「夏休みの宿題がない」
……そこは桃源郷ですか?

ここだけ聞くと、すぐにでもアメリカに移住したい気分になりますが、これには問題が2つ。
まずは多くの方がもはや「学生」としてこの恩恵を受けられる年齢にはないこと。
そしてもう一つは「ものには大抵その理由があること」です。
なぜ「給食」がないのか?
なぜ「宿題」が出ないのか?
「日本とアメリカの学校の違い」とは、その「理由」にこそ意味があるのです(断言)。
それぞれの国の成り立ちや歴史から「こういう時にはこうした方がいい」といった経験則に基づいた行動が多くとられるようになり、それが常識となり、それに即した環境ができあがり……
「自由の国アメリカ」
「謙虚であることが美徳とされる日本」
なのですね。
「国民性がこんなに違うなら、まぁ、こうなるよね……」とも思える、アメリカと日本の学校事情。
違いをわかりやすく解説いたします。
皆さまのスッキリに、少しでも貢献できれば幸いです。
目次
「日本の学校」「アメリカの学校」、一番大きな違いって何?
さてさて、日本には普通に存在している「塾」。通う、通わないに関わらず、存在自体は珍しいものではありません。
が、この「塾産業」というのは、アメリカではものすごくマイナーな存在。
ほとんどないのです。
学校は学校、塾は塾、という考え方も多い日本と違い、アメリカにおいての「学校」は、
「ここで教えてもらったことさえちゃんとやっておけば大丈夫」
という「唯一無二」感が、圧倒的に日本と違うのですね。
ここが一番のポイント。
また「勉強」だけするのではなく、習い事や地域のコミュニティに積極的に参加させ、たくさんの経験を若い(子どもの)うちに積ませてあげたい、といった子どもに対する保護者の考え方も(平均値で考えると)「日本」とはかなり異なります。
そして「民族」の問題。
日本は「単一民族」ですが、アメリカは様々な民族から成り立っている国です。
ここからくる「宗教」の違いもポイントとなります。
つまり「日本の学校」「アメリカの学校」を分ける一番大きな違いとは「学校をどのように位置づけているか」
そしてその学校に対して、また子どもに対しての「保護者の考え方」、「宗教の違い」などなどが絡んでくるのです。
では具体的にはどのような違いとなって、これらは現われてくるのか?
続いて見ていってみましょう。
「考え方」から出てくる違いは?
まずは冒頭のアメリカの桃源郷システムからいきましょう。日本の小学校では(ない学校ももちろんありますが)「給食」をクラスみんなで食べます。
栄養面もしっかり考えられていて「食育」としても効果が高いとされています。
でも「カフェテリアでランチ」……響きがオシャレすぎる……
ですが、これは実は「やむにやまれず」の部分が大きいのです。
先ほども書きました通り、アメリカの学校にはいろいろな民族の生徒たちが集まります。
つまり、文化・人種・宗教などが多種多様であるために「食べてはいけない」ものもそれぞれに異なるのですね。
みんなで同じものを食べる、ということは難しいのです。
(※ カフェテリアの充実さも、その地域ごとに異ります。お弁当持参の場合もあり)
そして「夏休みの宿題がない」。
熱心な学校では読書を勧め、夏休みが終わってから読書感想文を書かせることもあるようですが、ほとんど宿題が出ないのは本当です。
これは皆さまもおそらくご存知かと思いますが、日本とは違いアメリカでの学年始めは「9月」だから。
日本でも学年が変わる前の「春休み」にはほとんど宿題は出ません。
それがアメリカでは「夏休み」に当たるだけなのですね。
ではアメリカには「宿題」というものはないのか?
これが日本以上にあるのです。
それはもう、移住したアメリカから即刻帰ってきたくなるような量です。
山ほど。しかもほぼ毎日。ないのはむしろ夏休み期間だけ。
日本での「宿題」は授業の復習の意味合いが強く、こなすことで授業内容が理解できているかの判断材料にもなるもの。
ですがアメリカでの「宿題」は、これにより学力をつける、といった役割のものとなります。
ですので量が多いだけではなく、その内容も高度。
出された問題を解くのではなく、特に理科や社会などでは、引用文献などもしっかり記述したプロジェクトの作成などが「宿題」とされます。
これは高校や大学のお話ではなく、小学生でも、です。
「宿題」が日本では考えられないほど熱いのです。
そして濃い。
アメリカではテストの成績はそれほど重視されません。
むしろ「宿題」の出来の方が成績にかかわってくるのですね。
また「自分の意思・意見」がしっかりと伝えられることが「優秀」と高い評価を得るためには必要となってきます。
テストでいい点を取るより、授業態度がいいことより、ここがずっと大事。
自己主張できることが何よりも求められているのです。
ここも驚くほど日本とは真逆です。
日本の授業はどちらかといえば「全員参加型」。
先生も、発言を多くする生徒より、できれば当ててほしくない、と思っていそうな子にあえて「何々君はどう思う?」などと振ったりします。
あれは決して意地悪ではなく、日本の学校とはこのような「全員で一つの授業を作っていこう」的な姿勢を好むからなのです。
アメリカではこれはない。
なぜなら大事なのは「自己主張」、つまり「自主性」と「個性」だからです。
大学では自分と相手の意見を戦わせる「論争」の授業まであります。
凄いです。
国民性が凝縮されている感があふれ出ています。
また、日本の授業は生徒全員参加型、といった感じでしたが、アメリカでは(小学校)親参加型です。
遠足にも生徒の親がボランティアで車を出し、そこに分乗して出かける、プリントの添削なども積極的に親御さんたちは手伝ってくれます。
また、寄付活動も盛ん。
アメリカにはいくつもの州があり、ほとんど1つの国のようにそれぞれが機能しています。
ですので州によっては常に予算不足の学校なども多く、資金集めも重要な仕事となってくるのですね。
その代り、学校に対し自分の意見もしっかり伝えます。
家庭と学校がいい意味で連携しているのです。
だからなのかどうなのか、先生の誕生日やクリスマスなどには何かしらのギフトを贈るのはほぼ常識。
高価なものではなく、お手紙やケーキなどが多いようですが、それぞれの家庭ごとに合わせた何かを贈るのが普通のことのようです。
日本で考えると、この行為は「ギフト」というより「付届け」。
何となく後ろめたい気がしてしまいます。
また、アメリカの学校は私服。
体育も着てきた服のまま行います。
上履きもなし。そのまま履いてきた靴で過ごします。
通学とは「人前に出る服装やメイクを学ぶ場でもある」といった考え方から、女子はメイクOK。
男子に至ってはひげを生やしてもタトゥを入れてもお咎めなしです。
これは、小学生の話。
……恐れ入ります。
アメリカの小学校が最も身につけてほしいのは「自分の意見・意思をしっかり伝えられること」。
「自主性」と「個性」を育てるのがアメリカの学校の重要な役割なのです。
親御さんも同じように考えます。
成績だけがすべてではないのです。
だから「塾」ではなく地域コミュニティへの参加であったり、ピアノやバレエなどのお稽古事の方が大事。
その代り学校の授業で学力を身につけてほしい。
=「宿題が山ほど出る」わけです。
そして、やはり中には学力レベルが次の学年に達することのないまま終業の日を迎える生徒も出てきます。
──「留年」なのですね。
アメリカの小学校には義務教育にもかかわらず、これがあり。しかもそれほど珍しいことではありません。
そして大抵の親はあっさり受け入れます。
なぜなら、それが子どものためになることだから。
ここは何となくですが、わかる気もします。
そのまま次の学年に上がっても、自分の子どもにとってますます理解できない授業が待っているだけなら、理解できるようになってから次に進めばいい ── なのです。
そして「留年」があるということは「飛び級」もありです。
いや、本当です。
「親の承諾」「学校の推薦」、そして「テストに合格」で級を飛び越えるのです。
生徒の学力はそれぞれ。
その一人ひとりに合わせた学習スタイルを重視しているのが「アメリカの学校」なのです。
日本では個性より協調性、といった部分をより重視。
「日本の学校」は安全に、かつ堅実に育てたいのです。
これらが学校や重視するポイントなどなどからくる「日本」と「アメリカ」の学校の違いです。
アメリカだからこその「アメリカの学校スタイル」。
日本ならではの「日本の学校スタイル」。
どちらの方が優れた考え方、といった違いではなく、それぞれの国の個性が詰まった「違い」なのです。
「システム」の違いは?
さてさて、日本とアメリカの国民性の違いがシンクロしているかのような「学校の違い」。先ほど書きました通り、新学年が「9月」のアメリカに対し、日本では「4月」。
アメリカの「春」は出会いと別れの季節ではなかったのですね。
こうした違いは「小・中・高」の区切りにも見られます。
もともと日本の学校制度とは、戦後アメリカの制度をもとに作られたものなので、基本となる「全部合わせて12年」の部分は同じ。
ただし、日本では、
- 小学校: 1年生~6年生
- 中学校: 1年生~3年生
- 高校: 1年生~3年生
それぞれ「入学式」「卒業式」を経て、次のステップへと移行していきます。
何当たり前のこと書いてんの? と思われるかもしれませんが、その「当たり前」はアメリカでは全然当たり前ではないのです。
そもそもアメリカには「入学式」がありません。
あの「心機一転の極み」のようなイベントが、ないのです。
そしてあるのは「高校の卒業式」のみ(学校によっては小規模ですが「小・中」の卒業式のあるところも)。
アメリカ映画やドラマなどでも「卒業パーティー」の相手を必死に見つけるシーンが登場しますが、あれは「12年間通して初の卒業」だからこそのもの。
日本の「12年間で3回目の卒業式」とはその盛り上がり方違うのは当然。
あの必死さは正しいのです。
アメリカの12年間は、
- 小学校:「1年生~6年生」「1年生~5年生」
→ 2パターンあり。どちらの場合も、ここに「幼稚園の年長さん(キンダーガーデン)」を小学校に組み込こむのが一般的 - 中学校:「7年生~8年生(二年制)」「6年生~8年生(三年制)」
→ 小学校の最終学年により、こちらも2パターン。
→「6年生」は校舎が分けられていることも。 - 高校:「9年生~12年生」
→ 高校だけは一律で四年制。
12年を、それほど明確に分けてはいないのですね。
前述の通りアメリカでは州ごとに、それぞれのルールによりほとんど独自の機能を持ちます。
ですので、学校のクオリティはもちろんのこと、学校運営のシステムに関しましても「アメリカ全体」としての線引きは非常にしにくいのです。
この州では「これがあるがあれはない」、また違う州では「あれはあるがこちらはない」といった感じです。
以下、すべての州共通のものではない、を前提に「日本とは違うアメリカの学校」について、を挙げていきます。
アメリカ全体としてのものではありませんが、「日本とアメリカの学校」に対するスタンスはわかりやすく反映されているかと思います。
- 教科書をはじめ、鉛筆やノートなどもすべてレンタル
→ 特に小学校の低学年ではほとんど使わず、先生の用意するプリントや資料を使い授業が行われます。 - 夏休みは3か月以上
→ 授業が終わるのが5月中旬。始まりは9月 - 公立の小学校には「体育館」「プール」がないところがほとんど
→「体育」は教科というより体を動かすために、といった扱いであることが多いです - 徒歩ではなく、車やスクールバスで登校
→ 生徒の安全管理と、治安の問題による - 掃除は清掃員の方を雇い、生徒は行わない。警備員も常駐
- スクールカウンセラーも常駐
→ 悩みや不安を相談することは、アメリカでは一つの自己管理とされます。学校でのことだけでなく、家庭でのことについても相談OK - 州(学区)により就学年齢を決める月が違う
→ 日本では「4月2日生まれ ~翌4月1日生まれまで」ですが、アメリカでは「就学前年の9月1日 ~ 入学する年の8月31日まで」の場合と「入学する年の1月1日 ~ 12月31日まで」の場合とがあります
→ ただし、子どもの学力や家庭の事情を考慮するため、「○○ ~」の部分はあまりしっかりとは規定されてはいません - 担任がおらず、授業は生徒が先生のいる教室まで移動
→ 日本の大学のようなイメージ。教科ごとに担当の先生が変わる(日本では音楽や図工など以外では担任が教えます)。ただし、こちらも州により様々。担任のいる学校も多くあります
/ 小学校 - 中学では生徒の能力により同じ教科でも「普通クラス」「アドバンスド・クラス(より内容が高度)」のように分かれることも
/ 中学校 - 高校での選択科目は日本のものよりかなり多め
- 主要科目ではレベルにより分かれる
→ 高度なレベルのクラスでは、いい成績を修めれば、大学の単位になる(高校の段階で大学の一般教養科目の単位を取ってしまうことも可能) - アルバイトが推奨されている
→ これにより、大学への進学も有利になる場合も
/ 高校 - 特にスポーツ系のクラブ活動は「秋・冬・春」のシーズン制
→ 日本のように3年間通して同じ部活、ということはなく、シーズンごとにいくつものスポーツをすることが可能
→ 花形である「アメフト・バスケ・野球」などのクラブには「トライアウト」という入部審査があり、合格しなければ参加できない(2軍であれば可、であることも)
→ 実力重視のため日本では大事にされる「先輩・後輩」といった関係はなし - 部活動に熱心なあまり、勉強がおろそかになると退部
- 専属のトレーナーが在籍していることがほとんど(日本ではケガをしたらとりあえず「保健室」)
→ そのため体の不調、ケアにも学校内で対応できる
/ 部活 - アメリカの「ボーディング・スクール(寮制高校)」には優秀な高校が多い
→ ここでもスタンスは「文武両道」。勉強だけでなく、最低でも1シーズンは運動部(特にチームスポーツ)への参加を指示することも
/ などなど
本当にずいぶんと違いますね……
日本とアメリカの「学校」の違いを比較 ♪
♦【海外の反応】日本とアメリカの学校の9大相違点が海外で話題に「明らかに違う環境」
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=5SBt6nU_X-E&w=560&h=315]「自由の国」では小学校の時から「個性・自主性」が重視され、「謙虚であることが美徳」の日本では「協調性」を重視。安全に堅実に学校も生徒を育てています。
アメリカの学校制度をもとに作られた日本の制度ですが、方針は日本独自のものなのですね。
ではここでもう一度おさらいです。
「日本」「アメリカ」の学校の違いをまとめていってみましょう。
新学年のスタートは何月から?
- 日本: 4月から
- アメリカ: 9月から
→ そのため「夏休み」にはほとんどの場合宿題は出ません
「小・中・高」の区切りは?
- 日本
△小学校: 1年生から6年生まで
△中学校: 1年生から3年生まで
△高校: 1年生から3年生まで
→ 「6・3・3」の12年間 - アメリカ
△小学校(日本の小学校に当たるもの):「1年生から5年生まで」と「1年生から6年生まで」
△中学校:上記の最終学年により「6年生から8年生(3年制)」と「7年生から8年生(2年制)」
△高校:「8年生から12年生」までの4年制
→ 一般的に入学式はなく、12年間の集大成として「高校の卒業式」のみ盛大に行われます
○○なのはなぜ?
◎ アメリカに「給食」がないのはなぜ?学校に通う生徒の文化、人種、宗教が多種多様なため、みんなで同じ食べ物を食べるというのは難しいことだからです。
宗教によっては「食べてはいけない」と決められているものがあるため。
◎ 徒歩ではなく車やスクールバスで通学するのはなぜ?
安全管理のため。治安の問題によるものもあります。
◎アメリカの小学校では体育の授業が週に1,2回と少ないのはなぜ?
日本のように基礎運動能力の向上、体力増進といった取り組み方ではなく、あくまで「たまには体も動かそう」といった意味で行われる授業だから。
◎ 夏休みに宿題がないのはなぜ?
日本での「春休み」と同様、新学年になる前のお休みだからです。
◎ 普段の宿題が山ほど出るのはなぜ?
量だけでなく内容も濃いです。
アメリカでは塾にはほとんど通いません(塾自体がほぼありません)。
学校の勉強さえやっておけば十分、といった考えです。「宿題」は学力を高めるための重要な役割を果たしています。
◎ 義務教育なのに「留年」や「飛び級」があるのはなぜ?
みんな一律に、ではなく、それぞれの生徒にあった勉強をすること、学力を身につけることが重視されているためです。
◎「日本」と「アメリカ」の学校に違いがたくさんあるのはなぜ?
「日本の学校」では、安全に堅実に生徒を育てていくことに重点が置かれ、他方「アメリカの学校」で重要とされるのは生徒一人ひとりの「個性」や「自主性」を育てることにあるためです。
終わりに……
国が変われば、考え方もガラリと変わる。これは当然のことなのですが、親の転勤など、どちらかの国の子どもがもう一方の国に転校、または留学などの際には、相当なカルチャーショックを受けそうです。
それにしても、ずいぶんと違うのですね。
ですが、どの違いにも「なるほど、アメリカならそうなるかも」な部分もありました。
確かに自由の国の学校です。
もしアメリカの学校への留学が可能なら ──
留学したいような遠慮しておきたいような……うーん。
……さてさて、いかがでしたでしょう。
皆さまの「日本とアメリカの学校の違い」へのモヤモヤが少しでも薄れていましたらうれしいです。
(※ 本文中にも書きましたが、アメリカは州による違いも大きいためすべての学校に上記の事柄が当てはまるわけではありません。ご了承ください)
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