「台風」が収束を迎える前に「温帯低気圧」に変化したり「熱帯低気圧」へと変わったり、というのはテレビを見ていると情報として、よく耳にするセリフ。
では、それらの関係と仕組み、変化する、というのはどうなることなのか?
……さっぱりわかりません。
気象予報士の合格率は毎年だいたい4~7%だそうです。狭き門! 凄い資格なのですね。
雨が降るのは予報士さんのせいではないことは100%わかってはいるのですが「なんで~! なんとかしてよ!」などとつい八つ当たりしてみたり、予報が外れようものなら、15分近く文句を言い続けてみたり……ごめんなさい。
ゲリラ豪雨が降ったり、長い梅雨があったり、台風が発生しやすかったりする日本。美しい四季、などと言っている場合ではないほど甚大な被害も起きています。……やっぱり予報士さん、何とかしてください。
今後生きていく間に何度遭遇するか予想もつかない「台風」。
知らなかったために「油断して被害を受けた!」などということのないよう、それぞれについて解説いたします。
少なくとも予報士さんを温かい目で見られるよう、お役立ていただければ幸いです!
目次
台風・温帯低気圧・熱帯低気圧の違いはここ!
まずはこの3つ、どれも「低気圧」の一種である、という共通点があります。「気圧」とは地表にかかる圧力のこと。「低気圧」は、その圧力が周囲よりも低いことを示します。低気圧がやってくると、大抵お天気は崩れますね。
そしてさらに「台風」は「熱帯低気圧」のごく近い仲間。
「熱帯低気圧」が発達し、最大風速17.2m以上となったもののことを「台風」と呼びます。
よって「台風」と「熱帯低気圧」の関係は、
- どちらも「熱帯低気圧」である
- 最大風速17.2m/s 以上なら「台風」
- 最大風速17.2m/s 未満なら「熱帯低気圧」のまま
では「温帯低気圧」とは?
実はこちらの低気圧は、「台風(熱帯低気圧)」とは、メカニズムが根本的に違うものです。
後に詳しく触れますが、暖かい空気のみで構成されている「台風・熱帯高気圧」とは違い「冷たい空気」と「暖かい空気」が混じり合うことによりできる低気圧を指しています。
ですので「熱帯低気圧(台風)」と「温帯低気圧」の違いを簡単に書きますと、
- どちらも「低気圧」の一種である
- 暖かい空気のみで構成されていれば「熱帯高気圧(台風)」
- 暖かい空気と冷たい空気が混じり合っていれば「温帯低気圧」
- 「台風」は勢力が弱まって「熱帯低気圧」に変化することはあるが、「温帯低気圧」に変化したからといって「台風」の勢いが弱くなったわけではなく、「台風」とは呼べない仕組みに変わっただけ。
また、暖かい空気と冷たい空気がぶつかり合う場所は「前線」と呼ばれます。
上記のような理由から「前線」を伴っていることも「温帯低気圧」だけの特徴とも言えます。
……台風が弱まってきた時の状態が「熱帯・温帯」どちらかで言い表されているんだと思ってた! ややこしくない?
はい! そう思います!
ですがこの3つの「低気圧」、知ってしまえば「なんだ、その違いだけなのね」と言った感じ。
では、さっそくそれぞれの「低気圧」の特徴等を見ていってみましょう!
熱帯低気圧とは? 定義はコレ
高い海面温度を持った熱帯の海の水が蒸発し、その水蒸気が空の上の方へと昇っていくとどうなるか? 水の粒に変わり、雲が作られます。この時に放出される多くの熱は周りの空気を暖め、上空へ向かう空気の勢いはさらに強まります。上昇気流ですね。渦を巻きながら昇っていきます。
そしてその渦は、繰り返しにより、徐々に大きな渦へと発達していくのです。
「熱帯低気圧」とは、こうしてできたもののことを指します。
しかし、熱帯で起こった低気圧、そのすべてを指す言葉ではありません。
- 暖気(暖気核)のみでできているか
- 海水が蒸発、水蒸気となって上昇することにより起こる熱(潜熱)をエネルギー源としているか
- 他の低気圧よりも最大風速が増しいやすいものであるか(熱帯低気圧は天気図ではきれいな同心円を描きます。そのため、同心円を描かない低気圧に比べ、最大風速が増しやすい仕組みとなっています)
- 広い範囲での低気圧層を持つものか
温帯低気圧とは? 特徴や定義は?
続いての「温帯低気圧」、先ほども書きましたように、こちらは「低気圧」の一種という共通点は持つものの「台風・熱帯低気圧」とは仲間になれないメカニズムを持ったものです。「温帯低気圧」は「温帯」の名の通り、日本のような温帯で発生する低気圧のことを指しています。
「台風」よりむしろ「高気圧」と良きライバル的お友達関係にありそうな部類のものなのですね。
日本列島を見てもわかるように、南北に温度差がある温帯地方。これは大気の状態を不安定にする要素の一つでもあります。
きっかけがあればその差を解消しようと渦が発生します。つまり、混じり合おうとする空気間の働きが渦を起こすわけです。
その混じり合う空気には「寒気」と「暖気」それぞれの場合があります。
また、大陸の上空は乾燥していて、海面上には湿った空気。それらを解消しようと渦が発生することもあります。
こうして発生、発達していったものが「温帯低気圧」と呼ばれています。
- 温帯地方で発生、発達する低気圧である
- 南北にある温度差による大気の不安定な状態を解消しようとして渦が発生、発達したもの(大陸上空と海面上空の空気の、乾燥・湿り気の差の解消も場合も)
- 暖かい空気と冷たい空気を併せ持つ
- それらが混じり合う場所 = 前線(温暖前線と寒冷前線)を伴う
- 前線の南側では暖気、北側では寒気を伴う風がそれぞれに吹いている
「温帯低気圧」では広い範囲で強風が吹く、といった特徴もあります。中心から離れた地域での災害などにも注意が必要です。
台風とは? ここが決め手!
さて「熱帯低気圧」が発達し、最大風速が17.2m以上となったものを指す「台風」。条件としては、
-
1.「熱帯低気圧」であるか
-
2.最大風速が17.2m以上あるか
ただし「1」の条件を満たすためには「熱帯低気圧」の条件もすべてクリアしている必要はあります。
そして今まで「台風」だったものが「1」の条件をクリアできなくなれば「温暖低気圧」に、また「2」の条件を満たすことができなければ「熱帯低気圧」に変わったことを宣言されるわけです。
台風・温帯低気圧・熱帯低気圧、3つの関係と詳しい違い!
それぞれの「低気圧」についての特徴、とりあえずはそれらに違いのあることが何となくでもおわかりいただけましたでしょうか。それぞれに違った特徴はあるものの、3つともに密接な関係があるのもまた事実。
ではそれぞれの特徴を踏まえつつ、その関係から違いを比較していってみることにしましょう!
熱帯低気圧が台風に変化しました!
海面温度の高い赤道付近の海上では上昇気流が発生しやすく、暖かい空気の渦が多数形成されます。渦の中心の気圧は下がり、「熱帯低気圧」のできあがりです。最大風速は17.2m未満。ですが発達を続ける「熱帯低気圧」、ついに17・2mのリミットを超えた最大風速を持つようになります。ここに「台風」の誕生です。
★その後、台風は熱帯低気圧に変化したもようです!
つまり2つを分けるものは「最大風速」のみです。「台風」も「熱帯低気圧」の一種なので、暖かい空気だけで構成されていなければいけません。ここまでは同じもの。
「熱帯低気圧」が「台風」になるには、さらに発達して最大風速が17.2m以上とならなければならず、未満になればまた「熱帯低気圧」に逆戻り。
「台風」としての条件を備えるほどの最大風速を維持できなかった、ということで「熱帯低気圧」に変化した「台風」の勢力は衰えた、と言われることとなるのです。
温帯低気圧の最大風速が17.2mを超えました!
♦台風と低気圧(温帯低気圧の違いについて)
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=JA9NuX0rC6w&w=560&h=315]でも「台風」とは呼びません。
「台風」としての条件「暖かい空気だけで構成されている」「熱帯低気圧の一種である」を満たしていないからです。
「温帯低気圧」はあくまで「温帯低気圧」。
最近では気象庁が使う正式な用語ではありませんが、勢力の強い「温帯~」を「爆弾低気圧」などと呼ぶようにもなりました。
また通常「低気圧」といえばこちらの「温帯低気圧」のことを指します。
このことからもわかるように「台風」と「温帯低気圧」は別物として扱われているわけです。
台風は温帯低気圧に変化しました!
これはありです。というより、このパターンが日本に来る台風のほとんどが辿る道とも言えます。
赤道付近の海上で「熱帯低気圧」として発生し、発達を遂げ誕生した「台風」。勢力を保ったまま日本付近までやってきます。
そこで何が起こるか?
海面の水温が熱帯より低い日本、海からの水蒸気の量が圧倒的に減少しますね。供給量が減ってしまいます。
つまり、高い気温により海水を蒸発、水蒸気として上昇させることで得ていたエネルギー源が足りなくなってくるのですね。
「台風」、がっかりです。
そのまま勢いがなくなり、最大風速が17.2m未満に弱まれば「熱帯低気圧」として徐々に収束を迎えます。
ですが「日本列島」は南北に長く位置する島。
そこに北からの寒気が加われば「台風」にあるまじき「冷たい空気」が「暖かい空気」に混じり合うこととなります。
そうなれば「台風」としての体裁はもはや保てません。
「暖かい空気のみで構成されていること」の条件が崩されたわけです。
よって、この「台風」は「温帯低気圧」と呼ばれるメカニズム、構造を持つものへと変化した、となるのです。
ここでは最大風速は基準とはなりません。基準とされるのは「その構造」、「暖かい空気」のみか否か。
「暖かい空気」と「冷たい空気」がぶつかる場所である「前線」を伴ったもとへと変化したことだけが呼び名の違いを分けているのです。
台風から熱帯低気圧・温帯低気圧になった! ならもう一安心?
安心しちゃダメです! 油断禁物です!!!- 「熱帯低気圧」に変化した「台風」の注意すべき点は、
→ 確かに最大風速は17・2m未満に弱まりました。ですがそれは「『台風』と呼ぶには『その最大風速』ではふさわしくない」となっただけのことです。雨の強さは「台風」の定義にないだけなので、雨脚は未だ強いまま、ということもあり得ます。
十分お気をつけください! - 「温帯低気圧」に変化した「台風」では、
→ 変わったのはその低気圧の「構造」部分のみ。「冷たい空気が混ざった」ことだけです。最大風速がむしろ強まることも考えられます。雨脚も「台風」と呼ばれていた時以上かもしれません!また「温帯低気圧」では広い範囲で強風が吹くことも特徴の一つです。低気圧の中心から離れた地域の皆さんも、油断しちゃダメです!
熱帯・温帯低気圧に変わってから、また台風に変化することってあるの?
- 熱帯低気圧になった場合
→ 風速の問題なので、あり得ます! - 温帯低気圧に変わった場合
→ 一度冷たい空気が混じり合ったものが、再び暖かい空気だけとなることはほぼあり得ません。しかし、2004年の台風18号のように、温帯低気圧に変わりながらも再び発達し、範囲の広い強風で大きな被害を起こすこともあります。
「温帯低気圧」は何度も言いますが「台風」とは呼べませんが、その理由は単に「構造」上の違いからです。風速や雨脚が衰えたことで呼び名が変わったものではないのです。
終わりに……
いくら「台風」っていうのはこういうもの、とわかっていたところで、やって来てしまうものを止めることはできません。ですが「こういうもの」とわかっているからこその備えは、少しは気持ちを落ち着かせ冷静な判断などに繋がるんじゃないかなぁ、などと思っております。
だって! 台風の時のあのゴーゴー、バリバリいう音って怖いです!
いかがでしたでしょう。
3つの「低気圧」、考えていたよりははっきりとしたわかりやすい違いで分けられていました。
皆様のモヤモヤが少しでも晴れてくれればうれしいです!
ちなみに「台風」か「熱帯低気圧」かを分ける17.2mの最大風速値の判定ですが、各国のデータの読み取り方の違いによってどうしても若干のバラつきが出てきてしまうのは仕方のないこと。
そこで北西太平洋地域では、国際的に認められた公式なもの、として日本の気象庁の判断を採用しているそうです。
気象庁! どこまでかっこいいんでしょう!
その気象庁からのデータをもとにお天気を予報する気象予報士さん! 今まで色々意地悪言ってホントにごめんなさい。でもできれば明日の天気は晴れでお願いします!
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