えっと……それ以前の問題で……読めないんですが……
あ、仲間です。実は私も読めませんでした。
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「山茶花」=「サザンカ」
「椿」=「ツバキ」
「サザンカ」と「ツバキ」の違いがわかって、見分けられればいいのです。問題なし。
さてさて「山茶花」と「椿」です。
焚火のお伴、または演歌調の宿にも馴染みの深い「山茶花」と、高級食用油や整髪料としても名を馳せる「椿」。
特に共通点があるようにも思えないのですが、実はこの2つ、とんでもなく見た目が似ているのです。
そのレベルは「じっくり見ないとわからない」レベル。
そして、交雑を重ね生み出された数々の園芸品種に至っては、もはや「専門家でも見分けのつかないものもある」レベル。
すべての品種を見分けるのはいくら何でもムチャ……
「山茶花」「椿」の基本的な違いと、一般的な見分け方の「コツ」を中心に紹介させていただきます。
はじめからこんな弱気なことで申し訳ありません……
でもでも……
「山茶花」の園芸品種、300種以上、「椿」は日本だけで1000種以上(江戸時代の時点ですでに200種)、世界では6000以上……
ではそんなムチャぶりを発揮しつつも美しい花を咲かせてくれる「山茶花」と「椿」。
皆さまの「大体わかったから、まあいいか。っていうか、1000種類とか説明されても覚えんのムリだし」に少しでも近づければ幸いです。
目次
「山茶花」と「椿」は何が違う?
「山茶花」と「椿」は本当によく似ています。なぜならどちらも同じ「ツバキ科ツバキ属」に属す花木だから。
まず、その名前からして絡まりまくっています。
中国で「山茶花」といえば「ツバキ」のことを指し、その「椿」は「チン」と読まれ、しかもそれは日本の「椿」とは、また別の植物を指しているそう。
……うううん! もうっ!!!
まったくです。もう! です。
ですが「山茶花」の方が早めに開花の時期を迎え、葉っぱが小振りで、花の散り方も「椿」とは異なる、などなど、それなりの相違点もあるもの。
「たきび」の歌に登場することからもお分かりいただけますように「山茶花」は、寒い時期に咲く花です。
10月末から翌2月にかけてが開花時期。
一方の「椿」の開花時期は12月から4月にかけて。冬から初春に花を咲かせます。
ちょっと開花時期もかぶっているのですね。
「山茶花」と「椿」の見分け方、違いとしてよく取り上げられているのが「花の落ち方」。
「山茶花」は1枚1枚の花びらがハラハラと舞い散り、「椿」は首が折れるようにして花ごとボトッと落ちます。
「山茶花」にはほのかにある香りも「椿」にはありません。
また葉っぱにもそれぞれ特徴があり「山茶花」の葉の縁はギザギザ(鋸歯)、そして産毛(繊毛 / 微毛)も生えていますが、「椿」はギザギザも産毛もほとんど目立ちません。
そして先ほども書きました通り、「山茶花」の方が「椿」よりも小振りの葉です。
花の開き方でも「山茶花」が大きく開いて咲くのに対し、「椿」は開き切らず、カップのような形を保ちます。
あれ? 結構あるじゃん、違い。
そうなのです。そしてこれぞ「基本的な違い」です。
「山茶花」は本州より南の暖かな地域に自生している日本原産の「常緑性の低木」、そして「椿」も同じく日本原産で、「ヤブツバキ」が大もとであるとされています。
これらの特徴が上記のもの。
案外、違い・見分けポイントがあります。
が、何を考えていたのか(きっと、きれいな品種をたくさん作り出したいと考えていたのだと思いますが)、園芸品種が続々と増えていくのですね。
「山茶花」の園芸品種の多くは「椿」との交雑により作られたもの。
見分けがつかなくなる、というより、どちらでもある、といった感じなのです。
では続きまして、たくさんの園芸品種を生み出したくなってしまう「山茶花」「椿」について、それぞれの特徴を少し詳しく見ていってみましょう。
「山茶花」とは?
前述の「椿」との違いにもありましたように「山茶花」の花びらは1枚ずつ舞い散るのが特徴の一つ。花びら同士が根本の部分(基部)でくっついて(合着)いないため、散る時にバラバラに落ちていくのですね。
花びら(大抵5~10枚)も大きく開き、その花びらの真ん中にある「オシベ」の根本もつながっていません。放射状に広がっています。
何となく自由な感じ。おおらかな咲き方ですね。
そしてさらに「オシベ」に守られるように「メシベ」があり、その下部分、膨らんだところ(子房)に種ができるわけですが、ここにも産毛が生えているのも「山茶花」の特徴の一つ。
花が開いたときの直径(花径)はおよそ5~7cm、それほど大きくはありません。
続いては「葉」です。
先ほども書きました通り、葉の縁はギザギザ。そして葉柄(葉を支えている柄の部分。水分や栄養の通り道。【ようへい】と読みます)から主脈(葉の最も太い葉脈)にかけて褐色の産毛が密生しています。
形は楕円形。小振りで尖った感じ。これが互い違いに生えています。
「子房」にも産毛、「葉」にも産毛、そして「新芽」にも産毛、「山茶花」産毛多し、です。
さて、その葉を太陽に透かしてみましょう。
上記の葉脈が「黒く」見えます。
これも山茶花の特徴。
椿は逆に「白く」見えるのです。
見分けのポイントの一つでもあります。
そして「香り」ですね。
山茶花は花の色によりその香りも異なり、よく知られているのはピンク色の花の香り。ジャスミンのよう、などとも言われています。
これらが「山茶花」の基本的な特徴です。
周りに咲く花の少ない冬に咲く時期を迎えることもあり、鮮やかな山茶花の色彩は街中であっても、かなり映えそうですね。
美しい!
ということもあってか、花びらの色は野生種(ヤブサザンカ)であれば白か淡い赤ですが、園芸品種ではその限りではありません。
また一重咲きである野生種に対し、その咲き方のバリエーションも飛躍的に増えます。
そして300種類以上、となっているわけですが、これらは作出元(その品種のもと)により大きく3つに分けられています。
- サザンカ群: 野生の山茶花(ヤブサザンカ)から。早い時期に咲く(10月頃)
→ 花びらは一重咲きか二重咲き程度 - カンツバキ群: サザンカの園芸品種。11月中旬~2月頃、山茶花の開花期の真ん中ぐらいに花を咲かす
→ 八重咲き、獅子咲きなど、華やかなものが多い
(※獅子咲き: 花の中心部が大小の花びらで盛り上がりっているよう咲き方。かなり華やか)
→ もともと山茶花と椿の交雑でできたと考えられている「獅子頭」という品種のものを指し「カンツバキ」と呼んでいましたが、その後ここからいくつもの園芸品種が生まれ、現在ではそれらすべてを指し「カンツバキ」と呼んいます。 - ハルサザンカ群: サザンカとツバキの交雑種。2月中旬~5月中旬の、山茶花の開花期の終わり頃の暖かい時に咲く
→ 一重咲き、八重咲きなど咲き方のバリエーションが豊富
グチャグチャしてます……
そして「ハルサザンカ」。「山茶花」は冬に咲くのが特徴でもあるのに、その「春咲き」バージョンです。
さらにこれらは「群」です。
この中にまたいくつもの品種があるわけですね。
例えば「サザンカ群」の「千代鶴」。これは「茶花(茶席に生ける花 / ちゃばな)」として古くから活躍している品種。
「カンツバキ群」の代表格的なものには「昭和の栄」という中輪でピンクの花を咲かせる品種。
「ハルサザンカ群」には垣根を飾ることの多い紅色に白い斑を持つ「鎌倉絞(かまくらしぼり)」。
などなどが存在している、といった感じです。
うーん。
「山茶花」、侮れません。300種、もしかしたら、もっともっとあるんじゃないだろうか、な気もしてきました。
「椿」とは?「山茶花」とはココで見分ける!
♦椿の種類.wmv
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=9EjuzW61WJw&w=560&h=315]「山茶花」の種類の多さで驚いている場合ではありません。
「椿」、日本だけでも1000種類以上、世界では6000種以上。
この世の花が全部椿なのでは? と勘繰りたくなる数です。
「山茶花」が本州より南の暖かい地域に自生しているのに対し、椿はほぼ日本全国に分布。高木の常緑樹です。
山茶花は「低木」、椿の方が背が高いのですね。
通常のもので5~6m、山茶花は3~5m、若干高い程度でしょうか。ですが中には18mにまで達する「椿」もあるとか。それはすごい!
さて、冬から初春にかけて花を咲かせる「椿」。
その花径は3~10cmほど。
それが散る時にはボトッ、と落ちるのですね。
首が落ちるかのようで怖い……ということで、お見舞いなどには椿はNG。縁起が悪すぎです。
山茶花のように、花びら同士がくっついていなければお見舞いにも問題なかったのですが、根本部分で繋がっているのが椿の特徴の一つ。
また、オシベも根本の半分くらいが合着。
そのため、花びら、オシベは一緒に落ち、「メシベ」と「ガク」のみが後に残されます。
そして山茶花では放射状に広がっていたオシベも、椿では筒状。さらに花自体も開き切らず、カップ状です。
ここも違う部分。見分けのポイントの一つですね。
何となくイメージの悪くなってきた椿ですが、古くから日本人に愛されてきた花でもあります。
茶花としても親しまれ、さらに椿の寿命が長いことから(天然記念物にもなっている京都の「滝の千年椿」は何と1200年生きているそうです)「不老長寿の木」などとも呼ばれています。
さて、椿の「葉」は山茶花と比べて大振り。
山茶花には葉の縁のギザギザが目立ちましたが、椿では目立ちません。
分厚く光沢があり、また形が細長いのも特徴です。
さらには葉に密生している産毛も椿にはほとんどありません。ツルツルした印象です。
そして、先ほど書きました通り、太陽に透かせば「黒」ではなく葉脈は「白」く見える。
メシベの「子房」の産毛もなし。
山茶花にはうっすらとある香りも椿にはなし。
香りがなければ受粉のための昆虫や鳥などがやってこないのでは? と心配になってきますが、鮮やかな色彩がその代わりになる、と考えられています。
ここら辺、完全に山茶花の真逆をいっていますね。
こうしてみますと、本当に案外違いがあります。
散り方がそれぞれに一番特徴的ではありますが、できれば咲いている花を見分けたい……だとしても、近づいてじっくり見ればなんとかなりそうです。
さてさて、現在は多くの園芸品種が存在する椿ですが、その元祖と考えられているのが、日本に自生している「ヤブツバキ」と「ユキツバキ」です。
上記の特徴は「ヤブツバキ」のもの。
「ユキツバキ」は花びらが水平に大きく開き、オシベも合着していません。ここだけ見れば山茶花です。
また、その「ユキツバキ」と「ヤブツバキ」との中間型の品種や、カップ状でも大きく開く形でもなく、幾重にも花びらを重ねた中心の盛り上がった円筒の花の形を持つ「オトメツバキ(シャネル・カメリアのモチーフにもなってます。本当にきれいな椿です)」などなど多くの品種が存在しています。
そしてさらには「山茶花」と「椿」の交雑品種もつくられ(カンツバキやハルサザンカなど)、どちらのいいところも持つ品種も誕生です。
ですので「香りのある椿」「花びら一枚一枚が散る椿」「ほとんど山茶花と区別のつかない椿」も生まれているわけですね。
「山茶花」なの?「椿」なの? といった感じになっていくのも仕方ないのです。
「山茶花」や「椿」を保存しているのではなく、育てやすさや癒しなどを求めて作られているのが園芸品種。
それでも分類の必要上、上記の「山茶花」「椿」の基本の特徴を踏まえて分けられているのです。
ですが「ここで見分ける」とされているポイントには、ほとんどといっていいほど例外があるのですね。
現在もっとも頼りになる分類上、基準となるべき特徴は「新芽・子房に産毛はあるかないか」のようです。
分類しなくてはいけないお仕事の方などにとっては「紛らわしすぎ……」なのかもしれませんが、ただ花を見て(椿は葉や枝も鑑賞の対象)和ませてもらう側にとっては、品種が増えれば増えるほど、単純に楽しみも増します。
「山茶花」と「椿」の比較!!
近所の子なんかに「これどっち~?」って聞かれたら、とりあえず聞こえなかったふりをしよう……いえいえ、確かに例外はありますが、前述の違いは大抵の「山茶花」「椿」に通用するはずです。
改良品種の品評会的なところではちょっとキツいかもしれませんが……
基本の違いを知っておき、さらには「例外もあり」ということまで知っておけば大丈夫です。
間違えても「あれ、おかしいな、これって山茶花の特徴なんだけどな。あと、ほらココも特徴の一つね」などの言葉で「博識さん」に早変わりです。
ではここでもう一度おさらいです。
博識さん目指してまとまていってみましょう。
違いをまとめて!!
はい! 了解です!-
◎開花時期の違い
- 山茶花: 10月末~2月
- 椿: 12月~4月 ◎花の大きさの違い
- 山茶花: 5~7cm
- 椿: 3~10cm ◎背が高いのは?
- 椿の方です: 5~6m(中には18mにまで達するものも)
- 低い方の山茶花: 3~5m ◎葉っぱが大きいのは?
- 椿の方です: 長さ5~12cm
- 小振りの山茶花: 3~7cm ◎その葉っぱの違いは?
- 山茶花: 縁にギザギザが目立つ / 形は楕円形 / 先が尖る / 産毛が生えている / 太陽に透かして見ると、葉脈が黒く見える / 全体につやがなく、小さい
- 椿: ギザギザは目立たない / 細長い葉 / 産毛がほとんどない / 太陽に透かすと白く見える / 光沢があり、厚く山茶花に比べ大振り ◎咲き方の違いは?
- 山茶花: 大きく開いて咲く
- 椿: 開き切らず、カップ状に咲く ◎散る時の違いは?
- 山茶花: 1枚ずつ花びらが散る
- 椿: 花ごと落ちる ◎どうして?
- 山茶花: 花びらが根本で繋がっていないから
- 椿: 繋がっているから ◎オシベはどうなっている?
- 山茶花: 同じく根本は繋がっておらず、放射状に広がる
- 椿: 下半分程度が合着。筒状 ◎子房の違いは?
- 山茶花: 産毛あり
- 椿: 産毛なし ◎香りの有無は?
- 山茶花: あり
- 椿: なし ◎共通点は?
- どちらも「ツバキ科ツバキ属」
- どちらも「日本原産」
→「山茶花」の原種は「ヤブサザンカ」。
「椿」では「ヤブツバキ」。園芸品種の元祖は「ヤブツバキ」と「ユキツバキ」と考えられています。
◎花言葉ってある?
- 山茶花: 困難に打ち勝つ / ひたむきさ(色により「白: 愛嬌、理想の恋 / 赤・ピンク: 理性、謙遜」)
- 椿: 理想の恋 / 謙遜(色により「白: 申し分のない愛らしさ、理想的な愛情、冷ややかな美しさ / 赤: 控えめな愛、気取らない美しさ」) → やはり寒い時期に咲く「山茶花」の方が凛々しいイメージの花言葉となっていますね。
- 上記の部分を頼りにじっくり観察です。
→ 山ほどある園芸品種は、一見どちらかわからないものもありますが、産毛の有無であったり、葉っぱの特徴や散り方などで区別のつくことが多いのです。
◎見分け方のコツは?
終わりに……
「山茶花」はそのまま読めば「さんさか」(「茶」は「さ」とも読みます。喫茶店の「さ」)。ですが、言いにくい……ということで「さざんか」の読み方が定着。「椿」は「厚葉木(あつばき)」または「艶葉木(つやばき)」がなまったもの、といわれています。
「艶葉木」の方であってほしい……「厚葉木」って、何となくボテッとした感じでイヤだ……
それにしてもずいぶん多くの品種があるのですね。
日本古来のものと中国原産のものとを交配、なども進み、山茶花・椿事情は今後もますます華やかに複雑になっていくのかもしれません。
そんな中で生まれた「山茶花の特徴を持った椿」……もはや山茶花でいいのでは?
などとも思いますが、どっちかなぁ、と観察しているうちに「どっちでもいいか、きれいだし、和んだし」となったら、それはそれでいいのかも、とも思います。
さてさていかがでしたでしょう。
すべてを見分けるには相当熟練の技が必要そうですが、せめて皆さまの「大体わかった!」のお手伝いとなれていましたらうれしいです。
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