エイプは ── 類人猿のことだっけ?
あ、いや……その通りなのですが、今回はバイクの方でお願いします。
ホンダ(本田技研工業株式会社)が誇る「4ミニ」と呼ばれる原付。
本当に残念ながら「ゴリラ」は2007年に、「モンキー」「エイプ」ともに2017年に生産終了となってしまい、多くのファンを泣かせた罪なバイクたちのことです(ウソ。罪はないです)。
──「モンキー」が初のバイクだった。
「モンキー」でバイクの楽しさに目覚めた。
でもオレは「ゴリラ」派。
いや、私には「エイプ」以外考えられない。
オレのは ── ベースは「モンキー」だが、見た目は完全にアメリカンバイクと化してる……
などなど、どのバイクにもコアなファンがついています。
特に「モンキー」の歴史は50年。
半世紀です。すごい。
「4ミニ」と総称されますが、「4つのバイク」の意味ではなく、
「4ストロークエンジン搭載・排気量125cc未満のミッション付きのミニバイク」
のこと。
(一般的に原付1種と2種に分類されます)
タイトルの「ゴリラ」「モンキー」「エイプ」の他にも「ダックス」や「シャリー」なども「4ミニ」の仲間たちです。
いくつもの魅力を持ったバイクなのですが、中でもそのカスタマイズ性の高さに惚れ込んでいる方も多いのではないでしょうか。
完全に自分仕様のバイク、もしくは憧れのマシンのレプリカが、簡単に作れてしまう。
何とも素晴らしい。
楽しいです。
さてさて、そんな「4ミニ」の3つ。
他の普通のバイクとの違いではなく、「ゴリラ」「モンキー」「エイプ」それぞれの違いをご存知でしょうか。
えっ! 形以外にもなんか違うの?!
違うのです!
だからタイトルになっているのです!!
「ゴリラ」「モンキー」「エイプ」の違いについて、比較しつつわかりやすく解説させていただきます。
ご購入を考えている方にも、「○○一筋!」な方にも、「ふうん、そうなんだぁ」と少しでも思っていただければ幸いです。
目次
「ゴリラ」「モンキー」「エイプ」、どこが同じで何が違う?
まずは簡単に共通点と相違点を。「モンキー」が公道走行に対応するバイクとして国内で初めて発売されたのは、1967年のこと。
2年後にはフルモデルチェンジ。
その後何度かマイナーチェンジ(一部改良)を重ね、1978年に新たなモデルチェンジ車として「Z50J -Ⅰ型」を発売。
その同じ日に「モンキー」の兄貴分として「ゴリラ」も発売されました。
基本的な構造はほとんど同じ。
パーツも共通するものが多いです。
ですが若干の違いもあり、やはり一番の違いは燃料タンクの容量。
「ゴリラ」は「モンキー」のおよそ2倍のタンク容量、9Lです。
(モンキーは5Lタンク。初期には4Lのマシンもあり)
また「モンキー」の特徴の一つでもある「ハンドル折り畳み式」。
「ゴリラ」のハンドルは折り畳めません。
これはそもそもの目的が違うからなのですね。
「モンキー」は車に積んで目的地に運び、現地で活躍することを前提に作られたバイク。
いわゆる「レジャーバイク」の先駆けです。
- ジャマにならないようハンドルが畳めるようになっている
- なぜなら現地までは車で移動するため
- だからそれほどガソリンを入れておかなくても問題なし
一方「ゴリラ」は、目的地まで自分で走って行くタイプ。
より「バイクっぽい」というのもどうかと思いますが、走ることにちゃんと重点の置かれたミニバイクとしての登場でした。
ですので前述の通り「基本的な構造は同じ」なのですが、性能面では異なる仕様が多く使われていたのです。
どちらもエンジンは「ホンダ・カブ系」のものですが、
- モンキー変速機構: 3速マニュアルトランスミッション 自動遠心クラッチ搭載
- ゴリラ変速機構: 4足マニュアルトランスミッション マニュアル式クラッチ搭載
「自動遠心クラッチ」というのは、マニュアルの「左手でのクラッチ操作のいらない版」のようなもの。
「オートマのシフトチェンジあり版」と言った方がしっくりくるかもしれません。
シフトチェンジは、左足でチェンジペダルを踏みこんで行います。
左手での操作がない分、楽。
ですが、スポーツ性はそこそこに。
手軽でそれなりの実用性はあるものの、バイクの醍醐味でもある一体感には欠けます。
まさにスーパーカブの仕様ですね。
何なら左手でラーメンの入った岡持ちを持つ出前スタイルも可能(やりませんが)。
モンキーがゴリラ同様、左ハンドルにクラッチレバーのあるマニュアルトランスミッション搭載(ML化)となったのは1985年モデル以降のことです。
またシートもゴリラのものはモンキーに比べ長めで厚みがあり、ハンドルもより自然な姿勢が保てるよう、若干ですが幅も広く高めに作られています。
レジャー性重視か、走りのスポーツ性、または普段使いにも利用できることを重視するか。
その違いにより、燃料タンクの大きさやクラッチの操作性、走りを快適にするための乗り心地などに違いがあるのです。
ですが位置づけとしては「ゴリラ」も「レジャーバイク」。
初代ゴリラにはフロントにもキャリアがついていました。
現地に行ってからそこでも楽しめるよう、荷物を運ぶためのものです。
そう考えると、何となくかわいい。
初代ゴリラは、それ以降のものに比べ少しフォルムにも丸みがあるのですね。
モンキーに比べ武骨なイメージで作られていたのにフロントキャリアつき。
ママチャリのようでほほえましいです。
このように、モンキーもゴリラも、性能にそれほどの違いはありません。
ちょっとだけ走りにも力を入れてみた「モンキーの改良版」といった感じのミニバイクが「ゴリラ」。
ただし、タンクの重みもあり、実際にスピードでは微々たる差ですが「モンキー」の方が早いのです。
では「エイプ」はどうか。
こちらはもはや次世代ミニバイク、といった感じ。
積んでいるエンジンからして違ってきます。
カブ系エンジンではなく、スポーツモデルなどに積まれる「縦型エンジン」を採用。
「モンキー」「ゴリラ」のカブ系エンジンは横型。
横型エンジンとは、本来走りよりも利便性や燃費を重視したマシンに搭載されるものなのです。
ここが「エイプ」との大きな違い。
ゴリラも比較にならないほど、走り重視。
といっても、普通のバイクには敵わないのですが……
「エイプ」には排気量「49cc / 99cc」があり、二人乗りもできる(99ccなら)。
車体も全体的に大きいです。
(排気量49ccのものが「エイプ50」。99ccが「エイプ100」)
ただし、誕生が2001年。
モンキーやゴリラほど改造パーツは豊富ではありません。
これは全くの個人的な感想なのですが、エイプはバレンタインデー好き。
エイプ50、100ともに、2月14日に発表、翌日に発売となっています。
(「50」は2001年。「100」は2002年)
── そこはさておき「改造」、カスタマイズの面白さはミニバイクならではかと思いますが、
- 性能で乗るなら「エイプ」
- 性能は二の次。そこが魅力じゃないの! なら「モンキー」「ゴリラ」
カスタマイズがここまで楽しめるのは「4ミニ」たちの特性でもあるのですが、それ以外、本当の意味でのバイクとしての性能はやはり250や400のバイクとは比べるまでもなく劣ります。
── だって……ちっちゃいのだもの……
ですがモンキーを筆頭にレジャーバイクと位置付けられているコンパクトな4ミニは、性能、スピードなどなどの価値をチョチョイっと凌駕してしまうほどの魅力をちっちゃい体に詰めまくっているのです。
だからこそ悩む……
結局は自分好みの見た目で選ぶしかないのか……?
これはある意味正解です。
見た目が一番。
特に「モンキー」と「ゴリラ」ですね。
ゴリラのタンクの大きさは、モンキーの2倍程度とはいうものの、モンキーの5Lでもそれなりに走行距離は稼げます。
しかも、ちょっとスピードも速い……
う~ん。
本当に決め手に「見た目」以外、決定的なものがない……
エイプも含め、最終的には好みとなるかと思いますが、ここで一度それぞれについての特徴などを見ていってみましょう。
どのバイクを選ぶにせよ、とりあえずその違いを知っていることは大事 ──
ではまずは一番長い歴史を持つ「モンキー」について。少し詳しく見ていってみましょう。
「モンキー」とは?
モンキーの故郷は「多摩テック」。2009年9月で営業終了してしまいましたが、あの「のりものの遊園地」の遊具として生まれました。
そして、多摩テックを経営していたのが「ホンダ」です。
免許を持っていない小さな子でもたちにも、バイクの楽しさを知ってほしい!
その狙い通り「モンキーの前身」である遊具は大人気に。
そこで、まずは公道でも走れるようモデルチェンジさせたものを日本ではなく、海外へ輸出したのですね。
で、やはり海外でも大人気。
ならば国内向けにも開発だ!
そして国内向けモデルの開発が始まり、1967年に名前を新たに「モンキー」とし、販売スタートとなりました。
ですので、始まりは「レジャーバイク」ではなく「トイバイク(玩具のバイク)」だったのです。
そしてこれがまた、何ともかわいかった。
そのデザインは残したまま、
「ちゃんと公道を走ることもできる仕様」
となったモンキーですが、その時代(70年代前後)というのはバイクにとっての全盛期でもありました。
バイクに乗れる年齢になると、皆、競って免許を取っていたのですね。
ホンダも次々にモンキーの兄弟モデルを生み出していきます。
実に多種多様。
ゴリラをはじめ、前述のダックスやシャリーなども続々登場していきます。
これらは「スーパーカブ」のエンジンを搭載した、その派生モデル。
モンキーからの派生モデルたち、というよりモンキーも含め「カブ系エンジン搭載」のモデルたち、というのが厳密には正解です。
ところが、スクーターや「ラッタッタ」の愛称で一躍有名になった「ロードパル」などの登場がモンキーたちを徐々に脅かしていくことになります。
さらに気軽に乗れるミニバイクたちですね。
アクセルを吹かせば、走るタイプです。
これが80年代のこと。
免許さえ持っていれば、もうほとんど自転車感覚で乗ることができる。
そしてそのターゲットは「女性たち」でした。
買い物の足として活躍し始めます。
郊外に大型スーパーが軒並み誕生し始めた時期でもあったのですが、自転車で行くには遠かったり、荷物が重かったり……
かといって、現在のように誰もが車を所有していたわけでもなかった時代です。
ですのでスクーターやロードパルが重宝されたのですね。
モンキーはご存知のようにユニークで個性的なバイク。
これでお買い物……?
奇をてらわなくていい。
それほど可愛らしくなくていいから、普通に荷物を運べるバイクがいい……
ここはやっぱり「スクーター」。
そして、そうこうしているうちに誰もが車を持つ時代に突入です。
── あれ? じゃ、モンキーって、それほど売れてないんじゃない?
…………
いいのです!
販売台数では実際、他のバイクなどに負けているのですが、これほどまでに愛され、熱烈なファンを得ているバイクはホンダ商品の中でも稀。
「それほど売れてなくても50年間もの長い間、ひたすらマイナーチェンジを繰り返し……」
2017年までの歴史を突っ走り続けてきたのが「モンキー」なのですね。
醍醐味でもあるカスタマイズ性の高さですが、これはその構造のシンプルなことが最大のポイント。
搭載エンジンも、多くの車種で使われていたもの。
性能の異なるタイプがいくつも存在するため、エンジンでさえチューニングが可能。
プロでなくても簡単に改造が楽しめたこともモンキー人気を支えました。
販売台数ではなく、限定モデルを含め、発売されている車体の色違いなどでのモデル数は国内随一の数を誇っています。
コアなファンが多くいるのがよくわかりますね。
さて、そんなモンキーですが、過去に何度か大幅なモデルチェンジを経験しています。
初期には装備されていなかったサスペンションが装備されたのは発売から2年後の1969年。
「250M型」からのフルモデルチェンジの時です。
車体も若干大きくなりました。
遊具からの脱出的モデルチェンジ。
「250A型」として生まれ変わります。
その後もマイナーチェンジ、フルモデルチェンジを繰り返し、先ほど書きました通り「自動遠心クラッチ」がオートマ化されたのが1985年のこと。
そしてなんと、2007年には、モデルチェンジどころの騒ぎではなく、生産を一旦終了しています。
「排出ガス規制」です。
従来のモンキーが採用していたのは「キャブレター」という燃料噴射装置。
ここが基準に引っかかった。
そこで燃料噴射装置を「キャブレター」から「FI(フュエール・インジェクション)」へと変更。
規制に適合するモデルとなり2009年に見事復活。
(他にも燃焼時に漏れるガス / ブローバイガスを大気中に放出しないよう還元する装置も搭載されました)
よかったです……
「キャブレター」「FI」というのは、どちらも燃料を噴射する際の方式のこと。
エンジンというのはガソリンと空気を混ぜることで燃焼します。
ですが、そのままでは燃えにくい。
液体の状態だと、空気と混ぜ合わすのが大変なのです。
そこで、ガソリンを霧状にしてあげる。
そのための装置が「キャブレター」。
簡単に言いますと、空気圧を使っての噴射装置です。
ですがこれ、環境によろしくないのですね。
そこで「FI」。
こちらはコンピュータ制御で、状況を計測しつつの噴射装置。
環境性能に優れているため、現在では多くのバイク・車が、こちらを採用するようになっています。
さてさて「排出ガス規制」とは何か。
この規制は正確な法律用語としては「自動車排出ガス規制」と呼ばれ、
- 一酸化炭素
- 窒素酸化物
- 参加水素類
- 黒煙
これは大事なのです。
環境は守っていかなければダメ。
わかるのですが、今回、2016年施行の規制(平成28年排出ガス規制)により、最終的にモンキーはじめ、4ミニのみならず、多くの自動二輪が生産終了に至っているのが現状。
- 2017年: 前年に施行された「平成28年排出ガス規制」をクリアすることが難しい、として「生誕50周年モデル」を最後に、再び生産終了
これは「技術的にクリアが難しい」というより「自動二輪市場自体が縮小傾向にある」という部分が大きいのです。
中でも原付人気は相当落ち込み気味。
だからコストをかけて条件をクリアするモデルを作ることができない。
実際には「作ることができない」ではなく、
- 「今後(予定では2020年)もまた排出ガス規制が施行され、さらに厳しいものになっていくことがほぼ確定している」
- 「バイク(ミニバイクはさらに)市場が縮小している今、そこまでコストはかけられない……」
- 「コストをかけて改良すれば、その分バイク本体の値段も上がってしまう。高くなればますます需要がなくなってしまう……」
近い将来には二輪は絶滅するのか?! などとも危ぶまれています。
電動アシスト自転車など、スクーターの気軽さのはるか上をいく移動手段が大活躍中の現在。
今後も生産終了となる二輪はますます増えていくのかもしれません。
「ゴリラ」とは?
生産終了は悲しすぎますが、ここは気を取り直して「ゴリラ」についてです。基本的には「モンキー」と構造などは同じ。
相違点は先ほど書きました通り、タンク容量やハンドルが折り畳めないことなどですね。
♦4mini/ゴリラ
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=F1LvsFLHrMk&w=560&h=315]姿かたちは違いますが、さすが「兄貴分」とされるだけあって、それ以外はよく似ています。
初代ゴリラ(1978年)発売から7年後1985年に、2代目が誕生。
この時モンキーも同時発売され、前述の「3速マニュアルトランスミッション・自動遠心クラッチ」からゴリラと同じ「4速マニュアルトランスミッション・マニュアル式クラッチ」に変更。
ここで2つを分けていた変速機構が統一されます。
そして3代目(特別仕様車)が発売されたのが1988年。
その2年後に、ゴリラもまた一旦生産終了の憂き目に遭います。
70年代のバイク人気にあやかり、数多く作られてきた派生車種。
ですが、80年代にはすでにその人気はスクーターやロードパルへと移行し、
「そんなにたくさんの種類を生産しなくても……」
── で、一旦終了。
なのですが、さすが「ゴリラ」も人気車種。
1998年には復活を果たします。
こちらも「モンキー」がいったん生産終了した時同様、ファンたちの熱い思いに応えてのこと。
それでも2007年には「排出ガス規制」により今度こそ本当の終了となるのです。
同じ時期に同じ理由で一旦生産を終了したモンキーは、2年後に復活。
ゴリラは復活を果たせず。
この時、キャブレターのバイク(キャブ車)は皆、生産を終了しました。
その中から「FI化」してでも生き残らせたかったバイクだけが、再び表舞台に立つことができた。
多様化した4ミニたち、そして似た者同士だったモンキーとゴリラの明暗は、ここで分かれることとなったのです。
ですがこの2つに関しては、完全に好みの問題。
生産は終了していますが、販売中止なわけではないので、中古車としてなら普通に購入することは可能。
ただしどちらも状態のいいものは高いです。
もうほとんどプレミア価格のついているものも珍しくありません。
どちらが人気か、といえばやはり「モンキー」。
ゴリラにもコアなファンが多くいるのですが、それでもモンキー人気、強し。
中古車として出回っている台数(タマ数)も圧倒的にモンキーの方が多いです(歴史が古いから)。
── モンキーとゴリラのことは、大体わかった。
ところで、 エイプ、どこ行った?
……この下にいます。
それでは続いて「エイプ」について。
見ていってみましょう。
「エイプ」とは?
こちらは「モンキー」「ゴリラ」とは色々な部分が違っています。その誕生は2001年。
通称「N(ネイキッド)プログラム」と呼ばれる、ホンダが立ち上げたニュープロジェクトの第一弾として発売されました。
若者のライフスタイルに合う魅力的な商品を開発するぞ!
「気軽に乗れる」
「でも本格的な走りも楽しめる」
ここがモンキーやゴリラとはちょっと違う。
変速機構も「モンキー・ゴリラ」が4速トランスミッションであるのに対し、5速です。
リアサスペンションにも「モノショック」を採用。
これ、早いのです。
軽いし(1本だから)サスペンションの伸び縮みによる車体へのムダな影響も少ない。
コントロールもしやすい。
モンキーやゴリラは「ツインショック」。
古いタイプのバイクには多いタイプのサスペンションですね。
見た目も個人的にはキュートだなぁ、とは思いますが、特に早さを求めてはいない。
モトクロスレースでは「モノショック」「ツインショック」を分けて開催されることもあるほど。
「モノショック」の一人勝ち状態を防ぐためです。
そして先ほど書きました通り、エンジンも「カブ系横型エンジン(ロングストローク型)」のものではなく、
「CB系(スポーツモデル)用に開発された縦型エンジン(ショートストローク型)」
を搭載です。
元々小排気量のミニバイクに使われていたのが「横型エンジン」。
「縦型」は、
もっとスポーツ性に優れたエンジンを積んだバイクで走りたい!
といった要望に応え開発されたものです。
これが前述の「Nプログラム」。
縦型・横型ともにメリットがあるのですが、とにかく耐久性に優れた横型エンジンに比べ、少しだけ上級者向けの仕様なのが縦型エンジンかと思います。
カスタマイズの費用も若干お高めに。
歴史の長い横型エンジン搭載車の方が、何かとパーツも豊富です。
ですので、多くの方は、先ほど書きましたように、
- カスタマイズを楽しむなら「モンキー」か「ゴリラ」
- ノーマルでもその性能を楽しむなら「エイプ」
実際、改造したモンキー・ゴリラより、手を加えていないエイプの方が早かったりします。
ただし、加速は若干エイプの方が遅い。
ピストンが水平方向(前後)に動くのが「横型」。
垂直(上下)に動くのが「縦型」の特徴です。
上下に動く縦型はピストンなど、そのものの重みを利用できるためパワーが出やすくなる、という利点はあります。
ですので、走りを重視したスポーツモデルに使用されているのですね。
が、パワーを出すには頑丈であることは必須。
横型に比べ重いのです。
そのためコーナーなどでの立ち上がり加速には弱い。
軽い横型エンジンを積んでいるモンキーなどに比べ、時間がかかるのですね。
エイプが強いのは、その重みを遠心力として加速にプラスさせることのできるストレートコースなど。
長く走れば、その分スピードが増していきます。
また、元々スーパーカブから始まり派生していったモンキーやゴリラは、気軽に乗れて実用的といったコンセプトのもと作られたもの。
「アンダーボーンフレーム」といって大雑把にいいますと、バイクのフレームが全部フロア下に収められているタイプのものが採用されています。
エンジンを吊り下げているような感じですね。
スクーターをイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。
足を高らかにあげてガシッと跨ぐのではなく、座るように跨げる感じ。
── 余計わかりにくくなってしまったでしょうか……すみません。
つまり、強引にまとめますが、
だから乗り降りが楽
なのです。
「エイプ」にはこれはない。
ガシッと跨ぐ感じのタイプです。
見た目は「モトクロス(オフロードバイク)のちっちゃい版」。
モンキーやゴリラと比較すれば、
かなりオフロードバイク度は高い
ただし、普通のオフロードバイクとは、
比べちゃダメ──
「4ミニ」はもはや一つのカテゴリとして不動の地位を築いているもの。
走りにかなり特化している「エイプ」ですが、それは「4ミニ」という遊び心満載な世界の中でのこと。
「走り番長」的存在のかわいいヤツなのです。
(※ 2008年に発売された「エイプ Type D」「エイプ100 Type D」というエイプの派生車種もありますが、こちらはオリジナルといくつかの相違点があります。
また「エイプ100」は「原付」ではなく「小型自動二輪車」の扱いになります。
今回は「モンキー・ゴリラ」との比較のため「エイプ50」以外についての説明を割愛させていただきました)
「モンキー」「ゴリラ」「エイプ」の違いのまとめと比較!
そのまま乗っても、カスタマイズバリバリで楽しんでもいい。とはいうものの、やはり「いじってなんぼ」と思っている方の方が多いであろう「モンキー・ゴリラ・エイプ」。
着せ替え人形の男の子版、といった感じでしょうか(またまたわかりにくい例えですみません)。
下世話なことを言うようですが、この中では「エイプ」のカスタマイズが、一番費用がかかると思います。
パーツはあってもなかなかお店に置いていなかったり、そもそもの数が少なかったり……
また、縦型エンジンは横型に比べ、熱に弱いです。
パワーが上がれば熱も多く出ることに。
あまりいじりすぎると、内燃機関が焼き付きを起こしてしまうこともあります。
エンジンを横型に載せ替えちゃえばいいじゃん!
できなくはないです。
ですが、よっぽどのプロでなければ無謀かも。
また、安定性など、何かと不具合も生じてくるかと思います。
別にエイプが悪いと言っているわけではまったくないのですが、ここも一つのポイントとなりますので、一応頭の片隅にでも置いておいていただけると、助かります。
ではでは、「モンキー・ゴリラ・エイプ」のあれこれについて、最後にもう一度おさらいです。
まとめていってみましょう。
誕生はいつ?
- モンキー: 1967年
- ゴリラ: 1978年
- エイプ: 2001年(エイプ100は2002年 / エイプ Type D・エイプ100 Type Dは2008年)
生産終了はいつ?
- モンキー: 2017年(2007年に一旦生産終了するも、2009年に再び生産再開)
- ゴリラ: 2007年(1990年にいったん生産終了。ファンの復活への熱望を受け、1998年に復活)
- エイプ: 2017年
ひと言でいえばどんなバイク?
- モンキー: レジャーバイクの先駆け的存在で、カスタマイズ性の高い、50年の長きにわたり愛され続けてきたバイク
→「車に積んで現地で活躍」 - ゴリラ: モンキーの兄貴分として、武骨さと親しみやすさを兼ね揃えた、モンキーより走りに重点の置かれたバイク
→「目的地まで自走」 - エイプ: さらなるスポーツ性を熱望され「モンキー・エイプ」とは違う「縦型エンジン」を積んだ、ゴリラよりも走りに特化したバイク
→「ホンダのニュープロジェクトの第一弾」
違う部分はどこ?
-
◎モンキーとゴリラ: 目的が違うため、そこに関する部分
- 1985年には「4速マニュアルトランスミッション / マニュアル式クラッチ」に統一されましたが、初代モンキーは「3速マニュアルトランスミッション / 自動遠心クラッチ搭載」でした
→ 操作性が違います - タンクの容量
→ ゴリラの容量は9L 。モンキーは5L (4Lの時代もあり) - ハンドル折り畳み式か否か
→ 車に積むのが前提のモンキーのハンドルは折り畳み式。目的地まで自分で走っていくゴリラにはその必要がないため、折り畳めません
◎モンキー・ゴリラとエイプ: カスタマイズ性の高さなのか、走りの性能なのかのコンセプトによる違い - エンジン
→ モンキー・ゴリラは「カブ系横型エンジン搭載」。エイプは「CB系縦型エンジン」。
→ ホンダでの位置づけは「横型 = 燃費・利便性重視のモデルに」「縦型 = 走り重視のスポーツ系モデルに」 - リアサスペンション
→ モンキー・ゴリラは「ツインショック」。エイプは「モノショック」
→ 速さに違いが出てきます - 車体の大きさ → エイプでかし!
- 改造パーツの数
→ 誕生の遅いエイプはパーツの数ではモンキー・ゴリラに負けます - 走りの速さ
→ エイプが速いというより、どちらかというとモンキー・ゴリラが遅い、といった感じ
→ モンキーとゴリラでは、ゴリラの方が大きいですが「若干」程度です
「排出ガス規制」で変わったことは?
-
◎2007年の規制により
- モンキーとエイプ: 一旦生産終了となり、「キャブレター」を「FI化」して再販売となる
- ゴリラ: そのまま生産終了に ◎2016年の規制では
- モンキーとエイプ: 生産を終了
- モンキー: 2017年の「東京モーターショー2017」で「モンキー125」を発表
→ ただしこれはあくまでコンセプトモデル。実際に今後発売されるかどうかは、ユーザーの反響を見て最終的に決定するそうです
→ イメージをそのままに大きさは約1.5倍 !
今後の自動二輪事情は?
電動アシスト自転車等が台頭してきているため、ミニバイクをはじめ二輪人気は落ち込み気味。ますます縮小されていくことが予想されます。
コストをかけても採算の取れるほどの需要がないため「排出ガス規制」を受け、生産終了するバイクが増えています。
ですが!!
販売終了ではないので、できれば囁かれている「絶滅」の危機は避けたいです!
終わりに……
時代って怖い……もてはやされていたバイクがどんどんと違う、さらに便利な移動手段に乗り換えられていくのですね。
ですが「4ミニ」の魅力はいい意味で、その性能部分だけではないことが唯一の救いのような気もします。
環境を大事にするのは本当に大事なことです。
そのための基準がある程度厳しくなるのは、私たちにとってもいいことなのですね。
電動アシストも免許いらずで乗ることができ、価格も比べ物にならないくらい安い。
幼稚園や保育園のお迎えなんかには、もう最高。
時代って怖い……
というより、これぞ「時代」なのかも……
ですが、単純に続々とバイクが生産終了となるのは寂しいのです ──
さてさていかがでしたでしょう。
今回も長文となってしまい、申し訳ありません!
可愛らしい「4ミニ」たちが、生産終了後も元気な姿で街中を走り抜けてくれることを願いつつ、皆さまの「モンキー・ゴリラ・エイプってどう違うの?」へのモヤモヤが少しでも薄れていましたらうれしいです。
最後までおつき合いいただき、本当にありがとうございました。
関連記事はこちらになります。
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