「代表取締役」は「取締役」の「代表者」、「代表取締役社長」は「取締役の代表者」であり「社長」でもある人。
……!!
そのままなの!?
でも……そのままだとしても違いがやっぱりわからないんだけど……
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「代表取締役」と「代表取締役社長」、名刺に書かれる肩書が会社によって違っていたり「代表取締役副社長」や「代表取締役専務」がいたり……
相手は「偉い人」とわかっていても「だから、あなたは何なの!!」と思わず詰め寄ってしまいたくなったら大変です! 大事な商談が、ぶち壊しになってしまいます!
……そんなことはないかもしれませんが、確かにイマイチわかりずらい「代表取締役」と「代表取締役社長」の違い。
何が違ってどこで名称は呼び分けられているのでしょう。
名刺の肩書や契約時の注意点など含めまして「代表取締役」と「代表取締役社長」の違いを解説いたします。
「目指すは社長!」という方も「私、出世には興味がないのですよ」という方も「会社の偉い人」について、何かの参考としていただけましたら幸いです。
目次
「代表取締役」と「代表取締役社長」って何が違うの?
2006年5月1日に新しい「会社法」が施行され、会社の形態はますます多様化してきました。それ以前には「有限会社」を設立することもできましたが、2006年5月以降に設立した会社はすべて「株式会社」になります。
多様化し、特殊な例も出てきましたが、いわゆる一般の「株式会社」には「株主」がいます。その会社への出資者のことですね。
また「取締役」という会社の方針を決める人たち(株主総会で3名以上を選びます)がいて、「従業員」の皆さんがいます。
そして「取締役」が決めた方針を実行に移す「従業員」のトップ、まとめ役のような人を「社長」という肩書で呼びます。
さて「代表取締役」と「代表取締役社長」は上記のどこにいるのか?
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◎「代表取締役」とは、
- 選ばれた3名以上の「取締役」の中から「お互いに選びあって(互選して)『代表者』に選ばれた人」を指しています。それ以外の「取締役」には「代表」がつきません。 ◎「代表取締役社長」は、
- 「代表取締役」が一人で、社長も兼任しているのであれば、その人が「代表取締役社長」。
- 大きな会社ですと、複数の「代表取締役」がいることもあります(「代表取締役『専務』」や「代表取締役『副社長』」など)。その中でも「一番の代表者は私です」と明示するため、複数の代表取締役のうちの一人が「代表取締役社長」を名乗る場合が多いです。
実際にはもう少し、絡まっています……
では続いて、役割等、それぞれに分けて見ていってみましょう。
「代表取締役」とは?
先ほどもちらりと書きましたが2006年に施行された「新会社法」。それにより、必ずしも「取締役会」を設置する必要はなくなり、そのため「代表取締役を選定しなくても良い」ことにもなりました(有限会社でも「代表取締役」は必須ではありませんでした)。ですので「代表取締役」が誕生するまでを、まずは「取締役会」設置の会社、非設置の会社、を分けて見ていきましょう。
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★取締役会設置会社の場合
→「◎「代表取締役」とは」で書いた通りです。通常一人です(が、複数でも問題はありません)。必ず選任する必要があります。
★非設置会社(または有限会社)の場合 → 原則、取締役各々が「代表の権限を持つ取締役」。ですが、絶対に「代表取締役」がいなくてはならない、というわけではありません。
「代表取締役」の「代表の権限」って、どんなもの?
その会社の代表として「業務に関する一切の裁判上、または裁判外の行為をする」権限、また、会社を代表しての契約や株主総会や取締役会を執り行う(執行)権限等を持ちます。
- →「代表取締役」とは、法律用語でもあるのです。つまり「代表取締役」は、単に会社での呼称や肩書ではなく、会社のあらゆる決定権を持った「その会社の、法律上の代表者」となります。会社が何か問題を起こした時には、真っ先に矢面に立たされ、責任も負わなければならないのですね。大変です。
「代表取締役社長」とは?
「取締役」の中の「代表」で、かつ「社長」でもある「代表取締役社長」。まずはその「社長」部分についてです。
実はこの「社長」という肩書、法律上、何の規定もないのです。
あるのは「法律上」ではなく「職責上」。
つまり「社長」とは「会社内の業務の最高責任者」といった地位、または社内での肩書であり、社内外に向けてわかりやすく名乗るための役職名に過ぎないのですね。
さて、その「社長」。独立した役職として「代表取締役 」とは別の人に任せるのは、非常に効率が悪いのです。
「社長」は確かに会社内の業務においては最高責任者でありトップですが、対外的なことにおいては、権限がないからです。
例えば取引先との重要な契約書、また銀行からの多額の借り入れ、役所へ提出する書類などには「社印」、つまり会社の印鑑である「代表印」が必要となります。
「代表印」とは「商業登記簿(会社を設立する時に届け出ます)」の際、「登記印」として「印鑑登録」されているもの。
そして、法的にその「登記印」となり得るのは「代表取締役」の印鑑のみ、となっているのです。
「会社の印鑑(社印)= 代表印 = 登記印 = 代表取締役の印鑑」といった構図ですね。
複数名を「代表取締役」として登記する場合(これは可能です)、代表印は印鑑登録をしたもののみが契約などの際に有効となり、そのうちの一人の印鑑を「代表印」とすることもできますし、それぞれが印鑑登録をし複数の「代表印」を契約時や借り入れの際に使うこともできます。
「代表印としての印鑑登録」がされているもの、という条件をクリアしています。しかし「社長」さんの印鑑はそもそも「登記印」になり得ないのですね。
社内の業務・プロジェクト等を進める意思決定権があり、それらを実行に移す際の責任者でもある「社長」と、会社の方針を決める取締役の代表であり、取り引き先との契約や多額の借り入れなどの執行ができる「代表取締役」。それぞれが別の人物に任された場合、そこでワンクッション置かれてしまうことになります。効率が悪い……そのため「代表取締役」が「社長」も兼任、つまり「代表取締役社長」、といったケースが一般に多いのです。
もちろん「代表取締役社長」は最強ですが、法律上では「代表取締役」であることに変わりはありません。
「代表取締役社長」は「社長」であることより「代表取締役」であることで、大きな権限を得ている、と言えます。
「代表」ではない「取締役社長」、というものもあります。
同族会社などに多いようです。おじいちゃんが会長で「代表」となり、息子さんなどが「取締役社長」、といった感じですね。
「代表取締役」の後につく肩書には、法的な規定がありませんし、その会社ごとの慣例によって、呼び分けられることも多いのです。
契約書には何が必要?「代表取締役社長」じゃなきゃ契約できないの?
さて「ただの社長さん」には取引先との重要な契約など執行の権限がないことは上記の通りですが、では「代表取締役」でもある「社長」にしかその権限はないのか、と言いますと、そんなことはないのです。まず、契約時に必要となる書類等には「商業登記簿に記載されているものと同じ『法人名、役職、氏名』」が必須となります。
ポイントは「 商業登記簿に記載されているものと同じ」というところですね。
そして、契約に必要な「社印(代表印)」として印鑑登録のできる役職は法的に「代表取締役」のみ。
つまり「契約時に記入する『役職、氏名』は登記されている『代表取締役』」のもの、そしてその際「代表印」として使えるのも「『印鑑登録』された、その『代表取締役』」のもののみ、となります。
少し回りくどい言い方になってしまいましたが、要するに「登記簿に代表取締役」として登録してある人物のものなら、それが「代表取締役社長」でも「代表取締役専務や副社長」でも有効なのですね。
通常「代表取締役」は一名、大抵が「代表取締役社長」となりますが、先ほどもさらりと書きました複数名を「代表取締役」として登記している場合などでは、その誰もが等しく権限を持つこととなります。
「商業登記に記載されている」人であれば「代表取締役社長」でなくとも、契約を執行することができるのです。
さらに有限会社、取締役会を設置していない会社、代表取締役設置が必須でない場合には「取締役」のすべてが代表権を持つこととなりますので「代表取締役」と同じ権限を持つこととなります。
名刺の色々♪ 肩書は何て書く?
ついに、ついに会社を立ち上げたぞ!! 名刺、かっこいいの作るぞ!!ズバリ「社長」って書いちゃおうかなぁ~♪ 「代表取締役」も入れる? ん? これ、なんか決まりってあるの? ……だんだんテンション下がってきた……
大丈夫です、好きに書いちゃっても誰にも怒られません!! もっと盛大にはしゃいでください!
「名刺の肩書」ですね。
確かに会社によって、渡される名刺には様々なパターンがあります。
正式には「代表取締役社長」であっても「社長」表記だけ、やキッチリ「代表取締役社長」と書かれているものや「代表取締役」のみのものなどなど。
また「代表取締役専務」の人と「代表取締役」までで「専務」までは表記されていないバージョンなど「絶対にこう!」といった決まりはないのです(ただし、会社ごとでは統一されています)。英語表記の名刺もありますね。バラエティー豊かです。
「代表取締役社長」を「社長」と書くのはその「2文字だけのインパクトがかっこいいから」や「そんなに大きくない会社だから『代表取締役』と書くのは何となく照れくさい」、また「代表取締役」で止めているのは「わざわざ書くことではない」「登記簿の記載通りに書いた方が何かと便利」など、皆さんそれぞれの考えで名刺を作られているようです。
会社から渡された名刺であれば文句をつけるわけにもいきませんが、ご自分の裁量でデザインなど決められるのであれば、常識の範囲内で好きなように作って問題はありません。
ちなみに「名刺」は公文書ではないため、仮に適当なことを書いたとしても虚偽記載で罰せられる、ということはありません。
ですが、法的に罰せられないだけで、色々な意味でマズいことにはなりそうなので、そこは自己責任でよろしくお願いします。
「代表取締役」と「代表取締役社長」の違いはココ!
単なる2つの役職名かと思っていましたが、色々な決まり事があるのですね。どちらも「偉い人」というのだけは変わりませんでしたが。♦面白法人カヤック・柳澤大輔 代表取締役CEO【神奈川ビジネスUp To Date】2015.7.9放送
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=Bf3BC-LGrrc&w=560&h=315]ではここで、おさらいも兼ねて、2つの違いをまとめていってみましょう!
法的な権限に違いはある?
ありません- 代表取締役: 法律上の「会社の責任者・代表者」
→ 会社法の規定にある呼称です。取引先や金融機関、役所との契約や提出書類などには商業登記簿に記載された代表取締役の氏名や登記印が必要です。また「社印」として印鑑登録ができるのは「代表取締役」のみ。「代表~」の後の肩書は「専務」「副社長」でも構いません。「登記簿に記載されている」ということがポイント。 - 代表取締役社長: 会社の代表で、あらゆる権限を持ち、さらには業務の上での最高責任者でもあることを示した呼称。「取締役」の「代表」で、かつ「社長」であることを社内外に明示するために使用する呼び名、とも言えます。
→ 「社長」や「取締役社長」など「代表」のつかない「社長」も稀にあります。この場合には企業の内部に関してのみの責任者となり、代表権はありません。
「代表取締役」って、絶対にいなくちゃダメなの?
2006年5月1日に新しくなった「会社法」により、必ずしも必要ではなくなりました。が、上場企業の場合には現在も「取締役会」の設置が義務付けられています。「取締役会」を設置している場合には3名以上の「取締役」の中から1名もしくは複数名の代表を選定する必要があります。そして、企業の在り方が多様化したとはいえ、一般的には「代表取締役」のいる企業の方が多いです。いろんなポイントをまとめて!
了解です!代表取締役ポイント
- 会社の方針を決める「取締役」の中から選ばれた「代表者」。
- 「社長」も兼任している「代表取締役社長」もいるが、社長ではない「代表取締役『専務』や『副社長』」などもあり。
- でも『専務』などでも「代表取締役」がついているので、法律上はその会社の代表権を持つ。
- 「代表取締役」が一人しかいない会社の場合の「社長」が「社長」をつけずにそう名乗ることもあり。
代表取締役社長ポイント
- 会社の方針を決める「取締役」であり、その代表。さらに会社の業務上の責任者の「社長」でもある人。
- 複数(2名以上)の「代表取締役」の中から選ばれた場合もある。
- 「社長」部分には法的な規定はないため、各会社ごとの慣例により呼称(肩書)に絶対の決まりはなし。
契約や借入、役所(所轄官庁)との付き合いポイント
- 必要なもの
→「商業登記簿」に記載された「会社の代表者」の役職・氏名と法人名 / 代表印 - 大事なこと
→「代表印」として印鑑登録できるのは、法的に「代表取締役」のみ。複数名を「代表取締役」として登記することは可能。その際の「代表印」は誰かが代表しての1つでもいいですし、複数名がそれぞれに「印鑑登録」をすることも可能です。
➡ ポイントは「登記されたものと同じ」というところ。そして会社の登記に必要なのは「代表取締役」。「代表取締役『社長』」でなければいけない、ということはありません。
名刺ポイント
- 名刺のデザイン・記す肩書等、特別な制限はありません(でも常識の範囲内、自己責任で!)。
- 「代表取締役社長」の場合:「社長」「代表取締役」「代表取締役社長」などが一般的
- 「代表取締役」の場合: 代表取締役が複数いる大きな会社などでは「代表取締役」以下の「専務 / 副社長」等を書かずにこのような表記のこともあります。 △上記の「代表取締役社長」の2番目のパターンかもしれません。
→ また「取締役会」が設置されていない会社では「取締役」が「代表権」を持つため、こう記すこともあります。
じゃぁ「社長」っていうのは?
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社内の業務に関しての最高責任者、または会社の内外に向け、そのことを明示するための呼称。
→ 役割や権限についての法的な規定はなく、あくまでもその会社ごとの慣例などに則っての呼び名でもあります。これは「社長」に限らず「専務」や「常務」「会長」「副社長」などいわゆる「肩書」と言われるすべてに当てはまります。
終わりに……
2006年の「新会社法」を受け、上記の通りではない特例のある会社も増えてきています。けれど、会社の責任者がいて、方針を決める人、それを実行する際のまとめ役がいて、それに従い実務をこなしていく人たちがいるのはどの会社も一緒です。
皆さん、大変なのですね。頑張ってほしいです……
いかがでしたでしょう。
何だか面倒くさい……かもしれませんが、案外これらのことを特別意識するでもなく、日々の業務はこなされていくものです。
何かの不祥事で「会社の偉い人」が責任を負わされることのないよう「代表取締役 / 代表取締役社長」さんに少しでも親しみを持っていただけましたら嬉しいです。
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