── 失礼ですよ。
「プリン」と「ゼリー」に……っていうのも「お菓子」に失礼ですが……
「プリン」と「ゼリー」は、ですが確かにあまりにもポピュラー。
「今日はどっちを食べようかなぁ」
と悩むことはあっても、
「これってプリン? ゼリー? どっち?!」
というのはかなりのレアフレーズ。
問題は「ババロア」と「ムース」なのです。
洗顔料や整髪料でも、泡状の物を「ムース」といいますが、だからといってスイーツ(いや、お菓子の)「ムース」が泡状なのかというと、そんなことはない。
見た目は「ババロア」とそれほど変わりません。
うーん。
こういうの、非常にモヤモヤします。
「ババロア」「ムース」「プリン」「ゼリー」(特に「ババロア」と「ムース」)とは何の違いによってその名称を呼び分けられているのか?
「名前なんてわからなくても、おいしいものはおいしいんだもん!」
……大正解ですが ── 知っていてもおいしいものはおいしいのです……
4つのお菓子たちについて、わかりやすく解説いたします。
モヤモヤも薄れ、皆さまがますますおいしいリラックスタイムを過ごせますよう、少しでもそのお手伝いとなれましたら幸いです。
目次
「ババロア」「ムース」「プリン」「ゼリー」はココが違う!
どれもプルプル、フルフルした食感のこれら4つ。甘くて柔らかいお菓子です(当たり前のことを書いている気が凄くしています)。
この「プルプル・フルフル」はそれぞれどのようにして作られているか。
基本の材料と作り方を簡単にまとめてみましょう。
-
◎ババロア
- 材料:「卵」「牛乳」「砂糖」(をベースにした『アングレーズソース』)「生クリーム」
- 作り方: 上記のものを「ゼラチン」で固める ◎ムース
- 材料:「生クリーム」「卵白」「卵黄」「砂糖」
- 作り方:「卵白」と「生クリーム」を泡立てて混ぜ、形を作る ◎プリン
- 材料:「牛乳」「砂糖」(を混ぜた)「卵液」
- 作り方: 上記のものを加熱して固める ◎ゼリー
- 材料:「果汁」「砂糖」
- 作り方: 上記のものを「ゼラチン」で固める(「寒天」が使用されることもあり)
「ゼラチン」を使うか、材料そのものや、その作用を利用して作られるか、の違いです。
「ババロア」と「ゼリー」には「ゼラチン(ゼリーでは寒天の場合もあり)」。
「ムース」は卵白や生クリームを泡立てることによりあの食感を作り出し、「プリン」では「加熱すると固まる」という卵の性質を利用ですね。
「ゼラチン」で固められたものは、その分食感がなめらかになります。
フルフル、というよりどちらかといえば「プルプル」。
「卵白を泡立てる」というのは要するに「メレンゲ」のことです。
ですので「ムース」の特徴は、そのフシュッとしたくちどけ。
「ムース」とはフランス語で「泡」の意味を持つ言葉です。
「ババロア」は「プリン」と基本の材料はほとんど変わりませんが、固めるために「ゼラチン」を使用。
「ムース」に比べても、なめらかでしっかりとした食感になるのです。
作り方、特にどのようにして固められているかがそれぞれに違う、ということを押さえておいていただき、ではまずはハードルの低い「プリン」と「ゼリー」の違いから、少し詳しく見ていってみましょう。
一応「ゼリー」と「プリン」の違いも簡単に!
──「一応」とか言ってはダメです。「ゼリー」だって「プリン」だって、立派なお菓子。
ただ「スイーツ」というには庶民的すぎるだけ……
さてさて、まずは「ゼリー」です。
前述の通り「果汁をゼラチンで固めた」ものが一般的。
「ゼラチン」とは動物の骨や皮に含まれる「コラーゲン」から作られるもの。
お肌プルプルの素ですね。
25~30度で溶け出す性質を持ちます。
お口に入れた瞬間にほどけるように溶けていくゼリー独特の食感はこの性質のため。
ただし、酸の強いものには弱い。
固まらなくなってしまうのですね。
ですので生のパイナップルやキウイなど、強い酸性を持つ果物を使ったゼリーには「寒天」が代用されることもあります。
「寒天」は植物性。海藻が原料です。
こちらで作られたものでは、ゼラチンのように口に入れた瞬間溶けていく、ということはありません。
食感もゼラチンを使用して作られたものに比べると若干硬めになってしまいます。
「ゼラチン・寒天」を混ぜたものなども市販されています。
ご自宅で作る場合には、好みの硬さに割合を調整することも可能。
そして「生のキウイ入りゼリー」……おいしそうです。
基本は果汁ですがそれ以外にも乳製品や香料、卵などを使用したものもあります。
コーヒーゼリーやミルクゼリーなど。
卵も使用、となるともはや「プリン」では? と思ってしまいますが、前述の通り「プリン」には基本的に「ゼラチン(または寒天)」は使用しません。
「プリン」とは本来「カスタード・プティング」に由来するもの。
ですが市販されている商品名等を見る限り、それほど厳密に線引きがされているわけではないようです。
上記の「ミルクゼリー」ですが「ミルクプリン」なるものも存在しています。
これ、大好きなのですが、卵は使われず「ゼラチン」で固めているのですね。
ですが「ミルク『プリン』」として堂々と売られています。
── 別にいいみたいです。
この他に「パンナコッタ」という生菓子もあります。
「パンナ」とはイタリア語で「生クリーム」のこと、「コッタ」が「加熱した」です。
生クリームを砂糖や牛乳と一緒に煮詰めてゼラチンで固めたものですが「ミルクプリン」は、こちらにも近い。
しかも、この「パンナコッタ」、生クリームの量を減らし「牛乳」を使って作れば「ババロア」です。
…………
生菓子というのは、そもそもそれほど材料や作り方に違いはないのです。
しかも、似たような食感のもの、となれば当然色々と被ってくる部分もある。
ですので「基本的にはこういうお菓子」ということを押さえておけば、あまり厳密に「ここの工程・この材料があるから○○とは呼べない」などと考える必要はないのかもしれません。
イレギュラなものもあり。
ですが基本的なもの、一般的なものとしては、
- ゼリー: 果汁や糖液をゼラチンや寒天で固めたもの
- プリン: 卵・牛乳・砂糖を使用し、卵に熱が加わった際の凝固作用により固めたもの
ちなみご家庭でも簡単に作れる、ほぼ調理工程が「溶かして固める」だけのプリン(いわゆる「プリンの素(粉末)」はゼラチン使用です。
「ゼラチンプリン」「ケミカルプリン」などと呼ばれます。
本来のカスタード・プディング由来のものとはもはや別物ですが、あれはあれで、おいしいのです。
見た目も似てるぞ!!「ババロア」と「ムース」の違いはココ!
さて「ババロア」と「ムース」です。似ていてやっかいそう、とはいうものの、やはりこちらは「スイーツ」、何なら「スウィーツ」と書いてしまいたくなるお菓子たち。
そしてなぜか「ババロア」「ムース」と書くたびにテンションが上がってきます。不思議……
先ほど書きました通り「ババロア」「ムース」では食感の違いがまずは挙げられます。
「ゼラチン使用の有無」によるものですね。
「ババロア」には使用されており「ムース」には使われていない。
ですので「ムース」の方がより「フワフワ」、「ババロア」は先ほど書きました通り「プルプル」な食感となります。
もともとあったのは「ババロア」の方。フランスの古典菓子です。
そしてその「ババロア」に改良を加え作られたものが「ムース」。
「ババロアもいいけど、もっとこう、軽い食感のお菓子ってないの?」
のような感じで「ムース」誕生です。
「重めの食感」の原因ともなっていた「ゼラチン」の代わりに「メレンゲ」を加えたのですね。
『ババロア』-「ゼラチン」+「メレンゲ」=『ムース』
このことにより「フワッ」を確保です。そしてこの「メレンゲ」とは「泡」=「(フランス語で)ムース」であるため、
「メレンゲを加えたもの(の総称)」=「ムース」
でもあります。(※ この総称としての「ムース」まで持ち出してしまいますと、話がごちゃごちゃになってしまいますので、今回は「ババロア」と似ているお菓子である「ムース」について、とさせてください)
そしてフランスの古典菓子である「ババロア」の由来がほんのちょっとだけ面白い。
「由来」ではよくあることですが、ババロアにも2つほど説があり、
-
①フランス語で「バイエルンの」を意味する言葉。
ドイツ、バイエルンの貴族のためにフランス人シェフが考案したものだから、とする説。
②バヴァリア地方で流行っていた生クリームを温めた飲み物をもとに考案されたから、とする説。
そして、その「アングレーズソース」とは、
-
①「クレーム・アングレーズ」のこと。
牛乳・卵・卵黄・砂糖・香りを混ぜて火にかけ、濃度をつけたのも =「イギリス風カスタードソース」
②フランス語で「イギリス風」のこと
いろんな国が入っちゃってます。
本筋とは全く関係ないのですが、どうしても、ここを書きたい欲求にあらがえず……つい書いてしまいました……
さてさて、ここまでですと「ババロア」と「ムース」の違いは案外はっきりしているもののように思えます。
基本的には前述の通りに呼び分けられていることに間違いはないのですが、
- 「ムース」の中には「ゼラチン」を使うものもある
- 製法にも大きな違いはない
もう、こうなってしまっては「ババロア」だか「ムース」だか区別のつけようがありません。
洋菓子の本場といえばフランスですが、そのフランスでさえこちらの2つの線引きが、しばしば議論の的になるそう。
はっきり決まったら、ぜひ教えてほしいです……
ですが、現在では、
- ババロア: 卵・牛乳・砂糖を煮たものに泡立てた生クリームを加え、ゼラチンで固めた冷菓
- ムース:(卵白を泡立てた)メレンゲ、または泡立てたクリームを使い作られたデザート
ただし、この限りではないものも「ババロア」「ムース」と呼ばれることもある、といった感じですね。
パティシエなりシェフなりが「こちらが本日のムースです」といったら、それは「ムース」。
ゼラチンが入っていても「ムース」なのです。
作った人がそういうのなら、そうなのですね。
これは決して乱暴に言っているわけではなく、実際にその呼び方は作り手の見解により変わってくることも多いのです。
ですが、伝統的といいますか、本来の「ババロア」「ムース」には「ゼラチン使用の有無」という違いがある ──
ここも一応押さえておいていていただけますと「ババロア」「ムース」ともに、私もなぜかうれしく思います。
「ババロア」「ムース」「プリン」「ゼリー」の違いのまとめ ♪
伝統的な製法でない作られ方が増えてきたため、これら4つの境目が段々曖昧になってきている感じですね。ですが「よりヘルシーに」「より簡単に」など、その目的に合わせることで「本来の作り方」から離れてきているのであれば、それはそれでいいような気もします。
おいしいもののカロリーは、できれば少ない方がいい。
味のグレードは落とさず、なおかつ簡単に作れるなら、もちろんそっちの方がいい。
── なのですがここで、もう一度本来の「ババロア」「ムース」「プリン」「ゼリー」についておさらいです。
違いをまとめていきましょう。
何で固めてる?
- ババロア: ゼラチン
- ムース: 卵白やクリームを泡立てることによって(固めるというよりクリーミーにする)
- プリン: 熱を加えると固まる卵(のたんぱく質)の性質を利用して
- ゼリー: ゼラチンや寒天
基本の材料は?
- ババロア:「卵」「牛乳」「砂糖」「生クリーム」
- ムース:「生クリーム」「卵白」「卵黄」「砂糖」
- プリン:「牛乳」「砂糖」「卵(牛乳・砂糖を混ぜた卵液)」
- ゼリー:「果汁」「砂糖」
食感の違いは?
- ババロア: ゼラチンを使用することによりなめらかでプルプルした食感に
- ムース: 卵白やクリームを泡立てることにより、軽くフワッとした口当たりに
- プリン: 本来のものは卵の凝固力によって、弾力がありしっかりとした口当たりに(最近の主流は柔らかなくちどけのもの /ゲル剤使用や蒸しプリンなど)
- ゼリー: 25~30度で溶けだすゼラチンの性質により口の中でほどけていくような食感に(寒天を使用しているものは口では溶けません)
どこの国のお菓子?
- ババロア: フランスの古典菓子
- ムース: フランス /「ババロア」を改良して作られたもの
- プリン: イギリスの「カスタード・プディング」に由来
- ゼリー: フランス
今日のおやつは何?
……お母さんに聞いてみてください。終わりに……
やっぱりシンプルにプリンが好きかも……お皿にプッチン、と落としたい……
でも、ムースのあのふんわり食感も捨てがたい……
どうして甘くてふんわりしたものって、あんなにおいしいのでしょう。
初めに考え付いた人に、何か「平和賞」的なものは与えられたのでしょうか。いや、与えるべきです!
── それはさておき、「ババロア」「ムース」「プリン」「ゼリー」の違いへのモヤモヤは少しは薄まりましたでしょうか。
伝統的な製法を守っていってほしい気もしますが、その時々のニーズに合わせて柔らかな食感のものが主流になったり、または逆にしっかりとしたお菓子が流行ったり、というのもいいような気がします。
実際、軽い食感が求められたおかげで、あの世にもおいしい「ムース」が誕生したわけですし……
スイーツはいい!
スイーツバイキングで、甘いものオンリーというのは、個人的には若干キツく感じてしまいますが、食事の最後を甘いものでしめる。
飲んだ後のラーメンより、ずっといいです。
さてさていかがでしたでしょう。
たまにはお手製のデザートを作ってみるのも楽しそうです。
皆さまのホッとできる時間がますますおいしいものになりますよう、併せて願っております。
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