── いや、ここまでじゃないけど、できれば「正社員」になりたい……
だって「契約社員」より、何となく待遇が良さそうなんだもん……
同感です。
確かに「正社員」、響きもいい。
また、契約満了の時期が近づいてくる、あの圧迫感といいますか、焦燥感といいますか ── もはやあれはほとんど恐怖。
そもそも「契約社員」とは、誰と何の「契約」をしている「社員」なのか……?
-
──「契約社員」として採用されたら、ずっと「契約社員」のまま? 途中から「正社員」になれたりするの?
なんか、最近制度が変わったって聞いたんだけど……
っていうか「契約社員」と「正社員」って何がどのくらい違うの? ──
などなど。
一日の大半を過ごす会社での立ち位置は何かと気になります。
「正社員」を目指している「契約社員」の方、あえて「契約社員」としての働き方を選んだ方。
どちらにとっても、給料や昇進、福利厚生など含めた両者の違い、メリット、デメリット、そして2013年に改正された「労働契約法」では何が変わったのか等、知っておくことはきっと何かの役に立つはず。
「契約社員」と「正社員」の違い、そして「契約社員」から「正社員」になる(転職も含め)には? などについて解説いたします。
「よし、絶対正社員目指す!!」
「自分の生活スタイルに合ってたのはやっぱり契約社員の方だった!」
── どちらタイプの皆さまにも、少しでもお役に立てれば幸いです。
目次
「契約社員」「正社員」、一番の違いはココ!
「雇用期間が決められているか、いないか」ここが「契約社員」「正社員」を分ける最大の違いです。
「契約社員」「正社員」を雇用しているのは、どちらの場合も勤務先の企業。
「直接雇用」となります。
(※「派遣社員」の場合では「派遣会社」が雇用主。そこからそれぞれの企業に派遣されていく形態ですね。「契約社員」「正社員」とは異なる部分となります)
さて、どちらの場合も雇用主である勤務先企業と雇用契約を交わすわけですが、「正社員」の場合、その際「雇用の期間」についてを定められることはありません。
基本的に、自ら退職、もしくは解雇の場合を除き、期間を気にせず働き続けることができます。
「契約社員」では、雇用契約を結ぶ際に、まずその期間が決められます。
改正前の「労働契約法」では最長3年間(※ ただし高度な技術を有するスペシャリスト、または60歳以上の場合には最長5年間となります)。
実際には数か月単位での契約もあります。
そしてその定められた期間が来れば「契約満了」。
この際に企業と労働者の交渉により、雇用契約の「更新」の有無が決められるのですね。
「更新」すれば、またさらに決められた期間働くことができます。
更新を行わなかった場合には、そことの契約は終了。
このことを「雇止め」といいます。
この時期が、一番不安。ドキドキします。
逆に考えれば、一つの企業、またそこでの人間関係に縛られることなく、時間的にも余裕を持ったスタイルで生活することができるともいえるのですが ──
それを望まず、長く働きたい方たちにとっては話は別。
後に詳しく述べますが、この不安を解消すべく「労働契約法」が改正されたわけです。
さて、上記の通り「期間限定」的な形態で働く「契約社員」が企業とかわす契約を「有期雇用契約」といいます。
そのままですね。
「雇用」に「期限あり」の契約です。
「正社員」の雇用契約では、先ほど書きました通り「雇用期間」の定めはありません。
長く働くことを前提とした雇用契約、つまり「長期雇用契約」となります。
「契約社員」とは、誰と何を契約した社員なのか?
という冒頭の質問については、ですので、
「勤務先企業」と「期限に定めのある雇用契約」を結んだ社員
となります。
では、この「期限の定め」ありの雇用契約により、「契約社員」は「正社員」とどこがどのように違ってくるのか。
それぞれについて少し詳しく見ていってみましょう。
「契約社員」とは? メリットとデメリットは何?
さてさて、企業との「直接雇用」により「有期雇用契約」を結んでいる「契約社員」。「正社員」との一番の違いは前述の通り、働ける期間が限定されていることですね。
会社、組織により「準社員」「嘱託社員」「非常勤」「臨時社員」などと呼ばれる場合もあります。
以下、一般的な「契約社員」についてについて書かせていただきますが、「働き方」といったのものの基準はその勤務先により異なる場合が多々あるもの。
求人情報や雇用契約の際には忘れずに確認をお願いします。
これ、大事です。
まずは「正社員」と同じ部分。
- 「厚生年金」「健康保険」などの社会保障の完備
- 有給休暇(ただし労働日が所定の数に達している場合)
- 30日前までの解雇予告(契約期間が20日以上の場合。「労働基準法」による)
-
◎給与体系
- 契約社員:「自給」「日給」「月給」など企業により様々
- 正社員: ほとんどの場合「月給」。もしくは「年俸」の場合も ◎ボーナス
- 契約社員:「なし」としているところが多い
- 正社員: 多くの企業では、夏季と冬季に支給 ◎退職金
- 契約社員: こちらも大抵の場合「なし」。退職というより「期間の満了」となるため
- 正社員: 退職金制度を導入している企業でも「正社員のみ」であることがほとんど ◎昇給
- 契約社員: 契約更新時に相談、交渉によりUPもあり得る
- 正社員: 業績や職能が上がれば昇給あり ◎昇進
- 契約社員: ほとんど昇進の例は聞きません……
- 正社員:「昇給」同様の条件であり ◎業務時間
- 契約社員: 一人ひとり違う(契約書に提示されます)
- 正社員: 会社単位で一律 ◎転勤
- 契約社員: 契約時に決められた就業先のみで勤務
- 正社員: ある場合もあり(「地域職限定」などとされていれば「なし」) ◎副業
- 契約社員: OK。曜日や時間などが被らなければ問題なし
- 正社員: ダメ!
ですがこれらは、いわば「表面的な違い」のようなもの。
このことにより仕事のモチベーションや人間関係、スキルアップなどについても「正社員」とはだいぶ差が出てきてしまうのです。
まずはわかりやすく「人間関係」。
「契約社員」の皆さまの多くは、できれば「期間満了」の後も続けて働きたいのです。
そのため、企業側からの快い「更新」の一言が欲しい。
もしくは正社員登用への評価を上げたい ──
ですので、必要以上に、ひいては業務について以上に周りからの評判などに対し敏感になってしまうことも。
実際、会社の飲み会や上司に誘われての飲み、などへの参加率も、正社員の皆さま以上に高いのです。
「もう、君ノリ悪いから、次回更新しないよ」
のような理由で「雇止め」となるわけではないのですが、やはり気になってしまうのですね。当然です。
また短い場合では数か月単位での雇用契約となるため、正社員の方たちのように、一つ所に腰を据えてじっくりスキルアップを目指していく
── そんな時間もないのです。
仕事量はそれほど変わらなくても、求められているのは契約時に任された仕事をきっちりこなすことまで。
気が楽といえば楽なのですが、やりがいがないと感じる方には、ちょっと切ない立場ともいえます。
さらには「給与額」の違いもあります。
同じく月給制が採られている場合でも「正社員」の方に比べ「契約社員」の方の給与は低めに設定されていることが多い。
福利厚生の面でも、受けられないものもある。
そしてそれらについても「契約更新時」の交渉次第、となる部分が大きいのです。
どうしても馴染めない職場などでも、ある一定時期が来れば辞めやすい、というメリットはあります。
ですが逆に居心地のいい、仕事の中身についても納得のいく職場であればあるほど、人間関係に気を使うことに。
さらには周囲の同年齢・同年代の「正社員」との待遇の差を常に感じ続けていなければならない……
これは結構キツイ。
そして、それに輪をかけて「最長3年ルール」のようなものまであるのです。
もちろん、最長の3年間を働き上げ、その後さらに働き続けることもできます。
が、やはりその3年後には、また「最長3年ルール」の壁が立ちはだかっているわけです。
……気が休まりません……
というわけで生まれた改正「労働契約法」。
この不安をどう解消してくれているかについて、見ていきましょう。
生まれ変わった「労働契約法」ってどんなもの? 5年間働いたら「正社員」になれるの?
「5年間働いたら正社員に ──」については残念ながら「NO」。正社員になれるのではなく「有期雇用」、つまり期限つきだった雇用期間が「無期限」となるのです。
2013年に改正された「労働契約法」とは、
-
契約社員でも契約の更新を重ね「5年以上」働いた場合、本人が希望すれば雇用期間を定めない「無期限の労働契約」に切り替えることができる
というもの。
── それって「正社員」と同じってことじゃないの?
と一瞬思いますが、前述の「給与体系」や「ボーナス」といった「契約期間」以外の労働条件については、相変わらず「契約社員」としての扱いのままなのですね。
ですが、いつ雇止めされるか、といった不安は解消されます。
また、必要以上に人間関係に気を使う、といった部分からも解放されるかもしれません。
この改正法が施行されたのが2013年4月1日。
そこから「5年以上」となるため、実際に適用されるのもその5年後の2018年4月以降、となります。
また、契約更新を何度か繰り返し、すでにその勤続期間が5年を超えている契約社員の方もいらっしゃるかと思います。
ですが、このルールが適用されるのは、
-
「2013年4月1日以降に更新、または新規の契約」
に対してとなり、それ以前の勤続年数は算入されません。
上記2018年4月1日が、実例の出る一番早い年月日となるのですね。
もちろんご自分のライフスタイルには期限付きの今まで通りの「有期雇用契約」の方が適している等、本人が希望しない場合には「無期限雇用」に転換しなくてもOK。
また「うちの会社では、最長5年しか在籍できないことになっている」といった決まりを契約時に交わしていた場合にも、当然「無期限雇用契約」の社員となることは望めません。
(これは法律に反しているわけではないのです)
契約の際に「5年後の無期限契約」について、確認しておくことも大切です。
この「改正労働契約法」は、不安定な立場の「契約社員」の皆さまを救うべく誕生した新しいルールです。
「契約社員」としての待遇にはあまり変化は見られないかもしれませんが、気持ち的にはかなり楽になりそうですね。
さて、ではやはり「契約社員」として就職した場合には「無期限雇用の社員」にはなれても「正社員」にはなれないのか?
続いて「正社員登用」についてです。
「契約社員」と「正社員」を比較!「正社員登用制度」ってどんなもの?
例えば「正社員」募集の面接等を受け「契約社員」でなら、という内定をもらう。または、そもそも「正社員」募集の求人がなく、とりあえず「契約社員」として入社。
などなど色々なパターンの「契約社員」の方がいらっしゃるかと思います。
「正社員雇用制度」とは「契約社員」に限らずアルバイト、パートなどの「非正規雇用」の形態から「正社員」としての雇用形態に転換できる制度のこと。
これは法律などで決められているものではなく、あくまでそれぞれの企業が「その会社でのルール」として取り入れている制度なのですね。
入社後〇年、といった区切りごとに再度試験を受け、その成績により「正社員」に、などの形がとられることも多いかと思います。
また試験は行わず、勤続年数やその期間の安定した仕事ぶりなどが「正社員候補」の基準とされる場合もあります。
ただ単に長く働いている、ではなく、企業側が重点を置くのは、
「これからも長期的に安定した仕事を安心して任せられるか」
今後への期待なのです。
まずはその企業に「正社員登用」の制度はあるのか、実際に「契約社員」が「正社員」となった実績はあるのか、などを確認することからスタートですね。
「正社員前提」の「契約社員」として採用、などの場合には、特にこれらはしっかりと確かめておく必要があります。
全部が全部なわけではありませんが、中には「正社員前提」を謳うだけのブラック企業も存在します。
ここは慎重にいきましょう。
「正社員になるための条件」や「基準」などは企業により様々。
ですので「契約時」にこれらについて明確にしておくことは、非常に重要なこととなります。
働きながら、そのうち機会を見つけて交渉、というのはかなりキビしい。
その機会を見つけること自体が難しいのです。
ですので「契約時」。
働き始める前に「正社員」になるためにクリアすべき条件をはっきりさせておくのがベストなのです。
また、仮に「正社員雇用制度あり」の企業ではない場合にも、勤務態度や適性によっては正社員登用される可能性もあります。
ですが、こちらは「試験を受けて」のように初めから決められている仕組みではないため、若干ハードルは高め。
企業にとって、現在正社員として働いている方以上に期待値の高い「契約社員」でない限り「正社員」として登用するメリットがないからですね。
「正社員」を目指すためには「契約社員」として一生懸命に働き、自分の有用性を企業に認めてもらうこと。
または「登用」の制度があるのであれば、その試験をパスすることです。
そしてもう一つが、心機一転の「転職」ですね。
「正社員登用制度あり」の企業でいつまでも「契約社員」から「正社員」になれない、というのは、企業側にその気がないからなのかもしれませんが、その企業もしくは職種ではご自身の本領が発揮できないからなのかもしれません。
思い切って転職、あるいは「正社員登用制度」のある別の企業に「契約社員」として再就職してみるのも一つの手です。
正社員のメリットは大きいです。
そして契約社員がデメリットばかり、というわけでもありません。
ご自分の性格やライフスタイルにどちらが合っているか、ここも重要なポイントとなってきます。
それぞれのメリットが、場合によってはお互いにデメリットとなってしまうこともあるからです。
ではここでもう一度、前述のあれこれを踏まえ、「正社員」「契約社員」について「何を求めているか」による「メリット・デメリット」の視点から比較していってみましょう。
安定が一番……!
これはもう「正社員」のメリットとしての最大級のものです。-
◎正社員(メリット)
- 各種手当、ボーナス、退職金(企業によっては「退職金制度」を導入していないところもあり)等の充実
- 職能、年齢などにより定期的な昇給、昇進もあり
△ただし、転勤のある企業もあり
◎契約社員(デメリット) - 社会保障に関しては「正社員」と変わりませんが、その他福利厚生、各種手当の範囲は「正社員」に比べ狭まることが多い
- 給与(月給制の場合でも)は正社員より低く設定されていることが多い
- ボーナス、退職金は出ないところがほとんど
△基本的に転勤はなし
会社にもの凄く苦手な上司(同僚)がいる……
「契約社員」の一人勝ち。辞めやすいです。-
◎正社員(デメリット)
- 基本的に期限の定めのない「長期契約」であるため、解雇や定年を迎えるまで勤め続けるのが前提とされています。
→ 辞めづらいです……
◎契約社員(メリット) - 契約期間が満了すれば、その苦手な上司(同僚)からもあっさり解放されます。
→ 期間中だけ、我慢です!
オレはいずれこの会社を動かす人間になるんだ!!
……叶うかどうかは不明ですが、可能性があるのは「正社員」。-
◎正社員(メリット)
- 一つの企業に長く勤められることは強みです。その間にどんどんとスキルアップしていくことが可能。
- そのための研修や勉強会的なプログラムも、企業側が積極的に組んでくれます。 ◎契約社員(デメリット)
- 「改正労働契約法」により期限の定めがなくなる場合もありますが、「契約期間」以外の条件は「契約社員」のままなので、基本的にはスキルアップを目指したいのであれば自助努力が欠かせません。
「この企業に入りたい」のではなく「この職業に関わりたい」!
その「職種」に魅力を感じているのなら、関わる仕事に就けるチャンスは圧倒的に「契約社員」にあり!-
◎正社員(デメリット)
- 募集の件数で「契約社員」には負けます。 ◎契約社員(メリット)
- 勝ってます。いろいろな職種を経験したい人にはおススメの勤務形態です。
子どもの保育園のお迎えが……
ご自分の生活リズムに合わせて働きたいなら「契約社員」(または「パート」などでも)は最適です。-
◎正社員(デメリット)
- そんなこと言っていられません。休むしかないです。 ◎契約社員(メリット)
- 契約時に「曜日」や「時間」など、働く条件を決めることができます。
- お子さまのお迎えに限らず「他の仕事もしたいから」などによっても、その企業での拘束時間を設定することが可能です。
「正社員」になりたい……
その企業に「正社員登用制度」があるかどうかの確認を(契約時に)!-
◎ある場合
- 入社何年後になるかは各企業により異なりますが、そのための試験がある場合には、頑張ってクリアです!
- 「試験」ではなく、日々の働きぶりが基準とされる場合もあります。勤続年数も必要かと思いますが、それ以上に「今後のあなた」への期待値が「正社員」に繋がってきます。ファイト! です!! ◎ない場合
- 「正社員」より有用な「契約社員」=「正社員登用」です。期待される働きぶりを!
- 思い切って転職もありです。「正社員登用制度」のある企業の求人情報もチェック。その際には、しっかり条件などを明確にしておくことが大切です。
「5年間」働き続けたんだけど……
「改正労働契約法」により今までの「有期雇用」から「無期限雇用」に転換することができます! (※ 2013年4月1日以降の更新、新規契約が対象です)企業側に申し出てみてくださいね!
「雇止め」の不安も、ムダに周りに気を使いすぎるといった状況からも、解放されるかもしれません!!
終わりに……
できれば正規雇用の「正社員」として働きたい……これは切実な思いなのですが、実際「正社員」の求人募集自体が少ないというのが現状。
「契約社員」から「正社員」にステップアップできれば、言うことなしなのですが、それもなかなかハードルが高い……
このような状況からの「法改正」なのですね。
それはそれで、不安解消の要素にはなるのですが、根本的な部分はそれほど解消されてはいないような気もしてしまいます。
まぁ、これが現実なのですが……あと一声! といいたい気分。
せめて「正社員」の方々には「契約社員」の方が、このような状況でありながらも一生懸命に日々の仕事をこなしていることを理解して頂けたらなぁ、と思います。
「違い」の紹介程度はできても改善は上の方に任せるしかない……
誰もが不安要素のない状況で毎日を過ごすことがきたらいいな、と心底思っています。
さてさて、いかがでしたでしょう。
最後の方で何となく湿っぽくなってしまいましたが、どちらにも「メリット・デメリット」はあるのです。
少なくとも「この違いって何なの?!」なモヤモヤが、少しでも薄れていましたらうれしいです!
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