語呂のいい方を、その都度使い分けてますが、なにか?
……いや、何も言ってません。
それでいいんじゃないでしょうか……
ですが、どうして読み方が2つあるのは確かに謎。
しかもその謎が、日本人に一番馴染みの深い「日本」という言葉の読みについて、というのはマズいです。
今までそのせいで困ったことは一度もありませんが、何となくマズい気がします!!
「にほん」と「にっぽん」とはどちらが正解なのか、または何かの基準で使い分けられているのか、その決まりとは? などなど、2つの「日本」の読み方について、その違いを解説いたします。
今までもこれからも、違いを知らなくても相変わらず困ることはないかもしれませんが、一度抱いてしまった疑問は解消されるのが筋。というより、このままではどうにもムズムズします。
皆さまのムズムズ撃退、スッキリにつながるお手伝いとなれましたら幸いです。
目次
「にほん」?「にっぽん」? どっちが正解?
どちらも正解です!!日本のあれこれを決定している「政府」の見解も「にほん・にっぽん、どちらの読みでも良し」です。
……ですが、だからこそ、困るのです。
日本には「日本○○」、または「○○日本」のように名称に「日本」の入った企業や団体がたくさんあります。
なにせ、ここは日本。そしてその読みは「どちらでも良し」とされているもの。
ただし、企業名や団体名は固有名詞です。間違えては失礼。なのに表記が漢字だともはや見た目からは判断できないのですね。軽いパニックです。
ですので、それらの名称を口に出さなければならない場合には、事前にしっかり読み方を調べておく必要が出てくるのです。
なんで統一しちゃわないの?
と、思ったのは私たちだけではかったようで、昭和9(1934)年には当時の「文部省臨時国語調査会」が、また平成21(2009)年には「政府」がそれぞれに統一を提案しています。
現在の「にほん」「にっぽん」事情からもわかります通り、結局統一には至らなかったわけですが、昭和9年の統一案でその後の正式名称(呼称)、とされていたのは「にっぽん」の方。
実はその1週間前に、今後の「日本」の呼称についてNHK(日本放送協会)が、方針を決定していたのですね。その影響を受けたのではないか、とも言われています。
そのNHKの決定とは、
- 正式な国号(国の称号・国名)として使う場合には「にっぽん」
- そのほかの場合には「にほん」といってもよい
あくまで「法律はじめ明確な規定ではなく」とされた上でのことです。
標準日本語といえばNHK。現在でも「明確な規定ではなく」の部分も含め、この方針は変わっていません。
そしてその1週間後の上記「文部省臨時国語調査会」の「正式な呼称は『にっぽん』とする」という統一案。
これは一応議決(決定)されているのです。
ですが法律には制定されないまま放置。その手続きにまでは手が回らなかったのですね。
さらに時代は流れ、平成21年「日本国号に関する質問主意書(「日本」の読み方を統一する意向はあるのか、という質問内容)」が民主党衆議院議員(岩國哲人さん)により提出され、6月30日に政府により閣議決定(by 麻生太郎内閣)されたその答弁が「統一の必要なし」というもの、そのまま現在に至る、です。
実際「にほん」も「にっぽん」も、どちらも浸透しすぎています。
今さらといえば今さら。
と、回りまわって現在の混濁状態の出来上がり、となるのです。
ですが、会社名等の固有の名称でない場合は、ほとんどどちらでも問題は起こりません。
例えばスポーツ観戦の時などでは大抵の方は「にっぽん!」を連呼。なぜなら、その方が気合が入るから。
「にっぽん」は「NIPPON」、この「P」が言葉にパンチを与えているのです。「っ」もリズムを生みます。俗にいう「腹から声が出る」になるのです。
「にほん頑張れ~!」だと「NIHON」。「ほ(HO)」の発音の仕方から、ため息のような何とも頼りない声援になってしまうのですね。何となくおとなしい印象になるのです。
別に「にほん頑張れ!」でもいいのです。いいのですが、スポーツ観戦など、大声系では「にっぽん」の方が圧倒的に優勢。
逆に、それほど気合が必要のない場面では、というより日常的な話し言葉としては、ほぼ「にほん」。
これってなに? 気合が基準なの?!
そもそも、NHKやら統一案やらが「にっぽん」推しなのってどうして? 日本人って、そんなに気合好き? どっちかっていったら穏やかな方じゃない?
……気合で基準は作れません……
これには「日本」呼称にまつわる歴史が関係しているのです。
では続いて「にっぽん」について、その呼び名をめぐる歴史なども併せて見ていってみましょう。
「にっぽん」とは?
「にっぽん」。……チャチャチャ、ウー?
あ……懐かしい……!
先ほども出ましたが、スポーツ観戦でのイメージも強い「にっぽん」の読み方。
古くから使われているのも「にほん」ではなく「にっぽん」の方です。
大昔は「大和(やまと)」ですね。
神武天皇建国の治めた地が国号とされ「大和」。「おほやまと」などとも呼ばれていました。
そして「魏志倭人伝」でも有名な「倭(わ)」。こちらが古く中国での日本の呼び名。
日本でも紀元前後から7世紀末にかけ、外国に向けては「倭」または「倭国」と名乗っていたそうです。
そしてその中国などとの交流が始まるのが7世紀頃。
遣隋使・遣唐使が盛んに派遣され、大陸文化が導入されていきます。
中国大陸を「隋」が統一していた時代、つまり「遣隋使」派遣の頃、7世紀初頭には、日本はまだ「倭」を名乗っており、「日本」の名が登場したのは「第7次遣唐使」が派遣されたとき、大宝2(702)年、といわれています。
「大宝2年」つまり、1年前は「大宝元年」。「大宝律令」が完成した年です。
「唐」の律令を参考にした、とされていますが、簡単に言えば「大宝律令」とは日本初の法律のようなもの。天皇中心の中央集権国家の体制の始まりでもあります。
そしてこの時に、「日本」という国号が定められたのではないか、というのが一般的な説となっています。
(※あくまで「国号」として。「日本」の表記自体は大化の改新(645年)の頃に初登場しているようです)
さて、この「日本」。
なぜこの名称になったのか。
どこから「日本」という言葉が出てきたのか、ですね。
これは、中国から見て「東の果て」という意味で(「本」には「木の根本」の意味あり)「日の本(ひのもと)」、そこからの「日本」表記。ただし、読みは「やまと」です。
「やまと」に充てる漢字として「日本」。
当時、東アジアでは中国の歴代王朝が周辺諸国に対し、大きな力を持っていたのです。中国から見た位置、が「日の本」、「日本」なのですね。
つまり「日本」の読みは「にほん」でも「にっぽん」でもなく、始まりは「やまと」。
実は国号としての「日本」表記はあっても「にほん」「にっぽん」として読まれるようになるのは、奈良時代(694~794年)以降のことなのです。ここでも2つが存在。
日本人、優柔不断ですか!!
中国はじめ諸外国の人々は、「日本」を「にっぽん」もしくは「じっぽん」と読みました。ですので、外国の人との交流の場では、日本人もそれに合わせ自国を「にっぽん」「じっぽん」とし、そのさらに後に、普段使いでの「にほん」の読み方が誕生します。
そして次第に「じっぽん」読みが消えていき、結果生き残った「にっぽん」「にほん」の2本立ての「日本」が現在まで、諸々の局面を迎えながらも続いている、というわけです。
……というのが一般的な説。実際には日本の国号が成立した時期ははっきりわかっていません。
中国大陸では上記の通り「隋」「唐」などと、王朝が交代するたびに国号が制定され直されてきていますが、日本では交代がありません。ずっと同じ系統が続く「万世一系(ばんせいいっけい)」の国。
ですので「国号を変えて存在をアピール」という発想がなく、そのためはっきりした時期が曖昧なのでは、とも言われているのですね。
いずれにせよ、前述のものを含め、これらには諸説ありありなのです。
ですので、その一つの説、または一般的とされているもの、とお考えいただけると助かります……
さてさて、「にっぽん」から「にほん」への流れですが、こちらの説もいくつかあり、有力とされているのが「ひらがな」の絡んだもの。
平安時代に生まれた「ひらがな」には、促音(小さい「っ」などつまる音)や半濁音(「ぽ」など濁点でなく上に小さい「゜」のつく文字)の表記がなかったことを理由とする説です。
よって「にっぽん」→「にほん」ですね。
何となくもう、きっとそうなのだろうな、という気になってきました。
これが「日本」が「にっぽん」と読まれるようになった背景と歴史です。
「にほん」とは?
さてさて「にほん」です。意味の違いはほとんどありません。
ただし、上記のようにかつて対外的に使われていたのが「にっぽん」であったこともあるためかNHKでは「正式な国号(国の称号・国名)として使う場合には『にっぽん』、そのほかの場合には『にほん』といってもよい」としているのですね。
ちなみに公の権化ともいえる総理大臣でさえ、その読み方はそれぞれ。
例えば安倍首相は「にっぽん」ということが多く、元首相の麻生太郎氏は「にほん」「にっぽん」どちらも同じくらいに使っているそうです。
つまり、どちらでもいいのですね。
先ほども書きました通り、話し言葉では盤石の強さを見せる「にほん」。
「にっぽん」を使うのは比較的年配の方に多く、若い方ほど「にほん」のみでまかなう傾向にあるようです。
現在の憲法は「日本国憲法」。「にほん」「にっぽん」どちらでも良し、とされていますが、一般的には「にほんこく」憲法。
ですが戦前の憲法である「大日本帝国憲法」は「だいにっぽん」帝国憲法です。「大日本帝国」自体の読みが「だいにっぽんていこく」なのです。
ここら辺も年齢による使われ方に影響を与えているのかもしれません。
戦前は「にっぽん」の読みの方が多かったのですね。
実際に「どちらかを使うとしたらどっちがいい?」的な調査の結果、昭和38年(1963 年/ かつての東京オリンピックが1964年)にはほとんど差のない両者(「にほん」45.5% /「にっぽん」41.8%)の比率が、時代の流れとともに徐々に「にほん」寄りに開いていき、最終調査の平成15年(2003年)では「にほん」61% /「にっぽん」37%、となっています。
かつては公の場や「愛国心」などを語る場合での「日本」は「にっぽん」といったイメージがありました。
「っぽ」部分強しです。
力強く何かを主張したい時などは確かに発音に気合の感じられる「にっぽん」と言いたい……わかる気がします。
完全に個人的な感想ですが「にほん~」ではなく「にっぽん!!!」な感じですね。
それでも少し前までは、そこさえ「にほん」に押され気味だった「にっぽん」。
辞書などでも「にっぽん」で調べると、あっさり「→ にほん」などと書かれています。
かつての諸外国に対するときの「国号」、またNHKが「正式な国号」として使っている「にっぽん」の扱いが、ちょっとかわいそうなことになっています。
が、最近はそんな「にっぽん」も徐々に盛り返しの兆しを見せているようです。
まだまだ「にほん」人気には及びませんが、上場企業の社名などでも「にっぽん」と読ませるもの、テレビの番組名に「にっぽんの○○」などとつける等、以前に比べ「にほん」との比率においても増加傾向にあるとのこと。
こなってくると、今後「にほん」「にっぽん」、どちらが優勢になってくるかは未知数ですね。
曖昧というのも、案外面白いのかもしれません。
重要なのは「日本」という国号。そこさえしっかり決まっていれば、その発音はそれほど気にしないのでは、などとも言われているようです。なるほど。
確かに、漢字に限らず、日本語には同じ言葉を少しだけ違う表現で表わしたものが案外あります。
「それほど」を「さほど」といったり、「やっぱり」と「やはり」などなど。
別に困りません。好きな方を適当に使っています。
こうなってきますと、同じ漢字に読みが2つあっても別に構わないかも、という気もしてきますね。
「にほん」と「にっぽん」を比較! 使い分けの傾向は?
「にほん」が依然優勢な現在。ですが「にっぽん」を冠する社名や、テレビの番組名も増えてきているというのが現在の傾向となっています。
そしてこの傾向は、今後どのようにも変動可能、といった感じでしょうか。
さてさて、「にほん」「にっぽん」の読みを持ついくつかの代表的なものを以下、挙げていってみます。
-
◎「にほん」読み
- 固有の名称
日本大学 / 日本テレビ / 日本共産党 / 日本大学 / 日本経済新聞 / 日本橋(東京) etc…… - 固有名詞ではないもの
日本画 / 日本海 / 日本酒 / 日本風 / 日本料理 / 東(西)日本 etc……
◎「にっぽん」読み
- 固有の名称
日本放送協会(NHK)/ 日本体育大学 / 日本武道館 / 日本社会党 / 日本橋(大阪)/ 日本航空(※)/ 日本銀行(※) etc…… - 固有名詞でないもの
日本 / 日本国民 / 日本賞 etc……( ← NHKの場合)
「固有の名称」ではなく「にっぽん」の使われているものに関してましは「にほん」と読んでもそれほど違和感もないように思えます(少なくと私には)。
そして「※」のついた「日本航空」。こちらは正式名称を「『にっぽん』航空」とされていますが、報道機関などには「にほん」と読むようにお願いしているそうです。
「NIPPON KOKU」となっている会社定款の英訳。これがどうして「にほん」ではなく「にっぽん」とされているのかが当事者にも不明だからだそうです。
またもう一つの「日本銀行」。こちらも「にっぽん」読みが正式。
お札の裏にも「NIPPON GINKO」と書いてありますね。
ですが日本航空同様、なぜこのような表記になったのか謎なのだそう。
日本銀行自ら、その謎に迫ったところ、「力強い日本」のイメージを推したかった当時(明治18年 / 1885年)の通貨当局の意向によるものか、との結論に至ったそうです。
当時の偉い人達の中には薩摩出身の方が多かったそうです。西郷さんのところですね。「力強い日本」。なるほど、そこからの「にっぽん」読み。かなり説得力あり、です。
このように、傾向としましては、完全に使う側のセンスの問題である部分が大きいのですが、より無骨に硬派なイメージを保ちたい場合には「にっぽん」、逆に時代の流れにスマートに添う方針で「にほん」に、といった微妙なニュアンスにより使い分けることもあるようです。
いずれにしても2通りの読みをどちらも受け入れているあたり、ある意味日本人らしい寛大さ、と言えるのかもしれません。
ちなみにですが、スポーツで連呼される「にっぽん」。
連呼する場合にはそうなのですが、英語で表わされる際には「NIPPON」より「JAPAN」表記が多いそうです。
また、これまで雑誌などでも、これまで「NIPPONN」としていた部分を「JAPAN」に置き換える、というのも最近の傾向。
「にっぽん」……
でも大丈夫。
これまた一つの説ですが「ジャパン」のもととなった言葉は「じっぽん」だったともいわれます。
要するに、そういうことなのです。
日本の国号は「日本」。
ここさえはっきりしているのであれば、発音や呼ばれ方など、それほどのものではないのかもしれません。
つまり違いはなし。
使い分けも厳密で明確な決まりはありません。
ですがニュアンスの違いでどのように読んでも間違いにはならない。
あるのは、ここに至るまでの長い歴史です。
それが「にほん」「にっぽん」であり、日本人の気質なのですね。
終わりに……
「やまと」から始まり「にっぽん」「じっぽん」に「にほん」が加わり「じっぽん」が抜け、「にっぽん」読み優勢の戦前から、「にほん」に人気を持っていかれている現在。それでもまたもや「にっぽん」が盛り返し中……でもまだまだ「にほん」読み強し……なるほど。日本人は優柔不断なのではなく、おおようなのです。そう思えばいいのです。
ならば良し。どちらを使ってもいい、ということさえわかればそれで良し、です。
さてさて、いかがでしたでしょう。
歴史がある分、様々な変化はつきもの。
今後はどう変化していくのでしょう。
いつか統一はありうるのでしょうか。
気になるような、まったく気にならないような……
皆さまのムズムズ感は多少は薄まりましたでしょうか。
そちらの方が断然気になります……
少しでもスッキリ、となっていただけていましたらうれしいです!
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