……じゃ、そういうことで!!
本当にそう言いたくなってしまいます。もう……何かを作っている、ということしかわかりません。何なんでしょう、紛らわしすぎです……
さてこの「何かをきっと作ってる」4つの言葉。どうやらポイントは「何を作っているか」以外にはなさそう……
「作成・作製・制作・製作」の意味やその違い、「作っているものは何?」といった使い分け等、解説いたします。
皆さまのモヤモヤが少しでも解消されますよう、しばらくお付き合いいただければ幸いです!
目次
「作成・作製・制作・製作」一体何を作ってる?
面倒臭いことは後ほど。まずは絵画の展覧会開催に向け、色々な準備をしていってみましょう!- まずは「制作」。一番肝心な、飾られる「絵」を創作します。
- 続いて「製作」。絵を飾る「額縁」や、観に来るお客さんのために「椅子」などを作ります。
- そして「作成」。絵画の横に提示される「紹介文」を作ります。
- 最後に「作製」。会場の「設計図」を作ります。
でも……これだけではその分業の基準がイマイチわかりません……
では次に細かい使われ方、特に同じ読みを持つ「さくせい」グループ、「せいさく」グループに分け、それぞれの違い、使われ方を見ていってみることにしましょう!
「制作」?「製作」? 違いはココ!
なぜ「制作」では「絵」を作っているのか?「絵」でなくても構いませんが「制作」は主に「芸術作品」を創作する時に使われる言葉となっています。
「絵画」や「彫刻」などの美術作品はもちろん、映画やテレビ番組も「制作」。
完全な娯楽に徹した作品であろうと、涙なしでは観られない感動超大作であろうと、変わらず「制作」です。
著作権や知的財産に絡んでくるものにはこちらの「制作」の文字が使われるのですね。
そして「製作」。展覧会では「額縁」やお客さん用の「椅子」などを作ってくれていました。
「製作」の「製」の文字には「洋服の仕立て屋さんが生地を裁って衣服を仕立てる」という元々の意味、原義があります。
このことから「道具や機械を使って型にはまったものを(大量に)作る(仕立て屋さんもハサミやミシンなどを使います)」または「その道具・機械を作ること」といった意味で使われる言葉となるのです。
「製材」といったら「丸太から木材を作る」こと。
「製法」は「製造の方法」。
「精製」では「念を入れて作る」といった意味になります。
何となく大掛かりな感じがしますが、つまり「製作」とは「ものを作る」こと。そしてその「作ったもの自体」のことも指しています。
芸術作品のような唯一無二の独創的なものである必要はなく、実用的なものや量産できるものを作るのがこの「製作」です。
「○○製作所」などという看板を街中で見かけることはありませんでしょうか。
作られているものは機械の部品や電子機器など様々ですが、大量生産している工場のことです。間違いなく「芸術作品」は作られていません。
「制作」と「製作」の違いとは「芸術作品」か「実用的なもの」か。
また、著作権・知的財産などの絡むものは「制作」。形のある物を道具や機械を使用して作っているのが「製作」、その中にはもの作りのための「道具・機械」そのものも入ります。
あれ? でも映画とかテレビ番組の最後って「制作」と「製作」、2つ出てこなかったっけ?
……あ、バレましたか!!
そうなのです。ここが「制作・製作」をますますややこしくしている要因でもあるのです。
では改めまして「映画・テレビ業界での2つの違い」です。
映画・テレビ番組ではこう使い分ける!
♦映画 ビデオ 製作配給会社のオープニング集
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=w0uzAVGr9iE&w=560&h=315]上記の例でいきますと、芸術作品、または著作権や知的財産に関する「制作」の文字が「映画・テレビ」などに使われているのには不自然さを感じません。
問題は「製作」の文字。
ですが、この使い分けは、その映画なら映画を割り切って見直してみると案外簡単に見分けることができるのです。
どのように割り切るか?
その映画自体を作った人たちから見ればその映像も音声も、一から創造した紛れもない「芸術作品」。売れる売れないに関わらず、確固たる愛情を持ち、プライドをかけて勝負した作品になります。
よって作った人たちは「制作者」。エンドロールなどでは「制作:○○」のように記されます。
一方の「製作」。「製作」はもの作りのプロ。電子部品も作れば家具も作ります。映画だって作ります。でも映画自体は作らないのです。
「制作者」によって作られた「映画作品自体」はそのままではただのムービー。観客を動員するような作品にするには、色々なものが不足しすぎです。まだまだ資金を調達したり、宣伝活動を行ったり、様々なプロデュースが必要ですね。
言葉は悪いですが「製作」では映画を「作品」として見るのではなく「商品」として扱います。つまり「もの」です。
それを完璧な形で人前に出せるように作っていくのが「製作」の腕の見せどころ。
映画自体ではなく、観客に見てもらえるような体制を整えることの全てを「製作」は引き受けるのですね。
これは単なる例えですが、ある会社員が新製品を開発して、それを会社から大々的に売り出すとしたら「制作者:企画部○○さん」「製作:株式会社△△」といった感じ(実際は違います。あくまで「こんな感じ」といった例え)です。
「作成」と「作製」はこう使い分ける!!
先ほど「紹介文」を作っていた「作成」。「紹介文」に限らず、「作成」とは「書類・文章・計画」などを作りあげる際に使われる言葉です。
作文や論文、計画書、また、ソフトウェアやホームページ、システムなどを作るのもこの「作成」。
「作成」に使われている「成」は「しあげる・なしとげる」などの意味を持つ文字。ですので「作成」とは「何もない状態から作り上げる = 成し遂げた!」といった感じ。形のある・なしに関わらず使えます。
ですので「作成」が大事にしているのは、そのものの「内容」部分。
例えば卒論などは「作成」しますが、別にそれが一つの「製品」である必要はありません。パスできるだけの内容勝負です。
また「旅のしおり」。修学旅行には必須ですが、その小冊子が重要なのではなく、大事なのは書かれているタイムスケジュールや集合場所など。小冊子を持っているだけではバスに乗り遅れてしまうのです。読んでください。
このようなものを作る作業が「作成」という言葉で表されます。
さて、一晩かけて担当の先生が「作成」した「旅のしおり」。修学旅行前に各クラスに配布する必要があります。
「作成されたしおり」はその原本(というか原稿といいますか……よくわかりませんが、初めに作られたもの)を指していますが、それを全クラスに行き渡るよう、必要な数の印刷などする作業が「作製」です。
何となく前述の「制作・製作関係」に似ています。
「作製」で重要なのは「内容」ではなく「必要な分(大量に)」作る、といった部分。
「卒論」で言えば「優秀な卒論を集めて1冊の本を作る」などの場合には、「優秀卒論集の作製」となるわけですね。
……あれ? 会場の設計図は?
……!! やっぱり気づいてしまいましたか!
この「作製」、実際に使われている言葉ではありますが、かなり曖昧なのです。
辞書によっては「作製」の欄に「つくること」などとあり、その後「製作ともいう」と表記されているものもあります。
「法令用語」に至っては「作製」は「製作」という意味にのみ用いる、となっています。じゃあどっちかにしてよ……と思ってしまいます。
そして「作成」を文書などに使う言葉に、それ以外には「作製」で、としているのです。
ですので先ほどの「設計図」などの「図面」や「標本」「模型」などには「文書ではない」という理由から「作製」が当てられることになるのです。が「文書ではないもの」となると今度は「作製」と「製作」の違いがあやふやに……大抵の「もの」は文書ではないのです……
わかりやすいように同じ読みの「せいさく」「さくせい」をグループ分けしたら、余計ややこしい事態になってしまいました。ちょっとだけ頭痛がします。
では、続きまして4つ全部の使われ方です。
グループは無視です。頭痛対策重視で見ていきましょう!
「作成・作製・制作・製作」使い分けのポイントはココ♪
文章で書くとややこしさに拍車がかかってしまいそうなので、一旦箇条書きでまとめてみます。どんな時に使われる?
- 作成: 主に文書系(文章や書類、計画書など。またシステムやソフトウェアも。目で見て読めるもの、と表現されることもあります)
- 作製: ものづくり
- 制作: 芸術作品を創作
- 製作: ものづくり(道具や機械を使い、型にはまったものを大量に作る)。またはその道具や機械そのもの。主に実用的なもの
-
△「作成」ではないから「作製」とされるもの(特有の使われ方): 文書ではないもの(特に図面・標本・模型・地図作りに)
★「作成」絡みの「作製」:「作成」されたものを利用したものづくり(その印刷物などを実際に作ること)
★「制作」絡みの「製作」:「制作」されたものが商品として完成するまでの全体的なこと(資金調達や宣伝などなど)
そこにくっついてくるのが「作製」と「製作」のちょっとイレギュラな使われ方。しかも文字が逆になっただけの言葉。「作る」などの「作」が先か、「製造」などと使われる「製」が先か……
「作製」と「製作」の違いがわからない!!
……ですね。どちらも「ものづくり」。「作成」「制作」に関わっていない場合の使い分けがはっきりわかりません。
ですがこの2つ、「作」か「製」かのイメージ通り、実際に作られているものも「作」が先につく「作製」の方が規模が小さく、「製」の文字が先につく「製作」の方が大きいものが多いのです。
また「製作」の方がより創造性のある物を作っている、という違いもあります。
「プラモデル作り」などはある程度の創造性があってもいいもの。著作権などは発生しませんが、色などで個性を出すのは自由。全身ピンクのガンダムもアリです。
ですが例えば「地図」に創造性、自由度を認めてしまうのはまずいです。もうそれはすでに「地図」なく、ただの「土地の絵」ですね。「標本」などもまた然り。見本や典型としての「標本」に創造性……まったくいりません。
といったわけで「プラモデル」や「家具」は「製作」、「地図」や「標本」、「図面」「模型」などには「作製」となります。
つまり「制作」「作成」に関わってこない「もの」に関しては、
- 製作: 規模の大きいものが多い / ある程度の創造性あり / より実用的
- 作製: 規模の小さいものが多い / 主に単純なもの作りに / その他「図面・模型・標本・地図」など
ですが、現在ではほとんどが「製作」で表わされ、「作成」されたものの印刷物などを除くと「図面・模型・標本・地図」といった特殊なものだけに「作製」が使われる、といった傾向があるようです。
今までの、全部まとめて!!
はい……!くり返しになってしまいますが、
- 作成: 書類・文章・計画など、製品というよりは読む、といった感じの「文書系」を作ること
→ 何もないところから作り上げていくイメージ / 重点は内容にあり - 作製:「作成されたもの」を印刷する等、それらを大量に作ること / それ以外の「もの作り」
→ 規模は小さめ / 独創性・創造性の必要なく作れるもの / 特に「図面・模型・標本・地図」などを作る際に使用 / 大量に作れることも重要 - 制作: 主に芸術作品を作ること
→「著作権」や「知的財産」に関わってくるもの - 製作:「制作」された作品を世に出すための全体的なプロデュースをすること / それ以外の「もの作り」
→ 規模の大きめのものが多い / ある程度の創造性が必要となることも / 道具や機械を使う、またはその道具や機械自体を作る / 実用性のあるもの
終わりに……
まだちょっと頭が痛いです……「同じ読み方」でグループ分けすると4つの文字は2グループに分かれ、「何を作るか」で分ければ、大まかに3つに分けられます。「芸術作品」「文書系」「もの作り」。
「読み方」の同じものでは、簡単な漢字が使われている方を基準として対になり、難しい漢字の方が「芸術作品」や「文書」のフォローもしながら、それぞれの「もの作り」にも励み……
やっぱりややこしいですが、身近なものに置き換えて考えてみると、ちょっとわかりやすくなるかもしれません。
例えば「オムライスを作る」なら、作ること自体は「作成」的なこと(実際にはそんな言い方はしません)、参考にしたレシピ本「タマゴ活用術! これであなたもタマゴマジシャン!」は、投稿されたタマゴ料理を集め「作製」されたもの、そして、そのレシピ本にレシピを寄せてくれた方々の皆さまが本当の意味での「制作者」的存在、製作はその版元、出版社といったところでしょうか(これも実際には使われ方が違いますが)。
字面だけから納得しようとすると、文字は単なる「記号」にしか見えてこなくなってしまいます。遠回りのように感じますが「記号」を「理解できる言葉」にするには、知っている色々なものに変換して考えるのが実は一番手っ取り早いのかもしれません。面倒ですが……
「イヤ、せっかくすごく面倒くさい4つに疑問を持ったんだ。こうなったら世の中のすべての『面倒臭い語』の制覇を目指す!!」
……とは、ならないかと思いますが、皆さまのモヤモヤが少しでも薄まっていたら嬉しいです!!
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