胃も痛いし、お腹も下ってる、何となくイライラするし眠れない、あれ? 何だか身体がまっすぐにならない……
身体も不調だけれど、心もどうにもスッキリしない……
「風邪だからノドが痛い!」などではなく、自分でも「不調」であることしかわからないような時、いかにも頼りになりそうな「心療内科・精神科・神経内科」。どこも心に関する不調を取り除いてくれそうなイメージがあります。
ですが、いざ、このうちのどこを受診すればいいの? となると「……もうどこでもいいから、とりあえず助けて!」ともなってしまいそうですね。
心が疲れている時に、受診する病院選びでまで悩むのは本当につらいものです。
似たようなイメージのこちらの3つですが、それぞれに扱う症状には専門があり、ご自分の状態・症状に合った病院選びをすることで、より速やかに不安や不調を取り除く手助けをしてくれる診療科となっています。
「精神科」「心療内科」「神経内科」、3つの違いを説明いたします。
風邪と同じで「心の不調」にも早めの受診、治療が大切です。
できるだけ早く受診され、少しでも早く心の回復に繋がりますよう、何かのお役に立てれば幸いです。
目次
心療内科・精神科・神経内科は何が違う?
まず大まかに、それぞれの専門とするものの違いを捉えておいてください。- 精神科: いわゆる「心の病」といわれる、抑うつや不安、不眠、幻覚・幻聴等、精神疾患を主に扱います
- 心療内科: 身体に症状は出ているが検査では異常が出ない、またはストレスなど、心が原因となった身体の疾患など、主に心身症を扱います(身体の症状がメイン)
- 神経内科:「神経系」を診る「内科」です。脳血管障害やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの、主に脳神経系の疾患を扱います
「心療内科」と「精神科」、 一緒じゃないの?
♦精神科と心療内科の違いとは?【精神科医・樺沢紫苑】
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=AtwsaSU5M8E&w=560&h=315]ここが、一番わかりにくいところですね。
前述の「大まかな違い」をみると、何となく納得してしまいますが、実際には症状というのは、そんなにはっきりとは分けられるものではないのです。
例えば「不眠」。
「精神科」で扱う「不眠」と「心療内科」で扱う「不眠」はどこが違うのか?
同じようにも見えますが、何かきっかけとなる出来事があり、その日以来(課長に昇進して部下と上司の間で板挟み、とか)眠れなくなった、などであれば「心療内科」。内科的なアプローチで、身体に対しての治療をしていきます。
一方、特にこれ、といったきっかけがあったわけではなく、むしろ急に性格的にも変化があり、不眠に加え、不安やイライラ、気分の落ち込みも伴う、などといった場合には「不眠」という身体への症状が出ていても「精神科」の受診が最適、となります。こちらは主に精神・心に対しての治療です。
この違いには、先ほどもチラリと書きました「心身症」というものがポイントとなってきます。
そして「心療内科」の考えの基礎にある「心身医学」というものも関係してきます。
少し遠回りになってしまいますが「心身症」と「心身医学」について、さらっと見ていってみましょう。
★「心身症」と「心身医学」と「心療内科」の関係
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◎心身症とは?
→ 心理的なことが影響して、不整脈や頭痛、不眠、めまい、潰瘍、脱毛などが現れる症状です。
ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除きます。
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◎心身医学とは?
→ 心と身体、その人を取り巻く環境を別々に考えるのではなく、そのすべてと、その関係性を統合的に見ていこうとする医学のことです。
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◎心療内科との関係は?
→ 心療内科では、この「心身医学」の考えを基に「心身症」を主に診ています。つまり、症状だけでも、心だけでもなく、そのどちらをも関係性と共に治療していこう、という考えです。ですが「心身症」は「身体疾患」を伴います。よってメインは「身体の症状を治す」こと、つまり心が原因の身体の疾患を扱う「内科」なのです。
同じ「内科」の「神経内科」とは?
「神経内科」とは、脳や脊椎、神経や筋肉など、脳神経系の疾患のうち、手術を必要としないものを扱う診療科です。手術が必要であれば「神経外科」ですね。「心療外科」はありませんが「神経外科」はあります。
CTやMRIで病巣が確認でき、運動や感覚などに関するもの、例えばその確認できる病巣による震え、身体が傾いてしまう、力が入らない等、神経の異常が疑われる症状が対象となります。
先ほど挙げました脳血管障害やパーキンソン病などの神経の病気など、精神的なものではない、実体を持った、脳神経系の疾患を扱います。
「心療内科」の「心身医学」からくる考えに基づいたものとは少し違った意味での、純粋に「神経系」を診る「内科」、といった感じですね。
また、CT、MRIなどで病巣が確認できれば「神経内科」、病巣はないけれど同じような不快感や痛み等が治まらず続くようであれば「精神科系」で診てもらうことを勧める、などともよく言われるほど「精神科」とも「心療内科」とも違った位置づけをされています。
3つの診療科、選び方のポイントはココ!
こうして見てみると「神経内科」と「精神科・心療内科」の違いは、大体わかるような気がしてきませんでしょうか。わかりづらい「精神科・心療内科」の、初めに挙げた「大まかな違い」も少しは具体的になってきたような……では、続いて、各科の違いも振り返りつつ、選び方のポイントを見ていってみましょう。
「精神科」と「心療内科」、ネーミング的にも比較的抵抗のない「心療内科」を受診でいい?
「心身症」には「神経症やうつ病など~は除く」という部分があります。同じように身体に現れる不眠や頭痛などでも、身体的な不調か、精神的な不調か、どちらの治療に より重点を置くか、優先的に治すべきか、という問題も出てきます。
「精神科」の医師は当然ながら「精神科医」です。精神疾患に関する専門家ですね。身体に現れた疾患よりも精神疾患の方がメインである場合にはやはり専門家のいる「精神科」が最適です。
「心療内科」の専門医であっても「精神科医」としての研修を受けていない医師もおられます。「心療内科医」はあくまで「内科医」であることが基本です。
軽い精神疾患なら「心療内科」、重くなれば「精神科」へ、というイメージもあるかと思いますが、「精神科」と「心療内科」では、そもそもの専門分野が違うのです。
ご自分の症状に合う医師のいる病院等を選ぶ上で、一番治したいところ(主訴)が「身体の不調なのか、心の不調なのか」は大きな目安となります。
また、受診に抵抗が少ない(ネーミングの問題で)、ということから「精神科」の専門医が「心療内科」の看板を掲げていることもあります(これは違反ではないのです。医師であれば、医療法70条に定められた34の診療科名から自由に選んでその名をつけることができるのです)。
心身症を患い、本当に「心療内科医」の診療が必要な方が、「心療内科」を受診したにもかかわらず、そのトレーニングを受けていない「精神科専門医」の治療を受けてしまう、ということもあり得るのです。敷居を低くしよう、といった配慮から、ますますの混同が生まれてしまっているのですね。
もちろん「心療内科」「精神科」ともに、看板通り、という病院等もたくさんあるのです。
けれど、そうではない場合もある、ということも、一応知っておいてくださいね。
現在では「精神科」でも「心療内科」でもなく「メンタルクリニック」というところも増えています。
こちらは「精神科・心療内科・神経科」の分野を扱っていますよ、といった感じなのですが、やはりそれぞれに得意分野(精神科か心療内科か)がありますので、事前の確認などもお忘れないようお願いします。
どんな症状を主に診てくれる?
- 心療内科: 心身症
→ メインは「身体の症状」ですが、実際の検査では異常が見られない場合、また、ストレスなどがその原因と考えられるもの、心が原因で身体に出た症状を扱います。ストレスなどからくる胃潰瘍や気管支喘息、めまいや不眠、腹痛や下痢など様々な身体疾患があります。「あれがきっかけかも」といった心当たりがご本人にある場合も多くあります。 - 精神科: 精神疾患
→ 不安や抑うつ、イライラ、幻覚・幻聴・妄想、また不眠などが挙げられますが、いずれも「身体の不調」というよりは「心の不調」がメインとなります。以前と打って変わり、急に性格が変わったように、周りからは感じられることもあります。 - 神経内科: 脳神経系の疾患
→ 手術の必要のない段階の脳血管障害やパーキンソン病などなど、脳や脊椎、神経、筋肉の病気を扱います。精神的なものではなく、実体のある、筋肉などの組織に繋がって信号を送ったりする方の「神経」系の症状です。
心、身体、どちらにも症状がある。どちらがメインなのか自分でもわからない……
本当に内科的な病気で不調なこともあり得ます。まずは内科で診断を受け、そこで何もないことを確かめてみましょう。
内科的な問題があればそこで診療を受け、そうでない場合、必要であれば「精神科」もしくは「心療内科」を紹介されることもあります。
またご自分では判断がつかない場合でも「精神科」「心療内科」どちらかに相談すれば、より適切なところを紹介してくれるので、それほど心配しなくても大丈夫です。
どちらに行けばいいのか迷った時には、ますは相談です。早めのアクションが回復に向けての第一歩です。
事前に電話や、病院のホームページなどがあれば確認しておくのも安心ですね。
「メンタルクリニック」、標榜科で見分けることはできる?
あくまで目安としてお考え下さい。-
◎内科・心療内科(と書かれていれば): 心療内科系のところが多いです
◎神経科・心療内科: 精神科系の専門医が治療を受け持つことが多いです
どうしてこんなに紛らわしいの?
元々「心療内科」が誕生したのは「精神科」よりはるかに遅く1963年のこと。九州大学で生まれました。ですので、現在の「心療内科」として診察をしている医師の9割近くが「精神科医」。「精神科」は受診しづらい……といって「心療内科」で診察を受けたつもりが、実はちゃんと「精神科医」の診療を受けていた、というのが実情だったりするのです。
もちろん「心療内科」の専門医に当たることも当然ありです。こうなってくると「運」なのでしょうか、それでは困ってしまいます……
また逆パターンで「心身症」を患った患者さんが「心療内科」を受診したにも関わらず担当の医師が「精神科医」だったり……それも困ります……
また「標榜科(病院や診療所などが掲げられる診療科のことです)」の問題、医師であれば定められた34の診療科名から自由にその標榜科を選べる、というのも大きな理由の一つです。
ありにもかけ離れた診療科名を標榜することはありませんが、そのことがかえって「精神科」「心療内科」を紛らわしくさせている要因ともなっているのですね。
……やはり事前の確認は大切そうです。
終わりに……
「心」はどこにあるの? と言えば多分「脳」、ですが「こころをあつかう」と一口に言っても、それぞれが独自の治療法で様々な角度からアプローチをしてくれているのですね。それだけ「こころ」は複雑、ということなのかもしれません。目に見えない痛みや不調は、誰にもわかってもらえないばかりか、自分でさえどう説明すればいいのか分からず、本当に苦しいものです。
かなりあいまいで紛らわしい部分もありますが、それぞれの分野の専門家がちゃんといてくれているのもまた事実です。
ご自分の症状に合い、また相談しやすいお医者様に出会われることを、心からお祈り申し上げます。早めの受診で、回復への一歩を踏み出せますように。
ですが、焦りは禁物です。絶対に禁物です!! 信頼できる医師や周りの方々と一緒に、ゆっくりと全快を目指してくださいね。
皆さまのお役に、少しでも立てていたらうれしいです。
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