「○○さん、ありがとうございました! では首都圏ニュースも、この辺で。また来週お目にかかりましょう。よい週末を~~!」
ムリです!!
「関東地方」なのか「首都圏」なのか、気になってよい週末が過ごせそうもありません!!
……それは大変……
ですが実際、ニュースや天気予報などでは「関東地方」「首都圏」はどちらもよく使われています。
「関東」と「首都圏」。
あえて使い分ける必要は一体どこに?
-
「首都圏」とは「関東地方」のことではないのか?
違うのだとしたら、それは何なのか?
それぞれに定義はあるのか?
……困りました。
関東在住なのに「同じようなものなんじゃないの?」以外、答えようがありません。
このままでは関東に怒られてしまう……いや、怒られるのは首都圏に、か……
どちらにしても怒られるのはイヤだ……
……「関東」と「首都圏」の定義など含めまして、違いを解説いたします。
今後、週末に「関東」「首都圏」入り混じりのニュースなどを観てしまっても安心してよい週末が過ごせますよう、皆さまにもスッキリしていただけましたら幸いです。
目次
「関東・首都圏」はココが違う!
定義があるのは、実は「首都圏」の方にのみ。「関東(関東地方)」に関しては、明確な定義は設けられていません。
が、一般的には皆さま、ほぼ共通の認識をされているかと思います。
- 関東(地方): 東京都と、神奈川・千葉・埼玉・栃木・茨城・群馬の各県を含む地域(1都6県)
- 首都圏: 1956(昭和31)年に「首都圏整備法」により定められた「関東地方」に「山梨県」加えた1都7県
だけの違いなのですね。
「ココが違う!」というより「ココしか違わない!」なのですが、「関東地方」になぜ定義がないのか、も気になるところ。
そもそも、どうして「関東」があるのに、もう一つの「首都圏」なる区域を作ったのか?
「関東」「首都圏」の違いはあっさりしているのですが、そこに至るいろいろも、なかなか面白いのです。
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「関東」とはなぜ「関東」と呼ばれるのか?
「首都圏」はなぜ作られたのか?
などなど、ほとんど豆知識のようなものですが、「関東」「首都圏」のアレコレをのんびりお読みいただければさらに幸いです。
では、まずは「関東」についてから。
よろしければ一読ください。
「関東」とは?
「東京・神奈川・千葉・埼玉・栃木・茨城・群馬」を含む地域。
先ほど書きました通り、現在はこの範囲を「関東地方」とするのが一般的です。
中学校でも習いますね。
日本を「北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州」の8つに分けた場合の一地方です。
「山梨」は入っていません。属しているのは中部地方。
ですので「関東地方」とは上記の地域。
納得です。
ですが「地方」抜きの「関東」は、その範囲を実にコロコロと変えているのです。
明治37年の国定教科書「小学地理」に上記の八地方区分が記載され、そのまま現在に至るわけですが、特に法的な根拠などがあるわけではありません。
さてさて「関東」の呼び名はいつごろから使われているのか?
結構な大昔からなのです。
初登場は673年。
前年の「壬申の乱」により、当時の天皇「天武天皇」が都一帯を守るため、3つの関所を置いたのが始まりです。
「関所」といえば荷物や通る人の身分を確かめ、ついでに通行税を払わないと通れない場所、といったイメージがありますが、この時は防御のためですね。
壬申の乱でも、「不破関」を封鎖して、敵をそこでブロック。勝利を収められたのも関所のおかげだったのです。
が、ケンカの勝敗はさておき、この時関所の置かれた場所が初代「関東」にとっては重要なポイント。
上記の東山道に置かれた「不破関」の他、東海道には「鈴鹿関」、北陸道には「愛発関」。
いわゆる「三関」です。
そしてこれらより東側の地域を指し「関所の東側」=「関東」と呼んだのです。
ちなみに「不破関」「鈴鹿関」「愛発関」はそれぞれ、現在の「三重県」「岐阜県」「福井県」に位置します。
だいぶ範囲が違いますね。
当時も「東国」といった意味合いで使われていた言葉です。
さて、これらの関所は天武天皇に勝利ももたらしましたが、その後の東・西の文化や風習にも大いに違いをもたらしました。
人の往来や物資などの流れも滞ることとなり、東西それぞれの異なった文化・風習が生まれていくのです。
それは現在の「関東」「関西」での様々な違いを見ても明らか。
関所、すごいですね。
なるべくなら「通行税」、払いたくない……
文化・風習が大きく異なるのにも納得です。
そして、続いては平安末期。
今度の「関東の範囲」の立役者はあの「源頼朝」です。
それまでの朝廷が支配する時代が少しずつ変わり始めてきたころですね。
頼朝は朝廷から自立し、自ら政権を打ち立てます。
かの有名な「鎌倉幕府」。
日本初の幕府です。
ですが平安時代といえば平安京。
平安京は奈良、帝の住まいは京都です。
「畿内(都や皇居に近い場所の意味)近国」は「西方」。
そこで頼朝は自らの政権をそれに対し「関東方」として自称したのです。
そして徐々にその呼称が定着。
現在の「東日本」のような範囲に聞こえるかと思いますが、実際には、
「関東」=「頼朝政権」=「鎌倉幕府が朝廷から統治を公認された地域」
です。
そしてその地域とは、
- 遠江国(とおたうみ / 静岡)
- 信濃国(しなの / 長野)
- 越後国 (えちご / 新潟)
(※「遠江国」の代わりに「三河国(みかわ / 愛知)」説もあり)
先ほどよりだいぶ近づいてきましたね。
でも、まだまだ遠い……
そして次の変換期は室町時代。
室町幕府が成立し、鎌倉には鎌倉府(鎌倉公方)が置かれます。
鎌倉幕府滅亡後、関東の状態が不安定になっていたことから「関東の統治」を目的に置かれた「鎌倉将軍府」がその前身です。
そして、以下管轄諸国が今度は「関東」と呼ばれるようになります。
- 相模国(さがみ / 神奈川中西部)
- 武蔵国(むさし / 埼玉・東京・神奈川東部)
- 安房国(あわ / 千葉南部)
- 上総国(かづさ / 千葉中部)
- 下総国(しもうさ / 千葉北部・茨城西部)
- 常陸国(ひたち / 茨城中・東部)
- 下野国(しもつけ / 栃木)
- 上野国(こうづけ / 群馬)
これに、
- 伊豆国(いず / 静岡)
- 甲斐国(かい / 山梨!!)
関東八州、または関八州と呼ばれる地域の誕生です。
(※その後「陸奥国(むつ / 北関東・東北全域)」「出羽国(では / 秋田・山形)」も管轄下に入り、この地域も「関東」とされる場合もありました)
また、現在でいう「東日本」のように「関東」を指した文献(吾妻鏡)も存在。
厳密に「ここからここまで」と範囲が定められていたわけではないのですね。
そして、そしてついに「関東」呼称問題に終止符が打たれるのは江戸時代。
……というより、幕府成立ごとにその範囲がコロコロ変わる感じですね。
「関東」って……
江戸を防御する「箱根関」「小仏関」「碓氷関」より「東」の上記「坂東8国」が「関東」を襲名です。
それがすなわち現在の「東京都・神奈川・千葉・埼玉・栃木・茨城・群馬(旧国名は現在とは地域の呼称が違うため数が合いませんが)」へと続いているわけなのです。
「関東地方」、定義がないのは、このような推移があるからなのでしょうか。
長い長い関東の話……
「関東」の呼び名の由来は「天武天皇」が都を守るために設置した3つの関所。
その東、
「関所より東側の地域」=「関東」
です。
それが、時代(幕府)ごとに守るべき地域ととして「関東」の名で範囲を微妙に変えつつ、現在に至る。
日本の首都「東京」を含んでいる点からは何となく、それでいいような気もします。
ですが「関東」……
何百年後には、とんでもなく今とは違う地域を指す言葉になっている可能性もゼロではなさそう……
夢があるのか優柔不断なのか「関東」とは何ぞや、と思わず唸ってしまう歴史を持っていたのですね。
「首都圏」とは?
「東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域」の定義をもつ「首都圏」。
その「周辺の地域」は「関東地方」及び「山梨県」の区域、とされています。
つまり、「東京・神奈川・千葉・埼玉・栃木・茨城・群馬・山梨」の1都7県。
現在では上記のようになっていますが、かつては東京都に隣接する都道府県、という意味合いで「千葉・神奈川・埼玉・山梨」を指していました。
が、都心への人口集中に伴い「首都圏」の範囲も拡大。
そして1956年に「首都圏整備法」が公布され、法律により、上記1都7県が「首都圏」と制定され、現在に至るわけです。
「首都圏整備法」とは、その名の通り東京都だけでなく、その周りの地域も含む大きな枠組みで整備に関する計画などを立てようと、作られたもの。
東京は巨大都市化しすぎたのですね。
戦後の経済成長により、人口や工場などが集中的に集まったため、環境の悪化や交通渋滞、通勤なども困難になった都市部。
過疎化の逆ですね。深刻な過密化です。
このままではマズい、ということで生まれたのが「首都圏整備法」。
-
人口や産業を極端に集中させない。
無秩序に開発を進め市街地化させない。
そのため、
-
市街地を整備。
宅地供給などで人口過密も緩和。
産業・学校なども分散で地域経済も発展。
緑地も確保し、自然環境も改善。
生活環境も改善。
そして、政治・経済・文化などの中心としてふさわしい「首都圏」を作り上げていきましょう、秩序ある発展を目指しましょう、というのが「首都圏整備法」が目的としたこと。
その「首都圏」として定められた範囲が、上記1都7県。
しっかりとした目的のもと、定められた範囲なのですね。
さて「首都圏整備法」に基づき定められているはずの「首都圏」ですが、その使われ方には以外にも統一感がありません。
使う人や団体により、範囲が微妙に異なることも多く、スポーツなどの「関東大会」には、ほとんどの場合「山梨県」も含まれています。
でも「首都圏大会」とは呼ばれない……
関東地方の天気予報でも大抵、山梨県の天気も伝えています。
これは「東京管区気象台」が「関東・中部(山梨県のある地方)」の各都県にある気象台を管轄しているということもあるのでしょうが、やはり山梨県(特に東部)が、都心への通勤圏となってきたからというのが大きな要因。
-
山梨県に住んでいても勤務先は東京。
山梨の天気より、むしろ東京の天気が気になる。
または、東京で仕事をしていても、いずれ帰宅するのは山梨。
帰りの天気も気になる
……のような事情が大きいようです。
各中央省庁もまた然り。
山梨は関東や東京として一括りで扱われるケースも多いのです。
また「首都圏サミット」の異名を持つ「九都県市首脳会議」に参加するのは「東京・千葉・埼玉・神奈川」とその5政令指定都市の知事・市長です。
もはや「首都圏」の定義を潔いまでに無視していますが、いいのです。
「定義」はありますが、絶対にそれに準じなければいけない、ということではないのです。
上記「東京・千葉・埼玉・神奈川(もしくはそこに茨城が加わることも)」は本来「東京圏」または「東京都市圏」と呼ばれるもの。
茨城を除く1都3県は「国土交通省」が定義した範囲ですが、こちらもあまり厳密ではありません。
さらには「東京圏」の範囲が「首都圏」という言葉で表現される例も山ほどあるのですね。
しかも使っているのは、民間団体や官公庁、ついには内閣府の皆さまなど。
「首都圏」の定義は確かにある。
あるが、その通りでなく範囲を狭めたり「関東」の括りに、本来「首都圏」には含まれても「関東地方」には含まれていない「山梨県」が入っていても、別にいい。
……そこは、それほど厳密でなくてもいいのです。
要するに目的が達せられればいいのです。
重要なのは環境の悪化や交通渋滞、生活環境などが全体的によくなること。
ついでにすっかり通勤圏化した山梨在住の方々にも「関東地方の天気予報」だけ見れば勤務先も自宅も、どちらの天気も伝えることができます。一石二鳥。
「関東」には定義がなく、定義のある「首都圏」も、その用語を使う人たちにより、その範囲をある程度自由にして使われる。
そして「首都圏」とは、
政治・経済・文化などの中心としてふさわしい「東京都を中心とした地域」を作るため、「首都圏整備法」により定められた1都7県
を指したものです。
「関東」「首都圏」違いのまとめ♪
「関東」には長い変動の歴史があり「首都圏」には、よりよく住むための高い目的があったのですね。危うく「関東」「首都圏」に怒られるのをまぬがれた気分。
そして、なぜか「関東」より「首都圏」に怒られた方がダメージが強そうな気がします。
……さて、ここでもう一度おさらいです。
「関東」「首都圏」について、違い等まとめていってみましょう。
「関東」「首都圏」の定義は?
- 関東: 法的に定められた定義はありません
→ が、一般的に「東京・神奈川・千葉・埼玉・栃木・茨木・群馬」を指す - 首都圏:「東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域」が定義(「首都圏整備法」による)
→ 上記「関東地方」に山梨県を加えた1都7県
➡ 違いは唯一「山梨県を含むか含まないか」
「関東」にはどうして定義がないの?
おそらくですが「関東」と呼ばれてきた範囲が時代ごとに変わりすぎていたためかと思われます。「関東」があるのに、わざわざ「首都圏」を作ったのはどうして?
都心部への人口の流入、産業等の集中により、深刻な過密化に。そこで、その過密化、またはそこからくる環境の悪化や交通渋滞、通勤の困難な状況の改善を目指し制定されたのが「首都圏整備法」です。
「首都圏整備法」により、
その役割をに担う都県として、東京を中心として1都7県が「首都圏」の地域
とされたためです。
終わりに……
さすがにまとめるとあっさりしています。「関東」と「首都圏」の違いは「山梨県の有無」。
なるほど。
これ以上ないくらいあっさりです。
ですが、「首都圏」が定められた理由、はたまたかつて「関東」と呼ばれていた地域が、要所を守るために生まれた、などなど
「知らなくても一向にかまわないが、知ったら知ったで『ふぅん、そうだったんだぁ』と思うポイント」
はそこそこありました。
日本の政治・経済・文化の中心となる首都。
発展していくのはいいですが、発展が環境を悪化させる原因ともなってしまっては本末転倒。
違いはあっさりでも、首都のもつ責任はコッテリ。
さてさて、いかがでしたでしょう。
「関東」「首都圏」へのモヤモヤ解消のお手伝いにはなれましたでしょうか。
皆さまが少しでもスッキリ! となっていましたらうれしいです。
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