こんな『違い』があったんだ!

「台風」「タイフーン」「ハリケーン」「サイクロン」の違いとは? 由来とかあるの?

台風


さてさて、ではまず、台風とはどんなものか。


「熱帯低気圧であること」「最大風速毎秒およそ17m(17,2m)以上であること」「アジア周辺の太平洋に存在すること」。この3つの条件を満たすもののことを指しています。


え!! それ以外には台風って来ないの?! ビュービュー風が吹いて、雨もザーザー降って、色んなものが飛んでくるあの台風がここら辺だけ?!
台風

……うーん。完全に間違いと言えないことが歯がゆいです……


明らかに「台風」の被害についてのニュースなのに、その名称が「サイクロン」。なんで?

「タイフーン」?「台風」じゃなくて?

アメリカって、しょっちゅう「シンディー」とか「サラ」とか、女の人に襲われてるみたいだけど、何が起こってるの?

そもそもどうして「台風」って名前がついたの?


などなど、由来も含め「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」の違いを解説いたします。

「あ、そういうこと」と、少しでもスッキリしていただけましたら幸いです!
目次

「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」の違いはココ!

冒頭の3つの条件を満たすものが「台風」。

ですが、この定義はあくまで日本の基準で決められたもの、世界の基準とは若干異なるのです。


異なる部分は「最大風速(10分間平均)17m/s以上」の部分。

世界の基準では、ここが「最大風速(1分間平均)33m/s以上」となっているのです。


「台風」と、「熱帯低気圧であること」「アジア周辺の太平洋に存在すること」の2つが同じで、風速の強さを世界基準としたものが「タイフーン」です。


つまり「熱帯低気圧」で「発生する地域」も一緒なのですが「強さ」が違うのですね。

そして、強さ(最大風速33m/s以上)は「タイフーン」と同じでも「発生する地域」が違うのが「ハリケーン」と「サイクロン」です。

  • 強さ(最大風速33m/s以上)が同じもの:「タイフーン」「ハリケーン」「サイクロン」
  • 地域が同じもの:「台風」「タイフーン」
ですね。

「台風」も含め、これら4つは「熱帯低気圧」であることが、まずは絶対条件。

「温帯低気圧」はそもそもの構造が違うので、どれほど発達し、被害をもたらしたとしても、呼び名は「温帯低気圧」のまま。変わりません。

一方の「熱帯低気圧」では、日本の基準の場合、最大風速が「17m/s以上の強風(10分間平均)」、その他では「33m/s以上の強風(1分間平均)」を伴えば「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」と名を変えていくわけです。


これらを分けているのは「強さ」と「発生場所」。
「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」とは、その違いにより呼び分けられているそれぞれの名称となります。


では続きまして「台風」と「ちょっとその名前を伸ばしてみただけ」のような「タイフーン」の違いについて、少しだけ詳しく見ていってみましょう。

「台風・タイフーン」の違いと関係 ★ 由来は?

アジア周辺の太平洋で発生する熱帯低気圧の「台風」と「タイフーン」。

最大風速がおよそ17m/s以上(10分間の平均で)のものが、日本の基準で「台風」と呼ばれ、33m/s以上(1分間の平均)のものが「タイフーン」、こちらの基準が国際的なものですね。


「台風」に限らず「ハリケーン」でも「サイクロン」でも、このような強風を伴った熱帯低気圧が発生するにはいくつか条件があり、それらを満たし、発生源となり得るところは「北太平洋西部」「インド洋」「大西洋・北太平洋東部」。
熱帯などの暖かい海域でしか発生しないのです。


そして、上記の場所が発生源となった強い熱帯低気圧の名称をそれぞれ「タイフーン(台風)」「サイクロン」「ハリケーン」としているのですが、そのうち日本に近づくのは「北太平洋西部」で発生した「タイフーン」。この「タイフーン」が日本では「台風」と呼び名を変えるわけです(「最大風速33m/s以上」は「最大風速17m/s以上」でもあります)。


日本では17m/sを基準としてはいますが、台風の強さを中心付近の最大風速により3段階に分け、

  • 強い台風: 33m/s ~ 44m/s未満
  • 非常に強い台風: 44m/s ~ 54m/s未満
  • 猛烈な台風: 54m/s 以上
として伝えています。

規模としては「タイフーン」ですね。ですが、これら以下の最大風速のものでも「台風」とされます。


さて、ではほとんど同じような「台風」と「タイフーン」。響きも変わりません。


由来となったものも、それなら一緒?

な気もしますが、結構複雑に絡まり合っているのです。

※「台風 / タイフーン」の由来

まずは「台風」から。

古く日本では気象用語としてではなく、単に暴風を指す言葉として「野分(のわき / 野の草を分けるから)」の文字を使っていました。

その後も「大風」「嵐」とは呼ばれるものの、気象用語としてではなく、現在の「台風」の元祖とも言える気象上の言葉が登場するのは、さらにその後の安政4年です。

「伊藤慎蔵」という学者さんが、オランダ語の熱帯低気圧についての専門書を翻訳。

そこで「熱帯低気圧」を指す言葉として使われたのが「颶風(ぐふう)」という文字です(文献は「颶風新話」といい、これも日本初の気象学書)。


これはもともと中国で「ぐるぐる回る風」といった意味で使われていた言葉。中国に倣ったわけです。

最大風速32,7m以上のものを指す言葉として、その後しばらく使われ続けることとなります。


その後、今度は当時の気象台長(つまり気象学者でもある)「岡田武松」さんがこれまでの「颶風」ではな「颱風」の文字を使い始め、これが定着。

そして1946年の当用漢字の制定に伴い、範囲外にあった「颱」に「台」の文字をあて「台風」、現在の漢字となった、と言われています。


ただし、その「颱風」の由来となると、諸説分かれている上、正確なことはわかっていません。

ですので、豆知識的にさらっとそれらを挙げると、以下のようになります。

    1: 台湾や中国福建省での「大風(タイフーン)」の音からヨーロッパ諸国で「typhoon」と呼ばれ、逆輸入的に戻ってきたその言葉に、今度は中国や台湾で「颱風」の漢字が当てられた説(これに類似の説で、そもそも福建省あたりの言葉で「台湾付近の風」の意味で存在していた、というものも)
    2: アラビア語の「tufan = ぐるぐる回る」が「typhoon」に変化。それに漢字を当て「颱風」説
    3: ギリシア神話最大の怪物(風の神)「typhon(テュフォン)」から「typhoon」。からの「颱風」説
つまり「台風」の元祖は中国に倣ってつけられた「颶風」。

そこに中国が「颱風」の文字を当てはめ、それを受け「岡田武松」さんが中国の「颱」と「typhoon」の音のタッグで「颱風」と名付けた、のような感じだったのではないでしょうか(現段階では未詳なので、何とも言えませんが)。


間違いないのは「颶風」→「颱風」→「台風」です。

「ハリケーン」「サイクロン」のアレコレ♪

♦ハリケーン・カトリーナ・田舎暮らし便り159号(蓼科より).mov
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=spArSUjOFh8&w=560&h=315]

「大西洋・北太平洋東部」「インド洋」で発生する「ハリケーン」と「サイクロン」。


この2つが日本に上陸、または接近することはないのか?

これは色んな意味で、ないのです。

後に詳しく挙げますが、簡単に言えば「日本付近で発生した」強い熱帯低気圧が「タイフーン(台風)」。日付変更線を挟んで、東側に発生したものが「ハリケーン」、インド洋で発生するのが「サイクロン」です。


例えば「ハリケーン」が日付変更線を越えたとします。

すると、本来であれば、暖かくなった海水と大気が接し、気温が上昇、同時に海面からの水蒸気の助けを得て、状態の不安定になった大気が上昇気流によって上空に運ばれ、積乱雲を作り、それらが集まってかたまりになり……といった段階を経て生まれるはずの熱帯低気圧が、その手順を飛ばして、いきなり強い勢いで日本付近に現れた、ということになるのです。

ハリケーンは「最大風速33m/s以上」のもの。「タイフーン」と同じ強さを持っています。この場合の「台風」はかなり「強い台風」、もしくは「猛烈な台風」となります。本当は「ハリケーン」が日付変更線を跨いでこちらに進んだだけだからですね。


「サイクロン」の場合でも同じ。
インド洋で発生した「サイクロン」が「タイフーン」と呼ばれる領域に入れば、その「サイクロン」は「タイフーン」の呼称となり、その「タイフーン」を日本では「台風」と呼ぶ、といった感じです。


つまり、日本にはその呼称ではやって来ないのです。

このように名称の変わる、境を超えて(区域にまたがって)「台風」となったものは「越境台風」と呼ばれます。

同じく日本の台風が境界を越え「サイクロン(またはハリケーン)」と呼ばれる区域に進めば「サイクロン(ハリケーン)」に呼称を変化、です。


つまり発生した場所の名称が、その道々で、区域に合わせさらに名前を変えつつ進んでいくのです。

そして日本にくれば「越境」かもしれませんが、それは「台風」と呼ばれます。


「台風」と「タイフーン」の違いは「強さ(最大風速の基準が日本のものか世界基準か)」でしたが、「ハリケーン」「サイクロン」ではその「強さ」は世界基準である「タイフーン」と同じ。

名称を分けているのは、「発生地域」です。

そして、生れた場所で名づけられた呼称が、どこに位置しているか(進んだか)により、名前を変えるのですね。

※「ハリケーン」「サイクロン」の由来は?

勢力の強い熱帯低気圧の2つ。

「ハリケーン」はカリブ海の暴風神「ウラカン(huracan)」のことを指しています(スペイン語では「h」は発音しません)。

暴風の神様……お手柔らかにお願いしたいです。

スペインの船乗りたちが「とぐろを巻く」海に対し「暴風の神様が!」のように使い、それが訛って変っていき「ハリケーン」に。

一方の「サイクロン」はギリシア語。「回る・旋回」に由来します。

確かに、日本では「台風」の名ですが、四方八方から風にもみくちゃにされる感はあります。そんな感じをギリシア語圏の方々も感じたのでしょうか。

英語で表記すれば「cyclone」。「サイクル」の仲間的な言葉。なるほど、回っていますね


先ほどの「颱風」の由来の一つにあった「テュフォン(デュポン)」は「ハリケーン」の「ウラカン」に通じるので、もしかしたらその説が本当? な気もしますが「サイクロン」の由来を見ると、やはり、何とも正解がわからなくなります……


余談ですが「ハリケーン」につけられる人名(かつては女性の名ばかりでしたが、そんな被害を出す災害のようなものに女性名ばかりは納得できない! となり、男女同権の立場から、1979年以降は男性名も)は「リスト方式」。
名前が6年分ストックされており、そこから順に、発生したハリケーンに名づけられます。

大きな被害を出してしまったハリケーンの名前は、以後10年間は使われることはありません。その名を聞いただけで、悲しい思いがぶり返さないよう、配慮ですね。

また、ニュースやラジオなどでは擬人化した伝え方をされることも。ユーモアも忘れないところがさすがです。

命名に人名を使用したのは、少しでも親しみやすい呼称にしたかったから。女性名は戦時中から続くジンクスのようなもの。女性名をつけられたものを使うと、作戦等がうまくいくことが多かったのですね。


日本では、1月1日から発生した順に番号で呼ぶ(台風〇号)「番号方式」が採られています。

ちなみに1年間の平均発生件数は26個。そのうち平均3個が日本に上陸しているそうです。300キロ圏内まで近づくのは平均11個。

単純計算でも1年に2回以上。ですが1年を通じて均等に来るわけではないので、発生の集中する月(トップシーズンは9月頃)のことを考えると、結構な発生回数ですね。

ちょっと複雑な「サイクロン事情」

実は「サイクロン」とは「低気圧」を指す一般用語。
そして中でも「熱帯低気圧」を指すサイクロンを「トロピカル・サイクロン」と呼びます。これは発生地域に関係なく「熱帯低気圧」の構造(暖かい空気のみで成立)を持つものを示す用語。
ですので台風・ハリケーンも「トロピカル・サイクロン」なのですね。


それに対し「温帯低気圧」は「エクストラトロピカル・サイクロン」と呼ばれます。

日本付近を通る低気圧は、ほとんど「温帯低気圧」、つまり「エクストラ~」。暖かい空気と冷たい空気の接しているタイプの低気圧です。


台風のニュースなどでよく「台風〇号は、温帯低気圧に変りました」のように表現されるのは「トロピカル・サイクロンは、エクストラトロピカル・サイクロンに構造を変えました」ということです。長いですね。

ですので「台風・タイフーン」は日本付近で発生したトロピカル・サイクロン。太平洋・大西洋(日付変更線を挟んで東側)に発生したトロピカル・サイクロンが「ハリケーン」、インド洋で発生するのトロピカル・サイクロンが「サイクロン(厳密には北インド洋では「cyclonic storm」、南インド洋では「tropical cyclone」)と呼ばれているのです。

「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」を比較!

発生する地域により名前の違う熱帯低気圧の4つ。

仮に区域を跨いで進んだ場合には、今度はその地域での呼び名に変わる……郷に入っては郷に従え的……案外シンプルな違いです。


ではここでもう一度「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」の違いなどをまとめていってみましょう。

共通しているところは?

  • 「台風・タイフーン・ハリケーン・サイクロン」: 熱帯低気圧であること
  • 「台風・タイフーン」: 発生地域
  • 「タイフーン・ハリケーン・サイクロン」: 基準となる最大風速(強さ)

発生地域は?

  • 「台風・タイフーン」: 日本付近
     → 東アジア周辺の太平洋(北半球の東経100~180度)
  • ハリケーン: 日付変更線を挟んで、その東側
     → 太平洋(北半球の東経180度より東)、大西洋
  • サイクロン: インド洋
     → 北インド洋(北半球の東経100度より西)、南インド洋からオーストラリア、南大西洋にかけて
※言葉では説明しにくいのですが、赤道を横線として、その上の真ん中あたりに位置するのが「タイフーン(台風)」の領域だとします。そこが「太平洋」。北半球の太平洋なので「北太平洋」です。
そしてその東側の区域は「ハリケーン」の位置する区域。ですので「タイフーン」が発生するのは「北太平洋西部」、「ハリケーン」がその「東部」となります。

今度は赤道の下、南半球の太平洋(「タイフーン」区域と「ハリケーン」区域を合わせた区域)が「南太平洋」、そのさらに西が「インド洋」、赤道を挟み「南インド洋」と「北インド洋」です。「インド洋」で発生した「サイクロン」は「北・南インド洋」と「南太平洋」にかけて影響を及ぼします。

それぞれの強さは?

  • 台風: 最大風速(10分間平均)およそ17m/s以上(風力8)
     → これは日本の基準。また、気象庁などで使われる単位の「m/s(秒速)」を国際基準のkt(ノット)に直すとおよそ34ktとなります。
  • タイフーン: 最大風速(1分間平均)およそ33m/s以上(風力12)
     → こちらが国際基準。64ktです。
  • ハリケーン:  最大風速(1分間平均)およそ33m/s以上(風力12)
     → 同じく国際基準。64kt
  • サイクロン: 最大風速(1分間平均)およそ33m/s以上(風力12)
     → 同じく国際基準。64kt


➡ 世界基準では「強い熱帯低気圧」とされないレベルのものまで、日本では「台風」と呼ばれ、注意を呼び掛けるニュースなどが流れます。ありがたいです。ですが「台風」は発生件数が多く、その勢力も決して小さくないので注意が必要です!

由来となっているものは?

    ◎台風
  • 気象用語としてではなく、暴風を示す語として「野分(のわけ / 風が野の草を分けるから)」(枕草子や源氏物語にも登場)
     → 大風、嵐、などとの表現もある中、江戸時代に熱帯低気圧の専門書(オランダ語)を訳した「伊藤慎蔵」さんにより、中国で「ぐるぐる回る風」の意味で使われていた「颶風」の文字が「熱帯低気圧」を表わす言葉として当てられる
     → 明治末に気象学者で当時の気象台長の「岡田武松」が「颶風」の代わりに「颱風」を使用

     → 1946年の当用漢字の制定により範囲内の「台」の文字に替えられた「台風」として現在に至る
    (※ただし「颱風」の由来については諸説あり、未詳)
  • ◎タイフーン
  • 中国広東方言「tai fung(大風)」から借入した「typhoon」説
  • ギリシア神話の風の神「デュポン(typhon)」が語源説
  • ◎ハリケーン
  • 「とぐろを巻く」をスペインの船乗りたちがカリブ海の暴風の神「ウラカン(huracan)」になぞらえ、それが訛り変化して「hurricane」に。
  • ◎サイクロン
  • ギリシア語の「回る・旋回する」が由来

終わりに……

国際的な取り決めの「最大風速」の半分程度でも「台風」と呼ばれる日本の「強い熱帯低気圧」。ですが「17m/s」とはあくまで下限なところがミソです。

「ハリケーン」より勢力の強い「台風」も、普通にありなのですね。

また台風では「強さ」以外に「大きさ」も重要。

超大型の台風ですと、本州が丸々覆われるサイズになります。恐ろしい規模……


台風に限らず、最近では世界各国で「トロピカル・サイクロン」たちが甚大な被害をもたらしています。

来てしまうものはどうしようもないのですが、台風情報などにも気をつけて、お互い、何とか無事に台風一過を迎えましょう!

さて、いかがでしたでしょう。

少しでも皆さまのスッキリのお役に立てていればうれしいです!

関連記事はこちらになります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください