いや、そこは市販のでもいいのでやっぱりケーキがいいです!
……さて、確かにケーキに比べれば手軽に作れてしまいそうな「ゼリー」。フルフル、ひんやりでおいしいですね。
お菓子ではないですか、夏場に手作りのところてん……あの押すとビヨンって出てくる筒みたいなの、欲しいです!
トロミ付けには「片栗粉」、水分を固めるには「寒天・ゼラチン」。代表的な材料です。
代表的な材料なのですが……
どっち使ってもいいの?
その日の「お買い得商品」の方を使う、とかじゃダメ?
ダメです!
「どうせ固めるんだから同じでしょ!」な感覚で間違った方を使うと「作れたけど、想像をはるかに超えてる(残念な方に)」になってしまうこの2つ。
その性質や作り方の違い等、説明いたします!
「寒天・ゼラチン」を使い「想像通り」のおいしいデザート作りのお手伝いとなれば幸いです!
目次
「寒天」と「ゼラチン」はココが違う!
まず一番知っておきたい違いとして「出来上がりの食感」があります。ゼラチンではフルフルの食感で、口の中でとろける感じ。まさに「ゼリー」の食感ですね。
寒天では、お皿の上で揺れるような弾力はほとんどなく、しっかりとした滑らかな食感となります。口に入れるとほろほろと崩れます。
「溶ける」「固まる」「固まった後にまた溶ける」温度も料理を作る上では重要ポイントです。
ゼラチンの方が寒天よりもそれらの温度がずっと低いため、調理法にも違いが出てきます。
また「動物性」か「植物性」か、も大きな違いの一つ。
「動物性」である「ゼラチン」はたんぱく質。コラーゲンです。カラダ作りや美容の心強い味方ですね。牛や豚の骨や皮など、動物の結合組織の主成分であるコラーゲンに熱を加え抽出して作られています。
一方の「寒天」。こちらは炭水化物。難消化性の炭水化物、つまり食物繊維です。天草やオゴノリなどの海藻の粘液成分を乾燥させ作られています。食物繊維はダイエットには必須ですね。
このような大きな違いから、調理をする時に注意すること、また何を作るのに向いているか、と「ゼラチン」「寒天」は使い分けられているのです。
では続いて「ゼラチン」「寒天」それぞれの特徴をさらっと見ていってみましょう。
寒天ってどんなもの?
♦栄養士監修!牛乳寒天の作り方!
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=HEAy8mE49DU&w=560&h=315]しっかり、しっとりとした食感に出来上がる「寒天」を使った料理には、杏仁豆腐や羊羹、ところてんなどがあります。ご家庭では「牛乳かん(ミルク寒天)」などを作られる方も多いかと思います。
ゼリーやプリンに比べると、かっちりとしたイメージの固さといいますか……そのため大きな型で作ったものを、出来上がってからさいの目に切り分ける、などということもできます。崩れません。
また、先ほども書きましたが寒天の「凝固(固まる)温度」「溶解(溶ける)温度」はともに高く、固まるのには30~40度、溶かすには90度以上が必要となってきます(メーカーなど、その商品ごとに多少の差はあります)。
まずは90度以上の沸騰したお湯で溶かし、30~40度で固まり、それがまた溶けるには70度、ちょっとやそっとでは解けません。口の中で溶けないのには、こうした性質が関係しているわけです。
ですので夏場などの暑い時でも「置いておいたら溶けてなくなってた!!」などということは起こりません。安心です(ただ温くなるとおいしくいただけないので、できれば冷たいうちにどうぞ!)。
その代わり室温でも固まってしまうほど凝固温度が高いので、こちらには注意が必要です。常温で固まってしまうと、モロモロした感じの食感のものが出来上がってしまいます。段取り良く、ある程度のスピードでの調理もポイントです。
そして寒天のカロリーはほぼゼロ、しかも食物繊維です。粉の状態ではなんとそのおよそ8割が食物繊維なのです。血糖値の急上昇も抑えてくれます。
もう、そのまま食べてしまいたいところですが、寒天には水を多く含む性質もあるため、ここはやはり溶かして使う方法でいきましょう。
寒天はゼリー状にすれば、水分を含み100倍もの大きさになるため「便秘対策」では効果的とされる「食物繊維」と「水分」が一緒に摂れ、しかも満腹感まで得られる、その上おいしい、といった一石三鳥的な役割まで果たしてくれているのです。
偉いです、寒天!
ですが、弱点もあります。
酸の強いものには弱く、一緒に加熱してしまうとうまく固まってくれません。
ですので強い酸性の食材(果汁など)を使う時には、まず寒天を先にお湯でよく溶かし、その後に混ぜ込むようにしましょう。これで酸対策はOKです。
また、先ほども書きました「牛乳かん」を作る場合には、牛乳と混ぜる時の温度にも注意です。
寒天液に冷たい牛乳を一気に混ぜてしまうと、寒天の固まる温度「30~40度」をあっさり超えて下がってしまうため分離が起こります。寒天だけ固まってしまうのです。
ちょっと面倒くさいですが、牛乳を常温に戻すか、人肌程度に温めて(煮立つ程に温めてしまうと牛乳の風味が飛んでしまいます)から寒天液と混ぜればきれいな牛乳かんが出来上がります。果物の缶詰などを入れるのも(その場合、果物は先に型の中に入れておき、その後出来上がった液を注いでください)いいですね。おいしそうです!
ゼラチンとは?
続いての「ゼラチン」。ゼリー、ババロア、ムースやマシュマロ、グミなどに使われます。そしてお肌の味方「コラーゲン」です。
カロリーは寒天のようにほぼゼロ、というわけにはいかず、大体10gで36㎉ほど。ですが、気になるほどのカロリーではありません(5gあれば硬めのゼリーなら250㏄分、緩めに作れば350~400㏄ほども作れます)。
ゼラチンの凝固温度は10~20度、冷蔵庫へ入れないと固まりません。
また、溶かすために沸騰させるのもNG。加熱しすぎるとたんぱく質が変性してしまい、固まりにくくなってしまいます。ゼラチンの溶解温度は50~70度です。
そして固まったものが再び溶ける温度は20~25度(凝固温度より5度ほど高いのが目安)。口の中でとろけます。しかし、扱いは実際ちょっと面倒です。
夏場にこそひんやりフルフルのゼリーなど食べたくなるものですが、口の中まで持たずに室温で溶ける……切ないです。
「溶ける対策」にはゼラチンの量を増やす(ゼラチン濃度を上げる)なども挙げられますが、そうすると食感がかなりガッカリ、になります。
でも大丈夫! ゼラチンにもいくつか種類があり、溶解温度が高いものも売っていますので、そちらを選んでみてください。
ですが、このマイナスにしか思えない性質を生かして作られたものがムースやババロア。
泡を抱き込む性質からはさらにマシュマロなどが考え出されたのです。
シュワシュワしたとろけるような食感はゼラチンならではのものですね。寒天では出せません(マシュマロがコラーゲンたっぷり、しかも低カロリーなお菓子として注目を浴びたのには、このような性質を持つゼラチンが使われていたからなのですね)。
さて「動物性」の「タンパク質」であるゼラチンの弱点は「酵素」です。
パイナップルやキウイなど、ゼリーに入っていたらおいしそうだなぁ、と思える果物など、酵素を持ったものを混ぜると固まらないことが多くあります。
でも、ここも大丈夫! 缶詰めを使うかそれら果物等に少し熱を加えれば(50度以上の加熱)酵素対策はクリアです。缶詰めの果物の酵素は死んでしまっていますし、加熱することによってもなくすことができるのです。
また寒天ほどではないものの、酸味にも弱く、酸味の強い果汁などは全体の20%程度まで薄めて使うのもうまく固めるポイントとなります。
「寒天」と「ゼラチン」の詳しい違いと、おいしい作り方のポイント♪
ゼリーの「ゼラチン」、羊羹の「寒天」。ダイエットの「寒天」、美容の「ゼラチン」。プルルンの「ゼラチン」、しっとりの「寒天」……と、色々な違いが出てきました。ではここで一度まとめてみましょう!
どんな成分でできたもの?
- 寒天: 炭水化物(食物繊維) → 天草やオゴノリなどの海藻の粘液成分を乾燥させたもの / 植物性
- ゼラチン: たんぱく質(コラーゲン) → 牛や豚の骨や皮など、動物の結合組織の主成分であるコラーゲンに熱を加え抽出したもの / 動物性
どっちがヘルシー?
寒天です!→「寒天」はほぼノンカロリーなので「寒天」の勝ちですが「ゼラチン」も気にするほどのカロリーのものではありません(10gで36㎉ほど。ゼリーを作るのに使用するのは大体5g程度です)
出来上がりの食感は?
- 寒天: しっとり。口の中でほろっと崩れる感じ。比較的しっかりとした食感。弾力性はほとんどなし
- ゼラチン: フルフル、プルルンなやわらかい食感。弾力性、粘性が強いです
どんなものが作れる?
- 寒天: 羊羹・杏仁豆腐・ところてん・牛乳かん(ミルク寒天)などなど
- ゼラチン: ゼリー・プリン・ムース・ババロア・マシュマロ・グミ などなど
どっちが扱いやすい?
またまた寒天の勝ち!!→ 凝固温度と溶解温度の差で扱いやすさに違いが出てきます。
- 寒天: 90度以上で溶け、30~40度ほどで固まります。固まったものが再び溶けるのは70度以上(夏場もバッチリ。でもお口の中ではとろけません)
- ゼラチン: 50~70度程度で溶け、20度以下で固まります。25度(凝固温度プラス5度が目安)でまた溶け出します(冷蔵庫から出して放っておくと、室温が高ければ溶けてしまいます。でもお口でとろける食感は格別!)
注意しなくちゃいけないことは?
◎寒天
- 酸に弱い!
→ 高い酸性食材と混ぜると固まらないこともあります。先に寒天をよく溶かして寒天液を作ってから酸性食材を混ぜ込めばちゃんと固まってくれます。 - 室温でも固まっちゃう!
→ それほど急ぐ必要はありませんが、なるべく素早くがポイントです。室温で固まってしまうとモロモロした食感となってしまいます。 - 牛乳かん、分離しちゃう!
→ 寒天の凝固温度は高いです。冷たい牛乳を一気に入れるとその温度より下がってしまい分離を起こしてしまいます。
牛乳も人肌程度に温めてから注げば、ちゃんと混ざって固まってくれます。
- 酵素に弱い!
→ ゼラチンは「タンパク質」。たんぱく質を分解する酵素を持った果物等(パイナップルやキウイなど)を混ぜると固まらないこともあります。そんな時には「缶詰」を使うか、その果物に加熱(50度以上)でOK。要は、酵素がなくなればいいのです。 - 酸にも結構弱い!
→ ゼラチンの量を増やすか酸性食材の分量を全体の20%ほどまで薄めて使えばうまく固まります。 - 高温にも弱い!
→ ゼラチンの溶解温度は50~70度。それ以上に加熱してしまうとたんぱく質が熱変性を起こし、固まりにくくなってしまいます。 - 早く食べて!
→ 焦って食べる必要はありませんが、高い室温ですと溶け出してしまうので何かに夢中になる予定のある時は一旦冷蔵庫へ。出したらなるべく早めに食べるようにしてくださいね、溶けちゃうと悲しいですので。
どっちかしかなかったら?
お互いに代用が利かないわけではありません。ですがどうしても寒天なら硬め、ゼラチンですとやわらかめの食感にはなってしまいます。
それぞれの分量を調整して、納得のいく硬さを目指してみてください。
★代わりに使うときの注意点は?
使用分量のおおよその目安ですが、「寒天」:「ゼラチン」=1:3
となります。
また、2つを混ぜてその食感を楽しむ、などの場合は、まず「寒天」の方を溶かし、その後温度が下がってから「ゼラチン」を溶かしてください。ポイントは溶解温度。ここ、重要です!
溶かし方は?
- 寒天: 水に入れ1、2分しっかりと沸騰させます。お湯に若干の透明感が出るまで、充分に溶かしてください。その後、温めた液体と(火を止めて)混ぜ、容器に入れて固めてください。常温でも固まりますが、食感が悪くなります。なるべく早く冷蔵庫へ入れましょう。
- ゼラチン: 粉ゼラチンなら4~5倍、板ゼラチンではゼラチンが浸るくらいの冷たい水で10分程度ふやかしてから(分量外)お使いください。混ぜる液体は約60度ほどに温め、そこでふやかしたゼラチンを溶かします。型に入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫へ。
どんな種類のものがある?
◎寒天
その他、どちらも凝固温度・溶解温度の違う製品などさまざまのものが市販されています。- 粉寒天: 裏ごしなどの手間いらずで、初心者の方でも簡単に使えます。
- 角(棒)寒天: 伝統的な製法で作られ、風味豊か。粉・糸寒天に比べると、柔らかな出来上がりとなります。
- 糸寒天: 角(棒)寒天よりも透明感のある出来上がりのものが作れます。サラダやスープに使われることも。繊細な口当たりが特徴。
- 粉ゼラチン: 計量が楽! 比較的扱いやすいです。初心者の方にも安心です。
- 板ゼラチン: 透明感、保形性に自信あり! プロの方の多くもこちらを使用。
- 顆粒ゼラチン: いわゆる「介護用」のゼラチンです。ふやかす手間がいらず、50~60度の材料にそのまま入れて使えます。
作るお菓子や料理に合わせて、色々試してみてくださいね。
また、加える水分量を多くすればちょっとやわらかめの物が寒天でも作れますし、逆にゼラチンや寒天の量を増やせば硬めのものが出来上がります(当たり前といえばその通りなのですが……)。レシピ通りに作って「この食感じゃない!」と感じた場合は、分量を勝手に変えて、ご自分好みのベスト食感を目指してたくさんデザートを作ってしまいましょう!
どっちがおいしい?
ゼリーでもところてんでも、ご自分で作ったもの、ご自分のために作ってもらったものはみんなおいしいです!終わりに……
「入れて固める粉」と単純に思っていた「寒天」と「ゼラチン」。見た目はほとんど変わらないのに、動物由来か、植物由来か、から違うものだったとはびっくりです!
粉状のもの以外の存在も知っていましたが、なかなか手を出す気には……
せっかくなので、次回は板や糸状のもので挑戦してみようかな、などという気にもなってきました。
何かと何かを使って、こんな料理ができるんだ! というのはちょっとした感動です。
今までうまくいかなかった料理が、ついに納得いくものになった時などは泣けてきます……(私は)。
おいしいお菓子やお料理で皆さんがたくさん笑顔になりますよう、ここからこっそり願っております!!
関連記事はこちらになります。
コメント