「和牛」と「国産牛」?
「日本車」と「国産車」みたいなもの?
う~ん。言いたいことは何となくわかるのですが、余計ややこしくなってます……
「国産車」は「日本車」ですが、「国産牛」とは、「和牛」とまた、区別すべきものだからです。
…………
ダメだ、完膚なきまでに言ってる意味が理解できない……
大丈夫です!
これ、知ってしまえば案外簡単な違いなのです!
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「和牛・国産牛」の意味していることは?
何の違いで呼び分けられてる?
違いがあるならもちろん値段や味も変わってくるよね? 高いけどおいしいのってどっち?
などなど「和牛」「国産牛」の違いについて解説いたします。
実際には高くてそうそう買えない牛肉(特にステーキ用!)。
いつか来る晴れ舞台に備え、2つの牛肉についての知識と焼き方のシミュレーションだけは万全にしておきましょう(幸せな気分になれます)!
皆さまのおいしい瞬間のお手伝いとなれれば幸いです!!
目次
「和牛」と「国産牛」の違いはココ!
簡単に違いを挙げますと、- 和牛: 日本の牛
- 国産牛: 日本で育った牛
……では、もう少し詳しく。
- 和牛: 日本の在来種と、その改良種(4種)と、それらの間で交配させた牛のみ
- 国産牛:「和牛」以外の日本で生まれ育った牛。また、外国種や輸入牛でも、日本での肥育(食肉用の家畜・家禽の肉量や質をよくするための飼育法)期間が一番長く、かつ国内で食肉用に加工された牛
日本の牛でなく、外国の牛でも「国産」?! 車と全然違う……!
車とは違います。食物ですし。 ですが、ここは驚きポイントですね。
つまり「和牛」とは4種類の牛のみに許された名称。「国産牛」とは、日本で生まれ育った「和牛4種」以外の牛と、外国種であろうと何だろうと、日本の飼育方法を一番長く経験していて、国内で生産される牛につけられる呼び名なのですね。
ここが2つの牛肉の一番の分かれ目、となっています。
まずは、こちらを押さえておいていただき、続いて4種類の牛のみに許された称号「和牛」について見ていってみましょう。
※以前は「日本での肥育期間が一番長く」の部分が「3か月以上日本で肥育」となっていましたが、現在では前者の条件に当たる国を原産国とする、と変更されています。
「和牛」とは?
「和牛」も日本で生まれ育った牛なので「国産牛」でもあることはもちろんなのですが、その中でも分けて「和牛」と呼ばれる4種。これは「松阪牛」や「神戸牛」などのブランド(銘柄)を指すものではなく「品種」を指すものです。
その4種類がこちら。
- 1944年「和牛認定」: 黒毛和種 / 褐色(あかげ)和種 / 無角(むかく)和種
- 1954年「和牛認定」: 日本短角種
もの凄く限定的ですね。
その上「和牛」の98%が「黒毛和種」です。「褐色和種」は稀に見る程度、「無角和種」「日本短角種」に至っては、本当にレアな存在。確かに「黒毛和牛」という表記で売られているもの以外は見たことがないような気もします。
とはいうものの、国内に流通している「国産牛(和牛も国産牛一種ではあります)」の内、「和牛」の占める割合は半数に満ちません。
さらに「輸入牛(オージービーフなど)」も含めた全体で見ればわずか15%ほど。
なんで? 高いから?
高いのは事実なのですが、考え方が逆です。
飼育にも手間が掛かり、食用牛となるまでの期間も他の一般的な牛に比べ長いため、多くを流通させることができないのです。
高いから少ししか売られていないのではなく、育てるのに時間と手間が掛かる「和牛」は他の牛のように多く生産できない(希少)ため、高価なのですね。そしておいしいのです。
★4種の牛はどんな牛?
まずは4種の和牛がどこで生まれ育つのかを軽く見ていきましょう。- 黒毛和種: 日本全国で飼育されています(だから頭数も多いのですね)。
- 褐色和種: 主に熊本と高知
- 無角和種: 山口県
- 日本短角種: 岩手県、青森県、秋田県、北海道 (頭数が多いのは 黒毛 → 褐色 → 短角 → 無角 の順)
日本の在来種は天然記念物にも指定されている山口県見島の「見島牛」と、鹿児島県口之島に生息する「口之島牛(こちらは野生の牛です)」の2種のみ。
明治時代以降に、在来種とヨーロッパなどからの輸入種を交配させ、改良された4種がさらに肉食用の「和牛」として認定され、現在に至っているのです。
ちなみに交配の歴史がこちら。
- 黒毛和種: 在来種 × デボン種、ブラウンスイス種
- 褐色和種: 阿蘇牛(熊本産) × シンメンタール種
- 無角和種: 在来種 × アンガス種
- 日本短角種: 南部牛 × ショートホーン種
- 日本で生まれ飼育された牛であること
→ つまり、国産牛でもあるのです。 - 「食肉公正競争規約(全国食肉公正取引協議会の協議に基づく自主規制ルール)」により認められた品種に該当すること
→ その上、さらに上記の4種であることですね。 - 「日本で生まれ育った牛であり、上記の4種でもあること(上の2つ)」が「牛トレーサビリティ」において確認できること
→「牛トレーサビリティ」で確認? ……また、困った用語が出てきてしまいました……何言ってるのかわかりません!
★「牛トレーサビリティ」ってなに?
「牛の個体識別のための情報管理及び伝達に関する特別措置(牛トレーサビリティ)法」が施行され、それに基づいた11種類の分類のことです(農林水産省)。簡単に言うと、国内で飼養(動物に飼料を与え養い育てること)されている牛の出生から消費者へ供給されるまでの間の逐一がわかるように10桁の個別識別番号で管理し「生産流通履歴情報の把握を可能にした」制度を指しています(つまり「和牛」に限らず「国産牛」でも)。
耳にその番号が印字されたもの(耳標)が装着され、原則、飼養されているすべての牛(輸入された牛も含め)のあらゆる情報がデータベース化されるシステムとなっています。
また、牛肉となってからはその過程(枝肉 → 部分肉 → 精肉)ごとに、今度はその取引に関わる販売業者などが、個別識別番号を表示。仕入れ、販売へとその記録は受け継がれ、最終的には私たち消費者のもとにもその個体が生まれてから精肉として手元に届くまでの履歴が伝わる、というもの(インターネットで確認できます)。
つまり「今日は大奮発! 和牛(でなくても)のステーキよ! だけど、本当にこの肉って、安心なのかしら」という時には、データベースにアクセスすることで「性別・品種・出生から食肉になるまでの飼養地」から、生産、卸流通についての流れも含め、全てが丸わかりになるシステムですね。
確認したいようなしたくないような気分ですが、これは、かつて表示偽装などの事件による信頼の失墜から強化された、食の安全への取り組みの一つなのです。さらには間違いなく、命をいただくことに感謝、となります(← ここは丸々個人的な意見)。
「和牛」とは、国産牛でもあり、その中でも分けて「在来種とその改良種と認められた4品種、及び、その間の交雑種」、さらに食肉に関して言えば、ほぼ「改良種」、そしてその98%が「黒毛和種」の牛、となります。
「国産牛」とは?
牛肉は大きく分けると3種類。前述の「和牛」、こちらの「国産牛」、そして「輸入牛」です。先ほども書きました通り「和牛」とは「国産牛」でもあります。生まれも育ちも、食肉用に加工されるのも日本。
つまり、国内で販売される牛肉には「国産牛」か「輸入牛」か、しかないのです。
「輸入牛」は言うまでもなく「海外から輸入された牛肉」。
初めの方にチラリと書きましたが「外国種であっても肥育期間の一番長い国が日本」であった場合には「国産牛」とされますが、実際これはかなり稀なケースとなります。コストがかかりすぎてしまうのですね。
ですので「国産牛」とは、大きく分ければ「日本で生まれ肥育された牛(稀なケースとして上記の外国種のものも含む)」。これが「輸入牛」に対しての「国産牛」の意味となります。
そして「和牛」に対しての「国産牛」であれば「和牛以外の」付きで「日本で生まれ肥育された牛」となるわけですね。
スッキリしてます!
さて、そんな「和牛以外の」国産牛には、
- 肉専用種(牛肉の生産を目的に飼育される品種の総称)
- 交雑種(F1)
- ホルスタイン種
- ジャージー種
- 乳用種(牛乳乳製品のため、搾乳用に飼育される品種の総称)
そしてちょっとだけ謎の「交雑種(F1)」とは、「肉専用種 × 乳用種」のことを指しており、主に「黒毛和牛(雄) × ホルスタイン種(雌)」となります。和牛同士の交雑種とは違いますね。
交雑種ではない国産牛は主に「ホルスタイン種の雄」。乳用種であるため、雌は牛乳等の生産のために、しかし搾乳のできない雄は牛肉生産のため飼育され、かつては国産牛3分の2を占めていたほど。
ですが、和牛(肉専用種)に比べ、肉質はやはり硬く、臭みもあるのですね(もともと乳用種として改良が重ねられた品種なので)。
そこで「交雑種(F1)」の登場です。
子牛を作らない搾乳牛(主にホルスタイン)の雌を和牛である「黒毛和種」と交配させた交雑種(F1)として生産されるようになったのです。
こちらはご想像通り「ホルスタイン種」に比べ、肉質、脂肪交雑(霜降り度合いのこと。いわゆる「さし」)共に良質。しかも、病気にも強く、成長も早い、つまりおいしい上にコストもダウンです。
現在では「国産牛」として流通しているものにはこちらの「交雑種(F1)」が多くなっています。
「和牛」と「国産牛」、アレコレを比べる!
「和牛」も「国産牛」も、同じことを言っているのだと思っていましたが、「和牛」は「国産牛」、でも「国産牛」は必ずしも「和牛」ではない……う~ん。言葉にすると、途端に錯綜状態に陥ってしまいそうです。
ですが、大体の違いはつかめて頂けたかと思います。
ではここで「和牛」と「国産牛」、味や値段も含め、違いをまとめていってみましょう。
★牛肉を分ける!
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◎大きく分ければ:「国産牛」と「輸入牛」
- 「国産牛」の中に「和牛」があるため、便宜上、この2つを分ける場合には「国産牛」を「和牛以外の日本で生まれ肥育された牛」としています。
→ さらに稀ではあるものの、生体のまま海外から輸入した牛についても「日本での肥育期間が他で過ごした期間に比べ最長となる場合」には「国産牛」扱い、となります。
★「和牛」と名乗れるのは?
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◎日本在来牛と、その改良種の肉専用種4品種及びその4品種間の交雑種
→ 黒毛和種 / 褐色和種 / 無角和種 / 日本短角種
- 「食肉公正競争規約」で「和牛」と認められている品種(上記4種)であること
- 日本で生まれて飼育された牛であること
- この2つが「牛トレーサビリティ」の制度においても確認できること
◎その条件は?
★高いのはどっち?
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「和牛」の方です!! すごく高いです!!
→ 手の込んだ飼育方法のため、大量生産できません! また、食用になるまでの期間も、一般的な牛と比べ長いのです!
➡「国産牛の内、和牛の占める割合」は半数に満ちません。また、輸入牛も含めれば全体の15%程度。ですので「輸入牛 >(和牛以外の)国産牛 > 和牛(そのうちの98%が「黒毛和種」)」のようになっています。
★おいしいのは?
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一般に「和牛」とされています。
- 和牛: 筋繊維が細かいため、脂肪が入り込みやすく、肉質、脂肪交雑は世界最高ランク。
→ 臭みはなく、甘みがあります。和牛の中で最も流通している「黒毛和種」では、赤身にまで「さし」が入っていて、その脂の風味も良好です。 - 国産牛: 和牛に比べてしまうと、肉質の硬さ・臭み等が気になります
→ ですが、現在「国産牛」の流通の多くを占める「交雑種(F1)」では、かなり肉質・脂肪交雑共にアップ(主に「黒毛和種」と「ホルスタイン種」が交配されているため)。
♦【調査隊】第53回 和牛と国産牛の違いは?
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=w-lJ8IVxVWY&w=560&h=315]
➡ ポイントは「脂肪交雑」。いわゆる「さし」の量と質ですが、人によっては「脂っこい!」と感じることも。また、とろけるような食感ではなく、がっつり食べたい際には「国産牛」も「輸入牛」もおススメです。
★表示の違いは?
平成25年6月28日公布の「食品表示法」により、先ほども出てきました「牛トレーサビリティ法」を含め「JAS法」「食品衛生法」「健康増進法」などでの表示が統一されました。それによる、食肉の表示は、
- 「和牛」: 畜種(家畜としての種類)、品種(「黒毛和牛」など)、銘柄(「松阪牛」など)の表示は任意
- 「国産牛」: 品種(ホルスタイン種・交雑種など)は任意 → 義務とされているのは「国産」か「輸入」か、のみです。「国産牛」には「原産国(国産または都道府県・市町村名)」を併記(「国産」の文字を入れるか「○○県産」などで)、「輸入牛」で「原産国」を邦文(アメリカ産・豪州産など)で併記です。
- 「和牛」の表示ができるのは4種(黒毛和種などの)のみ
→ ですが、異なる和牛間で交配させた「和牛間交雑種」の場合には、交配した品種を併記しなければなりません。
➡ が、「任意」とはいえ、大抵の場合「和牛」であったり「ブランド牛(和牛でないものも半数近くあります)」などのアピールポイントは前面に出していきたいもの。ですので「国産牛」とだけ表示のものは「和牛」ではなく、おそらく「ホルスタイン種」や「交雑種(F1)」と考えられます。
そして「任意」の品種等を表示する場合には「牛トレーサビリティ法」により、以下のようになっています。
終わりに……
「和牛」、手がかかるのですね。だからおいしいのですね。だから高いのですね……よし、年末までに、1回はステーキ食べよう。和牛じゃなくても、この際良し、としよう! …… 妥協も大事です!!
世界最高ランクとされる「和牛」。
肉食度ではかなり上を行くアメリカ等、諸外国に比べ、魚文化的なイメージの日本。それなのに世界最高ランク(続けて2回も言っちゃいました)!
なんか、嬉しいです!! やはり、手間暇かけたものは、おいしいのですね。妥当な評価、ありがとうございます!
また「和牛」に限らず、国産で飼養される全ての牛(原則)に装着され、その履歴を把握できる「牛トレーサビリティ制度」も、表示偽装やBSE(狂牛病)等、負の歴史を埋もれさせず、さらなる安全性へのステップアップに繋げる、というトレビアンな精神からのもの。
う~ん。牛肉、食べたいです!
さて、いかがでしたでしょう。
「和牛」「国産牛」の違い、その名称の意味するもの等について、少しでもスッキリしていただけていればうれしいです!
ちなみにステーキを焼く際には、冷蔵庫から出し、1時間ほど常温で放置です。
その後、弱火でじっくり。最後のスパートで強火です! 両面に焼き色をつけたら、もう、ガツガツいっちゃってください!
これは輸入肉だろうと国産、和牛だろうと一緒です。
おいしく頂くことで、ありがとうは伝わります!
ぜひぜひ、おいしい牛肉との出会いを!
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