「理容」と「美容」は根本が違うのですね。
現在の「理容師免許」「美容師免許」の資格取得のための学校でも、その学習内容はかなり異なってきます。
「理容師」さんの真骨頂は「剃りの技術」。「美容師」さんは「美に対する諸々の技術」です。
刈り上げなどの男性向けのカット法、同じパーマでもパンチパーマに代表されるような細かいパーマを施す練習が主となる「理容師」さんに対し「美容師」さんはそれよりも髪の長い女性向けのカットやパーマもきちきちのものでなくふんわりとしたウェーブをかけるような実習が主。
そして、それらの技術を修得して「理容師」「美容師」の国家試験をクリアした人たちがそれぞれ「床屋(理髪店)」「美容院(美容室)」へと分かれ巣立っていきます。
よって初めの方に話は戻り「『美容師免許』では『理容師』として働けず、同じく『理容師免許』では『美容師』の仕事をすることはできない」、となるのです。
現在ではどちらの免許も取得している方もおられますし「定義」自体もほぼほぼ建前のようにもなっているため、前述のように「美容院・床屋」のどちらかでしかできないこと、というのはあまりなく、その境目もだいぶぼやけたものになってはいるのですが、これが本来の「美容院(美容室)」「床屋」の違いです。
ですがそれは、あくまで「本来」の違い。
見た目もオシャレな「床屋」さん、男性も普通に「美容院」などでカットです。
逆パターンがあまり多くない(女性が床屋さんでカットやパーマ)ことを考えますと、「床屋」さんの方が「美容院」に歩み寄ってきている、と言えるのかもしれません。
安いのはどっち? 値段を比較!
「美容院(美容室)」と「床屋」、どちらもそれほど内容的に変わらないのであれば安い方がいい。その通りです!! でも女性が「床屋」に入るのは勇気がいるかも……
実際に今まで通っていた方から鞍替えするかは別として、それぞれの平均的な価格を以下に挙げていきます。
- 美容院(美容室): 約4000円~6000円前後
- 床屋: 平均2000円前後
さらに大抵の美容院ではオプション料金を取られるシャンプーも、床屋では込み。プラス顔そりです。
男性の場合、丸坊主や単に短くするだけであれば、美容院の選択ではもったいない感が強烈なまでに凄いです。
ですがラフなオシャレパーマをかけてもらう、などでしたら、前述のように、ゆるいウェーブのパーマを学生時代にたくさん練習してきている美容師さんのいる美容院の方がいいかもしれません。
ただし美容院によっては顔そりをしてくれるところもありますが、ヒゲ剃りはしてもらえません。
男性のヒゲを剃ることができるのは、刃物の扱いを学んでいる理容師さんだけです。
女性の場合は……うーん、床屋に行くなら「1000円カット」的なところの方が抵抗はないかもしれませんね。もちろん選択は自由です。顔そりの後の熱々の蒸しタオルは多くの男性をガッツリ虜にしています。熱く語るその姿からも気持ちよさが伝わってくるほど。
さてさて、最近のスタイリッシュな床屋では、まれに先ほどの「サインポール」を設置していないこともあります。
そんな時頼りになるのが「価格表」。
店頭などに貼ってあるかと思いますが、そこに「顔そり」の文字があり、カットとセットになっていいれば、ほぼ間違いなくそこは「床屋」です。シャンプーが別料金になっていることもありません。よっ! 床屋! 太っ腹!
男性の場合でしたら、とにかくスッキリ短くしたいのであれば「床屋」、今回はちょっとオシャレに髪を遊ばせるスタイルで、などなら「美容院」という選択も十分ありですね。
ポイントはそこで働く「美容師」さん、「理容師」さんが本来は何を得意としているか、ということ。
現在の「美容院・床屋」事情は前述の通りほとんど変わらないものとなってきていますが、免許修得のために学んできたことは違うのです。
お蕎麦屋さんで働く調理師さんはハンバーガーを作ることもできるでしょうが、ハンバーガー屋さんのハンバーガーには敵わないのと一緒(ちょっと違いますが)。
最近ではどちらの免許も持っている方も増えているようですが、それでも来るお客さんの絶対数により、働く場所のニーズに特化した腕前になっていくのです。
ですが、男性だから「床屋」じゃなきゃダメ、女性が「床屋」に行くのは間違い、というわけではないのです(私の祖母は本当に床屋で髪を切っていました。そしてとてつもなく男前なおばあちゃんでした)。
「美容院・美容室・床屋」のまとめ★
♦美容室みたいなオシャレな理容室 小牧のhair office 10・9
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=51h5M218KZU&w=560&h=315]剃りの技術を磨く「床屋」と、美に対する技術を磨いている「美容院(美容室)」。
どちらもプロです。初めて美容院デビューした時のことをふと思い出してしまいました。大人になったなぁ、と感じていた小学3年生の頃……
さて、ではここでもう一度「美容院・美容室・床屋」についてのおさらいです。
3つの違いを比較していってみましょう。
「美容院」と「美容室」って何が違うの?
何も違いません。屋号としての違いだけです。
とりあえず定義は?
- 美容院 / 美容室: パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること(昭和32年に制定)
- 床屋(理髪店): 頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること(昭和22年に) ➡ ですが、現在では美容院でも化粧をするために必要であれば顔そりをすることも、また床屋であっても男性向けのパーマを施すこともあります。
法律的には?
- 美容院(美容室): 美容所(びようしょ)
- 床屋(理髪店): 理容所(りようしょ) ➡「美容師」「理容師」は「美容師法」「理容師法」により業務の範囲が決められています。
理容師さんにしかできないことは?
- 男性のヒゲを剃ること
➡「美容師」さんは刃物の扱いを学んでいないため。
カット料金の安いのはどっち?
「床屋」さんの方です!- 美容院: 平均4000~6000円前後
- 床屋: 平均2000円前後 ➡ さらに美容院ではオプション料金となる「シャンプー代」も床屋では込みで上記の料金です。顔そりももちろん込み。美容院では上記の料金プラス「シャンプー代」となるところが多いようです。
外観で見分ける方法は?
- 床屋さんには「サインポール(赤・青・白のラインが回っているアレ)」が大抵設置されている。
- 料金表などに「顔そり」表記があり、上記のようにシャンプー代も別料金になっていなければ、ほぼ100%「床屋」さん。
- どちらもない場合は店内を覗いてみれば大体わかります。お客さんに圧倒的に男性が多ければ「床屋」である可能性大。
「床屋」さんでも着物の着付けをしてくれる?
してくれません!!普通に美容院に行ってください。イベント等ある時期は混みます、早めのご予約を!
終わりに……
「床屋」に行ってみたい……というか蒸しタオルが恐ろしく魅力的に思えてきました。あれは家ではできないのでしょうか……さてさてどちらに行ってもいいんだよ、と言われても「女性が床屋」はハイレベルすぎ、ハードル高すぎ感がもうどうしようもない感じですが、男性の皆さまは、本当に自由。いいですね。
現段階では、それでもやはり「床屋派」が多いようですが、美容院に男性がいても特に違和感を感じないくらいまでにはなってきています。
それに合わせ「男性の髪のカットが得意」な美容師さんも増えているようです。
そして「床屋」も、もはやおじ様&おじい様たちのオアシスだけにとどまらず、回っているサインポールに場違い感を覚えるほどのオシャレ床屋も結構多いのですね。
「美容師免許」「理容師免許」、どちらも国家資格です。
カットやパーマ、思っていたより奥が深いです!!
美容院に行っても、いつもカットのみの自分に何となく罪悪感……
床屋派の男性の方も、ぜひ一度美容院体験をしてみてはいかがでしょうか。
おぉ、こんな髪型が俺には似合うのか!? な発見があるかもしれません!!
さてさて、いかがでしたでしょう。
「美容院・美容室・床屋」の違い、気になるカット料金の比較など、モヤモヤは多少なりとも薄れましたでしょうか。
試しに、あくまで試しにだけど、次回はいつもと違うとこ、行ってみるかな、などなど、何となくでも思っていただけましたら嬉しいです!!
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