……!!!!
ダメ! 振り返っちゃダメだって!
あ……花火大会に振袖……
気をつけよう、目を合わせないように気をつけよう……
さてさて、和服、和装です。
実際花火大会で振袖の方を見かけたら、とりあえず関わり合いにならないよう気をつけますが……
あれ?でも何でいけないの?
いや、いけないっていうか、変なのは確かなんだけど、だからどうしてダメなの? って言われると……困るかも。一応着物だし……
いやいやいや、着ていく場所の問題でしょ!? 逆に成人式で「浴衣」だったら引かない? ん? じゃあ「振袖」着ていいのっていつ?
そうよ! 応えられないんだったら、あたしのこと、変な目で見るのやめなさいよ!!
……見つかってしまいましたね。
和服と言えば「帯(断定!)」。帯の種類、着るものとの組み合わせ等も含めまして「振袖・着物・浴衣」の違いを解説いたします。
「これこれこんなわけで、あなたの格好は浮きまくっています!」と振袖の彼女にも教えてあげ、存分に花火大会が楽しめますよう、お役に立てていただければ幸いです!
目次
「振袖・着物・浴衣」の違いはコレ!
まずは「着物」に注目です。これはズバリ「衣服」の総称として、そして洋服ではなく和の装いである「和服」を指す意味としても使われる言葉。
ですので大きな括りで考えますと「振袖」も「浴衣」も「着物」には違いないわけです。
じゃあ「着物」は別格? 総称と個別の呼び名の違い、って感じ?
うーん、そんな感じでもあるのですが、ここはやはり分けて考えた方がそれぞれの特徴をわかりやすく知ることができるのです。
さて、この中でちょっと異彩を放っているのは「浴衣」。
他の2つとの大きな違いとなるものの一つに「一般に浴衣のみ長襦袢(ながじゅばん)を着用せずに着ることができる」が挙げられます。
「長襦袢」とは和服専用の下着(肌着)のようなもののこと。
確かに冒頭の花火大会等、浴衣の下に長襦袢を着こむのは面倒臭そうです。そして暑いです。
「振袖」ももちろん「着物」の一種。
中でも「袖の長いもの」を指します。
ではそのまま「着物」と呼ばれるものはあるのか?
実際にはいくつかの種類のものがまとめて「着物」と呼ばれ、それぞれが個別に「留袖」や「訪問着」などとさらに呼び分けられることになります。
種類が多い分「いつ、どこに着ていくのか」や「どんな場面で着用するのか」などにより、様々なルールが定められており(絶対ではありませんが、ほぼ常識といったもの)、またそれらが「着物」の種類を決めているとも言えるのです。
「今日はどの着物で行こうかしら。◯◯さんと会うだけだから小紋でいいか」な感じですね。
とりあえずまずは、その「着物」についての基本部分を見ていってみましょう。
これは「着物」ですか? はい「着物」です!
フォーマルな場面で着るものからカジュアルに着こなせるものまで「着物」と呼ばれるものの種類はかなり豊富。一番格が高い、とされる「着物」には「黒留袖」や「内掛け」などがあり「第一礼装(礼装着)」とされます。
次に「準礼装(略礼装着)」に当たる「訪問着」や「色留袖」、カジュアルな場にも着ていかれる「街着」である「江戸小紋」や「木綿」など「いつ、どこへ、何をしに(いわゆるTPOです)」によって選ぶ必要があるのです。
大まかに「フォーマル」と「カジュアル」で分けると、以下のようになります。
- フォーマルな場面で着る着物: 黒留袖 / 色留袖 / 振袖 / 訪問着 / 付け下げ / 色無地
- カジュアルな場面で着る着物: 江戸小紋 / 小紋 / 紬(つむぎ)/ 木綿 / デニム着物 / 夏の着物(裏地なし・単衣と言います)/ 浴衣
着物は使われる素材も幅広く(木綿・絹・ウール・化学繊維などなど)、生地の折り方・染め方も様々。それにより上記のような格がつけられ、場面ごとに着分けられているのです。
和服は日本人の民族衣装とも言えるもの。結婚式や成人式、卒業式などの公の場、また花火大会を代表とする夏のお祭りにも対応してくれています。
さて、先ほどチラリと触れましたが、着物には「長襦袢(半襦袢等も含む)」が付きもの。
さらに大抵「裏地」もついていますが、6月から9月(現在ではその期間がもう少し長くなっているようです)に着用するのが、カジュアルな着物の中にあった「夏の着物(裏地なし)」です。
さすがに夏に「裏地」+「長襦袢」はきついです。
そしてその隣の「浴衣」。こちらにももちろん裏地はありません。「長襦袢」も着ません。涼しそうですね。
……あれ? でも、もしかして「夏の着物」着てたら、「長襦袢着てる?」って聞かなきゃ、「浴衣」と見分けつかないんじゃない?
はい。その心配はごもっともなのです。
ごもっともなのですが、その前に「浴衣」について、少し詳しく特徴等も見ていってみましょう!
「着物」とはちょっと違う「浴衣」♪
裏地もなく、長襦袢も必要ない「浴衣」。現在では夏のイベントに張り切って着ていく、オシャレでかわいらしいイメージがありますね。
ですがそもそもの始まりは「平安時代のお風呂事情にあり!」なのです。
その当時の呼び名は「湯帷子(ゆかたびら)」。「帷子」とは「裏地のついていない衣服」のこと。「暑衣」とも呼ばれ、夏場の暑い時期に着られていました。「湯帷子」は、その「湯」バージョンですね。
平安時代のお風呂は「蒸し風呂」タイプ。その際に貴族が身につけたのが始まりでした。
現在のように湯船につかるタイプだったら、存在していなかったのですね。ナイス、蒸し風呂! です。
そして時は経ち、江戸時代。「湯帷子」から始まった衣服は「蒸し風呂用」から「湯上り用」に昇進。お風呂上がり、涼む時のアイテムに。名称も「湯帷子」から「浴衣」に変わります。
また当時の木綿の普及に伴い、生地も麻から木綿主体になったため、夕涼み程度になら外ででも着られるようになっていきます。
とはいえ、昭和30~40年代までの「浴衣」の用途は主に「寝巻き」。ですのでオシャレである必要はなく、色も白か紺が主流、デザインもいたってシンプルなものばかりだったのです。
ここでポイントです。
浴衣の由来からわかってくるのは、
- 暑い時期に着る
- 夕涼み、あるいは夕涼み程度の外出用
- 木綿主体
- 寝巻きとして使用
いつもとはちょっと違う「浴衣姿」の彼女にドキッとしたりもする、あの「かわいらしいの権化」の「浴衣」が「寝巻き」扱い!?
……そこも衝撃的なのですが、こういった由来を持つ「浴衣」は、徹底的にカジュアルな場に限り着ることができる、また、本来なら昼間から着るのはNG、夕方以降に着るべき着物、となっているのです。
その他「浴衣」の特徴は以下の通り。
- 夏に着る着物の一種(6月から9月くらい)
- 主に素材は木綿で、薄く、裏地なし。風通しよし
- 長襦袢はつけなくてよし
- 素肌に直に着てよし
- 寝巻きとして使用してもよし
上記の部分を踏まえまして「着物」と「浴衣」の違いは、
- 長襦袢を着用するか?
→ するなら「着物」、なしでも着られるなら「浴衣」。 - 素肌に直接着たり、そのまま寝ることができそうか?
→ 一度挑戦してみるとおわかりいただけるかと思いますが、浴衣以外の「着物」で、これは違和感が凄いです。 - 生地の違いは?
→ 着物の生地は多様。木綿でできたものもあるため、ここだけで判断することはできませんが、他の違いなどとも併せて、なんとか判断できそうです。裏地がついていたり、明らかに冬物なら「着物」です。 - 「長襦袢つけてますか?」って聞かなくてもわかる?
→ 由来はどうあれ、現在の浴衣はオシャレでかわいらしいものが主流。裏地の有無などの他、「着物」着用時に履く足袋に合わなそうなプリント物などは大抵「浴衣」です。が「綿絽」や「綿紅梅」「絹紅梅」など、着物風の(長襦袢を着ることもある)浴衣もあるため、特に「夏の着物」と「浴衣」は、見た目だけで判断するのは難しいかもしれません。
「振袖」とは?「着物」とはどこが違う?
続いての「振袖」。着物の中でも、華やかなイメージがありますね。先ほども書きましたが、振袖の特徴は長い袖。振れるほど長い袖です。
袖の長さにより「大振袖」「中振袖」「小振袖」の3種に分けられており、順に「115cm前後」「100~95cm前後」「85cm以内」とされています。長いです。
振袖は第一礼装でもあり、男性の場合ですと、「紋付羽織」と「袴」がそれに当たります。既婚女性なら「黒留袖」や「色留袖」ですね。
……!
そうなのです。現在では「振袖」は主に「未婚女性」の正装として位置づけられています。
別に差別とかじゃ、ないのです……
体温が大人よりも高く、しょっちゅう動き回っているお子さんの体から熱気を逃すため、大きく脇の開いた振袖の袖の作りは理想的。「振袖」は、もともと男女問わず、16,7歳以下の子ども用の着物だったのです。
江戸時代の「成人」は「元服」を迎えるか「結婚」をすること。そこで「振袖」も卒業です。
明治時代に入り「元服」のシステムはなくなりますが、それまでは元服・結婚前のお子さん用の、理に適った衣服だったのです。
また、江戸時代、踊り子さんの身のこなしや、その風習などから「袖を振る」=「未婚であることと愛情をアピール」とされ、未婚女性が真似するのはいいけれど、それを既婚女性がやるのはどうなのよ、といった事情や、「袖を振る」=「身を清める」といったことから、厄祓いの意味も込め、現在でも成人式や結婚式で着られているのです。
未婚女性の第一礼装でもある「振袖」。着用の場面は「結婚式」「成人式」などの正式な式典となります。
結婚式で「大振袖」を着るのは「お嫁さん」、出席者(未婚)が着るのが「中振袖」というのが一般的。
また、成人式では、以前は「中振袖」が主でしたが「新成人」の高身長化に伴い近年では「大振袖」の方が主流となっています。
「小振袖」はそれほど堅苦しくないパーティーや観劇などでの礼装として着る機会のあるものですが、このパターンは、すべてオーダーメードとなります(袖部分の)。長さはご自分で指定します。卒業式などで袴と合わせて着用するが多いのも「小振袖」です。
それぞれに「格」があり、高いものから「大振袖」「中振袖」「小振袖」となっています。
こんなに違う「振袖・着物・浴衣」♫
ですので冒頭の「振袖さん」はよっぽどの事情(たった今結婚式を抜け出してきたとか、厄払いの必要に迫られているとか、罰ゲームとか)がない限り、あの場ではおかしい、で正解です。もう目が合っても大丈夫。ちゃんと教えてあげてください。
ではここで、もう一度「3つの和服」のおさらいをしてみましょう。
着物は着物でも「普通の着物」ではない部分は?
- 振袖: 特徴的な長い袖
- 浴衣: 着用の際、長襦袢の必要がないこと。素肌にそのまま着ることができます(ホテルなどでは寝巻き代わり)。
着られる時期や場所は決まってる?
- 振袖: 正式な式典にはぜひ! ただし未婚女性に限る。
- 浴衣: 夏(6月から9月。5月、10月にお祭りなどのイベントのある時はそれも含む)の夕方以降限定。しかもカジュアルな場限定。
- 着物(振袖・浴衣以外): 裏地のついていないものは6月から9月(もう少し範囲が広くてもOK)に、裏地ありのものはそれ以外に。豊富にある種類の中から、着ていく「時期、場所、何をしに行くか」などに合わせた着物選びが必要となってきます。
もともとは何だった?
- 振袖: よく動くお子さんの身体から熱を出し、体温を保つために脇の開けられた理に適った子供(用)服
- 浴衣: 始まりは「湯帷子」で蒸し風呂に入る際に着るもの。それが「湯上り用」となり名称も「浴衣」、素材も当時普及していた「木綿」となり、夕涼みの外出時にも用いられるようになる。主な用途としては「寝巻き」などのナイトウェア。
その後だんだんとオシャレにも目覚めてきたのか、平安貴族などが、重ね着をしたり、身分や季節により色等をアレンジし始めます。
鎌倉時代には小袖にさらに短い袖のものを合わせる「打掛」スタイルも登場。
江戸時代後期、あまり派手でぜいたくなものは好ましくない、とされる風潮の中、それでも婚礼用の着物などが生まれていきました。
そして現在に至るまでに様々な種類の「着物」は誕生していったのです。
「格」があったり、それによって着ていく場所が決まったりする様々な種類の「着物」……えっと、帯ってものもありましたよね? それにはルールってないの?
あります。残念ながら(?)大いにあるのです。
和装のお供「帯」のアレコレ!
まずは一般的な3種類。「袋帯」「名古屋帯」「半幅帯」と呼ばれるもの。「袋帯」が最も格上とされます。昭和初期までの「丸帯(広帯とも)」の代わり普及したもので、金銀を使用し「留袖」などに使用するものから、カジュアルな場でも使えるものまで幅広く活躍しています。
「名古屋帯」は略礼装の際に用いられる織物から、もう少し緩やかな普段着用の染め物まで多くの種類があります。簡略化を目指し、作られたものです。
「半幅帯」は「浴衣」などに用いられるもの。素材も豊富です。文字通り、普通の帯の半分の幅に仕立ててあります。
- 礼装着には → 袋帯
- 略礼装着には → 名古屋帯
- 普段着である「街着」には → 半幅帯
ですが、帯も着物同様、長さや素材によっても「格」の変わってくるもの。
着ていく「着物」の格に合わせた「帯」選びも重要ですね。
その他にも「単衣(裏地なし)」の時、つまり夏の着物の際に用いる「単帯」や、男性やお子さんの浴衣の帯としても知られる(女性用のものもあります)「兵児(へこ)帯」、色や柄にインパクトのある「踊り帯」、リバーシブルに仕立てられた「腹合わせ帯」などなどなど……
着物に慣れ、着こなせるようになったら、色々な組み合わせも楽しめそうです。
終わりに……
「洋服じゃないから和服 =『着物』」では済まされないほど、何かとルールの多い「着物の世界」。深いです。さすが日本の民族衣装。今でこそきらびやかで華やかなイメージ、またはキュートなかわいらしさが前面に出ている「着物」たちですが、始まりはなんとも実用的。なぜか親しみが増してきます。
普段、特別なお仕事でない限りなかなか着る機会のない和服ですが、いざ着る時は「一生に一度の晴れ舞台」。
素敵な着物と共に、いい思い出が作れますよう、少しでも参考になっていたらうれしいです!
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