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…… Q . 間違った箇所は何個所ですか?
などと質問されたら
……


疑問

もう『』と『』が気になって、答えるどころではなくなってしまいます!

「個所」「箇所」は、日本語ではよくある、「同じ意味、同じ読み方なのに、当てる漢字が違う」という言葉たちのひとつ。

「『○○』または『××』」などと書かれる、あのパターンです。「または」「若しくは」というのは本当に曲者、やっかいです。


なんで2つに分かれてるの?

わざわざ2つの言葉があるんだから、ホントは何か意味があるんでしょ?



ごもっともです! 気になりますね!

『箇所』『個所』、それぞれの生い立ち(?)などを振り返りつつ、2つの表記がある理由その違い等をご解説いたします。


そういうことね! と多少なりともご納得いただければ、幸いです!


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「個所」と「箇所」の違いを簡単に言うと


個所と箇所のように「同じ意味、同じ読み方なのに、当てる漢字が違う」言葉にも、

  • 使い方によって全体の意味が変わってくる言葉
  • 使う状況や、何に対して使うのか等で分けられ、完全な間違いとはならない(少なくとも意味は通じる)言葉

の2種類があります。


前者では「謝る・誤る」や「押す・推す」「引く・弾く・曳く」など、後者には「生まれる・産まれる」や「十分・充分」等が挙げられます。

今回の「箇所・個所」は後者寄り。どちらを使っても間違いではありません。


問題があったり、危険があったり、重要だったりする場所を示す『箇所』または、『個所』。

その特定の(問題がある、危険だ、重要なポイントだ)部分の数を示す『箇所』または『個所』。


この2つ、実は「ある時点で表記が分かれただけの、同じ意味の言葉」、です。


ですので簡単に言ってしまいますと、「個所」と「箇所」、2つの違いは、「表記上当てられている文字の違いのみ」、となるわけです。


では、なぜそんなことになっているのか? なぜ今も2つは同じように使われ続けているのか?


それぞれについて、もう少し詳しく見ていきながら、そのわけを探っていってみましょう!

「個所」の意味とは?


「個所(または箇所)」には、

  • 名詞として、問題になっているその場所 
  • 接尾語として漢数字の後に付け、特定の部分や場所の数を表す(助数詞)


といった意味があります。


ただ、『個所』の表記には何となく違和感を覚える場面も。

『個』だけをとって考えてみると、「物を数える助数詞として」の他にもう一つ「全体に対するひとつ」という意味も持っているからです。

「個人」などで使われる時の「ひとつ」という意味の部分が、『何個所ある? 三個所!』などの場合、気になってくるのですね。


重要個所』や『個条書き』という表記を使う新聞社でも「一個所、二個所」などとは書かれません。「一か所」若しくは「一カ所」となります(社によって変わります。因みに『か』を使うのは公文書、教科書、読売新聞、NHK、日テレ、テレビ東京、『カ』表記は朝日新聞、毎日新聞、日経、産経、フジテレビ、テレビ朝日)。

これもすべて、それぞれのルールによるものです。

「箇所」の意味とは?


『箇所』の意味も『個所』と変わりません。


「箇所」の方が一般によく使われ、標準とされている表記となります。

『箇』には、『個』同様の「物を数える助数詞として」の使われ方の他に「これ、あれ、など物事を一つ一つ指し示す」時にも使われます。

ですので『危険箇所』や『問題箇所』はしっくりきますね。「危険な・問題のある場所」をここ、そこ、と指し示していますね。


また、本来なら「何箇所?」には問題がないようですが、それでも新聞社などでは決まりにより、やはり「か」か「カ」で統一。


ルールは強いですね!


つまり「かしょ」のルールとして原則は、

  • 特定の場所部分を表す場合には『箇』(または『個』)
  • それらを数えるのに使う時はどちらも使わず『か』(若しくは『カ』)

となります。

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「個所」と「箇所」の詳しい違いと使い分けはコレ


「ある時点で表記が分かれただけの、同じ意味の言葉」である「個所」と「箇所」。


……じゃあ、好きな方使っていいの?


いいですよ!!


でも、できれば2つの文字が存在している背景を知り、その上でお好きな方を使っていただけると、どちらの「かしょ」にも悔いがないかと思います。


よし、これからはこっち表記で行こう! のご参考までに、では続いて2つの違い、使い分けのポイントなどを、挙げていきます。

「ある時点で表記が分かれただけ」、ある時点って?


キーとなるのは昭和29年


『箇』の文字を巡って、ちょっとした問題が話し合われました。

21年に内閣告示された「当用漢字表」には掲載されていた『箇』を削除し、『個』で代用しよう、という「当用漢字補正案」を当時の国語審議会が作成したのです。

この年が29年


ここが『箇』と『個』の最初の分岐点となります。

「最初の分岐点」、どう分かれたの?


  • NHKや新聞協会などマスコミ業界: 補正案に従い、早めの対策を取り、『個』に「か」という読みを当て『個所』に変えての使用を決定!

  • 教育業界: 慎重に! 内閣からの正式告示まで『箇所』のままで変更を保留。

→ つまり、マスコミ業界グループは『個』に変更、教育業界グループは『箇』のまま、の2つの表記に分かれます。

次の分岐点は?


【海外の反応】日本人が賢いのも納得!?常用漢字の多さに外国人がショック

補正案は「案」のまま立ち消えとなり、その後、昭和56年に正式告示された「常用漢字表」で、『箇』は残すもの、として決定されました。


それを受け、

  • マスコミ業界: 今さら…… 業界内ではすっかり馴染んだ『個』を今まで(昭和29年以降)通り使い続けることに。
  • 教育業界: 『箇』のまま。『個』の選択肢が消えただけ。

→ 分岐点、というより、決定の年、といった感じですね。

今のところ最後の分岐点

平成22年、最近です!


「常用漢字表」の改訂に合わせ、
  • マスコミ業界の中からNHKのみ: やっぱり『箇』に戻すことに。

→ 『個所』は常用漢字表にはない漢字となっています。この時点で新聞業界だけが「個所」を使っていることになります。

それでいいの?


いいみたいです。


『個所』で「かしょ」は表外音訓となりますが、新聞社や速記者などにはそれぞれ独自の表記辞典があります。『○○新聞の用語の手引き』などといったものになりますが、それによって表記文字は統一されています(個所以外の文字も)。

それぞれの社ごとに決められたルールに則り、一つの記事に『個所』と『箇所』が混在している等がなければ、問題ないようです。

要するに何が違うの?



それぞれの組織の方針が違います。


  • 公文書: 「常用漢字表」は公のもの。そこに定められた文字『箇所』を使います。
  • NHKを除くマスコミ業界: 業界内、読者・視聴者、共に馴染んでいた方の『個所』を使い続けています。
  • 教育業界: 『個』か『箇』かの分岐点に立ち会うものの、慎重に正式告示を待っている間に、その話は立ち消え。途中業界内で話し合いなどはあったかもしれませんが、結局元のままの『箇所』です。

マスコミも教育業界も、どちらもしっかりとした機関です。

この2つの表記が違う、ということは「どちらも間違っていない」の証とも言えますね。


けれど一応正確を期すなら『箇所』を。なぜなら「常用漢字表」を公のものとするなら、『個』は「か」とは読めない漢字となるからです。

ただしマスコミ業界の方等は、『個所』を、会社のルールが変わるまでは貫いてくださいね!

余談となりますが……


「何ヶ所」などに使われている『ケ』、は普段使いでは最も多く使われているものではないでしょうか? ですがこの『ケ』、正式な文書などではほぼ使われない文字と、なっています。


これ、カタカナの「ケ」ではないのです。


実はクサカンムリ部分の一つを使った『箇』の略字(異字体)。

略字を正式文書に使うのはどうなんだ? ということで、ほとんど使われることはない、というわけなのですね。

ついでなのでもう一つ余談を


では「何カ所」の今度は「カ」の方のお話です。


戦後、『ケ』は「箇」のクサカンムリを使った略字、ではなくカタカナとして受け取られ「ならば発音通りの「か」を、『ケ』だってカタカナなのだから『カ』もカタカナ表記でいってみようか!」と生まれた文字です。ですのでこちらは、ほんとうにカタカナなのですね。


そしてさらにもう一つの「か」。『文化庁』が推しているのはこちら。ひらがなの『か』です。


『ケ』と『カ』と『か』……
こうなるともう、何だか分からなくなってきます……

かなり自由度は高め。でもちょっと強引にまとめれば……


一応公文書では、

  • 特定の場所や部分は: 箇所 → 『箇』  
  • その場所・部分を数える場合には: (一や二)か所や(三、四)か月 → ひらがなの『か』

となっています。
公文書で使われるわけなので、この使い分けが一番無難ではありますね。


けれど新聞表記や教科書作りなど、それぞれ決められたルールのある場合にはそれに従った表記を、個人で書く文章などでは、一つの文書内で混在がないよう注意すれば、とりあえず問題なしです。


場所の場合には漢字の『箇』(や『個』)、の場合では『か』(や『カ』、『ケ』)など、これが混じるのはあり。一つの文章内でも別の表記でOKです。


とにかく、「これとこれで!」と決めたら、紙にでも書いて貼っておき、混在のない文章を目指す。これが一番です!

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終わりに…


それぞれの場所で頑張り続けている『個所』と『箇所』。

補正案の提出 → 案のままで採用されず、でもすでに変更しちゃったから……の背景から生まれたことを考えると、どちらも平等に使ってあげたくなりますが、混在した文書はNG。


はがゆいですね!


文字にこだわりを持つのは、とてもきれいなことのように感じます。

その言葉がなぜその言葉となったのか? を知り、その上で使うのなら、ますます、ぜひともこだわり続けてほしいものです!


いかがでしたでしょう。
2つの「かしょ」、モヤモヤ解消のお役に、少しは立てたでしょうか?


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