この花びん割ったの誰!!
何があったか事の顛末(ことのてんまつ)を報告して、後でちゃんと始末しときなさいよ!!
─── のような感じでもあるのですが、ちょっと違ってくる「顛末書・始末書・報告書」。
仕事のミスや、業務の進捗具合などを報告する文書たちですね。
積極的に書きたいイメージのものではありませんが「書かない」ともっとひどいことになりそうです。
しかも「始末書」のつもりで「顛末書」を書く、もしくは「報告書」のように「始末書」を書く、などをやってしまうと、もはや修復不能なくらい立場が悪くなってしまいます。
それは、怖い……
「顛末書」「始末書」「報告書」、一番重みのあるものは? どんな書き方をすればいいの? 等含めまして3つの違いを解説いたします。
書かれた内容によって、その人の心証も変わってきます。
しっかりと伝えたいことが伝わりますよう、皆さまのお役に少しでも立てましたら幸いです。
目次
「顛末書・始末書・報告書」はココが違う!
まずは簡単に、大まかな違いを見ていきましょう。冒頭にもありますように、これらの言葉は「書」を除いた「顛末・始末・報告」としての意味を考えると、少しだけわかりやすくなるかと思います。
- 顛末: 物事の始まりから終わりまでの事情。一部始終
- 始末: 事の次第、事情。特によくない結果。整理すること。処理。
- 報告: 知らせ告げること。特に任務などの経過や結果を知らせること。
あれ? ─── ほとんど わかりやすくなっていませんね……
ですが、「書」の文字が後ろにつき、提出する文書となりますと、一番重点の置かれる部分を以下のように持つ言葉へと変わるのです。
- 顛末書: ミスやトラブルなど、起こってしまったことの一部始終の経緯を報告すること
- 始末書: ミスやトラブルなど不始末の経緯を報告するとともに、謝罪の意を伝えること
- 報告書: ミスやトラブルの有無にかかわらず、ある事柄の結果を報告すること
そして「顛末書」と「始末書」の大きな違いは「謝罪の気持ち」が織り込まれた文書か否か。 (※ 本当に簡単に言っています)
「報告書」以外には波風的なものを非常に感じます。
ではまずは、間違えてしまうとかなりのダメージが予想される2つ、「顛末書」と「始末書」の違いからいってみましょう。
「顛末書」とは?「始末書」との違いはどこ?
反省文、もしくは謝罪文としての意味合いの強い「始末書」。「顛末書」は、ミスやトラブルに対する一部始終の経緯を報告。
では、なぜ「顛末書」では、一部始終を報告するのか?
実はそこが「顛末書」が担う役割の中でも一番大事な部分なのです。
「顛末書」の使命は、「事の顛末を説明することによって、今後の再発防止の対策を提示」することです。
そのために必要な文書となるにはどうすればいいのか?
客観的に公平な視点から「事の顛末」、つまり何事かが起きてしまった背景やその理由、そしてその経緯、現状の対応を事細かに、ですが私情を交えず淡々と報告することが重要となってくるのですね。
そして、それプラス、その事実を受けた今後の対応、二度と同じことを起こさないための対策を提示するのが「顛末書」。
「顛末書」なかなか責任重大です。
ですので、作成は当事者でなくても構いません。
むしろ客観的・公平な立場、といった意味で、適任とされた当事者以外の人が作成を任されることが一般的なケースとなるのです。
さて、その書き方ですが、ポイントは「7W4H」(もしくは「5W1H」)。
「いつ、どこで、だれが、だれに、何を、なぜ、どれを、どのように、いくらで、数量、期間」 (「5W1H」では「いつ・どこで・だれが・なにを・どのように」)
これらを念頭に置き、当てはまるものをすべて網羅していく形で記載です(すべてをあてはめる必要があるわけではなく)。
宛名は大抵の場合社長です(あるいは代表)。
ミスやトラブルで、最終的に迷惑をかけてしまうのは会社のトップ。
会社に宛てて提出(なので「社長」)、が基本です。
ただし、大きな会社では、支店長や工場長、所長、ということもあり。
まずは「宛名」と「日付」です。
こちらの「宛名」ですが、仮に「社長宛」の時には「○○社長」ではなく「代表取締役社長 ○○様」となります。
そして自分の部署、氏名ですね。
時候の挨拶などは不要。
「拝啓」「敬具」もなし。
そういうものではないのです。
必要なのは具体的な内容と経緯、それに対する今後の対策です。
- ミス、トラブル等の発生日時
- 発生場所
- その内容
- 当事者の氏名
- ミス、トラブル等の原因
- 被害の状況や損害の程度
ここが「ミス等の概要」部分です。
そのミス・トラブルに至ったいきさつなどを、できるだけ、その根本となる原因まで掘り下げて書いていきます。
そして、
- 現在どのような対応をとっているか
- 再発防止のための対策
コメント等あれば書き入れ、そして最後には「以上」。
いわゆるビジネス文書の「記書き」です。
何事かが起きてしまった場合、大事なのは「事実と経緯」が正確に伝わること。
「顛末書」により、そこが明確になることで「原因究明」→「再発防止対策」に繋がるのですね。
ですので「です・ます調」である必要もありません。
手書きでも構いませんが(その場合には縦書きがマナー)、パソコンでの作成が一般的。
B5 かA4のコピー用紙1枚にまとめます。
この場合には横書きがマナーです。
また、通常の場合「顛末書」には「謝罪文」は盛り込まれません。
あくまで客観的な立場から、そのミス・トラブル等の一部始終を報告。
いわば「ミス・トラブルの報告書」といった意味合いが強いものだからです。
ただし企業によっては「始末書」と「顛末書」の区別がはっきりしていないこともあります。
ここは、ぜひ確認してみてください。
その「顛末書」が「始末書」として提出を求められていた場合、上記のような書き方では、かなりマズいことになります。
「始末書」とはミスやトラブルのいきさつを報告すればいい、といったものではないからですね。
では続いて「始末書」。
こちらについても少し詳しく見ていきましょう。
※「顛末書」とは違う「始末書」
「ミスやトラブルなどが発生した場合に、会社に対し、その一部始終を報告」ここは「顛末書」と同じです。
簡潔に書くことも同じ。
ただし、「始末書」では「箇条書き」ではなく、
「このたび私は△△に際し、一部記述の誤りを看過し ───」
のように普通の文章のように書いていきます。
ですが言い訳や回りくどい書き方はNG。
ミス・トラブルの内容や原因、経緯などは「顛末書」同様、正確に、です。
そして「始末書」と「顛末書」を大きく分けている「謝罪の意」ですね。
「始末書」は一種の「報告書」ではあるものの、意味合いをより強く持たされているのは「反省文」的側面です。
謝罪・反省の気持ちを表わす言葉を必ず添えてください。
これがないと「始末書」とはいえません。
「いかなる処分もお受けします」のような文言を入れると、謝罪にも重みが加わります。
- ミス、トラブルの具体的な内容
- お詫びの言葉
- 現在どのように対応しているか
- 再発防止のためにどのような対策をとっているか
- 今一度のお詫び
「始末書」とは「ミスやトラブルの報告書」でもあり「謝罪文」でもあり、そして「もう二度と同じようなミスは繰り返しません」といった「誓約」の意味も持つものなのです。
ですので、書くのは当然本人(当事者)。
そして「です・ます調」。
さらに「手書き(縦書きで)」が基本です。
なぜなら、誠意を伝えたいから。
会社によってはパソコンでもOKのこともあるようですが、その場合でも署名は自筆。
こちらの宛先も「顛末書」同様社長宛。
「代表取締役社長 ○○様」ですね。
直属の上司等に宛てて書くものではありません。
さて、薄々お気づきかと思いますが、重みに関しましては「始末書」がダントツに重いです。
では「顛末書」レベルで収まるミスやトラブルとは「始末書」レベルとどこが違うのか?
- 「始末書」は社内処分(懲戒や訓告、戒告など)を伴う場合
- 「顛末書」は社内処分までには至らないもの
同じミスが繰り返された際などには、以前に提出されたものが根拠となり、さらに重い処分が課されたりもするわけです。
「顛末書」は提出を断ることはできません。
業務命令に当たるからです。
ですが、実は「始末書」は断ることができるのです(この場合、業務命令としての「顛末書」提出となることもあり)。
ただし会社に迷惑をかける等したにもかかわらず断る、というシチュエーションは通常考えられません。
会社、上司との信頼関係にもヒビが入ってしまいます。
が、会社から求められるままに提出した「始末書」が原因となり、後にトラブルを生んでしまうこともなくはないのです。
「始末書」とは業務命令ではなく、本人の反省や謝罪の気持ちを表わしたもの。
そして、ペナルティ的懲戒の意味合いも含まれているからです。
「会社に求められるまま」───
例えば、実際とは異なるミスにもかかわらず「始末書」の提出を求められる。
または、いまいち納得はできていないが、書くように言われたので仕方なく提出。
「始末書提出」とはイコール「その責任は自分にあります」そして「それに対する処分等に関しても今後争いません」です。
自分の今後について、かなりダイレクトにかかわってくるものなのですね。
ですので後々、それを巡りトラブルに発展 ─── ということも起こりうるのです。
こうしたケースは稀ですが、
「始末書」とは「顛末書」とは比べ物にならなくらい重みのあるもの
となります。
さて、ではこれらを「提出する時期」は?
「顛末書」は「顛末」、つまりは「いきさつの一部始終」を報告です。
ですので提出時期も、ある程度事態に決着がついてから、というのが原則。
そのトラブル等に対し、もう少し時間を追った調査が必要、などの場合には、まずは他の形で報告を済ませ、その後時期が来たら改めて「顛末書提出」となる場合もあります。
業務命令ではない「始末書」にも当然提出期限はあります。
期限を守ることはもちろんですが、対応を終えたら、なるべく速やかに提出するのが、こちらに関してはどう考えてもマナーかと思われます。
またまた「始末書」には社外向けのものもあり。
その際には「詫び状」「謝罪文」などとされることが多いようです。
「顛末書」は基本的に社内向けに提出する報告書となります。
ですが、名称だけですと、免許所やパスポートを紛失する等、役所や公的機関に再発行を申請する際にも用いられています。
「紛失顛末書」などですね。
内容的には紛失に至る一部始終、といった同じようなものになりますが「社外」というのとはちょっと違いますね。
取引先や顧客に向けての「顛末書」ではありません。
社外に向け、トラブルなどのいきさつを事細かに伝えても仕方がないからですね。
相手も「へー、ふーん、あ、そうなんだー」としか言いようがありません……
では社外に向け、何かを報告したい時には?
ここで「報告書」の登場です(「報告書」には社内向けのものもたくさんあります)。
続いてこちらも見ていきましょう。
「報告書」とは?
社内外に向け提出する「報告書」。タイトルの3つの中では、唯一穏やかなヤツですね。
こちらは「ミスやトラブル」の有無には関係なく、いわゆる「報告」のための文書です。
研修や業務の進捗具合、また大きな商談や重大な情報も報告。
上司や先輩など、部署内で出す「報告書」、またはさらに上の立場である役員や会社のトップ陣へ提出する「報告書」もあります。
情報を提供するためのものですが、重要なことほど提出先は上の立場の方々へ、となってきます。
また、社外に向けての「報告書」。
「トラブル報告」「調査報告」などですね。
受けたクレームへの対策や調査など、その結果を報告するための文書です。
ポイントとなってくるのは「誰に・何のために」。
大口の商談、大きなトラブル等、重要な情報は役員など、上の立場の人にその情報を報告。
ですが、立場が上の人は何かと忙しいのです。
ですので、報告書もA4 用紙1枚に要旨のみを簡潔にまとめ、提出です。
また経営サイドの、上の立場の方々は、現場の詳細までは把握していません。
判断を仰ぐためにも、所見をつけることは必須です。
そして一般的な「報告書」。
上司などに提出するものには、商談や業務の内容、出張や研修、トラブルなど、通常の業務の上での報告があります。
「報告書」は箇条書きで簡潔にまとめるのがポイントです。
こちらも同じく要旨は1枚程度。
詳しい報告が必要とされる場合には2~3枚に詳細内容をまとめます。
同じ部署内が提出先となるため、所見をつける必要があるかどうかは上司に相談してみてください。
形式などについては、前例があればそれに従うか、やはりここも上司に相談です。
ですが一般的には、特に指示がなければ「詳細内容」があった方が良し、とされます。
情報を提供・共有し、その後の業務に役立てるにはある程度詳しい報告の方が役立つからです。
まずは「日付」「誰宛のものか」「報告者の部署・氏名」を記載。そして、
-
◎標題: 具体的な内容を入れたもの
- 状況説明
→「日時、場所、目的、内容」など、箇条書きで項目を分けます - 要旨
→ 3つ程度の「要旨」を50~100文字程度でまとめます。 - 詳細内容
→「見出し」「小見出し」を適宜設け、それらの内容をわかりやすく説明していきます。 - (必要なら)所見
→ 自分の意見等を2~3行でまとめます。
◎本文:「標題の件につき、下記の通り、ご報告いたします」が決まり文句。最後は「以上」
始めに「要旨」(A4用紙1枚程度)。ついで、必要な場合には「詳細内容」(2~3枚)。
添付資料などがある場合には、最後に「資料名称」「作成日時」「総ページ数」も記載です。
相手が必要としている情報がしっかりと伝わるよう、原因や理由、固有名詞や数字まで入れ、さらにわかりやすいものにしましょう。
また、今後の課題などがはっきりわかるように書くことも大切です。
ですが意見を書く分には構いませんが、自分の主観で事柄を捉えたり、推測を書いてはダメ。
-
わかりやすく、簡潔に。
そして正確に。
報告するのは事実のみ。
ここ、重要です。
そして社外向けの「報告書」。
こちらには所見は必要ありません。
「詳細内容」を現場の担当者が、「要旨(要約)」部分は、その上の立場の上司等が担当、というのが一般的な書き方となります。
社外向けの「報告書」は社内提出のものより、チェックを厳しく、です。
相手は身内ではありません。
誤字脱字など基本的なことから「相手が不快な気持ちにならないか」など、内容についてもしっかりと確認をお願いします。
「顛末書・始末書・報告書」の違いをまとめる!
玄関の花びんを割った程度の過ちなら、謝れば何とか許してもらえそうですが、確かに会社のイメージを激しくダウンさせる行いや金銭的な迷惑などをかけた場合には謝るだけではすまなそうです……ですので、その不始末を報告し、「いかなる処分もお受けします」の姿勢で「始末書」。
そして、今後二度と同じ過ちが繰り返されないよう「顛末書」で一部始終を報告(「始末書」でもいきさつをすべて書きますが)、そして再発防止に向けて対策が取られるわけです。
また、研修での様子(結果)、仕事の進み具合、商談などなどについては上司または、さらなる上役に報告。
そうすることで、情報を共有でき、現在の状況の把握と、その後の課題にも取り組みやすくなります。
さらには社外からのクレームなどについても、相手の状況や善後策を報告。
クレームのあった会社に対しても、その対策や調査の結果を報告です。
報告、大事です。
上記3つは、どれも「報告」部分を持ってはいるものの、その役割が少しずつ違っている、っといった感じ。
ではここでもう一度おさらいです。
「顛末書」「始末書」「報告書」について、違いをまとめていってみましょう。
それぞれの大事な役割は?
- 顛末書: ミスやトラブルなどが起こってしまった場合、その一部始終の経緯を、その後の対策も含め報告すること
→ 大事なのは「原因の究明」と「再発防止対策」の側面 - 始末書: ミスやトラブルなどへの謝罪の意を、これら不始末の経緯の報告とともに伝えること
→ 重きを置かれるのは「反省文・謝罪文」的側面 - 報告書: ミスやトラブルも含め、上司または関係者に情報を提供するために報告すること
→ 情報を共有、またこれからの課題などを明確にすることで、その後の業務に役立てることもできます
書くうえでのポイント・注意点は?
- 顛末書: 客観的で公平な視点
→ 問題点、原因、経緯、現状、今後の対策等について、具体的に詳しく、ただし簡潔に記載すること
→「である調」、パソコンで作成が一般的 - 始末書: 正直に申告し、心からの反省の気持ちを誠意をもって表わすこと
→ ミス・トラブル等の内容、原因、経緯、現状、対策なども「顛末書」同様、正確に記載します(ただし「箇条書き」ではなく、通常の文章のような形で書きます)
→「です・ます調」で。誠意を表わすためにも手書きで書くのが一般的 - 報告書: 相手に伝えたい点を、なるべく端的にまとめること
→「箇条書き」や「見出し」「小見出し」を活用し、簡潔でわかりやすい文書を
→「である調」「です・ます調」どちらでも構いませんが、この2つが混じらないよう注意です(社内向けの場合)
→「要旨」部分をA4用紙1枚、「詳細内容」部分に2~3枚程度にまとめるのが一般的
重みの違いは?
「報告書」は少し扱いが違うので措いておきます。「顛末書」「始末書」なら、
「始末書」 > 「顛末書」
となります。
終わりに……
人間なのでノーミスで生きていくことは ほぼあり得ないとはいえ……誰かに、というより勤めている会社に損害等の迷惑をかけてしまったら ─── おそらく、かけたご本人が一番ヘコんでいるのではないでしょうか。
ドラマなどでもよく、
「おい、それ始末書もんだぜ!」
などのセリフを聞きますが、結構なことをしでかした設定だったのですね。
「顛末書」と似たような文書に「理由書」と呼ばれるものもあります。
ほぼ同様と捉えられていることもあるようですが、こちらは本来「トラブル等の理由」に重点の置かれた報告書。
たくさんあるのですね。
おちおち ミスもできません……
─── いや、しなくていいのですが。
さてさて、いかがでしたでしょう。
「顛末書」「始末書」そして「報告書」。
何をどう書けばいいのか、またはどの文書が一番重みのあるものなのか、などなど違いについてのモヤモヤは少しは薄れましたでしょうか。
「報告書」は別にして、できれば「顛末書」「始末書」のお世話にはなりませんよう、併せて皆さまの無事を祈っております。
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