「お父さん! スーツ着たままトイレに入らないでって言ったじゃない! あんたもご飯食べる時はブレザー脱ぐ! 制服汚れたら大変なんだから! お兄ちゃん! だからちゃんとハンガーに掛けてから寝なさいって言ったでしょ!! ジャケットしわくちゃになっちゃってるじゃないの! もう、母さん怒るわよ!!」
……もう怒ってます。そしてお母さん、目玉焼きが焦げています……
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ところで、男性の勝負服「ブレザー」「スーツ」「ジャケット」、会社員のお父さんは「スーツ」、学生の弟さんの制服が「ブレザー」、お兄さんはラフなお仕事なのでしょうか「ジャケット」での通勤のようですね。あ、予備校行くのですか、失礼しました……
皆さんしっかり着分けているようですが、その基準、決まりのようなものをご存知でしょうか。一応あるのですよ。
ですから取り敢えず「上着」ということで選ぶと「ここでブレザーなの? スーツじゃなくって?!」などということも起こり得るのです! 大変です!
「ブレザー・スーツ・ジャケット」の違い、それぞれの特徴等、紹介いたします。
通勤通学に限らず、デートやお世話になった方へのご挨拶の場、冠婚葬祭などでも登場するこれらの「上着」、ぜひ違いを知り颯爽と着こなし、ますます男っぷりを上げてしまってください!
皆さまのお役に少しでも立てれば幸いです!
目次
「ブレザー」「スーツ」「ジャケット」はここが違う!
まずは「ジャケット」。これが大もとです。「スーツ」も「ブレザー」も「ジャケット」の仲間。「ジャケット」とは「袖のついた上着」の総称です。
そして次に「ブレザー」となります。
「ジャケット」の中でもテーラード(紳士服仕立て)型のダブル前(開き)、シングル前(開き)のものの総称が「ブレザー」です。
では「スーツ」は、といいますと、これは実は商品名ではなく「テーラードジャケットのような型のジャケット + スラックスのツーピース(またはさらにベストをプラスしたスリーピース)一式」であることを示す言葉なのです。
また「テーラードジャケット」という未知のものが出てきてしまいました……
わかりにくいので、それぞれのポイントだけ箇条書きで挙げていってみましょう。
- ジャケット: 袖のついた上着(の総称)。
- ジャケットの仲間の「テーラードジャケット」: ジャケットの中でも綿・ポリエステル・アクリルなどのツヤ・光沢のある素材で作られ、色は様々、プラスチックボタンが主流のフォーマルな男性用の上着。
- テーラードジャケットの一種の「ブレザー」: テーラードジャケットの中でも、素材の主流はフランネル。色は紺が多い。金属ボタンで、男性用が主だが、女性用のものもあるスポーティーな上着。
- スーツ: テーラードジャケットのような形のジャケット + スラックスのツーピース(またはさらにベストをプラスしたスリーピース)一式を指す言葉で「上着」の種類を示すものではない。
つまりこれら3つの関係はこんな感じになっているのですね。
「ブレザー」とは? 「スーツ」と違うのはここ!
オシャレをするのも一苦労です……「ブレザー」誕生には2種類ほどの説があり、
- ケンブリッジ大学がオックスフォード大学とのボート競技の際、着ていた真っ赤な(緋色)ジャケットのことを「炎・強い輝き」などの語源を持つ「ブレザー(Blazer)」の名前で呼んだ説(1829年頃・シングルタイプ)
- イギリス海軍の「ブレザー号」の乗組員の制服だった説(1945年頃・ダブルタイプ)
もともとの色は「赤」でした。そして徐々に他の色も普及し始めるようになり、イギリスでは社交クラブや退役軍人会、学生の制服などに使われるようになります。
その後アメリカに渡った「ブレザー」は私立大学の制服やスポーツチームのユニフォームとしても活躍します。
こうしてファッションとして定着していき、今の「ブレザー」の位置ができあがるわけです。
「ユニフォーム」「制服」という背景を持つ「ブレザー」は、現在でも「スポーツジャケット」つまりカジュアルな場での着用が一般的です。
★「ブレザー」と違う「スーツ」の特徴はコレ
ユニフォームから誕生した「ブレザー」ですが、もともとは先ほど書きました「テーラードジャケット」の一種です。それをもっとカジュアルに着こなすために様々なアレンジがなされたものが「ブレザー」。
では「スーツ」と呼ばれているものの「上着部分」とは、何なのでしょう。
やはりこちらも「テーラードジャケット」なのですね。
テーラー、器が大きいです!
というよりも「スーツ」とはそもそも上着の種類を指す言葉ではないので「テーラードジャケット」そのもの、もしくは「テーラードジャケット」的な型のジャケットに、同じ生地で作ったスラックス(またはベストも)を合わせて一式となったものが「スーツ」と呼ばれているのです。
「ジャケット」とは? 「ブレザー」とはここが違う!
袖のある上着の総称「ジャケット」。14世紀半ばに農民の方々が着ていた膝丈の長さの袖付きの作業着(の上着)として定着していったのが始まり、と言われています。「ジャケット」の語源は、その作業着が「ジャック」と呼ばれるものだったことから。元々は「作業着」だったのですね。
前開きには拘らず、被って着るタイプのものでも「ジャケット」です。
丈も長めのコートのようなものからスーツのように短めのものまで様々、ジャンパーも「ジャケット」の一種ですね。袖がついている上着ならもう全て「ジャケット」でいいのです。
しかし、その中から先ほどの「テーラードジャケット」と呼ばれるものが誕生します。
「テーラー」という言葉に聞き覚えはありませんか?
紳士服の仕立て屋さんのことです。ですから「テーラードジャケット」とは「紳士用に仕立てられた服」といった感じ、「作業着」よりぐっとフォーマル感がアップしています。
使われる布の素材も薄く、綿やポリエステル、アクリル等が中心素材となったため、ツヤや光沢も出てきました。作業着ではあり得ないですね。ほとんどスーツの上着です。
さて、この「テーラードジャケット」をもっとカジュアルに着こなしたい! とアレンジされ生み出された「ブレザー」。「テーラードジャケット」の型はそのままに、ボタンには金属製のものを、生地や色にも違いを持たせました。
主な生地の素材にはフランネル。ネルシャツ等に使われる、厚手の毛織物です。
フォーマル感がスポーティーな感じに変化していきます。
そしてついにケンブリッジ大学 VS オックスフォード大のボート競技の場で、「赤い色のカジュアルなタイプのテーラードジャケット」は「ブレザー」として生まれ変わるのですね(シングルタイプの場合)。
★「ジャケット」とは違う「スーツ」の特徴
袖のついた上着、としての「ジャケット」ですとあまりにも種類がありすぎ、比べようがないので「テーラードジャケット」と「スーツ」の違いで見てみましょう。♦2016春テーラードジャケットのオススメ着こなし【メンズファッション】
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=4nDxcEMiZ3s&w=560&h=315]「ジャケパン」、よく見かけます。ジャケットとパンツ(ジーンズなど)を組み合わせたスタイルのことです。
堅苦しすぎず、ラフすぎず、清潔感もあり個性的でもある、30代、40代くらいの男性を中心に、オフの日の服装の定番になりつつあるファッションかもしれません。
さてこの時の「ジャケット」、型は「テーラード」で同じなのだからスーツの上着を普通のパンツに合わせてみてもいいのか?
……やめておいた方がいいのです。
ご自分の部屋限定で試しに着てみると、感覚的に「あ……やめとくか」になるかと思うのですが、なんとも違和感たっぷりなスタイルになってしまうのです。
理由は以下の通り。
- 着丈の違和感
→ ジャケットの方がスーツより2,3cmほど短く作られています(一般的なもの)。
「なんか、上半身だけ縮んだ?」なイメージになってしまいます。 - 生地感の違和感
→ ジャケットの方が、スーツより若干厚めの生地で作られています。またツヤ、光沢にも微妙な差があります。ほとんどのスーツにはウーステッドと呼ばれる生地が使われていますが、一方のジャケットは綿やポリエステル、アクリルが主流。「スーツの上着」ということが一目瞭然に。
「あれ? ズボンどうしたの? あ、トイレで聞かない方がいい問題が起こった?」などと勘ぐられてしまうかもしれません。 - 肩パットの有無の違和感
→ スーツは敢えて肩パットを入れ、かっちりとした印象を作り出しています。ジャケットには入っていません。ラフに着こなすのが「ジャケパン」ですので。
「なんで上半身だけそんなに気合入ってるの?」なイメージがついて回ります。 - シルエットの違和感
→ スーツはかっちりが身上。ジャケットはラフが売りです。そのためジャケットの前ボタンは、留めても留めなくてもシルエットが決まるようにできています。ところがスーツで前ボタンを開けると……シルエットが驚くほど崩れてしまうのです。
「付き合ってあげるからさ、取り敢えず洋服屋さん行こうか」と、楽しいデートの時間がちょっと無駄になってしまうこともあります。
つまり「スーツ」は上下で揃っていることが絶対条件の一つ。ネクタイも本来はセットのようなものですね。
この絶対条件を覆すことができるのは、よっぽどのセンスの持ち主か、何を着ても許されるような容姿かキャラクターを持っている場合のみ。狭き門です。
現在の「スーツ」はかつて「テーラードジャケット」と呼ばれていました。
しかし「テーラードジャケット」に様々なアレンジを加えたものが作られるようになったことで、今まで「テーラードジャケット」と呼んで問題なかった「現在のスーツ様のもの」との区別をつける必要が出てきたのですね。
そこで「テーラードジャケットの名称」を、アレンジを加えた「今までのテーラードジャケットの進化形」の方に譲り「今までのテーラードジャケット」は「スーツ(の上着)」としての道を歩み始めることとなったわけです。 もしかすると、器が大きかったのは名称を潔く後輩に譲り渡した「スーツ」の方だったのかもしれませんね。
「ブレザー」「スーツ」「ジャケット」、これで解決! それぞれの違いと特徴
うーん、なにかと色々な違いがあるのですね。「上着」として一括りに考えていると痛い目に合いそうな気がしてきました。それではここで、こんな時にはどれ? を「ブレザー・スーツ・ジャケット」の違い・特徴を比較しつつ見ていってみることにしましょう!
きょうは妹の結婚式。まさか兄貴のオレより先に結婚するとは……
-
ここはスーツで!
→ 冠婚葬祭にはスーツです。主役はあくまで新郎新婦、未婚の参列者(女性)も来ますのでかっこよく行きたい気持ちはものすごくわかりますが、あまり奇をてらわずフォーマルでスッキリとまとめましょう!
△ブレザー: 学生さんなら制服でもOKです(詰襟でももちろんOK)。
初デート! デ、デニーズランドに行ってきます!
まずは深呼吸です! そして「ディズニー」ランドです!- ブレザー / ジャケット: おススメです! ラフすぎず、堅苦しすぎもしない。いい1日になるといいですね! ジェットコースター系の乗り物に乗る時には、できれば前のボタンは閉めておきましょう! 裾がヒラヒラしてうっとうしいですよ!
- スーツ: 別にダメではありませんが、ディズニーランドで「スーツ」は浮きます。かなり浮きます。
町内会の囲碁サークルでお揃いの上着を作るんだって。じいちゃん、すごい嬉しそう!
ブレザーですね!「制服」「ユニフォーム」には「ブレザー」です! 昔は胸ポケットに所属クラブやチーム名のエンブレムがつけられていたそうです。もしかすると真っ赤なブレザーだったりするかもしれませんね!(もし「何色がいいと思う?」と聞かれたら、無難な色をさりげなく推してみてください。赤は伝統ありですが、囲碁の「黒白」の世界では異物感がものすごいです)- ジャケット: 意表をついて、それもありですが……
- スーツ: これはありません。作るのは「上着」だそうですので(スーツは上下、もしくはベストを含めた一式を指した言葉です)。
寒い……11月だからってこの寒さはおかしい……
風邪かもしれないです! コートを羽織ってしまいましょう!- ブレザー / ジャケット / スーツ: どこに出かけるかで変わってきますが、会社に行くなら「スーツ」、ジャケパンスタイルで大丈夫なところなら「ブレザー」や「ジャケット」で。この時、本来ならアウターであるはずのこれらはインナーとなります。
- コートやジャンパー: 厳密にいえば、これも「ジャケット」の一種です。インナーの「ジャケット」の上に着るアウターとしての「ジャケット」になります。
バイクで峠を攻めます! あのヘアピン具合がたまりません!
ライダースやジャンパー系の丈の短い、厚手のジャケットをおススメします! 真夏でも、できれば長袖で!- ブレザー / スーツ: 動きにくいです。
- ジャケット: ヘアピンカーブで誤操作をしたら本気で危ないので、特に柔らかい素材のものがいいですね。長めのコートもやめてくださいね。
何でいっつもスーツのズボンばっかりダメになっちゃうんだろう……
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ホントですよね! どうにかならないものなのでしょうか? 同意見です!!
→ ですが、涙をのんで、お別れです……上着だけタンスの肥やしに取っておくか、この際もうどちらも思い切って捨ててしまいましょう! もしくは裁縫好きな奥様かお母様がいるなら、一応生地として再利用できないか聞いてみてください。勝手に捨てると怒られるかもしれません。いずれにしても、上着だけを他のスラックスなどと合わせるのはやっちゃダメです。奇跡的に個性的なかっこいいファッションとして生まれ変わらせることができる場合もあるかもしれませんが……やっぱりやっちゃダメです。
終わりに……
「ブレザー」も「スーツ」も「ジャケット」の一種なら、みんな「ジャケット」でいいじゃん!いいですよ!
「ブレザー」という名の「ジャケット」、「スーツ」という名の「ジャケット」。
柴犬もトイプードルもドーベルマンも「イヌ」の一種、人もイルカも「哺乳類」の一種です。
そこまで違えば、もう少しわかりやすいのですが……でも、人とイルカの違いを知っているより「ブレザー・ジャケット・スーツ」の違いを知っている方がかっこよかったり……しませんか。
知識もファッションの一つ、オシャレにまとってぜひぜひ「男からも惚れられる男」作成のご参考になさっていただければ、と願っております!
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コメント
コメント一覧 (2件)
でも肩パットでなく、肩パッドではありませんか?
コメントありがとうございます!
「肩パット」……ではなく「肩パッド」ですね(^^;)
すみません。
また何かお気づきのことがありましたら、ぜひ教えてください。
お読みいただきありがとうございました(o^―^o)