”町(街とも書く)”
って……
違いがわからないと、使い分けできません!!
上に書いた通りです。
辞書をみても『街』は『町』と一緒にくくられていて、別物としては扱われていないんですね。
辞書によっては『街』の項目さえないものも。
-
ってことは、その日の気分で使い分けていいとか?
じゃ、あたし『街』がいい~、なんか、オシャレな感じするし~
だよね~、『町』ってなんかダサくない?
『町』、ヒドい言われよう……
でも、確かにそんな感じはするかも。
『街』は都会的、『町』はなんとなく懐かしい、といったイメージを持っている方も多いと思います。
(※ 私もです)
“漢字が違っていて、読み方も同じで、意味も似ているもの”
のことを『異字同訓(いじどうくん)』といいます。
(※ 同訓異字とも)
『華と花』『丸いと円い』など、けっこうたくさんあるんですが、『町と街』もそのひとつ。
つまり、意味も似ているんですね。
でもちょっと違う。
なのに辞書ではその違いや使い分けがはっきり書かれていない。
= 非常~にややこしいぞ! オイっ!
なのです……
でも大丈夫。
意味や漢字の成り立ちなどを知ってしまえば、使い分けはあんがい簡単です。
── ということで、
『町と街って、なにが違うの? 意味の違いは?
英語だとなんていうの? 私も使い分け、できるようになる?』
についてわかりやすく解説いたします。
“私にも使い分け、できる?“ ようになりますよ♪
それではさっそくみていきましょう。
目次
まずは『町・街』2つの意味をチェック!
-
① 人家が多く集まっているところ (街とも)
-
②人家の密集しているところを道路で分けた一区画
-
③地方公共団体のひとつ。村より大きく市より小さいもの(町 = ちょう)
-
④区や市を構成する市街の小区画(町 = ちょう)
-
⑤商店などの建ちならんだにぎやかな区域・市街 (街とも)
-
⑥区画された田の広さ
辞書で調べると、『町』の意味として、こんな感じの説明が出てきます。
”全部『町』でOKだけど、いくつかのもの(『街とも』とあるもの)に関しては『街』と書いてもいいですよ”
ということなんですね。
『街』じゃなきゃダメ、ではないので、一番手っ取り早いのは全部『町』表記にしちゃうことです。
……そなの?
そなの、なんですが、一応一般的な使い分けというのはあります。
というか、『街』が使える限定された場所ですね。
それを解説していきます。
一般的な使い分け
-
■ 『街』
人通りが多く、ビルや商店、娯楽施設などの建ちならぶ、にぎやかな場所
そして、それ以外が『町』、です。
『町』と『街』の大きな違い
上で書いちゃってますが、『街』のほうが使える場面が限定されています。
これ、どうしてかっていうと、
“少し前まで『街』には『まち』の読みがなかったから“
なんです。
ちょっとビックリしましたか?
(ビックリしてもらえてたら、なぜか私が妙にうれしい^^)
『街』の読み方問題
公文書や新聞、雑誌で使われる漢字が、各社バラバラだったりしたら、読みにくくて困っちゃいますよね。
ちゃんと統一してほしいです。
ということで、当時(1946 / 昭和21年)に、内閣から告示されたのが、
(※ 告示: 通知・アナウンスのようなもの)
“当用漢字表”
使える漢字の範囲が目安としてまとめられた表です。
(※ 現在では『常用漢字表(1981年から)』に)
そして、その2年後1948(昭和23年)に告示されたのが、
“当用漢字音訓表”
当用漢字の『音読み・訓読み』が載せられています。
※ たとえば『幸』なら『音: さいわ・い / さち / しあわ・せ』『訓: コウ』といった感じ
で、この音訓表が改定されたのが1973(昭和48)年。
その間、実に25年間、
-
■ 『町』
- 音読み: チョウ
- 訓読み: まち
- 音読み: ガイ
- 訓読み: -(なし)
■ 『街』
ずっと、この状態。
1973年の6月に音訓表が改定されるまで、『街』に『まち』の読み方はなかったんですね。
『まち』といったら『町』一択。
なので、
“こういう場合なら、『街』と書いてもいいですよ扱い”
であり、
“それでも『街 = まち』の読み方もある”
“でも限定ね。もともと『町』でとくに問題なくやってきたものだから”
になったとさ、なんです。
『街』は『町』に比べ、『まち歴』がまだまだ浅いんですね。
『町』について
ではまずはずっと『まち』の読み方をひとり占めしてきた『町』について、少しだけ詳しくみていきます。
先ほど挙げた『町』の意味のうち、『街』とは書けないものは4つ。
-
② 人家の密集しているところを道路で分けた一区画
-
③ 地方公共団体のひとつ。村より大きく市より小さいもの(町 = ちょう)
-
④区や市を構成する市街の小区画(町 = ちょう)
-
⑥区画された田の広さ
イメージがわきやすい順に『町』の特徴を説明させていただきますね。
③地方公共団体のひとつ。村より大きく市より小さいもの(町 = ちょう)
『地方公共団体』というのは、ザックリですが、
”都道府県や市町村など、一定の地域、そこに住む住民をまとめている団体”
(※ 『普通地方公共団体』と『特別地方公共団体』があるのですが、そこは『町・街』に関係ないのでスルー)
のこと。
その地域に住んでいる人たちを構成員として、法令や政令に基づいた政治上の実務を行う権利がみとめられています。
その『地方公共団体』のうちのひとつとしての『町(ちょう)』ですね。
なのでここでいう『町』というのは、
-
『町(ちょう)』
= 都とか県とか、市とか区とかの一定の範囲のひとつで、村より大きく市より小さいもののこと
行政で団体ごとに範囲が決められている『○○町』には『町』表記しか使えません。
多くの場合『市』などに公共団体がありますが、
- 東京都大島町(おおしままち)
- 茨城県大洗町(おおあらいまち)
- 宮城県大郷町(おおさとちょう)
などのように『町』にあるもの、または、
- 長野県王滝村(おうたきむら)
- 東京都小笠原村(おがさわらむら)
- 山梨県忍野村(おしのむら)
村単位のこともあります。
どのように使うか、というのは……
“東京都大島町”
“茨城県大洗町”
“宮城県大郷町”
……そのままですね。
④区や市を構成する市街の小区画(町 = ちょう)
これは皆さんおなじみ、
”東京都○○区△△町”
”◎◎県○○市△△町”
などの『町(ちょう)』のことですよね。
先に出てきた『地方公共団体のひとつである“町”』よりさらに細かく区分けされた範囲。
区や市を構成している、いくつもある小さな単位(範囲)としての『町』です。
地図にも載ってるし、ちゃんとした境界線もあります。
法律上「あなたのまちの名前は『△△町』ですよ」と決められている区域や場所に対して使えるのも『町』だけです。
(※『③』の“町”も同様・地図にも載ってます)
-
『東京都千代田区神田神保町(ちよだく・かんだ・じんぼうちょう)』
↓
『東京都千代田区神保街(ちよだく・かんだ・じんぼう……がい?』
これはナシ。
仮に『小川町(おがわまち)』のように『町』を『まち』と読ませる地域だとしても『小川街』にはなりません。
というか、固有名詞を勝手に変えちゃダメ。
なので『城下町(じょうかまち)』『門前町(もんぜんまち)』など初めから名称が決められているものに関しても『町』一択です。
漢字の『町』について・⑥区画された田の広さ
『町』という漢字は、
- 左側の『田』
→ 耕された土地(田畑)のこと - 右側の『丁』
→ 釘(くぎ)
からできていて、
”田と田の間に細い道を釘のように(目印として)打ち込む”
細い道(あぜ道)によって区切られた様子を表しているんですね。
だから、
-
⑥区画された田の広さ
の意味もある。
『町』は区分けが好き、と覚えておいてくださいね。
④人家の密集しているところを道路で分けた一区画
いくら区分け好きの『町』とはいえ、一定の範囲を見えない境界線で分けるわけにはいかないですよね。
なのでその目印に、
- 田んぼ: あぜ道
- 町: 道路
ということで、人が集まった場所を道路で区切った一区画(法によるもの)も『町』です。
- 地図に載るような住所としての『○○町』のようにしっかり法律で区切られている『まち / チョウ』
- 固有名詞として使われている『まち / チョウ』
は、全部『町』。
実は『町』を名乗るには条例で決められた人口数や建っている家の戸数など、クリアしないといけない条件がいくつかあるんですよ。
けっこう『町』はエライ……わけじゃないけど、ちゃんとしてるんです。
(ちゃんとでもないか……)
んじゃ、『街』はちゃんとしてないんっすか?
『町』に比べると、してないといえばしてないですね。
イメージ的にはですが。
ではでは、続いて『街』について。
みていきましょう。
『街』について少し詳しく
『街』を使ってもいいですよ、とされているのがこの2つです。
-
①人家が多く集まっているところ
-
⑤商店などの建ちならんだにぎやかな区域・市街
『街ポイント』その1・にぎやかな場所
『街』の一般的な使い分けとされているのが、
“人通りが多く、ビルや商店、娯楽施設などの建ちならぶ、にぎやかな場所”
なので、
“①人家が多く集まっているところ”
これには『町』が適切なのでは、とする意見もあります。
けっこう多いです。
なんですが、『⑤』の説明に『市街』ってありますよね。
この『市街』というのは、
”人家の密集したところ / 多くの人が生活の拠点としているところ”
の意味を持つので、『街』表記でも間違いではないことになるんです。
ただ、単に集まっているところならセーフなんですが、
“道路で分けた一区画”
になると『町』だけ、となってしまうんですね。
法律がからむと(行政区画)、『街』表記は不適切となってしまいます。
『街ポイント』その2・街はアバウト
そしてもう一つのポイントが、
“街は町ほど区分け好きではなく、実にアバウト”
というところ。
たとえばですが、
”渋谷はオレたちのまちだぜ!”
の『まち』。
これは『街』のほう。
かつて東京が『東京府』だったころには『渋谷町』という地域は存在していましたが、今は『渋谷区』です。
でも、いつも仲間と遊んでる場所だし、人も大勢集まりにぎやかな場所だから『街』。
街ではなく、
”渋谷はオレたちのいつも遊んでるエリアだぜ!”
とか、
”オレたちのホットプレイス! し・ぶ・や!!”
なんでもありです。
でも『街』でもいい。
もちろん『町』でもいい。
が、町には“○○市△△町”のような『名称として存在している場所』というイメージがあるので、より使われるのは『街』ですね。
または『まち』以外の言い方か。
少しわかりにくいかと思いますので、いくつかの例をあげて、
『町・街、どっちがしっくりくる?』
をみていってみましょう。
今日、夜7時から町内会の集会だって
“町内会”と言っちゃってるんで、ここは『町』ですね。
-
“今日、この町の集会場で町の役員たちが集まり、町内会が開かれる”
商店街などの有志が集まって、なにかイベントなどを計画しているなら、
-
“今日、7時に集会所、集合な! 大丈夫だって! オレたちの街(商店街)のイベントが成功すれば、町の活気も戻ってくるって!”
あたし、新宿のあのゴチャゴチャした雰囲気、苦手なの
-
“街の雰囲気って大事だよね。あたし、新宿って街のゴチャゴチャした感じ、苦手~”
これが“町の雰囲気”になると、
-
“ご近所トラブルが最近絶えない。この町の雰囲気も、昔とずいぶん変わってしまって、わたしゃ、悲しい……”
のような感じになります。
また引っ越し!? 今年に入って3回目だよ!!
-
“少しは落ち着いた生活がしたい……町から町へ移り住む生活……もういい加減うんざり……”
『街』なら、
-
“このへんにはあんまり大きなお店ないけど、今度街のほう、案内するよ!”
あ……電灯が切れてる……
-
“この町は住んでる人が少ないから、街の灯りが1つでも消えると、夜はとたんに真っ暗になっちゃうんだよね”
-
“町中の灯りが消えた!! 大規模停電か?!”
そうだ、京都行こう
-
“忙しい毎日を忘れ、たまには京都の街並みに癒されたい”
たった1つの町だけ限定でなく、いくつかの町をまたいだ『まちなみ』になるので、『街』。
-
“京都府○○区△△町にある老舗(しにせ)旅館を予約しといたよ”
『△△町』はなにがなんでも『町』。
『△△街』にはなりません。
若者がどんどん都会に出ていってしまう……
-
“若者は都会の街を目指して出ていく……で、たいてい2年くらいでこの町に帰ってくるんだよ”
『町』は(村よりも大きければ)、高いビルなどが建っていなくても、人でにぎわってなくても『町』です。
『町』がキッチリ区分けされている地域や範囲であるのに対し、『街』は、
- その中の限定スポット
- 人通りの多い場所
- にぎわいのある通り(道)
- 建物などが密集している地域(商業エリアなど)
- 特別な区分けがされていない上記のような区域
を指すときに多く使われる言葉になります。
(※ 『町』と書いても間違いではありませんが、感覚的に『街』のほうがピッタリきます)
それは『街』という字の成り立ちからもわかりますよ♪
漢字の『街』の成り立ち
『街』の文字を分解すると、
- 行: ぎょうがまえ(漢字の構えのひとつ /『ゆきがまえ』ともいいます /『街』の文字を外側からはさんでる部分)
→ 道のこと - 圭:『行』にはさまれている真ん中部分
→ 道や区画を表す
どっちも『道』なんですね。
で、ちょっとお願いなのですが、『行』『圭』の線の部分をお互いに向かって伸ばしていってみていただけますか。
(※『行』の斜めになっているところも、真っすぐ横向きに)
縦横の線がつながり、段差のない“あみだくじ”みたいになりませんか?
(※ 横断歩道の白線が2本並んだような形)
説明ヘタすぎですが、なんというか、何本も道が交差して走っているような感じになるんです。
道がたくさんあれば、多くの車や人も集まりますよね。
『街』という字は、
“人通りの多いにぎわった道”
を表したもの。
一方『町』は、
“細い道(あぜ道)によって区切られた様子を表す”
成り立ちが全然違うんですね。
町か街か? 使い分けると、伝わるイメージも変わってきますよ!
- 区切りの『町』
- 道の『街』
ということで、『街』の英語での表現、もう、バレてるのでしょうね、たぶん……
『街』を表す単語としてよく使われているのが、
“道 = Street(ストリート)”
です。
そのほかにもいくつかあてはまる言葉(英語)があるので、『町』も含め、最後に英語での表現をチェックしていきましょう。
英語で『町・街』はなんていう?
-
■ 村
village
■ 町
town
■ 市
city
■ 都市
city / big city
『町』を英語で!
英語での『町』は、
“town”
ホントは『市』や都市などの中心地を指す言葉なんですが、“city”も一般的に使われています。
『街』を英語で!
先ほど書きました通り、
“にぎわった道”
とうい意味で使われることが多いのが“street”
また、ストリートには『道』だけでなく、
- 街
- ○○街(繁華街など)
といった意味もあるため、
“residential street(住宅街)”
のように表されることもあります。
(※『residential』:“住宅の・居住の”など意味)
『住宅街』を、
“residential area(エリア)”
とすることもあり。
(※『area』:“地域・地区・区域・特定の場所”などの意味)
『商店街』なら、
“shopping(ショッピング) Street”
通りの両側にお店がたくさん並ぶ、日本でいうなら『○○銀座商店街』のようなところですね。
また、そういった場所には、『天気に関係なくお買い物を楽しんでもらいたい!』の精神から、雨が降っても大丈夫なように、アーケードが張られていることも多いですよね。
ということで、天井つき『お買い物ロード』的な場所は、
“shopping arcade(アーケード)”
これもよく使われています。
(※『arcade』:“屋根つきの街路”の意味)
で、道1本だけの商店街ではなく、こうした通りがいくつか集まってできた場所なら、
“shopping district(ディストリクト)”
が使われることが多いです。
(※『district』:“地区・区域・地方”などの意味 / 行政で区切られた区域のことを指す場合も)
また、
“人通りが多く、ビルや商店、娯楽施設などの建ちならぶ、にぎやかな場所”
といった意味で、
“Down town(ダウンタウン)”
もありますよね。
アメリカ特有の言い回しになりますが、特定の道を指して、
“○○Avenue(アベニュー)”
と呼ぶことも。
(※『Avenue』:“大通り・並木道”などのほか“○○への道・手段”の意味も)
-
■ Street
- にぎわった道
- 街
- ○○街 などの意味
- 地域・地区・区域・特定の場所 などの意味
- 屋根つきの街路の意味
- 地区・区域・地方などの意味
- 行政で区切られた区域のことを指す場合もあり
- 人通りが多く、ビルや商店、娯楽施設などの建ちならぶ、にぎやかな場所
- 大通り
- 並木道など
- ○○への道(成功への道とか)・手段の意味も
■ Area
■ arcade
■ district
■ Down town
■ Avenue
これらの言葉が、場所や状況、地域などによってその場その場の判断で使い分けられているそうですよ。
終わりに……
“ここからここまで”のようにしっかり区切られている『町』に比べ、
“ここらへんのにぎやかなとこ一帯”
くらいのアバウトさでその範囲を示す『街』。
英語の違いでもこの差、出てますよね。
キッチリさんの『町』には、
“town”か“city”
町のようにその範囲がはっきり決められていない『街』には、呼び方がいくつもある。
(※ 正確には『街』というより『街っぽいニュアンスを持った場所』の呼び方ですね^^;)
── ということで、『町と街の違い』でしたが、彼らへの使い分けへのモヤモヤは、少しだけでも薄まりましたでしょうか。
なんとなくでもスッキリしていただけていたらうれしいのですが……
ではでは。
最後までおつき合いいただきありがとうございました。
関連記事はこちらになります。
コメント