こんな『違い』があったんだ!

『親切』と『丁寧』の違いとは? 類語と英語では?

入念
「親切な人」「丁寧な人」……あり。

「親切な行動」「丁寧な行動」……あり。

「席を譲ってくれた親切な人」……あり。

「席を譲ってくれた丁寧な人」……あれ? ちょっと変。

「丁寧に洋服をたたむ」……あり。

「親切に洋服をたたむ」……これはない……


違いってこういうこと?
入念


そういうことです!

「親切」と「丁寧」。

どちらもいいイメージの言葉ですね。

誰かに親切にしてもらったり、丁寧に何かをやってもらうと、単純にうれしくなります。


うれしくなるのですが……


どこがどのように違うのか、わかっているようで、はっきりはわかっていない……

いや、でも、2つが違う、ということは大体はわかる……


非常にモヤモヤします!


「これこれこういうわけで、こんな時にはこっち」というはっきりした違いを、この際知ってしまいましょう!


由来や類語、英語などを比較してみると、案外わかりやすいかと思います。


皆さまの「親切」「丁寧」へのモヤモヤが、少しでも薄れましたら幸いです。
目次

「親切・丁寧」の違いはココ!

冒頭の4つの「親切」「丁寧」をもう一度振り返ってみましょう。


    「親切な人」「丁寧な人」

    「親切な行動」「丁寧な行動」

    「席を譲ってくれた親切な人」「席を譲ってくれた丁寧な人」

    「丁寧に洋服をたたむ」「親切に洋服をたたむ」
前半2つは、どちらもおかしくありません。

「親切な人」はもちろん、何をやるのも「丁寧な人」というのもいます。

仕事などをきっちりやってくれそうですね。


「行動」にも「親切」「丁寧」どちらもあり。

「親切な行動」、その下の「席を譲ってくれた」などはまさに「親切な行動」ですね。


「丁寧な行動」にもいろいろありますが、なにか慎重な様子がうかがえます。

ざっと読み飛ばすのではなく、1ページごとじっくりと本を読む、なども「丁寧な行動」に当たります。


ですので「丁寧」に席を譲る人もいるのかもしれませんが、ちょっとおかしい。

イマイチ情景が思い浮かびません。


「よろしければ、こちらの席にお掛けになっては?」
などともの凄く丁寧な言葉遣いで譲ってくれるのでしょうか。

90度に近いお辞儀をしながら譲ってくれたとか?


それはある意味「丁寧に譲ってくれる」なのですが、クローズアップしたい部分は、そこではないのです。

「あなたを思いやって」席を譲った部分なのです。

ですので、この場合は「親切」。


そして最後の「親切に洋服をたたむ」。

これはもう、おかしいですね。


「『親切で』洋服をたたんでおいてくれる」などでしたらわかりますが、それでは話の内容が変わってきてしまいます。

その洋服は、次に着る時にも着やすいよう、シワもできるだけつかないように、などに注意してたたまれたわけです。


しかもそれが「親切」とは関係のない仕事としての作業だとしても「丁寧にたたんだ」ことには変わりないのですね。


「親切」であることは必ずしも必要ではないのです。

このように「親切」と「丁寧」では微妙に目指すものが変わってきます。

  • 親切: 相手のことを思いやる気持ちがあること
  • 丁寧: 注意がすみずみまで行き届いていること
これらがそれぞれ、一番大事にしている部分です。


ですので、

「親切」にはその対象となる「相手」に対する気持ちがあり、一方「丁寧」には注意深く入念な行動が伴う
のです。


ここが「親切」「丁寧」の大きな違いのポイント。

まずはこちらを押さえておいていただき、続いてそれぞれについて、少し詳しく見ていってみましょう。

「親切」とは?

  • 人情の厚いこと
  • 思いやりがあり、人のために尽くすこと
の意味を持つ「親切」。

相手のことを思いやって優しく接する、そしてそのための配慮も行き届きている様子ですね。


前述の通り「親切」にするには誰かその対象となる相手が必要。

「誰か」のことを思いやって、その人のために尽くす、といった行為ですね。


その対応や行動を指し「親切」なのですが、大事なのはその行動そのものよりも、その原動力ともなる「気持ち」です。

それを受けた後の対応・行動は言ってしまえばオマケのようなもの。


ですので、親切な気持ちから起こした行動が「あたしゃ、まだそんな年取ってないよ!!」となってしまうこともあるのですが、その人が親切であることには、変わりないのです。


また「親切の押し売り」などとも使われますように、過度な親切は、押しつけがましく受け取られてしまうことも稀にあり得ます。


なぜなら「親切」とはあくまで、自分の気持ちから沸き起こるものだからですね。


そんな「親切」。

「親を切る」、なぜこの漢字?! というような文字が充てられていますが、

  • 親: 親しい、身近に接する
  • 切: 刃物を直に当てられても大丈夫なほどに身近で、また行き届いている
がそれぞれの語源。そこから、

    「身近に寄り添って行き届くようにする」 
といった意味として使われるようになった言葉です。


確かにそれほど身近でない人に刃物を当てられたら、もはや状況を把握できないほどの恐怖しか感じられません。

身近であるからこそ「悪いね、ヒゲ剃ってくれんの?」などとのんきに構えていられるわけです。


また、かつては「深切」と書かれていたのですが、これは少しだけ意味が違い、

    「思い入れが深く切実」
です。


こちらは「漢語」で多く使われる文字のため、そのまま「親切」の意味を表わす言葉、として「深切」の文字で表わされていたのですね。

英語や類語は?

英語では「kindness」「kindly(親切な)」。

「kind」には「人を助けようと思う気持ち」の意味があり、「kindly」は「性質・態度・様子」などについていう言葉です。
まさに「親切」。


「懇切丁寧」といった言葉を聞いたことがあるかと思いますが、この「懇切」が「親切」の類語です。

「懇切」とは、

  • 親切よりさらに手厚く、優しく、丁寧に対応するさま
  • 物事を教えたり説明する場合に多く使われる言葉
教えたり説明する以外にも、相手がしようとしていることを助ける、といったこと全般に対しても用いられる「親切」の方が幅広く使われている言葉になります。


「親切な」の形ですと、

  • 気が利く
  • いいヤツ
  • 思いやりのある
  • 優しい
  • 気立てのいい
などなど「人の性格の良さ」を表わす言葉と同義となります。


「いいヤツ」……


確かに「親切な人」はいいヤツですね。

「丁寧」とは?

  • 細かいところまで気を配ること
  • 注意深く念入りであること
  • 言動が礼儀正しく心がこもっていること
の意味を持つ「丁寧」。

何となく優等生っぽいですね。

きっちりしているイメージ。


「丁寧なもてなし」などとも使われます。

この場合には相手がいるわけですが、ここでもより問題にされるのは「行動・態度」の方です。


極端な話、裏でペロリと舌を出していても、その行動が注意深く、細かく気を配られたものであれば、その行動や態度は「丁寧」となります。


もちろん心を込めて「丁寧」な行動をとってもいいのですが、「親切」と違うのは、その行動が「とるべき行動である」というところです。


例えば「丁寧に仕上げる」「丁寧な仕事」などでは、そもそも「仕上げるべきもの」「やるべき仕事」があり、それに対して注意深くミスのないよう気を配って行動を起こしているわけです。


「丁寧に」と言われたら「親切」のように「きっとこうすれば相手が喜んでくれる」などといった気の使い方は必要なし。


あってもいいのです。

が、それよりも重要とされるのは、きっちりと細かい点もおろそかにせず、言われたことをこなすこと。


十分な注意力も必要とされる言葉ですね。

それもそのはず。

この「丁寧」とは、実は昔、

中国の軍隊で使われていた楽器
を指していた言葉なのです。
 

……えええっ!

ですね。


金属製で、小型の銅鑼(ドラ)のような形をした楽器で、その役割は「鳴らして隊員さんたちに警戒や注意を知らせる」こと。


「そこ、穴開いてますよ!! 落ちるから気をつけて!!!」のような感じで鳴らされていたのでしょうか。


語源は


「注意を促すための楽器の名称」

ったのですね。


ちょっと衝撃ですが、このことから「注意深くすること」の意味で使われるようになり、徐々に、

  • 細かい点まで注意が行き届いている
  • 礼儀正しく手厚いこと
の意味に転じていった、と言われると、妙に納得してしまいます。


「呼び笛」などが使われていなくてよかったです。


「いつも呼び笛なお仕事をしてくれて、ありがとう」

……

長く使っていれば、このもの凄い違和感もなくなるのでしょうか。

言葉って、凄いですね。

類語や英語では?

  • 念入り
  • 入念
  • 円念
  • 克明
  • 周到
  • 礼儀正しい
  • 恭しい
  • 綿密
  • きめ細やか
  • 折り目正しい
などが類語・同義語として挙げられます。


皆、似たような意味ですが(類義語なので)、それぞれに強く伝えたい箇所が少しずつ違ってきます。


「念入り」「入念」は文字通りですね。

「念を入れて」といった意味合いを強く持たせたい場合に。


「円念」は「きめ細かく」物事を行うこと。

「克明」も同様ですが、中でも「調査」「記録」に関することに限って使われます。


「周到」は「用意周到」の熟語でもおなじみ。

「準備や用意」に注意深く、ぬかりなくなされている様子を指しています。


それ以下は、そのままの意味。

礼儀正しかったり、きめ細やかだったり、ですね。


そして先ほども書きました通り「もてなし」などと併せて使われる場合には「丁寧」は「手厚く親切で礼儀正しいこと」も表わす語となります。


英語表記では「politeness」。

「礼儀正しさ・丁重さ・(他人への)思いやり・丁寧さ」の意味を持つ単語です。

英語でも「丁寧」と「親切」は似ているのですね(表記は全く違いますが)。

「親切」「丁寧」比較とまとめ♪

言われたことはきっちりこなす優等生の「丁寧」。

たまに突っ走ってしまうこともあるけれど、基本優しさの塊の人気者「親切」。


こう書くと「丁寧」より「親切」の方と友だちになりたい気がしますが、そもそもこれらは人ではない……


さて、どちらもいいイメージ、好印象の「親切」「丁寧」。

そこは同じでも、若干の違いのある2つ。


ではここでもう一度おさらいです。

「親切」「丁寧」の比較を交えつつ、違いをまとめていってみましょう。

意味の違いは?

    ◎親切
  • 人情の厚いこと
  • 思いやりがあり、人のために尽くすこと
  • ◎丁寧
  • 細かいところまで気を配ること
  • 注意深く念入りであること
  • 言動が礼儀正しく、心がこもっていること

英語では?

  • 親切 / 親切な: kindness / kindly
  • 丁寧: politeness

類語・同義の言葉は?

    ◎親切・親切な
  • 懇切
  • 情け深い
  • 心尽くし
  • 手厚い
  • 気が利く
  • いいヤツ
  • 思いやりのある
  • 優しい
  • 気立てのいい  など
  • ◎丁寧
  • 念入り
  • 入念
  • 円念
  • 克明
  • 周到 
  • 礼儀正しい
  • 恭しい
  • 綿密
  • きめ細やか
  • 折り目正しい  など

それぞれが一番大事にしていることの違いは?

  • 親切: 相手のことを思いやる気持ち
  • 丁寧: 注意がすみずみまで行き届いていること

仏頂面で仕事をしている人がいるんだけど……

  • 親切: それがその人のデフォルトの顔なのです(実際には誰かのために自らその仕事を買って出ています)
  • 丁寧: やることはやるけれど、たぶん本当ははその仕事をするのはイヤなのです

その仕事を正確にこなしてくれるのはどっち?

  • 「丁寧」の方: やることはやります。しかもちゃんとやります。きっちりやります。
     →「親切」がやらないというわけではないのですが、そこは二の次なので結果は未知数。

仕事場で頼られるているのはどっち?

  • 丁寧: 仕事ですから……ですが、いくら丁寧でも、時間がかかりすぎる、などの問題点がある場合も。
     → でも「親切」は憎めません……

終わりに……

違うんです……「丁寧」のことだって、好きなんです……


なんだか「親切」推しのような文章になってしまいましたが、そんなことはありません。

書きながら自分の中で、だんだん「親切」が擬人化してきてしまったことは事実ですが……


ですが多くの場合「丁寧」な行為は「親切」にも繋がります。

また「親切」にしようとすれば、おのずと「丁寧」にもなるもの。

あえて違いをあげればこのようになりますが、この2つはセットのようなものでもあるのですね。


単純な作業など「親切」であることがそもそも必要でない場合はまた別ですが、「丁寧」に何かをすることは、自分も含め、誰かや何かのためです。

ここにきて擁護するわけではありませんが「丁寧」、大事です。


曖昧な言葉は「類語」「同義語」を見ると、イメージが湧きやすくなります。

日本語は、細かいニュアンスで分けているのでちょっと面倒。でも繊細。


さてさて、いかがでしたでしょう。

「親切」「丁寧」のモヤモヤは少しは薄くなりましたでしょうか。

皆さまのスッキリに多少なりとも貢献できていましたらうれしいです。

関連記事はこちらになります。

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