「源泉徴収」? 温泉の素的な何か?
……言葉としては違いが何となくわかるものの「源泉徴収」の一言であっという間にかかわりたくない言葉と化してしまう「謝礼と報酬」。
そもそも「源泉徴収」って何? などなどの疑問にお答えします。
ちなみに「源泉徴収」は温泉の素ではなく税金の一種。所得税の中に含まれるものです。
「謝礼」や「報酬」をもらうのは嬉しいけど、税金取られるの?! の問題ですね。
では、それぞれの「いただきもの」について、少しずつ見ていってみましょう!
目次
「謝礼」と「報酬」の違いはココ
感謝の気持ちを表す言葉や金品、またその金品を贈ることを表した「謝礼」。それに対し「報酬」は、働いてくれたことや物を使用した対価として給付される金銭、物品などのことです。
……どちらも似たような意味のようですが、どちらかといえば「謝礼」は「こちらの気持ち」を金品に変えて、といった感じ。
「報酬」は「相手の働き」などに対して適当な額を支払う、といったイメージです。
それぞれの同義語を見てみますと「謝礼」では「謝意・礼金・お礼・労う・賞金・褒美」など、「報酬」には「ギャラ・手当」などとなっています。
何となく2つのイメージの距離が開いていくような……
この距離の違いが「源泉徴収」という名の税金にどう関わってくるのか?
まずは簡単に「源泉徴収」って何? というところからいってみましょう!
源泉徴収とは?
先ほどもサラッと書きましたが「源泉徴収」は所得税の中に含まれる税金のこと。例えばサラリーマンの皆さんであれば企業側(給与を支払う側)が給与を支払う際、先に大体の税額を天引きし、労働者に支払うシステムのことを指しています。
労働者がいずれ払う分を企業側が先払いで国(税務署)に納めてくれるわけです。
ですので本来の給与を1000とするなら大体の税額「100」を引いた「900」を労働者は受け取ることとなります。
「なんか損してない?」と思うかもしれませんが、これは所得税の前払いか後払いか、の違いです。
では企業側が支払ってくれたのなら、もう所得税の申告はしなくていいのか? といいますと、これはダメなのですね。
「源泉徴収」された税額はあくまで「大体このぐらい」といった額のため、所得税申告の際にその差額が清算されるのです。
サラリーマンの皆さんであれば年に一度「年末調整」をされている(会社に書類を提出など)と思いますが、その時「調整」されるのがこの「源泉徴収」。多く納めすぎていれば戻ってきますし、逆に足りなければ追加で支払う必要(追徴課税)が出てきます。仕方ないです……
建前上、所得税を納めるのは「所得のある本人」、つまり労働者自身(申告納税制度)なのですが、この「源泉徴収」に関してのみ納付義務は「企業側」となっています。
怠れば企業側には罰則が科せられるため「自分でやるから天引きしないで」というのは通らないのですね。
また、源泉徴収の対象となるのは「個人への支払い時」のみとなり法人への支払いでは必要ありません。法人税を払っているため、二重課税になってしまうからです。
ではサラリーマンの方ではなく、フリーランスの方への支払いの場合はどうなるのか? を続いてみてみましょう。
報酬とは? 源泉徴収はどうなる?
サラリーマンの方の「給与」に当たるものが、フリーランスの方の「報酬」です。「給与」との違いは「雇用契約をしているか否か」。
「報酬」とは、雇用契約はしていないものの、ちゃんとした取り決めのもと支払われる対価、となります。
さて、こちらの「報酬」、個人(会社員ではない)または個人事業主に支払う場合で「源泉徴収」の対象となるものには、
- 作家・デザイナーなどへの原稿料・デザイン料
- 大学教授などへの講演料
- 弁護士や税理士など、特定の資格を持った人への報酬
- 社会保険診療報酬を個人経営の支払う場合
- スポーツ選手の契約金等
- モデル・コンパニオンへの報酬、またはその衣装代や報奨金、外交官
- 個人経営のプロダクションなど
- 広告宣伝するための50万円を超える賞金、懸賞、福引
サラリーマンの方の「年末調整」の代わりになるのが、個人(または個人事業主)の場合では「確定申告」ですね。
1年間の所得税額を計算し、その差額を受取りましょう(追加で支払うこともありますが)!
ですがこの範囲はわかりづらい上に細かく分けられています。
「支払わなくてもいい、って思ってたのに……」ということにならないよう、他の業種はさておき、ご自分の仕事に関してだけでも一度確認を取ってみると安心です(最近の税務署はずいぶんと丸くなってきているようで、ちゃんと丁寧に教えてくれますので怖くないです)。
また、デザイン関係の「義務アリ・義務ナシ」はなかなか複雑なようですが、大体の目安として「工業 / クラフト / グラフィック / パッケージ / 広告 / インテリア / ディスプレイ / 服飾 / ゴルフ場や遊園地、庭園など」のデザイン関係では「源泉徴収」が発生するようです。
しかしやはり多岐に分かれますので、最終的に判断するのは「税務署」。もう、これどっちなの? と悩んだら「税務署」に相談してしまうのが一番のような気がします(聞く分には優しそうですが、未払いには厳しそうですし……)
謝礼とは? 源泉徴収は払う?
さて感謝の気持ちを言葉や金品で表したり贈ったりする「謝礼」。「報酬」との違いは言葉のニュアンスだけなのでしょうか?
例えばボランティアなどでお手伝いをしてくれた方への「謝礼」。
ボランティアに来てくれた人は当然、無報酬だということを知っています。けれど、心ばかりにせよ、何かお礼をしたい、ということでいくらかを包んでお礼とする、などといった場合には「源泉徴収」の対象とはなりません。
あらかじめ決めてあった「報酬」ですらありませんね、これはほんの気持ち「謝礼」です。
このように「謝礼」とは「営利目的ではないもの」として扱われ、支払い側が企業であった場合でも「税金処理の不要なもの」を指します。純粋な交際費など、会社の損金として認めらていれない(否認されている)ものに関しては「源泉徴収」する必要がないのです。
また、地域の活動などで呼んだ講師の方などに、初めから無償であること等が伝えられており、車代などの名目で渡す金品も対象外ですね。
「謝礼」はその代わり「報酬」より少額なのが一般的。あまり高額な「謝礼」ですと「確定申告」の際、税務署に指摘を受け追徴課税、となってしまうこともあります。
定期的に「謝礼」の支払いがある等、「給与」として扱われてしまうような場合にも注意です。
そのためそういった種類の「謝礼」になり得ると思われる場合には、支払い側があらかじめ税金分を引いた(つまりは源泉徴収分です)額を渡す、ということもあります。
確定申告時にそれらの記載された「法定調書」を提出、それを元に謝礼・謝金などが戻ってくる、または追加で納める、となります。
こういった場合ですと「謝礼」でも「源泉徴収」あり、となりますね。
その金品を「報酬」と見るか「謝礼」と見るかは案外微妙なこともあります。
最終的な判断はやはり税務署なのですが、絶対に微妙ではない、本来の意味での「謝礼」は「源泉徴収」の対象とはならないのです。
「謝礼」と「報酬」の詳しい違いと「源泉徴収」との関係
税金を納めるのは国民の義務、というのはわかっていても、あまり複雑だと「もう!! もうちょっと簡単にしてくれないと払いたくなくなっちゃうよ!」となってしまいます。しかし、そうなった場合罰せられるのは「給与や報酬などを受け取った本人」ではなく「それらを支払った企業」などの方。
「源泉徴収」に関して、支払いの義務があるのは、あくまでも「支払う側」なのです。受け取る側はあまりわがままは言えません……
さて、そんなわがままを言いたくなる気持ち防止も兼ねて、ここで一度「謝礼」と「報酬」の違い、源泉徴収がどう関わってくるか等、まとめてみましょう!
支払う側、支払われる側の関係は?
- 企業(給与や報酬を支払う): 源泉徴収をする側
- 会社員やフリーランス(給与、報酬を受け取る): 源泉徴収される側
その「源泉徴収」とは?
- 企業側からすれば: 計算をして納付するのがちょっと面倒
- でも税務署側にとっては: 未納を防げる
- そして会社員やフリーランスなど納税者には: 所得税の前払いのようなもの → 企業等、給与・報酬を支払う側が「おおよその税額はこのくらい」とした分を、支払いの全額から差し引いて先に国に納付するシステムです。サラリーマンなど給与をもらっている方は「年末調整」で、フリーランス・個人事業主の方は年度末の「確定申告」で正確な税額との差額を清算します。
(対象となるのは個人です。法人は法人税を納めているので二重課税となり普通は対象外。これに当てはまらない法人もありますが、あまりに細かいルールのため、心配な法人様は一度ご確認を!)
「報酬」と「給与」の違いは?
- 雇用契約の有無です。 → あれば「給与」、なければ「報酬」となります。つまり「サラリーマン」など会社員の方は「給与」、フリーランスで仕事をされている方は「報酬」を受け取ります(パートなどは社員と同じ職務をこなす、ということで「給与」です)。
「報酬」と「謝礼」の違いは?
- 報酬: 労務、または物の使用への対価として支払われる(給付される)金銭、物品のこと → 支払う側、受け取る側、お互いの取り決めのもと、支払われます。
- 謝礼: 感謝の気持ちを表すための言葉や金品、またそれらを贈ること → あらかじめの取り決めなどは当然なし。貰うと「そんなぁ、気を使わないでくださいよぉ」などと言いたくなることも。報酬よりも少額であることが一般的。
「源泉徴収」での違いは?
◎支払う側の「税務処理」の違いとなります。- 謝礼: 非課税処理、税金処理は不要
- 報酬: 税金処理の必要となることも → 原稿料やデザイン料、講演料、弁護士や社会保険労務士などの「士業」、プロのスポーツ選手やモデル、外交官、広告宣伝のための賞金などは対象となります。一度ご自分の職種でのチェックをお願いします。
「源泉徴収」が不要なのは?
- 一般的な「謝礼」 → ボランティア的に講師を招いた際のお礼としての車代など。
- 完全に「交際費」とされるもの → 会社の損金として算入されないもの。
個人・個人事業主が知っておいた方がいいポイントは?
- まずは前述の「フリーランス(または個人事業)でも源泉徴収が必要となる」場合にあてはまるか? は重要。
- 平成25年1月1日から平成49年12月31日まで「復興特別所得税」が含まれるようになりました(直接「報酬」に関係しているものではありませんが、確定申告の際の徴収所得税に関係してきます)。
- 請求書に消費税が分けて記載されていれば、その分は除かれての計算になります(消費税も「税」なので、二重課税です)。どの部分が消費税分なのかわからないと、総額での計算となってしまいます。可能なら請求書には分けて記載してもらえるようお願いしてみてください。
- 「源泉徴収」で前払いした分は「確定申告」で戻ってくるかもしれないものです! → 実際、会社員の方などの多くは「年末調整」で戻ってくる還付金を楽しみにしていたりするのです。
♦復興特別所得税
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=hqFj7kKW_fc&w=560&h=315]「報酬」「謝礼」をもらったらどうすればいい?
ありがとうございます! と言えばいいと思います!手続きに面倒な部分もあるかと思いますが、「報酬」なら「あなたの働きに対する正当な評価」ですし、「謝礼」であれば「あなたの行いに対する純粋な感謝」です!
終わりに……
受け取った側でなく、支払う側に納付についての罰則があったり、「給与・報酬・謝礼」などの言葉の違いがちゃんとその後の申告の際の違いを生んでいたり……と、やっぱり税金やら法律やらは複雑です。法律関係のお仕事の方、大変ですね、すごいなぁ、と本気で尊敬してしまいます!
全てを把握することは難しすぎますが、自分の仕事に関してぐらいなら何とか……理解しておきたいです! せっかく「報酬」や「謝礼」をくださった方に迷惑かけたくないですし……「源泉徴収、取らない方向で!」などなどのわがままも言わないです!
いかがでしたでしょう。
所得のあるところに税金あり! ですね。
その税金が、なにかいい使われ方をしてもらえるよう、「謝礼」「報酬」にも感謝を込めつつ祈っております!
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